映画『罪の声』評価は?ネタバレ感想考察/未解決事件の真相は?本当の罪は?
30年以上前の未解決事件をおう新聞記者の阿久津は、脅迫テープの3人の子どもの声が気になってました。一方、京都のテーラーの曽根は父の遺品のカセットテープに幼い自分の声を見つけ…。父は犯人だったのか?他の声の子は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 罪の声 |
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日本公開日 | 2020/10/30 [予告] 上映時間:142分 |
監督・キャスト | 土井裕泰[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/TBS SPARKLE、フィルムフェイス |
日本興行収入 | 12.4億円 (年間21位) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 81(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 阿久津英士(小栗旬)大日新聞大阪本社の文化部記者。特別企画「ギンガ・萬堂事件」の担当に
- 曽根俊也(星野源)京都のテーラー曽根の店主。父の遺品のカセットテープで驚くべき事実を知る
- 生島望(原菜乃華)生島秀樹の娘。聡一郎の姉。ハリウッド映画の翻訳家が夢
- 生島聡一郎(宇野祥平)生島秀樹の息子。望の弟
- 生島秀樹(阿部亮平)元マル暴の警察官だった
- 曽根達雄(宇崎竜童)俊也の父・光雄の兄
- 曽根亜美(市川実日子)俊也の妻。一人娘もいる
- 曽根真由美(梶芽衣子)俊也の母。入院中。光雄と共にテーラーを経営してきた
- 水島洋介(松重豊)大日新聞の元社会部記者。ギン萬事件当時は担当だった
- 鳥居雅夫(古舘寛治)大日新聞大阪本社・社会部事件担当デスク。阿久津の上司
- 生島千代子(篠原ゆき子)生島秀樹の妻。望と聡一郎の母
- 河村和信(火野正平)俊也の父・光雄と共に働いていたスーツ仕立て職人。父をよく知る
ネタバレ感想『罪の声』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作と監督・キャストの小栗旬と星野源
映画『罪の声』は、塩田武士のサスペンス小説(2016年発表)が原作です。グリコ・森永事件を題材としたフィクション(作り話)です。山田風太郎賞を受賞。2016年度の週刊文春ミステリーベスト10の国内部門第1位でした。
監督の土井裕泰(どいのぶひろ)は、多くのテレビドラマを手がけています。映画は『麒麟の翼 新参者』(2012年)『映画 ビリギャル』(2015年)等を監督してヒットさせています。
主演の小栗旬は『君の膵臓をたべたい』にも出演してましたが『銀魂』での主役ぶりが印象的です。星野源はまだ俳優のイメージがわかないけど『引っ越し大名!』では主役を演じました。
グリコ・森永事件とは?
映画『罪の声』内では「ギンガ・萬堂事件」と名称を変えていますが、元になったのは1984年に発生した食品会社脅迫事件です。通称「グリコ・森永事件」と呼ばれますが、他にも丸大食品、ハウス食品、不二家、駿河屋も脅迫されました。
「江崎グリコ社長誘拐事件」で無事に社長が保護された後、犯人側は「かい人21面相」(映画では「くらま天狗」)を名乗り、青酸ソーダ入り食品などで企業をおどして現金を要求します。しかし終息まで、犯人は現金を一銭も得ませんでした。
結局、毒入り菓子などによる直接的な死傷者も0人で終わります。犯人一味の「キツネ目の男」の似顔絵や、子どもの声による現金受け渡し場所の指定電話などが公開されたが進展はなく、2000年3月にすべての公訴時効が成立。
警察庁の広域重要指定事件では初の未解決事件(完全犯罪)となりました。劇場型犯罪とも呼ばれました。犯人像や動機として、株価操作、元グリコ関係者による恨み、北朝鮮工作員、元暴力団組長グループなども捜査対象となったようです。
テープに録音したのは父か?それとも?
映画『罪の声』では「ギンガ・萬堂事件」(通称「ギン萬事件」)で犯人側が使った「子どもの声」に焦点を当てます。主人公の曽根俊也(星野源)は、父の遺品のカセットテープに録音された「ギン萬事件」の子ども声が自分だと気づきます。
俊也は亡き父・曽根光雄を調べるうち、その兄の達雄と幼い頃に遊園地へ行ったのを思い出します。達雄はイギリス渡航歴もあるため、カセットテープと一緒に見つけた英語で書かれた手帳は達雄のものだった可能性が高いです。
達雄と光雄の父は、かつて「ギンガ製菓」の社員でした。その俊也の祖父は、無関係だった過激派の内ゲバ抗争にまきこまれて死亡後、ギンガ製菓から見捨てられました。その恨みから、兄の達雄は過激派とつながり始めました。
達雄が父の仇である「ギンガ製菓」を脅迫する動機にもなったのでしょう。一方、光雄はテーラーに没頭してたのでギン萬事件には無関係です。だから子ども時代の俊也の声を録音したのは達雄と思われますが、遊園地へ行った日は脅迫電話の後なので確証は得られません。
子ども時代に犯罪に加担させられていた可能性は誰にでもありそうなので「ぞっ」としますね。しかも当時の国民全員が知ってるような未解決事件の脅迫電話の声が「自分」と知ったら、多くの人が調べずにテープと手帳を処分するのでは?
脅迫電話の他の声の子の正体は?
