2020映画『ミッドウェイ』ネタバレ感想考察/暗号解読の決定打は?日本の敗因は?
日本時間1941年12月8日。日米戦争に反対で早期終結をねらう山本五十六は、真珠湾を攻撃。翌年6月、ミッドウェイ海戦を開始。大打撃を受けた米海軍は情報分析で逆襲をねらうが…。本土初空襲は?情報戦の勝者は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ミッドウェイ |
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日本公開日 | 2020/9/11 [予告] 上映時間:138分 |
製作国 | アメリカ |
原題/英題 | Midway |
監督・キャスト | ローランド・エメリッヒ[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:PG13 |
配給/製作 (画像出典) | ライオンズゲート、キノフィルムズ/AGC Studios、サミット・エンターテインメント、セントロポリス・エンターテインメント |
日本興行収入 | 4.0億円 (興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 1.2億USドル [出典] |
製作費 | 1.0億USドル |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 66(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 実話/歴史/時代/西部/戦争映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- エドウィン・レイトン少佐(パトリック・ウィルソン)太平洋艦隊情報主任参謀。日本の赴任経験をいかす米軍の頭脳
- ディック・ベスト大尉(エド・スクライン)第6爆撃機中隊長。一流の飛行技術を持つパイロットへ
- チェスター・ニミッツ大将(ウディ・ハレルソン)太平洋艦隊司令長官。真珠湾攻撃後、士気高揚をはかる指揮官
- 山口多聞 少将(浅野忠信)第二航空戦隊司令官。有能な日本帝国海軍希望の星。ミッドウェイ海戦では空母飛龍
- 山本五十六 海軍大将(豊川悦司)連合艦隊司令長官。日米開戦に否定的で早期終結を目指す。ミッドウェイでは戦艦大和
- 南雲忠一 中将(國村隼)第一航空艦隊司令長官。保守的指揮で反感を招く。ミッドウェイ海戦では空母赤城
- ウェイド・マクラスキー少佐(ルーク・エヴァンス)第6空母航空団司令。ディックの成長を見守る艦上機部隊の熱血指揮官
- ウィリアム・ハルゼー中将(デニス・クエイド)第16任務部隊司令官。空母エンタープライズ指揮官。現場主義だが部下に慕われてる
- ジミー・ドゥーリトル中佐(アーロン・エッカート)陸軍航空軍。日本の本土空襲を指揮
ネタバレ感想『ミッドウェイ』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
真珠湾攻撃までの歴史は?南雲の判断ミスとは?
1931年、柳条湖事件をきっかけとする満州事変で、日本は満州国を建国。この事件を多くの国に批判され、1933年に日本は国際連盟を脱退しました。
映画冒頭の1937年、大日本帝国の山本五十六(豊川悦司)が、アメリカ合衆国のレイトン(パトリック・ウィルソン)に対して「石油等の資源輸出を止めて我々を追いつめるなよ」と忠告します。
しかし1941年、アメリカは石油の禁輸等の経済制裁を行い、同11月27日には軍事行動を否定するよう促す交渉文書「ハル・ノート」がアメリカから提出されました。日本は許容できなかったため、日米の太平洋戦争は決定的となります。
1941年12月8日(ハワイ時間:7日)、航空母艦6隻を含む大日本帝国海軍は、ハワイ真珠湾(パールハーバー)に停泊していた戦艦8隻を含むアメリカ海軍を攻撃し大損害を与えました。連合艦隊司令長官の山本五十六が立案した作戦です。
映画では山口多聞が山本五十六に、真珠湾攻撃での南雲中将の保守的な指揮を批判します。南雲が、敵戦艦の燃料タンクを攻撃してれば、先1年くらい米軍は真珠湾での軍事活動を再開できなったそうです。ミッドウェイ海戦も有利だったはず。
米軍の最初の反撃はマーシャル諸島?
