映画『64 ロクヨン後編』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?真犯人の正体と動機は?
横山秀夫のミステリ小説の映画化。2部作の後編。『64 ロクヨン前編』で14年前の少女誘拐殺人の模倣事件が発生。捜査一課長に直訴した三上は、身代金を運ぶ被害者を追うが、ヘリウムガスが切れて聞こえた犯人の声は…(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 64 ロクヨン 後編 |
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日本公開日 | 2016/6/11 [予告] 上映時間:119分 |
監督・キャスト | 瀬々敬久 |
キャスト 出演者 | 佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、緒形直人 |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/コブラピクチャーズ |
日本興行収入 | 17.4億円 (興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 0.1億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.28更新) 68(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 前作『64 ロクヨン 前編』19.4億 |
ネタバレ感想『64 ロクヨン 後編』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
映画『64 ロクヨン 後編』ネタバレ感想と考察
『64 ロクヨン 前編』では、ロクヨン事件に関わったものたちの14年間や、記者クラブや県警内部や警察本庁やキャリア組などの対立やごたごたの様子を、幸田メモをからめながら見せてくれました。そしてロクヨンの模倣事件が発生して後編へ突入です。
こんな複雑な話なのに、最大1ヶ月以上も後編の公開まで待たされると忘れてしまいそうです。内容的には家でDVD/ブルーレイで一気見するのに向いてる気がします。前編ではロクヨン事件の捜査に進展はなかったけど、後編ではついに犯人が判明します。
前編に比べると動きは激しくなりますが、後編もミステリ的な謎解き要素はほとんどありません。現職の刑事たちも、不要なくらい役に立ちません。結局は『64 ロクヨン』のタイトル通り、昭和に取り残された人たちだけで、ほぼ解決します。刑事課の人たちとかは、おまけですね。
結末は小説とは違うらしいです。ミステリにしては、爽快感やカタルシスが得られにくい映画ですが、これが原作者の意図なのか、映画監督や脚本家によるアレンジの結果なのかはわかりません。警察内の人間ドラマとしては、見ごたえがあります。
ネタバレあらすじや解説
ロクヨン模倣事件が発生し、刑事部から匿名での記者クラブ対応を命令された三上(佐藤浩市)は、情報を得るために刑事部のトイレで張って捜査一課長の松岡(三浦友和)をつかまえ、信頼を勝ち取って被害者の父「目崎正人(緒形直人)」の名前を聞き出します。
記者会見は経験の少ない捜査二課長の落合が担当しますが、情報を何も持たずにのぞんで、記者から質問攻めされてすぐに引っ込んだり失神したりします。なぜ無能な落合が二課長なのか不明ですが、キャリア組なのでしょう。何度も刑事部に戻って情報を小出しにするのは、刑事部長のねらいどおりだったかもしれません。
記者クラブ幹事の秋川(瑛太)は落合に「これは狂言誘拐ですか?」と尋ねますが、あとで考えると事件の核心をついてて驚きます。その秋川らも東京から来た記者らに、県警との信頼関係が弱い、となじられてしまいます。男社会のマウンティング合戦ですか。
三上は捜査一課長の松岡に頼み込んで、捜査車両へ乗りこみ、誘拐犯の電話に振り回される目崎を追って情報を得ようとします。目崎は誘拐された長女を助けたい一心で、現金2000万円入りのスーツケースを持って、犯人の指示通り、64事件の時と同じルートを事故しそうなスピードで爆走します。
一方、誘拐されたはずの目崎の長女の歌澄(かすみ)が万引きで補導されたことが、捜査車両へ連絡されます。わけわからなくなりますが、実際は犯人は誘拐しておらず、外泊の多い長女を追いかけながらの狂言誘拐だったのです。ヘリウムガスが切れて誘拐犯の声を聞くと、三上はそれが幸田だと見抜きます。
三上は交通事故を起こしそうな目崎に狂言誘拐だと伝えようとしますが、松岡など刑事部は模倣犯を逮捕するために、目崎を泳がせます。娘が失踪中の三上は「子どもがいなくなった時の気持ちがわからないのか!」と松岡らを恫喝しますが、後に三上本人こそがもっとひどいことをします。
目崎は空き地のドラム缶の中で、全ての現金を燃やすよう指示され実行し「事件は14年前のままだ。娘は小さな棺の中だ」と書かれた紙を見つけ、泣き崩れながらも、紙切れを食べて隠蔽しようとします。なぜか雨宮もいて殴りかかろうとしますが三上がとめます。警官らは紙の後半だけ回収します。三上の妻の美那子も捜査に駆り出されたけど、役立だちましたか。
