『大怪獣のあとしまつ』感想ネタバレ解説考察/結末は?真の使命とは?パクリ疑惑は?
人類の脅威の巨大怪獣が突然死に、その死体処理を首相直轄の特務隊員・帯刀アラタが任されます。環境大臣秘書、総理秘書官、爆破のプロ、総理大臣もからむ大プロジェクトの行方と結末は?アラタの正体は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 大怪獣のあとしまつ |
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日本公開日 | 2022/2/4 [予告] 上映時間:115分 |
監督・キャスト | 三木聡[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 松竹、東映/東映東京撮影所 |
日本興行収入 | 4.8億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 48(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | SF/ファンタジー映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 雨音ユキノ/あまね(土屋太鳳)環境大臣秘書官。アラタは元カレ。元特務隊員
- ブルース/青島涼(オダギリジョー)ユキノの兄。元特務隊員で、爆破のプロ
- 雨音正彦(濱田岳)総理秘書官。ユキノの夫。元特務隊員
- 帯刀アラタ/おびなた(山田涼介)政府直轄の特務隊員。大怪獣のあとしまつ責任者。雨音は元カノ
- 真砂千/まさごせん(菊地凛子)国防軍大佐
- 西大立目完/にしおおたちめ かん(西田敏行)内閣総理大臣
- 蓮佛紗百合/れんぶつさゆり(ふせえり)環境大臣
- 五百蔵睦道/いおろいぼくどう(岩松了)国防大臣
- 杉原公人/すぎはらひろと(六角精児)官房長官
- 敷島征一郎/しきしま(眞島秀和)特務隊の隊長
- 椚山猫/くぬぎやまねこ(SUMIRE)特務隊スナイパー
- 中島隼/なかじまはやと(田中要次)国防軍統合幕僚長
- 八見雲登/やみくものぼる(松重豊)大怪獣の処理方法の売りこみに来る町工場社長
- 武庫川電気/むこがわでんき(染谷将太)大怪獣のあとしまつを配信する迷惑系動画クリエイター
- サヨコ(二階堂ふみ)ブルース行きつけの食堂で働く女性
ネタバレ感想『大怪獣のあとしまつ』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作とパクリ疑惑は?監督とキャスト
映画『大怪獣のあとしまつ』は、三木聡の脚本によるオリジナルストーリーです。『シンゴジラ』や人気漫画『怪獣8号』との類似性やパクリ疑惑もありましたが、『怪獣8号』連載よりも映画制作開始の方が先のようです。
三木聡監督は、テレビドラマ『時効警察』シリーズ等で脚本・演出をつとめてます。最近の映画では『インスタント沼』(2009)、『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(2018)等を監督・脚本。
主人公を演じる山田涼介は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『鋼の錬金術師(実写映画)』等で主演。
土屋太鳳は『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『累 かさね』で主演、最近は『鳩の撃退法』にも出演。他に、濱田岳、オダギリジョー、西田敏行、菊地凛子、染谷将太、二階堂ふみ等の個性派俳優が共演。
大怪獣が死体になった経緯は?
東京エリアに現れた大怪獣は、国防軍の通常攻撃では傷一つつけることができず多数の犠牲者が出ました。しかし突然の空からの光に包まれた怪獣は、次の瞬間には横たわり死んでいることが判明。衛星カメラでも光の正体はわからず。
日本の国防軍には心当たりがなく、米軍も核兵器の使用を否定しています。そもそも放射能も発生してないので人類の兵器である可能性は低いです。結局この光の真相は、この映画のラストでヒントが与えられるのみ(後述します)です。
大怪獣のあとしまつは誰が?シンゴジラのまねは成功?