大日新聞社の文化部記者・阿久津英士(小栗旬)は、昭和の未解決事件「ギンガ・萬堂事件」の担当に指名されます。オランダの類似事件を調べるためイギリス・ロンドンへ行くが空ぶりに終わります。次に、株価操作の可能性を調べます。
編集部の協力もあり、阿久津は小料理屋「し乃」にたどり着きます。女将には追い返されるが、板長からは曽根俊也も訪ねてきたことを聞けます。俊也は最初は阿久津を拒絶するが、他のテープの声の子どもが気になり協力することにします。
俊也は、父とその兄の達雄が通った柔道場つながりから、小料理屋「し乃」にたどり着いたのです。板長から聞いた、元警察マル暴の生島秀樹の家族4人の失踪を調べるため、中3だった娘・生島望(のぞみ)の当時の担任も訪ねます。
後日、望と電話でつながってた友人女性から「生島秀樹は仲間に殺され、その妻と望と弟は夜逃げしたが、暴力団の建設会社に捕らわれた」と聞きます。望と弟の聡一郎は「ギン萬事件」の脅迫電話「罪の声」の子だったので見張られ監禁されました。
ついに記者の阿久津と、脅迫電話の声の子どもが出会います。これにより、ギン萬事件の犯人グループがあぶり出されますが、30年以上警察が捜査して摘発できなかった事件を、記者だけでここまでたどり着くのは難しいだろうとも感じました。
ギン萬事件の本当の罪とは?声のJCの生死は?
記者の阿久津と、声の子だった曽根俊也は、青木組・建設現場の放火事件の犯人が、生島の息子・聡一郎だと気づきます。聡一郎と電話でつながれた俊也は「自分も声の子だった」と白状し、自殺寸前の聡一郎は救われます。
大阪・道頓堀のギンガ電飾看板下で、俊也と聡一郎は待ち合わせします。そこはかつて、聡一郎の姉・望が友人と会う約束をした場所で、聡一郎は覚えてました。望が約束を果たせなかった理由は、向かう途中でキツネ目の男に事故をよそおって殺害されたからです。
目撃した聡一郎は、建設会社に連れ戻されて学校へも行かずに労働力とされます。数年後、暴力団にリンチされた津村という男と、建設会社を放火後に逃げて別れました。その後、聡一郎は中華料理屋や靴職人など転々と苦しい人生を歩みました。
テーラーを営みながら妻子と幸せな人生を歩んできた曽根俊哉は、同じくテープの声主だった生島聡一郎に対して申し訳なく思います。しかし真の加害者は、ギン萬事件に子どもを巻きこんだ、達雄と生島や暴力団の青木たち9人の大人達です。
「ギン萬事件を暴く記事」を書いた阿久津の協力で、生島聡一郎は自分の意志で「ギン萬事件の声の子」と告白する記者会見を開き、生き別れの母に呼びかけます。スーツは曽根俊哉が仕立てた特注です。30年の時を経てテープの子どもがつながった瞬間です。後日、聡一郎は施設の母親と再会できます。
ギンガ・萬堂事件では犠牲者0人でした。しかし、ギン萬事件の本当の罪とは、ハリウッド映画の翻訳家になる夢を実現できなかった生島望の死と、生島聡一郎の逃亡生活をまねいたことだったのです。
ギンガ・萬堂事件の真相とは?全容解説!
阿久津は再度イギリスへ行き、ヨークで書店を営む曽根達雄を見つけて事件全容を聞き出します。一方、俊也は一時退院した母から「俊也の声を録音したのは私」と聞いて衝撃を受けます。家族の件でうらんでた警察への復讐だったようです。
まずは警察をやめた生島秀樹が、学生運動家だった曽根達雄に「企業や警察に復讐して儲けたい」と持ちかけたことから始まります。達雄はオランダのビール会社社長の誘拐事件を調べ、身代金受取りより株価操作での利益獲得をねらいます。
生島は経済ヤクザの青木、キツネ目の男、青酸ソーダを盗める山下などを集めます。しかし経費もかさみ株価操作だけでは、1人300万円しか儲からず、青木ら強硬派は現金要求で利益を得ようとするが失敗して以降あきらめます。
反目してた生島秀樹は青木らに殺害され、達雄は生島家族3人を山下家に夜逃げさせた後に海外逃亡。青木らの現金奪取の失敗原因は、達雄らの裏切りでした。達雄は「権力への闘争だった」と語るが、生島の子供の狂わされた人生を知ると声もなく、その後消息をたちました。
達雄が語ったとおり、ギン萬事件(現実ではグリコ・森永事件)は「横暴だった警察や大企業への報復」だったのかもしれません。しかし大損害をこうむった企業のリストラで、多くが失職して人生が狂わされたことも忘れてはいけません。
映画『罪の声』私の評価と感想
原作小説は未読なので、どのていど原作に忠実なのか不明ですが、2時間強でまとめ上げた手腕は素晴らしいです。人間関係などがやや複雑な物語ですが、見せる順番や構成が工夫されているため、わかりやすく仕上げられてる点も評価できます。
その一方、次から次へと証言者をたどるだけのストーリーであり、会話劇だけで進行していくため映画としては物足りないです。完全にテレビドラマ向けなので、劇場で観る意義も感じられませんでした。
主演の小栗旬と星野源の演技は見事で、単調なシーンでも魅力的な場面はいくつもありました。昭和の未解決事件の1つの可能性として「本当にありそう」と思わせてくれる脚本の緻密さと、名俳優の演技は劇場でなくても観る価値ありです!
私の評価 66/100(60が平均)
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