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映画『湯を沸かすほどの熱い愛』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?タイトル意味?

湯を沸かすほどの熱い愛 映画/ドラマ

日本アカデミー賞キネマ旬報など受賞。夫が家出し、強く明るく1人娘を育てる双葉は余命宣告をうけます。1つずつ問題解決し休業中の銭湯も再開させるのだが...(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題湯を沸かすほどの熱い愛
日本公開日2016/10/29 [予告] 上映時間:125分
監督・キャスト中野量太
キャスト
出演者
宮沢りえ、杉咲花、伊東蒼、オダギリジョー、松坂桃李
映倫区分日本:G(年齢制限なし)
配給/製作
(画像出典)
クロックワークス/パイプライン
日本興行収入
平均評価
平均:100換算
80私の評価は含まず)
シリーズ
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ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧

ネタバレ感想『湯を沸かすほどの熱い愛』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレ感想や解説

宮沢りえとオダギリジョーが出演しているわりには、上映中もあまり話題を聞かなかったし、実際に興行収入は公表できないくらい低かったようですが、評論家や映画愛好家の間では評価も高かったようです。見ると高評価の理由がわかります。脚本の練りこみ具合は最近の映画の中でもトップレベルだと思うので、もっと多くの人に見てほしい作品です。

個人的には日本アカデミー賞で女優賞2つを取った作品として認識したのですが、タイトルを聞くとドロドロのラブストーリーを想像してしまい、全く興味を持てませんでした。映画を見終わった今では、このタイトルのセンスは素晴らしいと思いますが、同時に誤解をまねく損したタイトルだとも感じます。

また、TVでの番宣や映画宣伝を見てないのでわかりませんが、余命宣告された母親を前面に宣伝してしまうと、よくある闘病ものだと感じて敬遠されるかもしれません。これは同時期に上映されてあまり話題にならなかった、宮崎あおい主演の『バースデーカード』も同様です。低品質な闘病や病院ものを作りすぎたツケだと思います。

メインキャラ(役者名で杉咲花、伊藤蒼、宮沢りえ、オダギリジョー、松坂桃李、まゆ(探偵の娘の役名))の多くが実の母親と子どもの頃に別れていて、劇中で出てくる母親役はほぼ双葉を演じる宮沢りえ、ただ1人だけです。父親はほぼ存在感ないので、女性3人によるロードムービーのようにも観ることが出来ます。

ストーリーはシンプルに感じるけど、つらく笑えて涙も流し納得できず悲しく驚かされる、という風に心を動かされる展開が続くため、見終わるとぐったりしますが、心地よい疲れです。宮沢りえ演じる双葉の「逃げちゃダメ」やラストの倫理違反など、人によっては受付けない部分もありますが、多くの人に届いてほしい映画です。

おすすめ8ポイント

少し残念6ポイント

湯を沸かすほどの熱い愛 映画/ドラマ

『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレあらすじや感想

幸野双葉(宮沢りえ)は、1年前に夫の一浩(オダギリジョー)が家出してから銭湯「幸の湯」を休業中にしています。双葉はパン屋のパートで働きながら、1人娘の安澄/あずみ(杉咲花)を育てています。内気な高校生の安澄は、学校で女子生徒数人にいじめられ、全身に絵の具を塗られて、双葉が学校へ呼び出されます。

学校の教師が聞いても安澄は「自分でやった」と言います。双葉「その中で何色が一番好き?私は情熱の赤よ」安澄「水色」とずれた会話をしますが、これは後の伏線になってきます。それにしてもこの時の双葉と教師のズレた対応には全く納得できません。モンスターペアレントになれとは言わないけど、今度のことも考えるともっといい対処法がある気はします。

学校の教師が安澄の家庭環境に問題があると言わんばかりの尋問をするのも、いやな気分にします。『聲の形』や『きみはいい子』のひどい教師を思い出します。双葉が何も解決策を実行してないのに、帰りに「明日も学校へ行こうね」と安澄に強要する姿も、ただの鬼ママに思えてしまいます。

双葉は翌日勤務中に倒れて病院で検査を受けます。夜遅くまで、安澄の絵の具のついた学生服を洗濯してアイロンがけしてたので寝不足かと思いきや、既にステージ4の末期がんで2〜3ヶ月の余命だと判明します。双葉はショックで幸の湯の浴槽の中で泣きますが、安澄からの電話で目を覚まし、生きてる間にやりぬくことを決意します。

