『エヴァンゲリオン新劇場版 破』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?アスカの決断と結果は?
エヴァンゲリオン新劇場版四部作の2作目。突然やってきた第2の少女・アスカと一緒に暮らすことになる碇シンジ。レイと3人のチームワークも増すが新エヴァと使徒の出現により…。NERV/ゼーレ/マリ/カヲルの目的は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 |
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日本公開日 | 2009/6/27 [予告] 上映時間:108分 |
監督・キャスト | 庵野秀明、摩砂雪、鶴巻和哉(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | クロックワークス、カラー/カラー |
日本興行収入 | 40.0億円 年間11位 |
世界興行収入 | 0.4億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.28更新) 81(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | エヴァ庵野秀明シン一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 碇シンジ(緒方恵美)エヴァンゲリオン初号機パイロット。碇ゲンドウの息子。第3の少年
- 碇ゲンドウ(立木文彦)NERV最高司令官。シンジの父
- 綾波レイ(林原めぐみ)エヴァンゲリオン零号機パイロット。第1の少女
- 式波・アスカ・ラングレー(宮村優子)エヴァンゲリオン2号機パイロット。第2の少女。ドイツ出身
- 葛城ミサト(三石琴乃)NERV戦術作戦部作戦局第一課長で戦闘指揮官。パイロットの面倒もみる
- 真希波・マリ・イラストリアス(坂本真綾)エヴァンゲリオン仮設5号機のパイロット。イギリス出身。まきなみ
- 赤木リツコ(山口由里子)NERV技術開発部所属でE計画担当。エヴァンゲリオン開発責任者
- 加持リョウジ(山寺宏一)NERV主席監察官。ミサトの元恋人?
- 冬月コウゾウ(清川元夢)NERV副司令官
- 渚カヲル(石田彰)月の謎の少年。EVANGELION Mark.06パイロット
ネタバレ感想『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
破とは?庵野秀明と旧作とは?全四部作?
1980年代に岡田斗司夫、庵野秀明らが設立したGAINAX/ガイナックスはTVアニメで『ふしぎの海のナディア』、1995年に『新世紀エヴァンゲリオン』をヒットさせました。その後、庵野秀明は「スタジオカラー」として独立します。
そして前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から「序・破・Q・シン」全4部作シリーズが、TVアニメのリビルド(再構築)版として始まりました。「序破急」は雅楽の舞楽や能楽の三幕構成のことです。ちなみに四幕構成は「起承転結」。
前作『序』はTV版とほぼ同じ内容でした。本作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』も終盤までの展開は似てますが、最初から新キャラのマリが登場するし、エヴァ新機体のあつかいも変わっていて、ラストは驚きの結末です!
使徒、特務機関NERV(ネルフ)、その上位機関で国連所属のゼーレ(SEELE)、セカンドインパクト、第3新東京市などの世界観や用語などは、映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』で解説したので気になる人は確認してください。
シンジの母とは?父子の距離感が変化?
碇シンジは、父の碇ゲンドウと一緒に地上へ降りて、母の碇ユイの墓参りへ行きます。2人で来たのは3年ぶりだそうです。新劇場版での碇ユイの死因はまだ不明ですが、遺体もないのでセカンドインパクトやエヴァ実験がらみでしょうか。
前作の碇ゲンドウの息子に対する冷たさと比べると別人のように思えますが、ヤシマ作戦でのシンジの活躍を少しは認めたのかもしれません。本作では、父子のコミュニケーションや距離感の変化も見どころの1つです。
碇ゲンドウは息子シンジのことが嫌いなわけではなく「子どもとの接し方がわからないオヤジ」の典型です。「人類の存亡をかけた仕事」と「我が子」を天秤にかけて迷わず前者を選べる合理的思考力こそが、ゼーレに評価されたのでしょう。
しかしゲンドウが息子シンジとのコミュニケーションを放棄したわけではないのは、中盤で活躍したシンジを「よくやった」とほめた点からも明らかです。綾波レイがアレンジした食事会が開催できなかったのは残念ですね。
そして綾波レイを碇ユイとかぶせて見る碇ゲンドウも描写されます。本作時点では明らかにされてませんが、綾波レイが碇ユイの生まれ変わりやクローンである可能性を感じさせます。
新キャラ真希波マリとは何者?
