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アカデミー賞映画『グリーンブック』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?チキンと手紙の意味は?

グリーンブック 映画/ドラマ

アカデミー賞ゴールデングローブ賞受賞。実話ベース。1962年、気の荒い白人トニーは、天才ピアニスト黒人シャーリーの演奏ツアー運転手に雇われます。しかし米南部では人種差別が合法化されてて...。トニーの息子が脚本?ラストの妻の一言は?(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題グリーンブック
日本公開日2019/3/1 [予告] 上映時間:130分
製作国アメリカ
原題/英題Green Book
監督・キャストピーター・ファレリー(キャスト
映倫区分日本:G(年齢制限なし) USA:PG-13
配給/製作
(画像出典)
ギャガ/アンブリン・パートナーズ、パーティシパント・メディア、コナンドラム・エンターテインメント、シネティック・メディア
日本興行収入21.5億円(年間27位
世界興行収入3.2億USドル [出典]
製作費0.2億USドル
平均評価
平均:100換算
*批評家と一般は単純平均
(興収・評価: 2024.8.17更新)
82私の評価は含まず)
シリーズ
関連作品
ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧

登場キャラクター(キャスト/出演者)

ネタバレ感想『グリーンブック』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

子孫がアカデミー賞受賞!監督やキャスト

本作『グリーンブック』はアカデミー賞の作品賞ゴールデングローブ賞の作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した実話ベース映画で、アメリカでは高く評価されています。

監督のピーター・ファレリーは『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』など、少しやりすぎなコメディ映画で名を上げてきたのでやや意外です。本作でもトニーの不謹慎な行動で笑いをとるシーンに片鱗が見られますが見事に成功しています。

『グリーンブック』の脚本は、本作主人公のトニー・バレロンガ(自称リップ)の実の息子ニック・バレロンガも関わり、ピーター・ファレリー等が中心となり書かれたものです。アカデミー賞とゴールデングローブ賞の脚本賞でも受賞しています。

主演のヴィゴ・モーテンセンは目立つ俳優ではないけど『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で脚光をあびました。撮影前には、さえない中年男性を演じるためにかなり増量したそうです。不快なほどにお腹がぽっこりしてたのは俳優魂の賜物だったんですね。

アカデミー賞の助演男優賞ゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは、『ムーンライト』でも2017アカデミー賞を受賞しているので、演技俳優としての評価が確立しつつあります。

ちなみにアカデミー賞で作品賞を受賞後、スパイク・リー監督やマスコミなどから「白人の救世主」「魔法の黒人(マジカル・ニグロ)」を描いた映画だと批判されました。すなわち「白人の成長を助ける役割の黒人」という意味だそうです。

グリーンブックとは?タイトルの意味は?

1960年代のアメリカ南部では、まだ人種隔離政策が残っていて特にジム・クロウ法と呼ばれる州法では、黒人だけでなく先住民インディオやアジア人などの黄色人種までもが、白人と同じホテルやレストランやトイレへの出入りを禁止されていました。

グリーンブック(GREEN BOOK)とは、黒人でも安心して入れる施設をまとめた冊子/ガイドブックのことです。南部を旅するシャーリーは、このグリーンブックに書かれたホテルにだけ泊まります。

ちなみに、2人がツアー旅行する自動車は「緑のキャラデラック」であり、2人の絆を象徴する「翡翠(ひすい)の石」ともどもエメラルドグリーンです。服やシャツも緑っぽいのをよく着てたので、タイトルの「グリーンブック」を印象づけます。

テーマは「教養の違いや異人種間の相互理解」「勇気で世界を変える」?

『グリーンブック』は社会派映画でもあり、テーマをひとことで言うと「多様性」ですが、最近このテーマの映画が増えすぎてるので、もっと分解しないと本質は語れません。当時の黒人差別が最大の問題点として描かれますが、それほど単純ではないです。

マハーシャラ・アリが演じる黒人のドクター・シャーリーは教養もお金も持っている天才ピアニストですが、プライドが高くて庶民生活にふれたこともなく、妻子ともうまくいかず当時少数のゲイでもあり、兄とは連絡も取ってなくて孤独に暮らしています。

ヴィゴ・モーテンセンが演じるトニー・バレロンガは、イタリア系の白人だが教養はなく気性も荒っぽいので用心棒などの仕事しか出来ません。裕福ではないが、しっかり者の妻と2人の子どもと他の家族と共に楽しく暮らしています。

このように、ただの黒人と白人というだけでなく、教養と常識はあるが孤独な黒人と、粗野だが妻子のある白人が一緒に南部をツアー旅行しながら、過去や価値観や抱える問題などを理解しあっていく過程がそのままテーマになってる感じです。

また、シャーリーが南部でコンサートツアーをする理由がずっと伏せられていますが、ラストの黒人バーで「才能ではなく勇気で世界を変えたい」と告白します。それはささやかな抵抗でしょうけど、南部の社会に問題提起することはできたのでしょう。

グリーンブック 映画/ドラマ

見どころは2人の成長と当時の黒人差別の実態?