まず失踪した夫の一浩を探偵の滝本(駿河太郎)に見つけてもらいます。家では毎年4月25日に送られてくる「高足ガニ」を食べながら、毎年恒例のお礼の手紙を「子どもが書く方が形式張らず喜ばれるから」という理由で安澄に書くように言います。すると安澄は「もう子どもじゃない」といいます。

すると双葉は水色の袋を安澄にプレゼントします。中身は水色の下着です。安澄「まだいいよ」双葉「大事な時に必要となるから持っといて」。映画冒頭で双葉は安澄のスポーツブラジャーを洗濯しながら「まだいいか」と言ってましたが、余命宣告されたから急いだのでしょう。安澄の好きな水色で「もう子どもじゃない」と言わせてからのプレゼントです。

双葉は夫の一浩の住んでるアパートを尋ねて行き、余命の話をします。安澄は口のきけない人が困ってる時に、手話を理解して助けてあげます。安澄が家へ帰ると、誕生日にしか食べない、しゃぶしゃぶの準備がされてて、家出してた父が、9歳の娘の片瀬鮎子(伊東蒼)を連れて戻ってきてます。安澄「へっ〜?」の気持ちはよくわかります。

しゃぶしゃぶの時は一切会話もなく、一浩「なんで、しゃ〜ぶしゃ〜ぶ」って言いたくなるのかな、にも誰も反応せず、安澄は一浩をにらみつけて早々にトイレに閉じこもります。一浩はトイレの安澄に、昔関係のあった女性とたまたま会って娘がいると言われたので、そちらへ行ったことを話します。安澄は「言い訳は何も聞こえなかった」とトレイを出ていきます。

双葉は残された余命で、家族を立て直していくつもりです。オダギリジョーのダメ男ぶりはよく見かけるので今回も違和感ありません。家出した理由が本当にゲスくて、相手にとっては思いやりだけど、双葉と安澄にとっては裏切りでしかないことを想像できないのが、まさにダメ男です。安澄もだけど鮎子もかなりかわいそうに感じます。

双葉は銭湯は必ず4人で運営していくことを皆に約束させます。鮎子は突然やってきた一浩を父親だと言われますが、漢字も読めず計算もできないので「あんな人」呼ばわりすると、安澄はかばいます。一浩は昔の友人に「双葉と安澄がどんな思いでいたか、わかってるのか?」、安澄にも「お母ちゃんがどんな辛かったか。何もなかった顔してるのがむかつく」と言われます。

双葉がふるえる手を治す注射のため、一浩は病院へ連れていき、医者にガンは心労が原因でしょうかと尋ね「様々な要因から」と言われ少し落ち込みます。安澄は高校で制服を隠されて、翌朝高校へ行きたくないと言うと、双葉は「逃げちゃダメ。今立ち向かわないとダメ」安澄「何もわかってない」双葉「わかってる」安澄「私はお母ちゃんとは違う」

双葉は落ち込みますが、しばらくすると安澄は体操着で登校します。そして教師が生徒たちに、ゆるく犯人を問うと、突然安澄は服を脱ぎはじめて、双葉にもらった水色の下着姿になります。教師も生徒らもかなり動揺します。安澄は気分が悪くなり保健室へ連れて行かれます。保健室へ安澄の制服が投げ込まれますが、犯人は逃げていきます。

双葉の言動は、いじめを受けてる安澄への対処法としてはかなり危険だと感じます。弱い子なら学校と親とにはさまれて自殺する可能性すらあります。それに制服を隠すなんて、かなり悪質ないじめなので、親と教師が本気で取り組む時期だと思うのに、無能な教師はともかく双葉でさえ戦時中のような精神論を掲げるだけなのは不快しか感じません

結果的には安澄が想像以上に強くて、教師のやる気ない犯人探しの成果も見ずに、自ら機転を効かせて制服を取り戻しますが、下着姿が写真や動画に撮影されてネット投稿されたりしたら、一生心のキズものになる可能性すらあるので危険な賭けだったと思います。女子生徒を教室で下着姿にした教師は、さすがにただではすまなかったでしょうね。

安澄が制服を来て家へ戻ると、心配して家の前でずっと待ってた双葉「がんばったんだ」安澄「お母ちゃんの遺伝子、ちょっとだけあった」。そして双葉は安澄を抱きしめます。そんな姿を見てた鮎子は、2人の行動に勇気をもらったのと、母親の愛情が恋しくなったことで、自分の誕生日に迎えに来ると約束した母を待つため、元のアパートへ1人で戻ります。

鮎子の行き先を気づかない一浩のダメ父ぶりはあきれるしかないです。双葉と安澄は迎えに行き、夜になってもアパートのドアの前で待つ鮎子を見つけます。もらしてた鮎子のパンツを双葉が脱がせて、車まで抱きかかえます。安澄は鮎子のパンツを、アパートのドアノブにかけて「鮎子ここにあり」と言います

