映画『屍人荘の殺人』ネタバレ考察/ラスト結末は?真犯人の正体トリックは?驚きの新手法?
原作は人気ミステリ小説。ミステリオタク大学生の明智恭介と葉村譲は、同大学の私立探偵・剣崎比留子に音楽フェス研究会の夏合宿へ誘われるが、紫湛荘から出られない事態が発生し…。動機は?名探偵は誰?キャラランキングも発表(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 屍人荘の殺人 |
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日本公開日 | 2019/12/13 [予告] 上映時間:119分 |
監督・キャスト | 木村ひさし(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/東宝映画、ドラゴンフライエンタテインメント |
日本興行収入 | 10.9億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.17更新) 64(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 葉村譲(神木隆之介)ミステリ小説オタク。ミステリ愛好会の唯一の会員。推理ベタな助手ワトソン役
- 明智恭介(中村倫也)ミステリ小説オタク。ミステリ愛好会会長。神紅のホームズ
- 剣崎比留子(浜辺美波)葉村たちに近づく謎の美少女。実は実績のある私立探偵。ドジっ娘
- 静原美冬(山田杏奈)スマホを落としただけの女性
- 重本充(矢本悠馬)ホラー映画マニア
- 七宮兼光(柄本時生)先輩。大金持ちの御曹司。ペンション紫湛荘の持ち主。女子に目がない
- 立浪波流也(古川雄輝)先輩。七宮と同様に女子目当て
- 菅野唯人(池田鉄洋)紫湛荘の管理人。執事の中の執事。七宮が雇い主
- 名張純江(佐久間由衣)昨年の事件を気にしてそうなメガネ女子
- 進藤歩(葉山奨之)先輩のパシリ。女子数を増やすために恋人の星川も参加させる
- 星川麗花(福本莉子)進藤の恋人。場違いな小娘
- 下松孝子(大関れいか)就職先をあっせんしてもらう狙いで、七宮にゴマする女
- 出目飛雄(塚地武雅)紫湛荘に逃げ込んだ、関西弁のおっちゃん
- 高木凛(ふせえり)紫湛荘に逃げ込んだ、クレーマーおばちゃん
ネタバレ感想『屍人荘の殺人』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作ミステリ小説と監督と魅力キャスト
原作は今村昌弘が2017年に発表した本格ミステリ小説『屍人荘の殺人』です。鮎川哲也賞受賞だけでなく、このミス、文春ベスト、本格ミステリベストで1位、本格ミステリ大賞も受賞して4冠5冠達成ともいわれる超話題作です。
監督の木村ひさしは、多くのテレビドラマや映画の監督を務めています。特にミステリーを手がかけることが多いので、映画『屍人荘の殺人』とは相性が良さそうです。ミステリではないけど同年公開の『任侠学園』も評価は高めです。
主演は、まだ大学生も演じられる神木隆之介です。目立ちにくい役を演じますが、ワトソン役としては好演です。ドジっ娘だが犯罪を引き寄せて解決する名探偵ヒロインは浜辺美波です。変顔や相撲の雲龍型は最高です。
自称探偵の明智役を中村倫也(ともや)、わがまま御曹司の七宮を柄本時生(ときお)、ホラー映画マニアを矢本悠馬が演じます。女性陣は、佐久間由衣、山田杏奈、大関れいか、福本莉子、ふせえり等が個性派キャラを演じてかく乱します。
ミステリー映画として楽しめるか?
私は小学生時代から本格ミステリ小説が大好きで、小説・漫画・映画・アニメなどの物語好きもミステリ小説から始まってます。しかし最近は全く読めてません。『屍人荘の殺人』も噂は聞いてたけど、ネタバレは完全回避してきました。
いきなり核心をつきますが『屍人荘の殺人』はミステリ映画としては、かなり高評価をつけたいです。特に驚いたのは言うまでもなく「クローズドサークル(閉鎖空間)」の作り方です。知らない方が圧倒的に楽しめるのでこの先は読まないように!
一方、その後の館での連続殺人事件の犯行トリックや名探偵による解決シーンは、読んだことや観たことある展開だらけで目新しさを全く感じず残念です。「復讐のため2回殺したいほど」はこじつけとしても、いい表現だと思いましたが。
映画『屍人荘の殺人』は「フーダニット」(犯人を探すミステリ)と呼ばれるジャンルでもあります。映画内で犯人が論理的にわかる瞬間も隠してないのでフェアだと感じますが、動機じたいは使い古されてるのでひねりはほしかったかも。
このアンバランスさにより「一発ネタのミステリ」としては最上級と評価したいけど、数々の館もの本格ミステリと比較するとかなり見劣りします。ただ、ワンアイデアだけで名作となったミステリも多いので『屍人荘の殺人』も間違いなく歴史に残る作品だとは思います。
キャラミスさえ逆手にとった意外性とは?