内閣総理大臣の西大立目完/にしおおたちめかん(西田敏行)は思考力ゼロの首相で、声の大きな大臣達の言いなりです。大怪獣のあとしまつをウマみのない仕事と判断した閣僚は、押しつけあいます。専門重視の弊害セクショナリズムを表現。
結局、首相直轄の特務隊が担当することになり、その責任者として帯刀アラタ/おびなた(山田涼介)が任命されます。その元カノで今でもアラタを愛する雨音ユキノ/あまね(土屋太鳳)が秘書官を務める環境省がサポートに。
調査の結果、大怪獣の死体は有害ではないと判明すると、それまで日本国政府に処理を押しつけてた北朝鮮?韓国?やアメリカ等も怪獣を求めます。ユキノの夫で総理秘書官の雨音正彦(濱田岳)は、愛人の研究員から情報を得るが隠蔽。
同じ研究員からユキノは「怪獣は安全」の資料を受け取り、それをもとに首相が全国民に「安全宣言」を発令。怪獣上でアピールする環境大臣は傷跡にダイブして血まみれに。怪獣の死体は「観光資源か標本」を目指して「希望」と命名されます。
以上が序盤のネタバレあらすじ。予算かけた大作のつもりで観に行ったのですが、かなり陳腐なコント映画だったのはがっかり。最初からそのつもりなら、それなりに楽しめそうですが。愛をキスだけで表現するのも陳腐。
言葉が軽くて知性レベルも低い今回の押しつけあいは、大成功させた『シンゴジラ』の足元にもおよんでません。庵野秀明にはなれないと自覚した今回の脚本家がコメディを強調したのは、唯一いい判断だとは思いますが。
作戦は冷凍か放水か?失敗の原因とは?
腐敗隆起した大怪獣の死体から、くさいガスや血が飛び出す前に標本化するため「液化炭酸ガスによる冷凍作戦」が実行されます。怪獣処理の専門家を自称する国防軍大佐の真砂千/まさごせん(菊池凛子)が、他人の話は聞かず強引に指揮。
しかし日光でとけて失敗し「ウンコかゲロのような臭い」が発せられます。政府は「銀杏/ギンナンのにおい」と発表。特務隊には首相秘書官の雨音正彦が派遣され。町工場社長の八見雲登/やみくものぼる(松重豊)のガス処理案も検討。
ユキノは「水洗トイレは汚物の臭いを消す」ことからヒントを得て、ダムの大量放水により怪獣を海に流して沈める作戦を立案。ダム爆破のために、ユキノの兄で元特務隊の爆破プロのブルース/本名 青島涼(オダギリジョー)が呼ばれます。
一度断るが結局ひき受けたブルースは、計算どおりダム爆破。しかし間違えた図面を雨音正彦が渡したため、二重構造目を爆破するため、ブルースが命がけで近づき爆破。大放水で怪獣は動いたが、体内に水が入ると重みで止まってしまいます。
以上が「冷凍作戦とダム爆破作戦」の概要です。菊地凛子、松重豊、オダギリジョーの変人キャラぶりは楽しくて、中盤の見どころでした。ただ、作戦実行時の映像はもっとダイナミックに見せてほしかったです。そこは予算をかけてでも。
雨音正彦が、間違えたダム図面を渡した理由は分かりませんでした。立案したユキノや、恋敵の帯刀アラタへの嫉妬だとしたら、つまらない話だし、ブルースは死にかけたのでしゃれになりません。
また、ダムは大放水できると思うのですが、なぜ爆破したのか不明でした。聞きのがしたかもしれません。最大のツッコミどころは、ブルースが火をつけたダイナマイトを投げたこと。ダイナマイトって振動とかでも爆発する場合があるのでは?
大怪獣からの有害成分とは?ラストの作戦は?
