『ラーゲリより愛を込めて』感想ネタバレ解説考察/結末は?ダモイの日とは?愛は叶うか?
第2次世界大戦後の1945年。シベリア強制収容所の日本人捕虜たちは、過酷な環境の中と強制労働で大勢が死亡。そんな中、日本帰還を信じ皆をはげました山本幡男だが、妻子との再会が絶望的になるが…。再会できる?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ラーゲリより愛を込めて |
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日本公開日 | 2022/12/9 [予告] 上映時間:133分 |
監督・キャスト | 瀬々敬久 |
配給/製作 (画像出典) | 東宝 |
日本興行収入 | 26.7億円 年間20位 |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 75(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 実話/歴史/時代/西部/戦争映画一覧 |
ネタバレ感想『ラーゲリより愛を込めて』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は?監督の最近作は?
映画『ラーゲリより愛を込めて』の原作は、辺見じゅんのノンフィクション『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(1989年)。実在した山本幡男の実話ベースの物語です。
瀬々敬久監督の最近作は『とんび』『護られなかった者たちへ』『明日の食卓』『糸』等。
ラーゲリの意味は?ソ連の捕虜になった理由は?
1945年、第二次世界大戦で日本は広島に原爆を落とされ敗戦濃厚に。満州国のハルビンも、日ソ中立条約を破棄したソ連の空襲で破壊。家族と過ごしてた下級軍人の山本幡男/はたお(二宮和也)は、妻と4人の子を逃したが自分は捕虜に。
ソ連の収容所(ラーゲリ)に送られる列車の中で、山本は英語の歌「いとしのクレメンタイン」を歌い仲間に疎まれるが、実という若者はハーモニカで合わせます。山本は、シベリアのスペルドロフスク強制収容所で通訳に選ばれます。
収容所/ラーゲリでは、日本軍の上下関係が維持されてるため将校達が楽して支配してます。ロシア語を話せる山本はスパイと疑われ、大声で管理する相沢(桐谷健太)に殴られるが「一等兵ではなく山本です」と屈服せず目をつけられます。
冬は雪に覆われた過酷な環境下での重労働で、1日の食事がパン一切れなので大勢が死亡。山本に興味を持って近づいた松田研三(松坂桃李)は、相沢の「生き残りたかったら、人間の心を捨てろ」の一言で、本来の「卑怯者」に戻ります。
以上が序盤のあらすじです。戦争で捕虜になったのか思ったが、空襲で負傷して動けなくなったところを占領ソ連軍に連行されたようですね(映画では)。がれき崩れと動けなくなったシーンは重要なのに安っぽかったのが残念。
シベリア収容所での日本将校の特権ぶりは不快でした。日本へ戻ってからのリベンジ=仕返しを恐れなかったのでしょうか。軍隊では上下関係が身にしみついてるから誰も逆らわないのでしょうね。それを利用したソ連も賢い。
中立条約を破棄して終戦から何年もの間、捕虜を強制労働し続けたソ連は悪魔の所業ですが、そもそも真珠湾を奇襲攻撃したり先に他国に侵略したのは日本なので自業自得なんでしょうか。日本政府の外交対応の遅さは昔も今も同じですね。
ダモイの意味は?山本の再収容の理由は?
仲間の遺体を埋葬する作業中、山本は実たちに「ダモイの日の希望」を語ります。ダモイとは帰国の意味です。しかし現実と夢とのギャップで発狂し逃亡をはかった実は射殺されます。山本たちは、実のハーモニカで弔いを。
ソ連兵はその弔いを解散させるが、山本だけが最後まで抵抗し営倉罰に。松田は山本から離れます。やがてダモイの日が訪れ、船までの鉄道移動中、山本、松田、相沢らは戦犯としてハバロフスク収容所で再び強制労働の日々となります。
山本はロシア文学の先輩の原(安田顕)と再会するが、傷だらけで心も閉ざしてます。そこでは元将校が共産主義者やしいたげられた者達が元将校をリンチしてます。前施設でいばってた相沢も制裁を受けて肩身せまく過ごします。
山本の再収容は、ソ連兵に取り入りたい原の告げ口のせいと判明。漁中に捕まったという新谷は、少ない食料をクロと名付けた犬に与えます。新谷は読み書きや俳句や「記憶した内容は奪われない」という事を山本から教わります。
以上が中盤のあらすじです。シベリアの強制収容所での過酷さが描かれてますが、実際はもっと悲惨な状態だったと思います。そして、ダモイの日(帰国)を迎えたのに、再度地獄行きにされた時は観てるだけで心折れそうでした。
しかも信頼する先輩のウソ密告により人生を狂わされた山本が、闇落ちしなかったのは不思議なくらい。原は、山本の家族全員に対し責任を感じて支え続けてほしいほど。相沢が裁かれたのは自業自得なので、かわいそうだがすっきりも。
若い新谷が戦地ではなく漁の最中に連行されたという事実には驚愕。仮にまたロシアや中国と険悪になった場合、戦争に行かなくても国内から拉致される可能性があると思うと恐怖です。食事与えた犬のクロ、文字を記憶、は後の伏線に。
労働放棄の結末は?山本の妻の近況は?