真希波・マリ・イラストリアスは、旧作TV版にも登場しなかった完全新キャラです。冒頭で、NERVユーロ支部のエヴァンゲリオン仮設5号機パイロットとして登場し、秘密裏に日本のNERV本部へ訪れ、第10使徒戦ではエヴァ2号機で出撃します。
真希波(まきなみ)マリは、他エヴァ女性パイロット「綾波レイ」「式波アスカ」と同様に「波」がつきます。「碇シンジ」もあわせると、海に関する名字がエヴァパイロットとして共通してますが「第4の少女」とは呼ばれません。
今回、真希波マリが顔を合わせたネルフ隊員はほとんどいないため、碇シンジは数少ない1人です。私は最初、真希波マリを「式波アスカの母親か姉」と深読みしたけど、アスカの惨事後に悲しみが見られなかったので違ったのでしょう。
結局「破」までの情報ではマリの正体は不明ですが、ネルフ隊員ですら知らなかったエヴァンゲリオンの裏コード「ザ・ビースト」を簡単に発動させたことから、裏事情にくわしい人物であることは間違いなさそうです。
バチカン条約とは?エヴァ7機とパイロット一覧
冒頭、真希波マリが搭乗するNERVユーロ支部のエヴァンゲリオン仮設5号機は、第3の使徒を倒した後に自爆して消滅します。NERV日本支部の碇ゲンドウと冬月コウゾウは、この消滅を「計画どおり」と言います。NERVユーロ支部から日本に、アスカとエヴァ2号機が配備されます。
NERV北米支部のエヴァンゲリオン4号機は、実験中に爆発し消滅します。その件で弱腰になったNERVアメリカ支部は、エヴァンゲリオン3号機の実験を日本支部に移管します。
結果的にアメリカの不安は的中し、搭乗したアスカごとエヴァ3号機は「第9の使徒」に寄生されてしまいます。アスカを気にしてトドメをさせないシンジのエヴァ初号機は、碇ゲンドウの命令でダミープラグによる強制操縦に切り替えられます。
ダミープラグで機械的に動くエヴァ初号機は、第9使徒を喰い倒してアスカの入ってるエントリープラグをかみ砕きます。初号機の中でなす術なかったシンジは、ネルフ基地を破壊するとおどすが、ゲンドウがLCL濃度を上げさせて停止させます。
その後出現した第10使徒に、真希波マリが操縦するエヴァ2号機は敗れ、綾波レイが乗るエヴァ零号機は破壊されてエントリープラグごと飲みこまれてしまいます。シンジが乗るエヴァ初号機がレイを助け出し、サードインパクトが発生。
と思いきやエンドロール後、ロンギヌスの槍?が初号機を貫いてくい止められます。槍を投げたのは、月から飛来した「EVANGELION Mark.06」とパイロットの渚カヲルです。Mark.06は碇ゲンドウと冬月が、月で偵察したエヴァ6号機です。
エヴァンゲリオン内でのバチカン条約とは、一国家のエヴァ保有数は3機までという世界レベルでの規定です。だから、日本にエヴァ4号機が到着すると、零号機、初号機を残して、2号機を凍結しました。
- エヴァ零号機(綾波レイごと第10使徒に喰われた)
- エヴァ初号機(碇シンジとレイが融合しMark6の槍に貫かれた)
- エヴァ2号機(マリがザビースト化。レイに救われるが大破)
- エヴァ3号機(アスカごと第9使徒に寄生され初号機が撃破)
- エヴァ4号機(NERV北米支部で実験中に爆発)
- エヴァ5号機(NERVユーロ支部で第3使徒戦後にマリが自爆)
- EVANGELION Mark.06(エヴァ6号機。渚カヲルと月から飛来)
使徒とは?第10まで全使徒の一覧!