日本軍の奇襲のような真珠湾攻撃で、仲間や家族を奪われた米軍は復讐に燃えます。太平洋艦隊司令長官に任命されたニミッツ大将は、情報分析責任者で日本滞在経験もあるレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)に日本軍の目標を探らせます。
1942年2月1日、空母エンタープライズのハルゼー中将(デニス・クエイド)は、マーシャル諸島の日本軍を攻撃。この「マーシャル・ギルバート諸島機動空襲」は、太平洋戦争で最初のアメリカ海軍の積極的な反撃でした。
戦闘機乗りのディック・ベスト大尉は、マーシャル諸島の日本軍基地への急降下爆撃を成功させます。この攻撃は後の伏線にもなります。史実では、この爆撃で日本軍の司令官が戦死しています。
ディック・ベスト機とその隊は日本軍のゼロ戦も撃ち落として、空母エンタープライズに帰還します。尾行した日本軍の爆撃機が爆弾投下したり損傷機が特攻しますが、空母の蛇行運動や勇敢な若者の戦闘機銃撃により阻止します。
第二次世界大戦で初の日本本土空襲とは?米本土へは?
1942年4月18日、ハルゼー中将の空母エンタープライズは、太平洋から日本の東沖へ向かっています。空母ホーネットには、日本本土空襲を目的とする、陸軍のドーリットル中佐が率いるB-25爆撃機が艦載されています。
爆撃後は燃料が足りなくて空母には戻れないため、中国で放棄されます。燃料不足をおぎなうため、少しでも日本に近づきたいハルゼー中将でしたが、日本の哨戒機に見つかり遠距離からの発進となります。
陸軍航空軍爆撃機の空母からの発艦は実戦では初で、離陸距離が足らないと思われたが、B-25爆撃機16機は見事に発艦を成功。この第二次世界大戦で初の日本本土空襲「ドーリットル空襲」で、東京の天皇陛下も防空壕へ避難しました。
ドーリットル中佐らは東京、横須賀、横浜、名古屋、神戸などへの空襲後、中国大陸に不時着してB-25は放棄されました。空襲での損害は微小でしたが、日本本土空襲を最も恐れていた山本五十六など日本軍幹部には相当衝撃を与えました。
二度目の本土空襲を防ぐためにも「ミッドウェイ海戦の勝利」は必須となります。映画でも山本五十六はショックを受けて、山口多聞に声かけられてました。
ちなみにその後、日本軍は潜水艦でアメリカ西海岸への本土空襲を成功させてますが、国民感情をあおらない程度に?森林への焼夷弾で山火事を起こしただけです。ただし、外国軍によるアメリカ本土空襲は、これが最初で最後です。
珊瑚海海戦とは?
1942年5月8日、空母エンタープライズのハルゼー中将が「間に合わなかった」となげいた南太平洋での珊瑚海海戦(Battle of the Coral Sea)について概要だけ補足します。
石油資源などが豊富なパプアニューギニア(オーストラリアのすぐ上)のポートモレスビー攻略をねらう日本海軍と、連合国軍(アメリカ・オーストラリア)との戦闘です。両国とも空母を1隻失った後に撤退し、日本軍は目的を果たせずでした。
両艦隊とも相手の艦隊が見えない距離での、歴史上最初の海戦で、お互いの航空機が空母を沈没させる戦いでした。『アルキメデスの大戦』でも語られた「戦艦を主とする大艦巨砲主義」から「空母を主とする航空主兵論」への転換期として興味深いです。
日本敗因は情報戦?暗号解読の決定打とは?
アメリカ軍は珊瑚海海戦の後、日本海軍が大規模な作戦計画を進行してるとの確信を持ちます。米本土ワシントンの情報分析では「南太平洋」(オーストラリア周辺)の可能性が高いと考え、空母エンタープライズ等も集結させます。
しかしハワイの情報主任参謀レイトン少佐は、日本本土空襲を阻止するため日本軍は「ミッドウェー島」をねらうと予測します。ニミッツ大将も真珠湾の二の舞はさけたいので、確たる証拠をつかむようレイトンに指示します。
やがてレイトンは日本軍の作戦目標地の暗号名「AF」の正体をつかみます。少し前、米軍はミッドウェー島からハワイ島に「装置故障で真水が不足」と非暗号で発信。その後日本軍が送信した「AFは水不足」により「AF=ミッドウェイ」と判明します!
日本軍の敗因は複数ありますが、太平洋戦争以前から真珠湾攻撃以降も勝利が続いたため、情報管理や暗号通信をないがしろにした点が大きいと感じます。特に「情報戦」を過小評価し、セキュリティ管理が甘かったことは大きな敗因の1つです。
映画監督ジョン・フォードとは?
