映画『天間荘の三姉妹』感想ネタバレ解説考察/結末は?天間荘の真相と役割は?現世へ戻れる?
とある街「三ツ瀬」の老舗旅館「天間荘」へ、謎の女性イズコが少女を連れて来ます。たまえは、若女将のぞみと妹かなえの腹違いの妹だそうで、現世か天界を選ぶまで滞在することになるが…。生か死か?本当の姉妹?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 天間荘の三姉妹 |
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日本公開日 | 2022/10/28 [予告] 上映時間:150分 |
監督・キャスト | 北村龍平[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東映 |
日本興行収入 | 0.4億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 74(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | マンガ実写化一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 小川たまえ(のん)裏表のない天真爛漫な少女。のぞみ、かなえは腹違いの姉
- 天間恵子(寺島しのぶ)天間荘の大女将。のぞみ、かなえの母親
- 財前玲子(三田佳子)天間荘の長期滞在客
- 天間かなえ(門脇麦)三ツ瀬の天間荘の三姉妹の次女。ドルフィントレーナー
- 天間のぞみ(大島優子)三ツ瀬の天間荘の三姉妹の長女。若女将
- 小川清志(永瀬正敏)天間荘の三姉妹の父親。消息不明
- 魚堂一馬(高良健吾)魚屋。かなえの恋人
- 芦沢優那(山谷花純)天間荘の新規客
- イズコ(柴咲コウ)生死をさまよう人間に、現世か来世の選択をさせる役割
- 魚堂源一(柳葉敏郎)一馬の父親。ベテランの魚屋
- 宝来武(中村雅俊)天間荘の名コック
ネタバレ感想『天間荘の三姉妹』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は漫画?監督やキャストについて
映画『天間荘の三姉妹』の原作は、髙橋ツトム著の漫画『スカイハイ』のスピンオフ作品『天間荘の三姉妹 スカイハイ』(2013-2014連載)です。
監督の北村龍平は、TVドラマ『スカイハイ』と劇場版も手がけました。最近の映画では実写版『ルパン三世』(2014)や『ドアマン』(2020)等を監督。
主演のんは最近『Ribbon』『さかなのこ』等に出演。『この世界の片隅に』で主演声優もつとめました。門脇麦は『あのこは貴族』『あなたの番です』等、大島優子は『女子高生に殺されたい』『七人の秘書 THE MOVIE』等に最近出演。
天間荘の三姉妹とは?たまえが来た理由は?
イズコ(柴咲コウ)はタクシーで、現世で臨死状態になった小川たまえ(のん)を、三ツ瀬の老舗旅館「天間荘」へ連れて来ます。若女将の天間のぞみ(大島優子)と次女の天間かなえ(門脇麦)が姉だと聞かされ、たまえは驚きます。
イズコはたまえに「ここで魂を休めて、現世へ戻るか天界で生まれ変わるか考えて」と。旅館の大女将(寺島しのぶ)は、家を出た夫の他の女性との娘たまえに厳しく、働かせ始めます。たまえは長期滞在の財前(三田佳子)担当に。
財前に心こもらぬ薄っぺらさを指摘された若女将のぞみは、たまえと一緒に財前を観光案内。しだいに、たまえに弱音を話してサングラスも取ってみせた財前は、たまえと一緒に「走馬灯」で孤独に至った人生を振り返ります。
以上が序盤のあらすじ。いきなり臨死中のたまえが来たり、それを聞いても驚かないどころか妹を迎える準備までしてる天間荘の人々など、説明なしで異様な世界に連れて行かれるのはわるくない演出ですね。先を期待したくなります。
キャストが豪華なのをウリにしてますが、演技レベルも高くてその点は安心して観られます。ただし「毒」がなく「根はいい人ばかり」なので大事件が起こる可能性は低く、しかも誰も死なない?と感じられるためやや退屈になってきます。
そんな中、キャラがかぶったとはいえ、大女将の寺島しのぶと客の三田佳子の毒舌は悪意はないとはいえ、いい緊張感を演出できてました。この2人がいないと、映画館が居眠りの場になってたかも(笑)
三田佳子が、大島優子やのんに「心こもってない。薄っぺらい。口からだけの台詞」みたいに指摘したのは、物語のキャラに対してだけでなく、かつての大女優が若手を教育したようにも感じます。できてそうな門脇麦や高良健吾には言わないし。
最初の選択は誰が?かなえは不死?
新たな客は、裕福な家庭だがSNSのイラストで盗作を疑われ学校でも孤立し、飛び降り自殺で昏睡状態になった優那(山谷花純)。攻撃的な言動で敵ばかり作る優那だが、たまえが友達になり心を開き始めます。
水族館でイルカトレーナーとして働く次女かなえは、魚屋の一馬(高良健吾)と恋愛中。「生まれ変わり」を決断した一馬は、一緒に行くと言ったかなえを置いて1人で「逝き」ました。落ち込むかなえに、たまえはトレーナー仕事を教わります。
また不安定になった優那は、たまえと一緒のかなえを刺すが死にません。現世で人に裏切られ続けた優那は1人で決断できないが、財前が一緒に行くからと付き添い、優那は「現世で生きる」ことを選択。心配する母親の前で目覚めます。
以上が中盤のあらすじ。不良少女風の優那が新たなトラブルメーカーとして旅館をかき回す展開は「ホテルもの作品」のあるあるだが、SNSでの盗作疑惑で自殺という流れは今風。にもかかわらずそこは深掘りせず、ただの不安定キャラなのはもったいないですね。
優那は、財前の若い頃とややかぶったキャラなので、もう少し現代的な「あきらめ感」を前面に出してもよかったかも。先に進めず長期滞在してた財前が自分の役割に気づくきっかけを与えたことが、優那の最大の存在意義なのでしょうね。
一馬の物語はあっさり語られましたが、高良健吾と柳葉敏郎の演技により厚みを感じました。かなえが寝てる間に一馬が逝ったのは、ラストでたまえが寝てる間に…の伏線とも感じられます。
天間荘の役割と真相は?タクシー運転手の正体は?