ダム爆破後、避難命令を無視した迷惑系動画クリエイター(YouTuber?)武庫川電気/むこがわでんき(染谷将太)がキノコまみれで発見されます。怪獣に含まれる「菌糸」が原因だが、雨音正彦は国防軍を指揮してミサイル攻撃を決断。
一方、アラタは「ガスを成層圏外に放出する八見雲案」を正確に実行するため、ブルース仕込みの爆薬ランチャーで怪獣に穴を開ける作戦を計画。ユキノは辞表を出してまで「怪獣のキノコ」をネットでリーク(1本違うキノコはモザイクかけたかなw)するが、雨音正彦は動じません。
アラタは怪獣に降りて、2本の爆破を成功して上昇気流を発生させ、残りは頂上の1本のみ。雨音正彦は「アラタは心配ない」と、何か知ってる風でミサイル発射。1発目は特務隊スナイパーの椚山猫/くぬぎやまねこが撃ち落とします。
アラタが3本目を撃ち込むと上昇気流が活性化されたが、そこへミサイルが着弾し、アラタは怪獣から落下。即死の高さです。雨音ユキノが泣きながら走り寄るが…。
迷惑系ユーチューバーが映画に登場する機会が増えてますね。今回の染谷将太はカメオ出演に近いですが、菊地凛子と夫婦セットでの出演。キノコの下ネタはしつこい。雨音正彦の動機はここでも不明で、ミサイル攻撃強行の意図がよく分かりません。ミサイルを人間が迎撃したのもツッコミどころ…
町工場社長の八見雲のあやしい案が採用されたのは『シンゴジラ』と似てますね。日本の叡智は大学教授や研究者ではなく、日々改善を重ねてる中小企業の方が上という結論。「下々の意見もバカにするな」という教訓でしょうか。
大怪獣の結末は?帯刀アラタの正体は?
3年前、帯刀アラタは特務隊任務中に謎の光に包まれてから2年間行方不明となりました。その時の事故で片足をなくした雨音正彦は義足になり、恋人アラタを待ちきれなかったユキノは、リハビリする正彦への同情もあり?結婚。
2年後にアラタが戻ると、正彦はユキノに疑心暗鬼となり夫婦仲は冷めたようです。アラタは2年間の記憶がないようです。一方、犬神博士に「神の光」を分析させてた正彦は「光の中の影」を見て、その正体を推測できました。
大怪獣から落下しても生きてた帯刀アラタは、スマホをかかげて「デウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)と唱えると巨大化(ウルトラマン風に)。そして大怪獣の死体を持ち上げて宇宙へ。ユキノは「ご武運を」と見送ります。
エンドロール後、首相の西大立目は続編『第2弾 大怪獣メラ』を発表。たぶんジョークですが。
中盤くらいから「選ばれし者」「光の中の影」等のワードでラストを予測できましたが、まさかの幕引きでぼう然。最初から巨大化して運べよとは思ったが、記憶もどったのは落下した後なんでしょうね。それにしても「今までの展開は全て無駄」を思わせる脚本は雑すぎ。
帯刀アラタを責任者にした雨音正彦は、最初からアラタの正体を知ってた可能性も考えたけど、犬神博士の分析結果に本気で驚いてた風だったので、やはり途中で気づいたのでしょう。冒頭の首相デスクの「デウス・エクス・マキナ」メモも意味不明の伏線。
映画『大怪獣のあとしまつ』私の感想と評価と続編
アメリカ映画どころか韓国の映画やドラマにさえ追い抜かされた邦画実写ですが、やっとこんな大作映画を公開♪と胸高鳴ると同時に不安でいっぱいでした。怪獣の表現はゴジラで慣れてるだけあり、期待を裏切りませんでした。動きませんが。
俳優女優では、土屋太鳳の好演のおかげで作品を最後まで観る気になれました。濱田岳、山田涼介、オダギリジョー、菊地凛子も役割は充分に果たせてました。問題なのは閣僚コント。内閣総辞職するべきレベル。もちろん俳優に罪はありません。
今回の失敗はほぼ、ひどい脚本のせいでしょうね。「怪獣の死体のしまつ」というアイデアは最高なのに生かされてなくて残念。ただし、監督や脚本家だけで作品は作れないので、OKを出した制作側・松竹・東映の連帯責任ですよね。
最後のウルトラマン?も出し方しだいでは、もっと肯定できたと思います。例えば庵野秀明が同じラストにしたら、きっともっと劇的にして「今までの作業も必要だったのだ」という展開に見せてくれたのではないでしょうか。空想ですが。
または、続編として山田涼介主演のウルトラマン?を制作したなら、最高の開きなおり作品として応援できるかも(まず観るかですが)。邦画実写は失敗をおそれて小規模になりつつあるのを考えると、本作の挑戦ぶりは称賛したいです。日本映画のため、皆も観ずに批判派になるのはやめましょうね!
私の評価 58/100(60が平均)
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