使徒とは、セカンドインパクト以降に第3新東京市に襲来する謎の生命体です。目的は、特務機関NERV基地の地下「セントラルドグマ」に眠る「第2使徒リリス」との接触により「サードインパクト」を引き起こすことです。
使徒の弱点「コア」は、防護バリア「ATフィールド」で守られてるため、戦略自衛隊や国連軍などによる通常攻撃が全く通用しません。ATフィールドを中和できる「汎用ヒト型決戦兵器エヴァンゲリオン」のみが人類唯一の対抗手段です。
「第3の使徒」は竜の骸骨のような形状です。永久凍土から発掘されNERVユーロの旧北極基地「ベタニアベース」で実験中、地上「アケロン」へ逃走し、マリが乗るエヴァ仮設5号機にコアを破壊されて、5号機の自爆に巻きこまれ消滅します。
「第7の使徒」は、水飲み鳥のおもちゃのように細長い足と振り子のようなコアを持ちます。アスカが乗るエヴァ2号機は、細い触手攻撃を全てかわしておとりコアを破壊後、ATフィールドを蹴り破って本コアごと使徒を形象崩壊させます。
「第8の使徒」は黒い球体のようで、強力なATフィールドと落下エネルギーによりNERV本部の消失をねらいます。その後セントラルドグマに眠る「第2使徒リリス」と接触するつもりです。長距離攻撃もATフィールドでゆがめるほどです。
葛城ミサトの作戦で、まずエヴァ初号機に乗るシンジがATフィールド全開で両手で使徒を受け止めます。コアは高速回転してとらえられないので、エヴァ零号機のレイがコアをキャッチし、エヴァ2号機のアスカがナイフと膝蹴りで撃破します。
「第9の使徒」は、北米から移管されたエヴァンゲリオン3号機に寄生し、パイロットの式波アスカごと乗っ取ります。エヴァ初号機のシンジが戦いを躊躇すると碇指令がダミープラグに切り替え、元エヴァ3号機の使徒は徹底的に破壊されます。
「第10の使徒」は、鎧のような形状と強力なATフィールドで高い防御力を持ち触手で攻撃します。マリ搭乗のエヴァ2号機(裏コードで獣化第2形態化)が破壊されながらも複数のATフィールドをかみ砕き、レイのエヴァ零号機がN2誘導弾を推進力でぶつけて爆破するが倒せません。
第10使徒は丸のみしたエヴァ零号機や綾波レイと同化し、セントラルドグマの「第2使徒リリス」へエヴァとして侵入することでネルフの自爆装置を無効にする作戦です。しかしシンジのエヴァ初号機が覚醒し、レイを救出後に使徒は消滅します。
- 第2の使徒リリス(NERV地下でロンギヌスの槍に貫かれ十字架に磔)
- 第3の使徒(永久凍土から発掘。マリのエヴァ5号機の自爆で消滅)
- 第4の使徒(序。シンジ初搭乗の初号機が暴走して撃破)
- 第5の使徒(序。シンジが初号機でナイフで撃破)
- 第6の使徒(序。ヤシマ作戦でレイとシンジのエヴァが撃破)
- 第7の使徒(アスカが2号機で撃破)
- 第8の使徒(シンジ、レイ、アスカが協力して撃破)
- 第9の使徒(3号機に寄生。初号機が粉砕。アスカは生死不明)
- 第10の使徒(零号機とレイを捕食。覚醒初号機がレイを救出し消滅)
勢力図は?NERV,ゼーレ,マリ,カヲル,使徒の目的は?