ドルフィントレーナーの訓練中、たまえはタクシードライバーの視線に気づき、変装した父親(永瀬正敏)だと見ぬきます。父はたまえの面倒を元妻と娘達に頼むため三ツ瀬に行った時、大震災と津波に巻き込まれ、子どもを救って絶命しました。
同じく大震災で一瞬にして命を奪われた、のぞみ、かなえ、大女将は、家を出た父を責めるが、一緒の場所で死んでたと知ると許してカメラマンとして採用。かなえは、トレーナーとして成長したたまえをイルカショーデビューさせることに。
かなえのハイレベルなイルカショーは大成功。しかし、たまえのショーは失敗しヤジがとぶと、大女将は「そろそろ、自分達が死んでることを受け入れる時」と皆に伝えて、その晩は三ツ瀬の住民みんなで最後の宴会を開くと決定。
大震災で一瞬にして亡くなった人々は死を受け入れられず、大女将の提案でイズコは現世と天界の間に「三ツ瀬」を作りました。充分に魂を休めた三ツ瀬の人々は宴会後、光の玉になり天界へ「逝き」ます。
以上が終盤のあらすじ。ついに「三ツ瀬」「天間荘」の役割が明らかに。東日本大震災で家族を亡くした方々への、心の救済の物語だったんですね。私は後で気づいたけど公式サイト等に「津波映像注意」と書かれてるので予想した人多いかも。
大震災や大津波では、大勢の人々が死を受け入れられず「三ツ瀬」のような場所で魂の休息が必要なのでしょう。ただ1点、たまえは姉妹に会うためだからわかるけど、財前や優那が三ツ瀬にまぎれこんだ理由は最後まで謎でした。
冒頭から存在感あったタクシー運転手が父親なのは予想どうり。それよりも、イズコがタクシーで連れてくる方が不思議でした。どこから連れてきてるのか?タクシーに乗らないと旅館に着けないのか、いろいろツッコミどころです。
水族館長の子どもやイルカのタクトは、現世でも生きてるのになぜか三ツ瀬にもいます。映画的なご都合主義にも思えるが、生死をさまよった後で現世で生還したという表現かもしれませんね。
結末は?たまえの選択は?生き続ける方法とは?
大女将、父、天間荘の三姉妹は最後の晩餐で、たまえが生存する限り記憶に生き続けると。彼らが天界へ旅立った後、目覚めたたまえは、三ツ瀬の門をくぐりイズコの「お生きなさい」の声で現世を選択。たまえの絵を描く優那と合流し記憶を戻します。
娘と孫と一緒の財前も、たまえの存在をデジャブのように感じます。現世では、父が救った子がトレーナーとして成長してました。イルカショーでデビューしたたまえは、今度こそイルカのタクトと一緒に素晴らしいショーを見せます。
たまえは、三ツ瀬で頼まれた伝言や記憶の中で生き続けることをつたえます。魚屋の一馬の父(柳葉敏郎)や震災犠牲者の家族は涙を流しながら、たまえのハイレベルなイルカショーを楽しみます。
以上が結末ラストまでのあらすじ。最後の晩餐後、たまえは現世で目覚めるのかと思ったが、イズコとの別れと門をくぐるシーンはカットできないんですね(笑)
三ツ瀬でのトレーナー訓練が現世で役立つのはいい展開。タクトは現世でたまえと再会したいから、三ツ瀬では反発したのかも?三ツ瀬から預かった伝言をたまえが伝えた時、誰も気味悪がらないのは不思議ですがファンタジーなのでありですね。
映画『天間荘の三姉妹』私の感想と評価
取り返しのつかない大きな喪失を悲壮感なく明るく語る手法には好感が持てました。豪華キャストの演技レベルは高く、ストーリー構成も見事で終盤のあっと思わせる仕掛けには涙。三ツ瀬の謎も予想外で驚かされました。
一方、シンプルなストーリーのわりに上映時間が長すぎるとは感じました。2時間半なら、もう1つは劇的な事件がほしいかも。「いい人ばかり」の「い〜い話」なので視聴後感は良いが、記憶には残りづらく口コミでも広がりにくそうなのは残念。
「記憶にあるかぎり死なない」というメッセージは多くの映画で聞かされたが、本作『天間荘の三姉妹』での語り方は独特なので多くの人に観てほしいです。のん、門脇麦、大島優子、寺島しのぶの演技も本当によかったです!
私の評価 63/100(60が平均)
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