映画『MINAMATA ミナマタ』ネタバレ感想考察/写真家の決断は?報復された?
1971年。かつて活躍した写真家ユージン・スミスは酒におぼれてたが、ある女性から日本の熊本県水俣市の公害についての撮影を頼まれ、妨害をうけながらもカメラを向け続けるのだが…。歓迎されたのか?最後のお願いとは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | MINAMATA ミナマタ |
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日本公開日 | 2021/9/23 [予告] 上映時間:115分 |
製作国 | アメリカ、イギリス |
原題/英題 | Minamata |
監督・キャスト | アンドリュー・レヴィタス |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:R |
配給/製作 (画像出典) | ロングライド、アルバトロス・フィルム/Metalwork Pictures、インフィニタム・ニヒル、ハンウェイ・フィルムズ |
日本興行収入 | 2.5億円 (興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 0.008億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 75(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧 |
ネタバレ感想『MINAMATA ミナマタ』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
実話?ジョニーデップや監督とキャスト
映画『MINAMATA-ミナマタ-』は、実在したウィリアム・ユージン・スミス(1978没)とその妻アイリーン・美緒子・スミス(2021/9時点で在命)の写真集『Minamata』(1975年)製作の実話をもとにかなり脚色された社会派映画です。
監督のアンドリュー・レヴィタスは、日本ではほぼ知られてないため、主演と製作を兼ねたジョニー・デップを前面に出して宣伝されています。アメリカでは度重なる不祥事により、ジョニー・デップのイメージは低下中ですが。
ジョニー・デップはパイレーツ・オブ・カリビアン・シリーズのジャック・スパロウとして有名になりました。最近の出演作は『オリエント急行殺人事件』『ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生』等。
日本人俳優も、真田広之、美波、國村隼、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子など多数出演。音楽は坂本龍一です。
写真家の日本との関わりは?水俣行きの理由は?
1971年、ニューヨーク。かつては有名な写真家であったユージン・スミス(ジョニー・デップ)は、酒びたりの生活を送ってました。そんな時、富士フィルム広告担当者に同行して通訳者アイリーン(美波)が訪ねてきます。
アイリーンは帰りぎわに「日本の水俣病についての撮影」を依頼します。ユージンは最初は関心を示さないが、戦争写真家として派遣された日本には縁を感じてたし、雑誌社に再び認められたい気持ちも生じて、MINAMATAへ向かいます。
熊本県の水俣町では通訳アイリーンと共に、マツムラ・タツオ(浅野忠信)と妻マサコの家に迎え入れられ「水俣病」のひどい現状を聞かされます。しかし重度の水銀中毒で動けず目も口も不自由な娘アキコの写真撮影は許可してもらえません。
水俣病は、化学会社チッソが起こした産業公害が原因の奇病で1950年代から知られてます。住民の抗議は、行政も警察も無視。チッソは地元民の多くの就職先でもあるため、声を上げない住民も多数いて、ユージンの撮影もすすみません。
序盤のあらすじは以上です。主役は「MINAMATA」なので、ユージンの堕落ぶりはそこそこしか描かれなかったのは良かったです。実話のユージンは、第二次世界大戦時に沖縄や硫黄島で戦争写真家として派遣され重傷も負ったそうです。
実際のユージンとアイリーンはすぐ同棲して日本で結婚したのですが、映画『MINAMATA ミナマタ』で明確に描かなかった理由はなぜでしょうか。それなのに恋愛表現は見せるし、最初から近い距離感なので実話を知らなければ気になりますよね。
水俣病の概要は説明されますが、何年前からどのくらいの規模で抗議してるのかは最後まで不明でした。キヨシ(加瀬亮)や、ヤマザキ・ミツオ(真田広之)が抵抗や抗議運動してますが、実際にもあの程度の小規模だったのでしょうか。
三度の大きな妨害とは?最高傑作の写真は?
ユージン・スミスは、アイリーンと共に化学会社チッソに潜入して「水銀中毒による害を示す資料」を発見し「水俣病の入院患者の写真」も撮影します。ミノルタのカメラを細かく分解して荷物検査でバレなかったのは史実なんでしょうか。
しかしチッソ側からは、警察や謎の武闘団体(ヤクザ?)を使った妨害や報復にあいます。まずチッソ社長ノジマ・ジュンイチ(國村隼)の所へ連行され、大金の札束を渡されます。断ったユージンは後に「受け取ればよかった」と弱気発言します。
ユージンを弱気にさせた衝撃的な報復は、水俣で撮影したネガを保管した暗室が焼かれてしまった事件です。ただ、このような事を全く想定してなかったのも意外です。現代のように簡単に写真メモリコピーができない時代なので仕方ないのでしょうね。
立ち直ったユージンは抗議団体とチッソとの争いを撮影中、チッソ社員?により暴行を受けて脊椎損傷や片目失明といった重傷を負います。その後遺症がユージンの寿命を縮めた(約6年後に死去)可能性もあるそうです。
途中、弱気発言する人間くさいユージン・スミスですが同じように苦しんでる姿が認められたのか、住民達との距離は近つき「撮影させてほしい」との提案を受け入れてもらえます。焼けたはずのネガが残ってた理由はよくわかりませんでした。火をつけた犯人にも抗議派がいたってことでしょうか。
ユージン・スミスは、母が胎児性水俣病の少女を抱きかかえて入浴させる写真の撮影許可ももらい、有名な「入浴する智子と母(Tomoko and Mother in the Bath)」も撮影。亡きキリストを抱くマリアの「ピエタ」も連想させる傑作です。
1975年5月、アイリーンと共著で写真集『MINAMATA』を出版し、世界で大反響を呼びました。日本語版『写真集 水俣』出版がユージン死後の1980年だったのは残念。アイリーンは共著の出版直後に離婚し、後に再婚して2021年時点は在命中。
映画『MINAMATA ミナマタ』私の感想と評価
ラストで公害裁判では勝訴しますが、被害者たちの病状は改善しないしお金でどうにかなる状況でもないことは、劇中で描かれた内容からも明らかです。観た後に無力さは感じますが、現実におこった歴史として認識するには大切な映画です。
予想してたほど水俣病について知ることはできず、主テーマは「写真家ユージン・スミスの挫折と成長と成功への軌跡」と感じましたが、視聴後に「水俣病」について調べたので、そういうきっかけを得られる映画としても多くの人に観てほしいですね。
ユージン・スミスを演じたジョニー・デップは、今回は派手さのない堅実な役をうまく演じました。日本人俳優など他のキャストの見どころも邪魔せずじっくり見せてくれ、日本へのリスペクトも感じました。子どもに外国人が混ぜってた?のは気になりましたが(笑)
正直言って「水俣病を知る映画」としては弱いので、もう少しドキュメンタリー風にした方がよかった気はします。が、それでは視聴者が増えないだろうから「ユージンの目を通してMINAMATAを知る映画」にしたのは手法としてはありだと思います。
私の評価 62/100(60が平均)
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