国際連合下の秘密組織ゼーレ(SEELE)の最終目的「人類補完計画」については詳細不明ですが、第2使徒リリスに迫る使徒とエヴァンゲリオンや月で製造するMark6を使って何かを引き起こそうとしてるのは確かです。
ゼーレの下位組織NERV日本の碇ゲンドウと冬月コウゾウが企むのも「人類補完計画」ですが、ゼーレのシナリオとは違うようです。加持リョウジをスパイとして、エヴァ5号機を自爆させました。
エヴァ初号機が覚醒してサードインパクトが発生寸前になったのも、碇ゲンドウのシナリオだったようです。他のエヴァンゲリオンが残っていては発生しない現象だったのかもしれません。
碇ゲンドウの「人類補完計画」とは、赤木リツコの発言「この世界のことわりを越えた新たな生命の誕生。代償として、いにしえの生命は滅びる」に近いことだと思います。つまり「新しい生命を誕生させる」のが目的なのでしょう。加持が渡した「ネブカドネザルの鍵」も人類補完計画に必要な物と推測してます。
加持リョウジは仕事と割り切ってゲンドウのために働いてるようで「大人の都合に子どもを巻き込むのは気がひける」と発言します。それに対して新キャラ真希波マリは「自分の目的に大人を巻きこむのは気おくれする」というセリフを残します。
つまり真希波マリは碇ゲンドウのシナリオとは違う目的で動いてるようですが、ゼーレ、カヲル、使徒のどれに所属してるのか、または単独の勢力なのか現段階では不明です。獣化エヴァを知ることからゼーレかカヲルとつながってる気がします。
『序』でも明かされたように、使徒の目的は「第2使徒リリス」との接触でサードインパクトを引き起こすことです。しかし今回、覚醒エヴァ初号機、碇シンジ、綾波レイ、使徒の融合でもサードインパクトが発生しました。
つまり4者の融合は「使徒+リリス」と同じ効果を生むのでしょう。碇ゲンドウがエヴァ初号機に「なぜ私を拒絶する、ユイ」と語りかけてたことから、天使の輪のついた覚醒エヴァ初号機は「母なる使徒リリス」に近い存在かもしれません。ロンギヌスの槍?に貫かれたのもリリスと同じです。
サードインパクトを止めたMark.06に乗る渚カヲルの目的は「今度こそシンジ君だけは幸せにしてみせる」です。つまり碇ゲンドウとは目的が違っています。Mark.06の正式パイロットなら、ゼーレの目的と一致してるのかが気になります。
運命の子ども達の成長?大人との戦い?
映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では、登場した式波アスカの視点から、シンジ(七光)とレイ(えこひいき)のもどかしいコミュニケーションを見ることができます。前作『序』では、葛城ミサトの視点から、シンジと父ゲンドウとの関係が見られました。
本作『破』で最も成長したのは「強がって1人だけの力で生きてきた少女」式波アスカです。チームワークを学び、友達関係を意識し始め、「孤独」はさみしいことだと気づき、シンジには恋愛直前の感情をいだき、レイのセッティングした父子の食事会にも参戦しようとします。
レイがシンジのことを「ぽかぽかする」というのを聞いたアスカは、エヴァ3号機の実験日と重なったのを知り、自ら志願してシンジとレイが選ばれないようにします。他人の幸せを願えるほど成長したアスカだけに結末は悲劇的でした。
「ゲンドウ以外の他人に興味なかった」綾波レイと「誰かのためだけに戦ってた」碇シンジがお互いを救おうとするのも大きな成長です。レイが「碇君がもうエヴァに乗らなくていいようにする」と特攻するシーンは涙腺崩壊。「他人の言いなり」が処世術のシンジが「自分のために」レイを救うのも成長です。
前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』では、碇ゲンドウやゼーレ等「大人達」のシナリオに、「運命の子ども達」シンジとレイが振り回されてましたが、本作『破』ではマリとカヲルの参戦により「子ども達」側が主導権を取りつつあります。
マリとカヲルの目的が一致するのかは『破』段階では不明ですが、ラストで「サードインパクト」を止めたのは、「運命の子ども達」が「旧人類の大人達」のシナリオを阻止した初めての行動なので、今後の展開が楽しみです!
映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』私の評価と続編
前作『序』は、旧作TV版のダイジェストに近い内容でした。本作『破』も基本的には旧作と似た展開ですが、新キャラ、使徒、ラストなどが完全オリジナルで全く先が読めません。アスカやレイの悲劇は予想できたけど、それでも悲しすぎます。
アスカ、レイ、シンジの成長とエモさや、謎めいた新キャラの真希波マリや渚カヲルの登場と続編の期待感などで、個人的にはエヴァ新劇場版では『破』が一番好きです。完結編『シン』が超えるかもしれませんが。
シンジが飛び出し、結局戻って戦う流れはさすがにデジャブ感あり見飽きました。しかし父ゲンドウは常に受け入れてくれるし、前作で突き放したレイが今回は「碇君のため」に戦うので、シンジも周りも同時成長してる姿を感じられます。
エンドロール後にサードインパクトを止める渚カヲルが現れ「今度はシンジを幸せにする」と発言したので『序』でも書いたとおり「旧作TV版からのループ構造」の可能性も増しました。続編『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』も期待大!
私の評価 85/100(60が平均)
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