ハバロフスク収容所の過酷な労働のあいまに山本たちは野球を楽しむが、ソ連兵に禁止されます。しかし、山本の情熱に心動かされた原が、ソ連上官にかけあいレジャー全般を許されます。柵を超えたボールは、クロがくわえて戻します。
やがて日本との手紙も許可され、山本も妻のモジミとやりとりできます。山本モジミ(北川景子)は苦労して帰国後、隠岐の島で魚を売りながら4人の子を育て、教師に復帰し生活を立て直しました。長男の顕一は大学へ進学。
妻を空襲で亡くしてた事実を知り自暴自棄の相沢は、ソ連兵に射殺されそうになるが山本に救われます。しかし山本は体調不良で倒れて入院。松田は卑怯者を返上し、食事や労働を放棄。相沢や同僚達も従い、数日後に山本の大病院検査が認められます。
以上が終盤にかけてのあらすじです。シベリア強制収容所(ラーゲリ)と日本とで、手紙のやりとりが出来てたのは初めて知りました。最後まで再会できなかった人も、お互いに家族の生死や状況を知れたのはまだ救いですね。
ただし、日本の家族に会うことだけを希望に生きてた人にとっては、死の報告は残酷で生きる気力をなくしそう。労働にも影響がでそうだけど、ソ連兵が検閲しなかったのはわずかながら良心ですね。
結末は?妻子と再会できるか?
山本は、のどのガンで声が出にくくなり余命わずかと判明。最後の力で遺書を残します。しかし活字はソ連兵に見つかるとスパイ容疑で没収されます。山本は遺書を書き終えると、家族にも会えず静かに息を引き取ります。
夫の死を知った妻は地面に屈して号泣。その後、日ソの国交が回復し、1956年には捕虜達も全員が帰国。ある日、山本モジミの家を原が訪ねて来ます。原は、山本幡男の遺書を奪われたが「記憶」した内容を口頭と文字で伝えました。
松田の後、新谷も訪れ、遺書の記憶を伝えます。新谷は、山本から教わった文字でも伝えます。最後に、相沢が訪れて、感謝の言葉を伝えられた妻・モジミは号泣。数十年後の現代、長男の顕一は孫娘の結婚式で、父・幡男にふれるスピーチを。
以上がラストまでのあらすじです。実話ベースとはいえ、家族と再会できなかった山本幡男の無念ははかり知れません。妻モジミと子どもたちの家へ届けられる遺書は、山本が「記憶は奪えない」と言った伏線回収になってます。
また、山本が新谷に文字を教えたことが遺書につながった点も涙させられました。妻のモジミと子どもたちが青い空を見上げて山本幡男に思いをはせるシーンでも涙。
原作小説『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』というタイトルでは、山本幡男が家族と再会できないことがネタバレされてるので、映画版タイトル『ラーゲリより愛を込めて』の方がいいですね。
映画『ラーゲリより愛を込めて』私の感想と評価
戦争映画と思ってたが、終戦直後から始まるシベリア強制収容所(ラーゲリ)での実態を描いた物語なので、今までにふれたことない題材で新鮮でした。戦場以外からも連行されたと知り衝撃でもあります。
一方、強制労働の様子や収容所での生活については、主人公とほんの数人の周囲しか見せられないため、狭いハリボテ感があり残念。予算の少ない邦画実写全体の問題点ですが、もっと工夫して改善しないと世界で通用しないと思います。
二宮和也、桐谷健太、松坂桃李、安田顕、北川景子を含めた俳優女優陣の演技は素晴らしくて、映画レベルをかなり上げてます。それだけに中盤の停滞感はもったいないのですが、昨今のロシア情勢も感じながら一度は観ておきたい映画です!
私の評価 68/100(60が平均)
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