映画『人生スイッチ』評価は?ネタバレ感想考察/復讐の連鎖が驚くべき結末に

『人生スイッチ』あらすじ概要
独立した短編オムニバス6編。人生で押してはならないスイッチ、特に復讐しようとすることで、取り返しのつかない不幸の連鎖に巻き込まれていく人々を描いている。1話めは、飛行機で隣り合った人と雑談中に、自分の元彼を知ってることがわかり、さらに周りの乗客たちも彼のこと..(ネタバレ感想考察↓)
映画名/邦題 | 人生スイッチ |
原題/英題 | Wild Tales(Relatos salvajes) |
日本公開日 | 2015/7/25 [予告↓]上映時間 122分 |
映倫区分 | 日本 PG12(小学生指導必要)USA R |
製作国 | アルゼンチン・スペイン合作 |
映画監督 | ダミアン・ジフロン |
キャスト 出演者 | リカルド・ダリン、リタ・コルテセ、ダリオ・グランディネッティ、フリエタ・ジルベルベルグ、レオナルド・スバラーリャ |
配給/製作/画像 | ©ギャガ、ワーナー・ブラザース(USA)/Corner Producciones、El Deseo、Instituto Nacional de Cine y Artes Audiovisuales (INCAA) |
日本興行収入 | 0.9億円(興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 0.3億USドル [出典] |
製作費 | 0.3億USドル |
平均評価★★★★★74(私の評価↓は含まず)
|
『人生スイッチ』予告動画
ネタバレ感想『人生スイッチ』解説や評価レビュー
この先はネタバレありの感想考察です。他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。
『人生スイッチ』は、6編の短編オムニバス形式のアルゼンチン映画です。主人公たちのたった1つの選択により、人生全体に影響を与えるくらいの大事になっていく様子を描いた、ブラックユーモアのコメディ映画です。
この映画のおすすめ、6つのポイント
- 些細な選択による悲惨な結末
- 終わりのない復讐がテーマ
- ブラックユーモア
- 社会風刺的
- 直情的やりとりが面白い
- 結果が読めない展開

少し残念?つっこみどころ、4つのポイント
- 物語につながりがない
- 感情移入しにくい
- 下ネタが多い
- オチがストレートすぎる
『人生スイッチ』ネタバレ感想の総括
原題や英題は「野生的な物語」「夢のような話」という意味なので、邦題の『人生スイッチ』とはかなり違いますが、全て見おわった後にはこの邦題はマッチしてる気がします。ただ、原題の方がより人間の欲望を表してて、制作陣の意図がよくわかります。
短編オムニバス6編ですが、登場人物もストーリーも重複する部分はありません。自動車や刑務所や爆発など単語レベルでかぶる箇所はありますが、内容的には6編が完全に独立しています。だから最終章で串刺しの大オチは期待できません。
個人的には、1話め「おかえし」で飛行機が向かう先に意表をつかれたので好みです。3話目「エンスト」は下品すぎて好きではないけど、予想を超えるほどのハチャメチャな展開になったので印象的でした。
1話目「おかえし」ネタバレ感想
原題は「Pasternak」で「パステルナーク」という人名です。主人公は女性モデルのイザベルで、搭乗手続きではマイレージ登録ができなかったけど笑顔で対応して好印象ではじまります。後から考えるとマイレージ分を飛ばないので、たまらなくて当然なのかもしれません。
イザベルは機内で荷物入れを手伝ってくれた隣の男性サルガドと話すうちに、元カレのパステルナークの作曲をけなした音楽評論家だとわかります。それだけでも偶然にしてはめずらしいのですが、サルガドの前の席の女性も、小学校教師時代にパステルナークをよく注意してたことが判明します。
結局、その飛行機の乗客は全員パステルナークの知り合いで、彼に不快な思いをさせた人ばかりです。みんな日付変更不可な航空券が送られてきたようです。そしてパステルナーク自身はその飛行機の客室乗務員CAなのですが、操縦席をハイジャックします。