合間には雨宮の過去シーンが映ります。どこかへ公衆電話から電話してるようです。また違う場面では、少女を車に乗せて家へ連れて行きます。そして自分にも娘がいたことを話して、祭り用の団子木を渡して泣き出します。少女が降ろされた場所は、なんと目崎のメサキスポーツ店の前でした。
雨宮は警察の捜査は信用せず、公衆電話で電話帳の最初から1件づつ、男性が出るまでかけ続け、目崎正人の声を聞いて犯人だと断定しました。犯人の声を唯一聞いた雨宮にしかできない、気の遠くなるような犯人探しです。三上家にかかってきた無言電話も、娘あゆみからではなくて伏線でした。
元刑事の幸田は、誘拐犯からの電話録音失敗を指摘した「幸田メモ」を刑事部長に隠蔽されてしまい、失意で県警をやめます。その後も雨宮には会ってたようで、犯人を見つけた雨宮とともに、目崎への復讐そして警察やマスコミへ目を向けさせるために、64事件の模倣で狂言誘拐を実行したのです。
県警に保護された目崎は、ロクヨン事件で雨宮がたどったルートを、地元民でもないのに既知のように運転したことを指摘されますが、来たことがある道だと切り抜けて、あくまでも模倣事件の被害者だと主張しすぐ解放されます。三上は刑事部長や捜査一課長の松岡に詰め寄ります。松岡は「俺たちにまかせろ」と言いますが、結果的には言葉だけでしたね。
映画『64 ロクヨン 後編』ネタバレ結末ラスト
三上は雨宮宅を尋ねますが、雨宮はいなくて代わりに、目崎の次女がいました。雨宮から預かった団子木の紙袋の中に娘の写真があったので、返しに来たそうですが、なぜ雨宮宅の場所を知ってたのか謎です。そもそも雨宮の車に乗るくらい信用した関係性をどうやって築いたのか知りたいです。
三上は次女を保護したことを利用して、目崎に「小さな棺に来い」と電話します。先ほど松岡に「娘がいなくなった親の気持ちがわからないのか」と恫喝した三上が、次女をすぐ返さずに目崎正人をおびき寄せようとするのは、警察としてはあり得ますが、物語のプロットとしては破綻してる気もします。
やがてロクヨン殺人犯しか知り得ない「小さな棺」すなわち空き地の放置自動車のトランクの中、に次女を探しに目崎がやってきます。2度も偽装誘拐でだまされる目崎はどうかしてますが、娘らを家に閉じ込めるわけにはいかないので仕方ないですかね。平成14年ではGPS端末も難しいでしょうし。
三上がぐだぐだと目崎を追うシーンは不要に思いますが、なぜか目崎は自白します。翔子ちゃんをなぜ殺したかは、自分でもわからないそうですが、誘拐したのは、借金返済のためです。三上はたまりかねて目崎を川の水に押し付けますが、その現場を刑事らと新聞社の秋川と目崎の次女に目撃されます。
逮捕現場を見て叫び出す、誘拐犯・目崎の次女。14年前に誘拐され殺害された、ロクヨン被害者・雨宮の娘。ロクヨン捜査員だった三上の行方不明の娘。ロクヨン事件に関わった三者の娘のうち、一番不幸なのは誰なのでしょうか。結果的に三上も、1人の少女の心を殺したのではないでしょうか。
64事件は時効前に誘拐犯の目崎の自白によって解決となります。警察本庁の長官訪問の話はなくなり、出世欲の強い本部長や刑務部長はがっかりです。幸田が出頭したため「幸田メモ」を代々申し送りしてきた、歴代の刑事部長もただではすまないでしょう。
三上は目崎を殴ったことを、秋川により新聞記事にされ、警察職を追われます。警務部の二渡(仲村トオル)が刺し違えてもなんとかすると言ってくれますが、三上は娘を探したいと言います。ところで存在感ある二渡ですが、市民の生活を平和に守る手助けを何かしてるのでしょうか。刑事部長と刑務部長もですが。
14年間引きこもっていた、録音失敗の張本人である日吉も部屋から出てきます。記者クラブでは広報室員が三上を待ちますが「今後は諏訪係長(綾野剛)の番ですよ」と激励され、諏訪が話し出します。
平成15年1月15日、どんど焼きを見にきた三上夫妻は、団子のついた枝を持った雨宮を見つけます。雨宮も出頭を決めたそうです。狂言誘拐の共犯者ですが、実行犯でもないので大した罪にはならない気がします。事件発生から約15年後にようやく、ロクヨン関係者たちの心の中も時効が成立したのかもしれません。
ラストで三上家の電話が鳴りますが、これは娘あゆみからの可能性もありそうですね。『64 前編』に比べるとミステリー要素が多くなって好みですので、ぜひ1度は観ることをおすすめしたいです!
この映画のおすすめ8ポイント
- 模倣犯のねらい
- 被害者の目崎と64事件との関係
- 模倣犯の正体は誰
- 三上らと記者クラブの対立の行方
- 刑事部と警務部の勝者は?
- 64事件の真相とは?
- 裁かれるべき者らに罰
- 三上夫妻の娘あゆみの行方
少し残念ツッコミどころ5ポイント
- 過去と現在の境界がわかりにくい
- 目崎の次女と雨宮の関係が不明
- 警察の役立たずぶり
- 2度も狂言誘拐にだまされる目崎
- なぜか自白する目崎
私の評価 64/100(60が平均)
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