トニーは家では黒人が口をつけたコップをゴミ箱に捨てるほど、当たり前のように人種差別をしていました。ところがイタリア系という劣等感も持ち合わせてたようです。雨の日に警官に職質された時、イタリア系と馬鹿にされただけで殴って逮捕されます。

シャーリーも「黒人が夜間歩いた」ことで逮捕され、この日の演奏会は中止になりました。そしてトニーはシャーリーに「暴力では何も解決できないどころか事態は悪化するだけ。品格を持って行動せよ」と言われ、少し成長したように感じます。

驚いたのは、ドン・シャーリーがコネを使うと、当時のロバート・ケネディ司法長官(か関係者)から釈放依頼の電話が警察あてにかかってきたことです。シャーリーは「恥だ。司法長官に申し訳ない」と言ってたけど、水戸黄門的な気持ちよさがあります。

ちなみに雪の日(白を連想)に車を止めた白人警官は、タイヤがパンクしたことを教えてくれ、タイヤ交換中も交通整理してくれるくらい親切でした。この時はかなり北上してたのかもしれないけど、南部の警察官でも差別主義者は「人による」のでしょう。

そんな風に全く違う世界で生きてきた2人が接し続けることにより、相互理解も深まり、お互いが仕事を超えた関係で、なくてはならない存在になる過程で成長していく姿がみどころの1つです。また、当時の南部での人種差別の実態は他にも描かれてます。

シャーリーはバーやゲイ用シャワールーム?等でひどい目にあったり、クリスマスコンサートで演奏するホテルのレストランでも食事をさせてもらえません。演奏会に招かれた屋敷で屋内トイレを使わせてもらえず、車で30分かかるモーテルを往復したのは『ドリーム』を思い出しました。

フライドチキンと手紙による成長?

シャーリーはカーネギーホールの上層階に住み、庶民生活に接したことがないため黒人の中でもはみ出し者です。茶畑で奴隷的に働く黒人と対峙した場面が印象的です。トニーが「ケンタッキーと言えばフライドチキンだ!」と買って美味しそうに食べてるのを見ても「不衛生で油がつく」などと拒否していました。

ところが食べてみると美味しく感じたようで、それ以降も何度か食べてるし、屋敷の食事に招待された時に出されたフライドチキンもうれしそうに食べます。フライドチキンを始めて食べたあたりから、シャーリーとトニーの距離は縮まっていきます。

フライドチキンは元々は黒人奴隷のソウルフードで、それが後に白人文化に広まりました。本作では「白人にすすめられたフライドチキンを黒人が食べる」ので逆の流れに思えるけど「底辺に近い者から上流階級へ」と考えるとメタファーにも思えます。

手紙は、トニーが妻ドロレスに言われて送付してましたが、イタリア系気質でかなり野暮ったかったです。しかしシャーリーの言うとおりに書くと上品に仕上がります。受け取った愛妻どころか、その家族や友人のご婦人たちにも大好評です。

トニーもコツをつかんで、1人でも以前よりはましな手紙を書けるようになります。教養を身につけるにつれて、人種差別的な言動や考えもなくなっていく流れが自然に描かれててうまいなと感じます。

『グリーンブック』総括と空腹時観賞の注意!

黒人と白人のバディムービーであり、2人とも異人種と接触することにより成長する姿は『最強のふたり』にも近いけど、従来の黒人と白人との立場が反転してる点は、アカデミー賞などでも重視される「多様性」をうまく表現できてると思います。

また、単調になりがちなロードムービーに、異文化交流による笑いと、まだ南部に色濃く残る黒人人種差別の緊張感をたくみに盛りこんで退屈させない作りにしてる脚本も素晴らしいです。旅に出てるのに愛妻との絆が深まる演出も家族映画として最高です。

そしてラストのトニー家でのクリスマスイブの晩餐で、トニーが親類に「ニガーと言うな!」と言って黙らせたり、妻ドロレスが来訪したシャーリーと抱き合った時に「手紙をありがとう」というのは感動的な名シーンです。

葛藤を抱えた2人が、異人種交流することにより成長していく物語をコメディ調で軽い気持ちでも見れるので、脚本演出は完璧に近いと思います。一方で、映画を観る前に想像してた内容とほぼ同じだったので、やや月並み感はあります。

サスペンス映画ではないので、意外である必要や驚きはなくてもいいけど、何かこの映画特有のシーンや独特な事件も観られたならもっと良かったのですがハードル上げすぎですかね。実話ベースだし、美談を好まなかったシャーリーに配慮したのかも?

それでもアカデミー作品賞と脚本賞の受賞には納得だし、個人的には『ROMA ローマ』より好みなので、この心温まる物語をぜひ多くの人にオススメしたいです。ケンタッキーフライドチキンやピザを食べたくなるので、空腹時観賞は要注意です!

私の評価 70/100(60が平均)

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