ここまでの展開でご都合主義の連続ですが、この1話目でこの映画全体がブラックコメディであるということを宣言して、ラストのオチへ向かうためには細かいことは気にするなと振れ幅を提示してるのだと感じました。
やがて人の良さそうなイザベルが、パステルナークにどんな仕打ちをしたのかも明かされます。なんと彼女が浮気した相手も後ろの席にいたのです。そしてパステルナークの精神科医が操縦席に話しかけ、馬鹿なことはやめるようさとします。
そして精神科医は「すべてパステルナークの両親が求めすぎた」のだと言って、彼の両親の責任にします。そんな飛行機が遠くに飛んでる場所で、プールサイドでくつろいでる老夫婦がいます。ラストは、この老夫婦のもとに飛行機が突っ込んでいきます。
説明はなかったけど、おそらくこの老夫婦がパステルナークの両親なのでしょう。ラストのカットが印象的すぎて頭から離れなくなります。パステルナークは彼を不幸に感じさせた人々と共に心中したのです。途中まではありがち展開ですが、結末には驚きました。
パステルナークが長い人生の中で感じてきた個人的な「怒り」の復讐物語です。1話目がアバンタイトルで、野生動物たちの映像が流れます。これは原題からの連想だと思いますが、今回の6つの物語は野生動物的だという暗喩(メタファー)だと感じさせます。
2話目「おもてなし」ネタバレ感想
原題は「Las ratas」で「ネズミ」のことです。中年男性で口の悪い客クエンカがカフェに入ってくると、ウェイトレスはすぐに、父を借金自殺させ母を口説いた悪どい高利貸しだと気づきます。それを聞いた女店主で料理人のコシネラは、猫いらず(ネズミの殺傷剤)を料理に入れようと言い出します。
ウェイトレスはさすがにそれは躊躇しますが、結局は猫いらず入りのポテトフライを出してしまいます。しかしクエンカはいくら食べても変化がありません。彼は政治家に立候補するくらい出世しています。
その強運ぶりで猫いらずの部分を避けて食べたのかもしれません。または毒をもって毒を制したのか、毒すら効かない体質でここまで登りつめたのかもしれません。そんな時、彼の息子もカフェへ入ってきて、ジュースを注文します。
あわてたウェイトレスは温めなおすという口実で料理を下げようとしますが、クエンカにさえぎられてしまい、一口食べた息子はすぐに具合が悪くなります。毒のきかないクエンカに対して腹を立てた料理人おばちゃんのコシネラは、彼をナイフでめった刺しにして警察に逮捕されます。
コシネラは刑務所に入っていた経験もあり、そこでの暮らしも悪くないと言っていたので戻りたかったのかもしれません。結局、ウェイトレスは一時的に親の敵への復讐を考えますが、その息子まで殺してしまうと、被害者だった自分が受けた以上の罪を犯してしまうことになるので躊躇したのでしょう。
3話目「エンスト」ネタバレ感想
原題は「El más fuerte」で「どんどん激しく」です。邦題は意訳ですが本来は「パンク」が正しいです。新車を運転する中年男ディエゴは、田舎道でのろのろと追い越しのじゃまする前の車にパッシングして、追い越しざまに罵倒します。しかし橋の手前でパンクします。
追いついてきたオンボロ車のマリオは、バックで車をぶつけてきて、新車のフロントガラスの虫をつぶしたり、割ったり、ワイパー引きちぎったり、ボンネットの上で脱糞や小便までして、車から出てこないディエゴを罵倒して去ろうとします。
警察に電話がつながらず、怒りを抑えきれないディエゴは田舎車を押して川ぞいに落としてしまいます。その間にタイヤ交換してネジをしめて逃走しようとしますが、マリオが道路へ出てきたので、わざわざ引き返してひき殺そうとします。これが運命の分かれ道でしたね。
テキトーにしめたネジがはずれて、ディエゴの新車も川沿いに落ちて、2人は格闘しあって、マリオがガソリンに火をつけて逃げようとしたところを、ディエゴがつかまえて、結局2人とも焼死体として発見されます。ゲイカップルの心中として処理されます。
この物語では、2人ともが「怒り」をぶつけあって、どちらかを殺すまで引き下がらない状態になっていき、結末は両方とも死んでしまいます。事実を知る2人以外の世間的には「仲の良いゲイカップルが心中」したことになってしまうのが皮肉です。下品ネタ満載で、2人とも恐いほどやりすぎ感あります。
4話目「ヒーローになるために」ネタバレ感想
