映画『七つの会議』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?黒幕と勝者は誰?真相は?
池井戸潤の企業犯罪小説が原作。中堅メーカー東京建電の営業部は常にノルマに追われるが、ぐうたら社員の八角に疑問持つ者はなぜか次々と左遷されます。その理由がより上位の会議で話されついに親会社も巻き込み...。八角が握る真相とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 七つの会議 |
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日本公開日 | 2019/2/1 [予告] 上映時間:119分 |
監督・キャスト | 福澤克雄 |
キャスト 出演者 | 野村萬斎、香川照之、及川光博、片岡愛之助、音尾琢真、朝倉あき、鹿賀丈史、橋爪功 |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/マックロータス |
日本興行収入 | 21.6億円 (年間25位) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.18更新) 77(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
ネタバレ感想『七つの会議』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
池井戸潤と福澤克雄監督と豪華顔芸キャスト
ベストセラー作家の池井戸潤(いけいどじゅん)はテレビドラマ『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』などでも大人気で次々と映像化されています。福澤克雄はそれらを監督しただけでなく、2018年『祈りの幕が下りる時』でも評価されてます。
TVドラマは全く見ませんが『祈りの幕…』は東野圭吾原作(一覧)の映像化作品としては最高の出来だと思ってるので、同じ福澤克雄監督という期待もこめて『七つの会議』を劇場で観ることにしました。
出演は豪華キャストすぎて全員にはふれられませんが同時期に公開の『十二人の死にたい子どもたち』が若手の人気俳優女優の共演であることに対し、『七つの会議』では中堅やベテラン俳優の文字どおりの「競演」が見どころの1つです。
池井戸潤原作ではおなじみの、香川照之、及川光博、片岡愛之助、世良公則、北大路欣也らに加えて、主演の野村萬斎、紅一点の朝倉あき、春風亭昇太、鹿賀丈史、橋爪功らがドアップの顔芸で対決します。土屋太鳳、小泉孝太郎、吉田羊も出演してます。
野村萬斎(まんさい)は狂言師や能楽師ですが、俳優としても時代劇を中心に活躍しています。あまり知られてないけど『シン・ゴジラ』のゴジラ役をモーションアクターとしても演じています。私は現代劇で観るのは初めてです。
『七つの会議』ではぐうたら社員を見事に演じてるけど、セリフもドアップの顔芸も力が入りすぎてて、これ以外のサラリーマンは演じられないかなと思います。香川照之も顔芸俳優の常連ですが、後半でのやられっぷりを好むファンも多そうです。
ヒロイン女優の朝倉あきも、濃い俳優陣に負けず劣らず力強く好演してました。個人的には初めて女優として認識したけど、顔のむくんだおっさん連中の中だからか小顔でかわいいです。
主なテーマは「会社とは」「なぜ不正に手を染めるのか」?
軽く社会派の企業ドラマなので、社内政治や出世争いや足の引っ張りあいバトルがメインで、まるで「人を刺さないヤクザ映画」「悪代官に絶対服従の時代劇」のようです。それでもあえてテーマを掘り起こすとすると「会社に縛られる理由」でしょうか。
社員1人1人は誠実で小心者なので大した悪事ははたらけないが「会社という組織」で「上司に絶対服従するうちに不正に手を染めてしまう」のです。なぜなら「会社在籍」や「出世」などを人質に取られてるからです。見えない「最強のパワハラ」です。
逆にいうと会社組織に固執しない八角のようなぐうたら社員は、不正してまで成績を上げたいという気もおきないし、上司の重圧におびえる必要もないため、ある意味「最強」です。ラストのエンドロール時にも「不正に手を貸す理由」が語られます。
そこで野村萬斎は「会社に縛られる日本人像は、江戸時代に藩に縛られてた頃からの習慣。藩を出ると、はみ出し者と見られるため組織に固執するようになった」と語っています。当たらずとも遠からずという感じですが、日本人独特ではないと思ってます。
会社に縛られて不正するのは日本人独特ではない?