ミステリー小説は初期の頃から「ホームズとワトソン、名探偵と助手、変人と凡人」の関係性で物語が多く生み出されています。最近の日本では変人役が若い女性になることが多い「キャラミス」(キャラクターミステリー)も量産されてます。
「キャラミス」は昔からあったけど、大きく取り上げられたのは『謎解きはディナーのあとで』以降だと記憶してますが諸説はあります。映画『屍人荘の殺人』も、浜辺美波、中村倫也、神木隆之介が魅力キャラを演じるキャラミスです。
冒頭から、自称ホームズ役の明智恭介(中村倫也)がぶっ飛んだ探偵を演じて、助手ワトソン役の葉村譲(神木隆之介)が平凡にツッコミながら事件を解決したりしなかったり。そこにもう1人の名探偵役の剣崎比留子(浜辺美波)が登場します。
中村倫也の名探偵ぶりは過剰演技が気になりますが、本格ミステリオタクを客観視し笑いのネタにした演技は見事です。浜辺美波は『センセイ君主』『賭ケグルイ』でのコメディエンヌと変顔と天才役に磨きをかけ、ドジっ娘まで追加した漫画的な名探偵役を魅力的に演じてて、個人的には浜辺美波ベストです!
名探偵が複数登場する場合は推理合戦を行い、より変人な方が勝利したり、片方が犯人だったりという定石がありますが、『屍人荘の殺人』では館(やかた)にこもる前に、変人ホームズ役の明智を早々に退場させてしまいます。
さらに上手いのは「明智ほどの人物なら必ず生きてるはず」という葉村の言葉を、視聴者側もラストまで信じてしまいます。しかし剣崎の手により、まるで「神殺し」のように明智は退場し、葉村の神は剣崎に交替します。
明智ほどの重要人物でかつホームズ役は死なないか、行方不明のまま続編以降も生死不明キャラになりがちですが、あっさりここで主役交代させる手法は斬新で意表をつかれました。槍の剣崎、盾の葉村譲はいいコンビになりそうです。
屍人荘の殺人の意味は?予想外のクローズドサークル?
クローズドサークル(閉鎖空間)とは、その中で殺人や事件が発生し、名探偵が解明するミステリジャンルの1つです。嵐や暴風雨や吹雪で、がけ崩れや橋の倒壊や電話電気切断となった館や山荘や、孤島を出られなくするのが定番です。
外界との行き来も連絡もできないため、外の警察や医療機関や専門家が介入できません。その状況で殺人や事件が起こると、集まった人間の中に必ず犯人がいるため疑心暗鬼になり、犯人探しが始まり名探偵役が解決することになります。
それほど重要なクローズドサークルですが、その構築法は重要視されておらず台風も大雪も孤島も使い古されてるけど「マンネリ」と言われることは少ないです。
映画『屍人荘の殺人』はクローズドサークル構築に「ゾンビ発生」を持ちこんだことで意外性を生み評価されました。屍人荘とは立てこもった「紫湛荘」(しじんそう)と同じ音で「ゾンビに囲まれたペンション」という意味です。
「ゾンビ」じたいは新しくなく量産されるほど使い古された手法ですが、閉鎖空間を作るために使ったのはワンアイデアとして秀逸です。
本作内でゾンビ発生の理由については解明されませんが、今回のゾンビは「だだの天災」あつかいなので納得できます。原作小説はもう少しふみこんでるようですし、続編『魔眼の匣の殺人』もあるので気になる人はそちらを読むこともオススメします。
犯人の正体は?決定的な会話内容は?
映画『屍人荘の殺人』は、クローズドサークル構築法にゾンビを使うという斬新さの後「館ものミステリ」がメインストーリーとなります。しかしその部分は、ゾンビをからめた殺害方法以外はありきたりと感じました。
殺人事件の犯人が、静原美冬(山田杏奈)であることは途中で気づきました。ただし犯人が途中でわかるのは、駄作ではなくフェアだからです。私が平凡と感じたのは「動機」「密室のやぶり方」「犯人の最後」等です。
静原が犯人だと判明したのは、メガネ女子の名張純江(佐久間由衣)との会話時です。静原は新潟出身と語り、昨年の合宿後に行方不明となった女子大生と同じです。この時点で、静原はそのJDの家族か同郷の友人の確率が高まります。
ミスリーディングの可能性もあるけど、JD行方不明の原因でもありそうな御曹司の七宮兼光(柄本時生)に目薬を貸した不自然さを思い出すと、高確率で静原が七宮の殺害をねらってることに気づくはずです。
全被害者と死因や殺害トリックは?