原題は「Bombita」で「爆弾職人/小さな爆弾」です。ビル爆破職人のシモンは、娘の誕生ケーキ受取中に停めた車をレッカー移動させられ、罰金払って苦情を伝えてる間に、誕生会は終わってしまいます。それがきっかけで妻から離婚をつきつけられます。
翌日シモンは「駐車禁止地域ではなかったのにレッカー移動させられた」と抗議しますが取り入ってもらえず、怒りで窓口のガラスをたたき割ってしまい逮捕されます。その様子が新聞にも掲載され、仕事はクビになり、子供の親権もとられてしまいます。
再就職活動中にもレッカー移動されて、ついにシモンは怒りでキレます。わざと車をレッカー移動させて、爆弾職人の才能を生かして、罰金所の駐車場内で他には危害を加えない範囲で自分の車を爆発させました。
シモンは逮捕されますが、同じように駐車違反ではない場所でレッカー移動させられた人たちが賛同してくれ、しかもレッカー業者の不正疑惑なども見つかり、シモンは一躍ヒーロー扱いされます。そして離婚もなしになり、妻と娘が父の誕生日に刑務所内までケーキを持ってきてくれます。
4話目にしてはじめて、本人が死なずに復讐が成功します。これは貧乏人が社会システムに立ち向かって勝利する姿を描いたのでしょう。
5話目「愚息」ネタバレ感想
原題は「La propuesta」で「提案」です。富裕層の息子サンティアゴは飲酒運転中に妊婦をひき逃げして帰り、母子とも死亡します。父マウリシオは使用人ホセに、50万ドルで息子の身代わりになることを提案します。弁護士も引き込むことに成功します。
やがて検察官がやってきて、車のルームミラーの位置でホセが犯人ではないとバレますが、弁護士が大金で買収します。しかし弁護士が欲を出して全員の提示金額が増えてきたため、マウリシオはキレて買収はなしにして息子を出頭させようとします。
すると弁護士も検察官も使用人ホセも元の金額で了承して、無事にホセが出頭することになります。マスコミや野次馬が群がる中へ、検察に連れられて出ていったホセは、妻をひき逃げされた夫により、殴られて刺殺?されてしまいます。
一番地味な話ですが、コメディ要素は一番だと思います。しかし妻を殺された立場からすると、死んだ者のことは一切考えずに、単に金額の交渉だけしてた3者の存在は全く笑えません。事故した当事者サンティアゴだけが、そのことを理解していました。
ラストは、貧乏人がお金のために命をはることになったわけですが、ここでの風刺的な意図がわかりづらいです。結局損するのは貧乏人だということでしょうか。金持ちは人(妊婦や使用人)の命すら金で解決するということの皮肉でしょうか。
使用人ホセが殴られる前に「ハンドル握った殺人鬼はごめんだ」と罵倒されますが、これは2話目のことを言ってるのかなと思いました。
6話目「HAPPY WEDDING」ネタバレ感想
原題は「Hasta que la muerte nos separe」で「死が二人を分かつまで」です。花嫁ロミーナと花婿アリエルの結婚式が盛大に行われます。そこでユダヤ人の金持ちのアリエルが、元カノを招待してることを知り、ロミーナは浮気を疑い悲しくなって式場を抜け出します。
屋上で泣いてると式場のコックが煙草を吸ってたので事情を話すと、同情してくれ浮気してしまいます。その現場をアリエルに発見されますが、花嫁ロミーナは開き直り、アリエルの財産目当てで離婚せず浮気しまくると宣言します。
式場に戻ったロミーナは浮気相手の女性と踊り、思いっきり鏡にぶつけて怪我させます。ロミーナは他にも大暴れして、披露宴の招待客たちは引きまくります。最後にはアリエルもシャンパンやケーキをやけ食いし、ロミーナに手を差し伸べて、ケーキ台に押し倒します。客たちは察して部屋を出ていきます。
結末はまさに「野性的」「動物的」で、いちおハッピーエンドです。4話目同様に死人もでません。しかし招待客やお互いの両親にとっては、とんでもない披露宴を見せられたので、普通の関係は続けられないと思います。
こんな感じで全く独立した6つのオムニバス・コメディですが、復讐は手加減ないし、オチは振り切っているため、結構楽しめます。ぜひ1度は観ることをおすすめしたいです!
他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。
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