映画『Arc アーク』ネタバレ感想考察/結末は?不老不死の世界とは?
海外SF小説の映画化。遠くない未来。息子と別れ放浪してたリナは、エマを師として遺体保存するボディワークスを仕事に。それを応用したエマの弟の天音は、不老不死を完成させリナに施術し…。生と死は対極か?自殺率上昇の理由は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | Arc アーク |
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日本公開日 | 2021/6/25 [予告] 上映時間:127分 |
監督・キャスト | 石川慶[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | ワーナー・ブラザース/バンダイナムコアーツ |
日本興行収入 | 0.5億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 66(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | SF/ファンタジー映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- リナ(芳根京子)息子を捨ててダンスしながら放浪。エマに師事しボディワークスを学ぶ
- エマ(寺島しのぶ)プラスティネーションの第一人者。リナをスカウト
- カナコ(清水くるみ)リナにボディワークスを教える先輩
- リヒト(小林薫)妻を献身的に支えるが、自分は施設に入居しない高齢男性
- 天音(岡田将生)エマの弟。不老不死の研究中
- リヒトの妻(風吹ジュン)天音の庭の施設に入居する高齢女性
- ある高齢者(倍賞千恵子)
ネタバレ感想『Arc アーク』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は短編小説?監督とキャストについて
原作は、中国系アメリカ人のケン・リュウ著の短編SF小説『円弧(アーク)』です。短編集『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』(2012年)に収められています。
監督の石川慶は、これまで長編映画では『愚行録』『蜜蜂と遠雷』を監督しています。映像化が難しそうな作品をうまく見せる手腕は評価できるので『Arc アーク』も期待できそうですね。
主演の芳根京子は『累 かさね』『ファーストラヴ』等に出演。寺島しのぶは『オー・ルーシー!』『さくら(2020)』等に出演。岡田将生は『何者』『さんかく窓の外側は夜』等に出演。
傑作を予感させる序盤?と残念な点は?
産んだ息子を放置して旅立つが、独特なダンスは理解されず、住む場所もない女性リナ(芳根京子)。エマ(寺島しのぶ)に誘われ、遺体を生前の状態で保存する「ボディワークス」を仕事にし、数年後にはエマ水準で施術できるように成長。
一方、エマの弟で天才科学者の天音(岡田将生)は、このプラスティネーションをさらに発展させ、ストップエイジング「不老不死」化を完成させます。リナはこの施術を受けた人類初女性となり、30歳の姿のまま生き続け…
序盤のあらすじは以上。息子を放置したということが伏線のように回収される展開は容易に予想できます。「何者かになりたいが、社会では認められない」リナの葛藤を、ダンスや荒っぽい行動で表現する芳根京子は期待を裏切らない女優ですね。
リナの不老化までは予想してたより時間かかりますが、その分じっくり「プラスティネーション施術」やエマやカナコとの関係性が描かれています。「不老化」社会がじょじょに近づいてくる予感にも好奇心が刺激され期待がふくらみました!
人類初の不老化は人類に新しい秩序をもたらすはずなのに、結局は「不老施術を受けられる富裕層」と「施術費を払えない一般層/貧乏人」に二分化され、皮肉にも今までの人類史の分断を継承します。残念なのは、この斬新な社会問題テーマをこれ以上追求しなかった点です。
エマと天音の対比は?天音はアダムを連想?
芳根京子はあいかわらず好演ですが、中盤以降に彼女の出番が少なくなるにつれて物語の方向性もあやしくなります。芳根京子に負けず劣らず、エマを演じる女優・寺島しのぶも存在感を発揮しますが、残念ながら途中退場してしまいます。
エマの天才の雰囲気や、プラスティネーション前のポージングダンスには圧倒されますがそれがピーク。天才科学者・天音(岡田将生)も、初登場時のインパクトは絶大でしたがそれがピーク。ただし、2人の対比描写は興味深かったです。
エマと天音は強いマザコンを原動力として「死」と向きあってきましたがアプローチは真逆。しかし「死を選んだ者」と「死から逃れたい者」の違いはあるが「夢に向かってる時」が一番輝いてたのは同じでした。
この2人がこだわったのは「血」ですが、芸術家のエマは「プラスティネーション液」を自分の血液に注入し「美しい姿のまま」死をむかえます。対照的に、科学者の天音は「テロメア初期化細胞」を血液に注入したがDNA欠陥で急速に劣化し「老いた姿」で死んでいきます。
天音の心情は「死」の概念を忘れた者が「死」へのカウントダウンをされるという意味で、普通の人間よりも「死」をおそれたのではないでしょうか。それはまるで、知恵の実を食べて多くの楽しみを知ったアダムが、罰として「死」ぬ体にされたことを連想させます。
リナに死を決断させた者は?自殺率上昇の理由は?
リナは不老不死になった後、親友のカナコや、夫の天音の死をみとります。そしてかつて自分が捨てた息子やその妻が死をむかえるのを見て、リナ自身も死を覚悟しはじめます。
そういう意味では、リナに死を決断させたのは息子に思えますが、実際は夫やカナコの死が積み重なったのだと感じます。エマが自殺前に言ってた「生死は対極ではなく、生の中にこそ死が存在する」という言葉もよみがえってきたのかも。
リナは、かつて捨てた息子に対してずっと感じてた「罪の意識」ゆえに長生きしてきたが、息子から「ゆるされた」ことで「生きつづける罰」から解放されたようにもとれます。「我が子や子孫の死」が与える影響は思った以上に大きそうですし。
あと疑問点として「不老」でも「不死」ではないので、食事や栄養をとる必要はあり、そのために働いて稼ぎ続ける必要はありそうです。リナの周辺のそういった苦労はあまり描かれてないのが残念。
不老化してない人間用の「天音の庭」の施設代も無料で、あれだけ高度なサービスを提供してるのも現実的ではないです。不老化の施術代が250年ローンって話もあったので、それが原資かもしれません。250年間も働き続けたら、自殺率上がるのも納得ですが。
映画『Arc アーク』私の感想と評価
人類の永遠の夢「不老不死」を実現させた社会を描いた意欲作ですが、芳根京子と寺島しのぶらの好演・怪演もあり、充分に楽しめました。特に序盤は「本当に不老が実現するの?」「人類が二分化される?」という展開から目が離せません。
ただ、人類規模に大風呂敷を広げすぎたわりに、最後はパーソナルで内省的な物語に収束していき、期待値を超える内容ではなかったです。似たような決断は、他の作品でも観たことある気がします。特に日本は「不老」をあつかった漫画・アニメが多いので「子孫の死に苦しむ」話もめずらしくないですし。
エンタメ寄りのSF映画『夏への扉』と同日公開になったのも誤算でしたね。それでも、映画『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督でなければ、もっと事故案件になってた可能性も否定できないし、かなり攻めたSF邦画として評価したいです!
私の評価 62/100(60が平均)
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