1942年5月28日、ミッドウェー島には、海軍志願した映画監督ジョン・フォードが上陸します。ジョン・フォードはすでに映画『駅馬車』『怒りの葡萄』等で名声を得ていて、アカデミー賞の監督賞受賞も果たしていました。
彼はミッドウェイ海戦では、大日本帝国海軍の戦闘機の爆弾により負傷しましたが、海軍の戦略諜報局(OSS)の野戦撮影班としてプロパガンダ映画を撮影しました。
『The Battle of Midway』(1942年。ミッドウェイ海戦)、『December 7th』(1943年。真珠湾攻撃)はいずれも、アカデミー短編ドキュメンタリー映画賞を受賞しました。
ミッドウェイ海戦の勝敗を決めた要因とは?
1942年5月末、入院のため降りたハルゼー中将に変わって就任したスプルーアンス少将の空母エンタープライズは、真珠湾の爆撃機も搭載してミッドウェイ沖で待機。この時点で、ミッドウェイ海戦の米軍勝利はほぼ確定的でした。
6月4日。日本海軍の航空機隊がミッドウェー島を襲撃後すぐ、米軍戦闘機による反撃を受けます。待ち伏せと感じた空母赤城の南雲司令官は、艦載機の再兵装を指示。これがミッドウェイ海戦の勝敗を決定づけた要因の1つ「運命の5分間」(諸説あり)です。
山口多聞(浅野忠信)の空母飛龍は、米軍潜水艦を発見し、駆逐艦「嵐」に撃沈を命令して他の艦は前進します。しかしこの「嵐」が飛龍隊への再合流を目指した時、運悪くマクラスキー少佐の米軍爆撃隊に見つかり、飛龍の場所が発覚します。
空母加賀、空母蒼龍はマクラスキー隊等に爆撃されて炎上。空母赤城もディック・ベスト大尉の急降下爆撃を受けて炎上し、南雲中将は別の駆逐艦へ移動します。山口多聞の空母飛龍の航空隊は、米軍空母ヨークタウンに損害を与えます。
ミッドウェイ海戦に合流する山本五十六は、米軍を戦艦大和の前へおびきよせようとするが時すでに遅し。空母飛龍は、またしても米軍ベスト大尉の急降下爆撃でやられ、山口多聞少将は部下を脱出させた後、飛龍とともに沈みます。
山本五十六はミッドウェイ海域からの撤退を決め、アメリカ軍の大勝利が確定します。南雲中将が他艦に移ったのは司令官だからかもしれないけど、山口少将のような優秀な指揮官がこのように命を簡単にたつから人材不足になるのだと感じます。
その後のドーリットルやベストは?日本の非人道行為について
初の日本本土空襲を成功させて中国に降りたドーリットル中佐たちは、その後無事に脱出して勲章をもらったようです。しかしドーリットル達を助けた多くの中国人たちは、日本軍により殺害されたそうで残念です。
映画『ミッドウェイ』では、他にも日本軍による非人道行為がいくつも描かれています。海に落ちた米軍パイロットを銃撃したり、捕らえた米軍捕虜が情報を話さなかったので海に沈めたりもします。前者の行為を山口多聞が嘆いたのは救い。
リチャード・ベスト大尉、通称ディックは肺を痛めて車椅子になるが、無事に家族の待つアメリカ本土へ戻れます。ディック・ベストは1日で2隻の空母を爆撃したパイロットとして歴史に名を残しました。
『ミッドウェイ(2020)』私の評価と総括
旧作ミッドウェイは観たけど覚えてません。が、CGとはいえ戦闘シーンの迫力では今回の方が上だろうし、日本人俳優も多数出演(変な日本語の人もいるけど)してるので、当事者でもある日本人はぜひ劇場で観てほしいです!
歴史の事実なので「真珠湾攻撃」「ミッドウェイ海戦」の概要だけは事前に調べておくと、わかりやすいのでオススメです。もちろん知らなくても娯楽映画として楽しめるので問題ありません。
ただ歴史を調べていったから気づいたけど、かなり「歴史をなぞった再現ドラマ調」なので、もっと演出・キャラ描写・物語性などにはオリジナル感がほしかったです。誰を主人公にするでもない「群像劇」と考えても焦点が定まってません。
特に登場キャラに感情を感じないので、映画終了後もキャラの印象が残りにくいです。それでも久々の洋画大作で、大迫力の戦争シーンも観れたのは爽快でした!私は軍事には詳しくないので、ミリタリーマニアの意見は聞いてみたいですね。
私の評価 66/100(60が平均)
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