映画『仮面病棟』ネタバレ感想考察/病院の秘密は?真犯人の動機と正体は?タイトル意味は?
恋人を亡くし落胆する速水は、先輩医師の紹介で一夜限りの当直医に入るが、銃を持つピエロ仮面が侵入し、銃撃された女子大生を治療させられます。医師と看護師は病棟に閉じこめられ…。病院の秘密とは?ピエロ仮面の正体は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 仮面病棟 |
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日本公開日 | 2020/3/6 [予告] 上映時間:114分 |
監督・キャスト | 木村ひさし(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | ワーナー・ブラザース映画/ファイン・エンターテイメント |
日本興行収入 | 7.1億円 興行収入ランキング |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 68(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 速水秀悟(坂口健太郎)一夜だけの当直医。恋人の洋子を交通事故で亡くした
- 川崎瞳(永野芽郁)コンビニ強盗に撃たれて拉致された女子大生
- 田所三郎(髙嶋政伸)何かを隠してそうな病院長
- 東野良子(江口のりこ)田所病院の先輩看護師
- 佐々木香(内田理央)田所病院の若い看護師
- 小堺司(大谷亮平)事故死した妹の恋人の速水を気づかう先輩医師
- 小堺洋子(藤本泉)速水の恋人。交通事故死した
- 菜緒(朝倉あき)
- 国平義央(小野武彦)元内閣総理大臣
- 金本(鈴木浩介)取り調べする刑事
ネタバレ感想『仮面病棟』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作ミステリ小説と監督・キャスト
原作は知念実希人の2014年のミステリ小説『仮面病棟』です。累計発行部数が85万部を超える大ヒット作です。映画のストーリーは、知念実希人も脚本に加わって一部改変してるそうなので、原作既読者も新鮮に楽しめそうです。
監督の木村ひさしは、テレビドラマや映画の監督を多く務めています。ミステリーを手がかけることが多く、最近の『屍人荘の殺人』も原作の力があるとはいえ、とても楽しめたので今回も期待したいです。
主演の坂口健太郎はモデル出身ですが、2017年の『64 ロクヨン』で日本アカデミー賞の新人賞を受賞後、多くの映画に出演して最近では『人魚の眠る家』の研究者役が印象的です。
ヒロインの永野芽郁(ながのめい)は、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』ヒロイン役やドラマや映画で活躍中の若手女優です。個人的には『帝一の國』でのヒロイン役が記憶に新しいです。今後、代表作になるような映画を期待したい女優です。
正義も悪もどんな役でもこなせる髙嶋政伸、クセある役が印象に残りやすい女優の江口のりこ、『おっさんずラブ』で注目が高まってる内田理央の他、小野武彦、大谷亮平、藤本泉、朝倉あき等が出演しています。
その日一夜限りの当直医に選ばれた理由は?
速水(坂口健太郎)は、数ヶ月前に恋人を交通事故で亡くした後、医師の仕事から離れていたようです。その恋人の兄の小堺司(大谷亮平)が速水を一夜かぎりの当直医に選んだ理由は、速水のことを心配して社会復帰もかねて紹介したのです。
「その日」に選ばれた理由は、映画を最後まで観ても語られなかったので「偶然」ということでいいのでしょう。
田所病院ってどんな病院?あやしい患者は?
田所病院は、元精神病院でしたが現在は「寝たきり患者」「認知症患者」「身元不明・意識不明患者」等の入院や理学療法士によるリハビリを専門とした病院です。現在は満床です。精神病棟のなごりで鉄柵も残っています。
身元不明患者は、発見場所と順番により「新宿13」のように呼ばれ、病室入口のプレートにも記載されています。速水を案内した看護師の東野(江口のりこ)は、「子がいなくなった」とさわぐ認知症おばさんに人形を渡してなだめます。
このおばさん「重要人物」だったり「認知症のふり」ではないかと疑いました(ネタバレは下で)。病室内の患者も映されますが、他人が騒いでも気にしない患者ばかりで不気味です。実はこの中に「真犯人に関わる人物」がいるのですが。
病院訪問者3人は何者?ピエロ計画ここで判明?