御曹司にゴマする下松はフェスでゾンビにかまれます。ゾンビとして復活すると、ホラー映画マニアの重元が頭を刺して絶命させます。ちなみに血が飛び散りますが、重元は眼鏡で目の粘膜が守られてます。これが後の伏線にもなります。
星川もかまれ、恋人の葉山は大カバンに星川を入れて(皆の目の前で)自室に運びます。葉山は女子数を増やすために恋人を連れてくるほど先輩達に服従してたので、犯人の殺害対象だったでしょう。恋人にかまれて最後を迎えた葉山は幸せな方だったと思います。星川への愛ゆえ救われたのかもしれません。
明智は静原を救ったが、ゾンビの群れにのまれて生死不明となります。関西弁の出目はとばっちり的にゾンビ化します。立浪は大音量の音楽を流したり言動もクズ男で、殺害されるのは時間の問題でしたが、在室時のセキュリティは強固でした。
そこで犯人は、立浪が屋上にいる間に侵入し、カードキーを自分のと交換しました。この時、電気が一度オフになり音楽もストップしたため、あわてて再生ボタンを押して部屋を出ます。犯人は夕食時、コーヒーに睡眠薬を入れて皆を眠らせます。
犯人は立浪の殺害場所をエレベーターにしてゾンビのしわざに見せかけます。しかし、そこまで運ぶのを見られたり、立浪がゾンビ化して戻ってくるリスクもあるし、その力があるならバルコニーから落とした方が効率的だったと感じます。
犯人の最大の殺害対象である七宮(柄本時生)は、静原が入れ替えたゾンビエキス入り目薬をさして目の粘膜からウィルスが侵入しゾンビ化します。そこで最初の死をむかえ、とどめで静原が頭蓋骨を槍で貫通して二度目の死を与えます。
ゾンビの返り血が目の粘膜に入っただけでゾンビ化するという設定ですが、最初に返り血をあびた重元はメガネで防げてます。その後の頭部破壊は、長槍や青竜刀で返り血をあびない距離を保っています。
姉をもてあそび精神的に自殺に追いやったクズの男たち(七宮と立浪)を殺害したとはいえ、静原(山田杏奈)も犯罪者なので罪をつぐなうことになります。静原は葉村(神木隆之介)を守って自分がかまれ、屋上で頭部を貫き自害します。
ラストシーンで、葉村の友人だった明智が戻るがゾンビ化してて、剣崎比留子が長槍で頭を貫きます。剣崎は葉村とコンビを組みたかったので、じゃまな明智を排除できたという展開です。剣崎には静原と似た「手段を選ばない信念」を感じます。
キャラクター・ランキング発表!
私が選んだキャラクターランキングは下のとおりです。性格の良し悪しは無視して、そのキャラを演じきれてるか、魅力はあるかを考えて選んでみました。
- 剣崎比留子(浜辺美波)
- 明智恭介(中村倫也)
- 静原美冬(山田杏奈)
- 葉村譲(神木隆之介)
- 重本充(矢本悠馬)
- 七宮兼光(柄本時生)
- 立浪波流也(古川雄輝)
- 菅野唯人(池田鉄洋)
- 名張純江(佐久間由衣)
- 高木凛(ふせえり)以下同順
『屍人荘の殺人』私の評価と続編
『屍人荘の殺人』は原作ミステリ小説がかなり話題になってたけどネタバレ完全回避してきて、今回はそのごほうびを頂いた感じです。クローズドサークル原因を生む「ゾンビ化」は、私が映画ファンでなければ否定派に回ってたとも思います。
実写映画では(全て見せる必要があるため)良質なミステリが小説に比べると少ないのですが『屍人荘の殺人』は間違いなくミステリ映画ランキング等で並べられることになりそうです。邦画では『22年目の告白 私が殺人犯です』も好みです。
一方「館ものミステリ」としてはゾンビを使った殺人方法以外、あまり新鮮さはありません。過去の因縁や動機、密室をやぶるトリック、犯人の自殺なども使い古されたネタで残念です。最初に犯人を見破った明智の退場は意表をつかれましたが。
キャラミスとしては、浜辺美波の存在感がきわだってて変顔・雲竜型からの真相披露・ドジっ娘ぶり・麺の食べ方等かわいい変人ぶりで他のキャストを圧倒してます。神木隆之介は目立たないけど、それがワトソン役を演じきれてる証拠です。
中村倫也のぶっ飛んだイタイキャラ、山田杏奈の幼さと目力の強さを共存させた魔女ぶり、柄本時生と古川雄輝のクズぶりも好演でした。ゾンビ退治時のレントゲン写真は、R指定回避策としてグッドアイデアです。興行収入しだいでは続編や金田一風ドラマ化もありえそうですが、機会あれば原作小説も読みたいです!
私の評価 75/100(60が平均)
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