この行動はさすがにヒキます。そうした安澄を演じる杉咲花にというより、監督・脚本の中野量太の感性を疑います。朝明るくなって、アパートの留守中の部屋のドアノブに子供用パンツがかけてあったら、警察沙汰になる可能性も高いと思います。あえてそうして、鮎子の母親を警察に探してもらおうという演出かとも思いましたが、映画内では語られません。

鮎子が戻った翌朝の食卓はしゃぶしゃぶです。鮎子「できればでよいのですが、この家にいたいです。でも、まだママのこと好きでいてもいいですか?」双葉「ばか、当たり前でしょう」と言い、4人で「しゃ〜ぶ、しゃ〜ぶ」といいながら食べます。個人的にはこの映画最大の涙腺崩壊シーンです。最初のしゃぶしゃぶ場面から、家族の絆が深まったことがわかります

一浩は双葉のガン発病に責任を感じてか、してほしいことを尋ねますが、「エジプトへ行きたい」と言われると無理だという顔をします。双葉は車を運転して、安澄と鮎子を連れて箱根へ旅行へ行くことにします。手がしびれることがあるのに、子どもを乗せて運転するのは危険すぎて、あり得ないと感じます。

途中で向井拓海(松坂桃李)というバックパッカー青年にヒッチハイクされ、少しだけ一緒に行動します。拓海はヒッチハイクした女性にラブホへ連れて行かれた話をしますが、安澄や9歳の鮎子に話す内容ではないですね。鮎子は拓海に高足ガニが生きた化石であることなどをドヤ顔で説明するが、安澄「それ全部、私が調べて教えたやつ」という場面は笑えます。

拓海は双葉に嘘ついてたことを指摘されると、資産家の父の1人目の妻の子で、母と会ったことがないと言います。拓海「時間は腐るほどあるので、旅は飽きたらやめます」双葉「最低の人間乗せちゃったな」と言い、別れ際には双葉が拓海を抱きしめて、双葉「あなたはこれから日本の最北端を目指すのが目標」拓海「目標達成したら報告行ってもいいですか?」双葉「いいけど早めに来てね」

拓海は去り際に、安澄と鮎子には「あの人から生まれた君たちがうらやましいよ」と言いますが、鮎子は双葉の実の娘ではないため目をそらすのがかわいそうです。しかし安澄も鮎子と立場が変わらないことは後ほど判明します。その夜、双葉は宿の部屋のトイレで苦しみながら吐血します。安澄は、せきこむ双葉を心配します。

翌日、富士山を見た後、沼津の海辺の食堂で3人は高足ガニを食べます。2人の娘は大満足します。双葉は口のきけない女性店員の様子を気にしています。食後、娘らを先に車へ行かせて会計の時、双葉は女性店員のほおをビンタして出てきます。車内で双葉は安澄に「あれが(毎年カニを送ってくれる)酒巻君江(篠原ゆき子)さんで、お父さんが昔結婚してた女性」だと伝えます。

安澄「ヤダそんなの絶対違う」双葉「ちがわないの。私はあなたを産んでない」安澄「なんでそんないじわる言うの」双葉「君江さんにはあなたの泣き声が聞こえなくて、それに耐えられず、19歳の時の4月25日に家を出たの」。双葉は抵抗する安澄を車から引きずり出して「逃げちゃダメ。これから君江さんに挨拶するの」と言って置いてけぼりにして車で去ります。

安澄は毎年律儀に4月25日に高足ガニを送ってきてくれる、酒巻君江さんのことを思い出し、毎年自分がお礼の手紙を書かされていたり、双葉が安澄に「いつかきっと役立つから」と手話の勉強をさせてた理由をやっと理解します。安澄と再会して手話で話せることを知った君江は泣き出します。2人は食堂で手話で会話します。

ここも辛い場面です。双葉の「逃げちゃダメ」にはあいかわらず共感できないけど、安澄の出生の秘密を明かすのは、このタイミングでしかないため、双葉は最後の気力を振り絞ったのでしょう。「お母ちゃんの遺伝子あった」や「あの人から生まれた君たち」のセリフが伏線になってたと同時に、思い出すと胸がしめつけられそうです。

そして毎年4月25日に送られてくる高足ガニ、なぜか手話を理解できる安澄の謎の理由なども判明します。このあたりの脚本の深さは、最近の映画の中でも素晴らしい出来栄えだと感じます。そして驚くべきは、メインキャラは全員子供の頃に、実の母と別れています。一浩や探偵の娘も含めて