アルバイト当直医の速水が、突然ナースから呼ばれて行くと、2人の侵入者がいることに気づきます。侵入者の1人は、お腹を負傷した女子大生(永野芽郁)、もう1人は彼女を銃撃したピエロ仮面のコンビニ強盗犯です。
当直医の速水は、ピエロ仮面におどされて、今は使われてないはずの1階の手術室で女子大生の川崎瞳を治療します。その時、ピエロ仮面の背後を、病院院長の田所三郎(髙嶋政伸)が襲いますが間一髪でバレて失敗します。
大金を渡して命を救われた田所院長を含め、速水と2人の看護師と治療された女子大生は、2階より上の病棟に閉じこめられます。1階への階段は鉄格子で閉じられ、唯一の移動手段エレベーターはピエロ仮面に監視されます。
日本で銃を手に入れてるピエロ仮面へのツッコミはいいとしても「自分が銃で撃った女性を死なせないために、病院へ連れてきた」というのは、いきなり矛盾してます。「コンビニ強盗するのが主目的」なら、撃っても放置するはずです。
なぜなら、パトカーを回避しながら治療できる病院を探すよりも、救急車到着の方が早いからです。仮に近所にくわしい人が犯人で、近い病院を知ってたとしたら「田所病院では治療できない」ことも知ってたはずです。
つまりこの時点で、ピエロの真の標的は「田所病院」であることが判明します。しかもピエロは鉄格子の存在をとぼけますが「速水らの携帯電話だけ没収して患者のは無視した」ことからも、病棟患者の症状を熟知してる可能性が高いです。
殺人事件の最初の犠牲者は?その理由は?
上階の女性の叫び声で駆けつけた速水は、看護師の東野が胸を刃物で刺されて殺害されてるのを見つけます。東野が最初の犠牲者になった理由は、犯人の秘密に近づいたからです。東野が、川崎瞳に耳打ちした内容(下記)が真実だったためです。
病院が隠す真相とは?ピエロの動機となぜこの日?
入院病棟に監禁された速水は、ピエロ仮面が院長室を調べてるのを知り、川崎瞳と共に自分も調べて「手術記録」を見つけます。そして院長の田所と若い看護師の佐々木香(内田理央)が、深い仲のようで何かを隠してることも知ります。
速水は、患者の携帯電話で110番通報するとおどして、ピエロがさらった川崎瞳を救います。速水はピエロを上層へ呼び出し、そのすきに川崎がピエロから奪った「手術室を施錠してた鍵」で1階の鉄柵を開けて手術室へ入ります。
そこの隠し扉の裏には隠しエレベーターがあり、5階の資料室につながっています。速水と川崎はその奥で「腎臓移植手術を受けた入院患者」を見つけます。田所病院は、身元不明患者から臓器摘出して、VIP患者に移植手術して儲けてたのです。
その時の執刀医と看護師は、手術記録から常に「田所院長、東野、佐々木」だと判明してます。そしてピエロ仮面が田所病院に「侵入した理由」は、違法手術の証拠を得て告発するためであり、「この日を選んだ理由」は3人が当直医だからです。
ピエロの計画のずさんさの理由は後に明らかにされますが、自分が上階にいる間にエレベーターで降りられる可能性を考えてない?のは、出口を施錠してる安心感でしょうか?それとも共犯者がいるからでしょうか(下記)。
病院が隠す闇の秘密は「違法な臓器売買」です。田所院長の「生きる価値ある人と、価値ない人がいる」も「またか!」とデジャブを感じたけど、この真相は『仮面病棟』のミステリ要素のメインではないのでこの程度の謎解きでもいいと思います。
それよりも、患者の携帯電話を手に入れた速水が、たとえそれで犯人をおどすにしても、先に110番通報してないのはありえないと感じました。その時点で私は「速水こそ真犯人では?」と深読みしたのですが、ただの脚本の穴だったようです。
ピエロがストレートに聞かない理由は?
病院の裏事業を知った速水は、ピエロの目的である顧客リストを得るためにピエロと協力して、田所と佐々木に「警察の食事差入れ」を取りに行かせます。そして田所が顧客リストを処分しようとした現場をおさえて顧客リストを手に入れます。
ピエロが「臓器売買の顧客リスト」をストレートに田所院長や看護師に求めない理由は、最後までわかりませんでした。真犯人は最初から関係者を殺害するつもりだったので、銃でおどせば「命より価値の低い顧客リスト」を渡したと思うのですが。
ピエロ仮面の正体はアノ人?
顧客リストの場に、速水と川崎瞳、院長と看護師、ピエロが集まります。速水の推理「ピエロの正体は、妹の受入れを許可しなかった田所にうらみを持つ小堺先輩でしょ」には一瞬納得しかけたので「どんでん返し」の演出としては楽しいです。
そこから大混乱となり、隠しメスでピエロに切りつけた田所は、ピエロ仮面の正体が勤務する理学療法士の宮田とわかり驚きます。火災報知器でスプリンクラーを作動させた速水が銃を奪おうとする時、真犯人にスタンガンで気絶させられます。
真犯人の正体と動機は?ピエロの動機は?