確かに日本はアメリカに比べると雇用の流動性がないため、離職してからの転職は難しいのですが、ヨーローッパでも多くの国がそうだし、先進国以外では雇用じたいが少ないため会社をやめたくない気持ちはもっと強いと思います。
欧米でもよほど高い能力がないと、給与水準が同じレベルの会社に再就職するのは難しいだろうから、結局は会社側の指示で不正をはたらく例が少なくないです。少し違うけど『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で残った社員も同様です。
『七つの会議』タイトルの意味は?
もとは七つの群像劇が描かれた短編小説で、様々な会議を通じて会社組織が隠ぺいしてきた闇があばかれていく物語でした。それに1話を追加した単行本が原作の映画です。そこから「七つの会議」というタイトルになっています。
映画では会議の数にはフォーカスしないけど「役員会議」などテロップでは表してくれます。ところで池井戸潤の描く会議は「一般的な会社の会議よりは無駄が少なく」見えるけど「大声や断定こそが論理に勝る」のはヤクザっぽくて気になるところです。
居眠りハッカクと社畜キタガワのブロマンス?
同期で優秀なライバル同士だった八角(野村萬斎)と北川(香川照之)でしたが、親会社ゼノックスから出向の上司の梨田(鹿賀丈史)に提案された業績アップのための不正に手を染めるという選択肢により人生が分かれます。北川はそれ以降出世します。
八角はそれ以前に、自分が押し売りした製品を購入した老人の死を見て改心しています。八角の子が「不正ネジ」が原因で死亡したのかと深読みしてたので、意外と改心の理由が弱くて残念です。それでは元嫁の吉田羊の役割は何だったんだろと思います。
しかし八角のような行動を取れる社員は少ないとも感じます。八角はその時点で出世街道から外れたわけなので、現実的には転職するだろうと思いますが、いつか致命的な不正が起こりそうな予感を持ってたのかもしれませんね。
鬼と恐れられる北川も人の子なので、常に真実を見向くような目の八角の前では去勢をはれなくなるようです。冒頭で鹿賀丈史に「甘いな」ととがめられてます。八角と北川は「光と闇」を象徴してるようで常に意識しあい最後は共闘するというブロマンス感もあります。
終盤に北川が八角に「今まで会社に尽くしてきたが、おまえのように生きてたなら違う人生も歩めたのかな」と言うけど考え方は人それぞれです。北川はストレスで短命の可能性も高いけど、生涯収入は八角の数倍なので家族を幸せに養うには充分でしょう。
一方の八角は気楽に会社人生をおくってきたけど、出世も年収増もあきらめてるのでその面では北川に劣ります。ただ離婚原因は収入ではなく、コミュニケーション不足のようなので、北川と同じ道を選んでても離婚はしたと推測できますが。
『七つの会議』総括と池井戸潤原作の中での順位は?
池井戸潤の映像作品を全て見たわけではないし、テレビドラマと映画を比べるのは難しいのですが、個人的には『七つの会議』は映像化した池井戸潤作品の中では一番好みです。映画『空飛ぶタイヤ』ドラマ『半沢直樹』もいいけど中盤ダレすぎるのが気になります。
『七つの会議』は長い話を約2時間にまとめてるのでダイジェストっぽいのは難点ですが、群像劇としての良さも残しながら数人の視点切り替えで様々な角度から真相に迫るので、常にハイライト感あり退屈しません。しかも同じ描写は繰り返されません。
急ぎすぎてて、理解する前に全て説明されてしまうのは少し物足りないです。最近の邦画では多いのですが。また、会社を傾ける材料を握る八角に対して、有効な手立てをうてない経営陣にも無能ぶりを感じ、八角がヒーローとして強すぎます。
朝倉あき演じる浜本は事務社員として不正暴きに加担するのかと思いきや、探偵役としても及川光博より活躍してたのが印象的で評価したいです。ただ、ラストでドーナツ屋になってたのは、本当にやりたいことはそれなのか?という疑問も感じます。
全体的には気持ちの良い映画ですが、紙芝居のようにシーンをつなげただけのようにも感じ、テレビドラマで良かった気もします。でも顔芸を超大画面で観れるので、劇場上映での需要も多そうです。会社員経験のある人ならスカッとできるのでオススメです!
私の評価 65/100(60が平均)
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