双葉は鮎子と近くの水族館で、くらげを見ながら時間をつぶします。双葉「きれいで若くて元気そうな人だったね」とさみしそうに言うと、鮎子がそっと手を握ります。食堂の前に車を止めて、鮎子に安澄を迎えに行かせた双葉は「疲れた〜」といいながら倒れて病院に運ばれます。「必ず迎えに来るからね、ごめんね双葉」と言って去った母の夢を見ます

『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレ結末ラスト

双葉は安澄と鮎子に「たぶんもう死んでる母さんが、私を迎えに来る夢を毎日見る」と話し、余命のことも伝えます。帰りに泣く鮎子に安澄は「お母ちゃんの前では絶対悲しい顔しないこと」と約束させます。見舞いにいけない一浩は、ピラミッド模型を安澄から双葉に渡してもらいますが「こんなスケール小さいお父ちゃんに家族託すのは心配で死ねない」と言われます。

病院に探偵の滝本がやってきて、その娘のまゆちゃんが双葉に似合うだろう赤い花を選んで持ってきてくれます。滝本は依頼されてた双葉の母親の居場所を突きとめて報告します。「会いたい」という双葉を連れて行きますが、母には「そんな娘はいない」と言われ、家の中で娘や孫と笑う母に向けて双葉は置物を投げて窓ガラスを割り、皆で逃げ帰ります。

小さな子どもが遊んでるそばのガラス窓を割ったので、逃げてもただではすまないはずですが、その後に説明もないので、事情を察した双葉の母がうまく対処したのかもしれません。その後、映画の中で双葉の母が出てこなかったのは、本当に過去を消したかったのかもしれないけど、とても薄情に感じます

安澄の実の母の君江が家へやって来る日、日本の最北端から拓海も戻ってきました。鮎子は友達と一緒に、双葉のために千羽鶴を作ったようです。そして食堂で働く君江が美味しそうな魚料理を作ります。鮎子は父を元気な声で「ごは〜ん」と呼びます。父の一浩は食事前に土下座して「これしか思い浮かばなかった。今晩だけ頼む」と言います。

入院中の双葉の携帯にメールで安澄から「これがお父ちゃんの精一杯だって(笑)ゆっくり外を見て」。ベランダから外を見た双葉は、家族と探偵が3段ピラミッドを作って「お母ちゃ〜ん」と呼ぶのを見て涙し「死にたくないよぉ」と言います。一浩「俺にまかせろ〜。安心してくれ」。これで双葉の望み「エジプトへ行きたい」を少し叶えたのでしょう。

双葉の具合がいよいよ悪くなってきて、安澄は「絶対お母ちゃんをひとりぼっちにはしないから安心して」と言って手を握ります。双葉の葬式、棺は銭湯の湯船の富士山の前に置きます。旅行中に見た富士山も伏線でした。探偵の滝本は娘のまゆに、双葉も母親ももう死んでしまったので会えないということを伝えます。

家族でお別れした後、棺は霊柩車で運ばれます。クラクション鳴らして走っていく光景が、ドライブ旅行に行く時の光景とかぶります。霊柩車は道をそれて、川辺へ停めて、家族でランチを食べます。一浩「面倒に巻き込んですみません」滝本「あの人のためなら何でもしてあげたくなるのは、その何倍もしてもらったからだと思う

家へ戻ると、花に包まれた双葉の遺体はきれいに残ってます。それを燃やした炎で銭湯の湯を沸かして、一浩、安澄、鮎子、君江はその風呂に入ります。鮎子「あったかいね」安澄「うん、すっごくあったかい」と言って皆が見上げます。煙突からは双葉の好きな赤い煙が出てて、床の赤い花をたどると、双葉を焼いた炎に「湯を沸かすほどの熱い愛」のタイトルがかぶって映画は終了します。

日本では死後の火葬をごまかすことは不可能ですし、子が親を燃やす倫理違反を不快に感じる人もいるでしょうけど、最後はファンタジーと割り切っていいと思います。燃やした遺体の描写はないので空想かもしれませんし。しかしこれがタイトルの意味だったのは驚きました。エジプトからの三段ピラミッドや、クラクションや富士山や好きな赤色も全て伏線でした。

女優陣の演技が素晴らしくて受賞もしていて、ストーリーや演出でも感情を動かされるし、笑って泣いて驚いてといろんなエッセンスがこめられた珍しい映画体験ができるので、ぜひ1度は観ることをおすすめします!

私の評価 77/100(60が平均)

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