警察突入で救われた速水は事情聴取で、田所院長と佐々木看護師を銃殺したピエロこと宮田が銃で自殺したことを聞かされます。その中にはなぜか「川崎瞳」は含まれていません。警察は「川崎瞳」は恋人を亡くした速水の妄想だと片付けます。
速水は患者「川崎13」こそ瞳の正体だと気づき、川崎瞳が小堺医師を刺殺した現場にたどり着きます。川崎瞳は唯一の家族の姉と一緒に事故にあい田所病院に入院中、心肺停止した姉の臓器が摘出されて死亡したことを知り復讐したのです。
ちなみに東野が最初に殺害された理由は「あなた患者では?」と耳打ちしたからです。川崎は理学療法士の宮田と入院中に知り合いました。宮田がピエロを演じた動機は、自分の祖母も臓器移植の犠牲になったことを知り、かわいい川崎の口車に乗せられたためです。
ちなみにピエロの宮田が殺害された理由は、口封じのためか病院関係者だったからだと思います。また、2度もチャンスがあったのに、川崎が速水を殺害しなかった理由は「初めて姉以外で信頼できる人」と感じたからでしょう。
最後の復讐相手は?成功したのか?
速水が逃した川崎の最後の復讐相手は、姉の臓器を違法移植されて元気になった、元内閣総理大臣の国平義央(小野武彦)です。川崎が銃を取り出すその時、速水が田所病院の違法臓器売買をTVで告発し「復讐」をやめるよう告げます。
結局、川崎瞳(仮名)が国平に復讐したのかどうかは明確にされませんが、しなかったと思います。なぜなら、速水が川崎瞳に渡した「亡き恋人のお守り」を返却されてたし、速水が瞳を追うように外へ出たからです。
タイトルの意味は?テーマは?伏線回収は?
タイトル『仮面病棟』の表の意味は、ピエロ仮面が人質をとって病棟にたてこもったことです。そしてもう1つの意味は、人を救うという仮面をかぶった病棟(その実態は違法臓器売買)のことです。
映画『仮面病棟』のテーマは、田所院長のセリフ「生きる価値のある人間と、価値のない人間がいる」にこめられています。この否定意見を「入院患者による人間的な行動」等で見せてほしかったなとは思いますが。
一方、犯人側の主張は「価値のない人間なんていない」ということですが、ピエロこと宮田は入院患者の手術後の縫合を解いて傷を開いてるし、川崎瞳は復讐のためとはいえ院長や看護師の命を奪ってるので、田所病院と同じ側なのが皮肉です。
ミステリ映画らしく、伏線も散りばめられてて、ラストで回収の様子が示されます。ピエロの正体、理学療法士の宮田は速水が病院に入る前に会ってて小堺にいやみを言った青年です。川崎瞳の寝てる様子や患者名「川崎13」は一瞬映りました。
田所院長がピエロの背後からの奇襲に失敗した理由は、川崎瞳が小型マイクでピエロに助言したからです。あの動作は初見でもあやしいと感じます。院長室でピエロが田所を銃殺しそうで速水が助けに入る時、川崎が「せんせいっ」と速水を止めますが、あれは「宮田先生」のことだったんですね。
川崎瞳は入院患者だとバレないよう、派手なウィッグ(かつら)をかぶり厚化粧し、臓器摘出の傷を隠すために、宮田に銃撃でかすらせました。「車内での発砲の形跡や血痕」を警察は見逃さないだろうし、銃撃音を誰も聞いてないのはツッコミどころですが。
『仮面病棟』私の評価と続編
「若手出演の邦画ミステリ」は期待値を高めるわりに、登場人物たちがIQ低い言動を繰り返すパターンが多くて、映画『仮面病棟』もあまり期待してませんでした。登場キャラも薄いし、脚本の穴も多く、斬新な動機も見せられません。
しかし「映画なんてしょせん空想(ファンタジー)なので、多少のツッコミどころは気にせず、それを上回る面白さを追及する」という開き直りはむしろ長所になっています。それが木村ひさし監督の考えと一致してるかは知りませんが。
本作も、木村ひさし監督の前作『屍人荘の殺人』と同様に、冒頭の強烈な謎の提示から、終盤に明かされる真犯人・真相・どんでん返し・伏線回収等が見事で気持ちよいです。中盤だるみがなければなおよいのですが。
原作者の知念実希人は『仮面病棟』の続編的位置づけのミステリ小説『時限病棟』も書いてるので、映画『仮面病棟』がヒットすれば続編映画として製作されそうです。その前に読んでみたいと思っています!
私の評価 63/100(60が平均)
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