映画『ドクターデスの遺産 BLACK FILE』ネタバレ感想考察/実話?犯人の目的や正体は?安楽死は殺人?
人気ミステリ小説の映画化。終末期の患者の不審死が続き、捜査一課の犬養と後輩の高千穂は、安楽死を助ける「ドクターデス」の存在を知ります。犬養の腎臓病の娘にも魔の手がせまり…。犯人は救世主か?猟奇犯か?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ドクター・デスの遺産 BLACK FILE |
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日本公開日 | 2020/11/13 [予告] 上映時間:120分 |
監督・キャスト | 深川栄洋[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | ワーナー・ブラザース/光和インターナショナル |
日本興行収入 | 7.0億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 58(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 雛森めぐみ(木村佳乃)ドクターデスの看護師?
- ドクターデス?(柄本明)ドクター・デスを名乗る医師?
- 犬養隼人(綾野剛)警視庁捜査一課の直感型の刑事。高千穂の先輩。11歳の腎臓病の娘がいる
- 高千穂明日香(北川景子)警視庁捜査一課の分析型の刑事。犬養の後輩。以前は似顔絵捜査員だった
- 麻生礼司(石黒賢)警視庁捜査一課の班長。犬養、高千穂の上司
- 沢田圭(岡田健史)捜査一課の新米刑事
- 室岡純一(前野朋哉)捜査一課の刑事
- 青木綾子(青山美郷)捜査一課の刑事
ネタバレ感想『ドクター・デスの遺産 BLACK FILE』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作・監督と綾野剛や北川景子らキャスト
原作は、中山七里の推理小説です。「日刊ゲンダイ」で2015年から掲載され、2017年5月に角川書店から出版されました。映画『ドクター・デスの遺産 BLACK FILE』は、安楽死をテーマとしたこの社会派ミステリ小説の劇場版です。
監督の深川栄洋(よしひろ)は、1999年から多くの映画やTVドラマの監督を努めてます。過去作には『白夜行』『神様のカルテ』『サクラダリセット』などもあり、ミステリー映画の制作にはなれてそうなので期待したいです。
主演の綾野剛は、ミステリアスな役や考えのよめないキャラを演じることの多い中堅俳優です。出演映画は『亜人』『怒り』『リップヴァンウィンクルの花嫁』『るろうに剣心』等多数です。
北川景子は、顔やスタイルの美しさで起用されることが多かった女優ですが、最近は演技も評価されてきて注目です。出演作は『謎解きはディナーのあとで』『君の膵臓をたべたい』『スマホを落としただけなのに』等です。
他の出演者は、岡田健史、前野朋哉、青山美郷、石黒賢など。シークレットキャラもいて楽しみです。
実話?死の医師ジャック・ケヴォーキアンについて
本作は、アメリカで130人もの患者を安楽死(尊厳死)させた医師ジャック・ケヴォーキアンをモデルとした、クライム・サスペンスです。実話をもとにしてますが、内容は完全なフィクション(作り話)です。
ジャック・ケヴォーキアンは、1989年に自作の自殺装置で末期患者の自殺幇助を開始し「ドクターデス」(Dr.Death=死の医師)と呼ばれました。有罪となるが、釈放後も積極的安楽死の啓蒙活動をつづけ下院選挙に立候補するが落選。2011年死去。
通報者の父親は殺されたのか?殺人犯の名は?
「医者にお父さんが殺された」と子どもから通報があり、警視庁捜査一課の犬養隼人(綾野剛)と高千穂明日香(北川景子)がその家族の所へ行くと火葬直前です。子どもの母親は「病死」と言うが、犬養は納得できず遺体を検死へ運びます。
母親の聴取で「苦しむ夫の希望や経済的理由もあり安楽死をお願いした」と判明。アングラサイトで「ドクター・デス」という医師に依頼すると、塩化カリウム投与による心臓発作で安楽死してもらえます。無料で何も要求されないそうです。
この時点で「ダメな刑事ドラマの延長」と感じました。捜査令状なしで火葬直前に遺体を運び出したり、被害届や捜査依頼者なしの状態で一班が一丸となって動いたり(ひま?)、怒りを大声や物にあたることで表現したりと違和感だらけ。
ドクターデスの看護師の正体は?違法捜査だらけ
麻生礼司(石黒賢)をリーダーとする麻生班が捜査を開始すると、家族を安楽死させた者が次々見つかります。しかし被害届は出されず、むしろドクターデスに感謝すらしてます。犬養は、しつこく親族への聞き込みを行い手がかりを見つけます。
犬養が見つけたのは、映り込んだ看護師の顔です。警視庁のデータベースにかけるかと思いきや、雑な聞き込み捜査だけであっさり養鶏場で見つけます。雛森めぐみは、看護師をやめた後、2万円のために何度かドクターデスを手伝ったそうです。
雛森を大声で威圧する犬養は違法聴取ですが、そんな後の釈放時に「患者は喜んでた」的な発言する雛森めぐみは、明らかにサイコパス。そもそも何度も手伝ってる時点で「安楽死と思わなかった」の言い訳は通用しないはずでは?
麻生班というか脚本がめちゃくちゃですね(笑)。私は最初、雛森めぐみを演じる女優がわかりませんでした。この世代の役者にうといこともありますが、そのやつれ具合と聴取される姿は、本作で最も演技力を見せられた(演技力高いわけではない)と感じます。それがあだとなり、この時点で犯人の予想がついた人は多いかも。
ドクターデスを名乗る医師とは?嘘の似顔絵を本物に?
看護師の雛森めぐみへの聴取で、医師ドクター・デスの本名は「田中一郎」と判明するが偽名です。安楽死を依頼した家族にきいて似顔絵を作成するが、ドクターデスをかばう人ばかりなので「全て別人の顔」。
高千穂が似顔絵捜査員だったという(ご都合主義な)経歴により「かばうなら、最初の顔パーツは嘘でも、最後の方は本当の可能性が高い」と断定して、1つの似顔絵が完成します。すると、あっという間に河川敷のホームレスを逮捕できます。
高千穂は、分析捜査が得意というわりに知能で活躍するシーンはほぼなく、走って先回りし投げ飛ばしたりと、むしろ肉体派に見えます。似顔絵特定では活躍したけど、理屈が論理的ではなく根拠もないわりに犯人に似てたのは驚きました。
というより、あんなに個人的な考えを盛り込めるなら、似顔絵作成は捜査員の偏見しだいで、どんな顔でも作り出せるのでは?という恐怖心すら感じました。実際でも同様なら、かなり危うい捜査法だと思います。
ドクターデスの正体と目的とは?社会派じゃないの?
犬養には、腎臓病でドナー待ちの娘さやかがいます。さやかは、お友達が苦しんで死んだり、女性カウンセラーの「あなたの長い入院は、お父さんを苦しめてる」の発言などで自殺を考え、アングラサイトからドクターデスに依頼してしまいます。
この女性カウンセラーこそ、ドクター・デスの正体であり、元看護師の雛森めぐみ(木村佳乃)です。雛森は犬養に電話して娘の死を宣告し「人の死は美しい」と、安楽死を繰り返す目的を語ります。つまり猟奇殺人犯だったのです。
あっさり女性に捕まる犬養にもがっかりですが、GPSも使わず勘だけで乗りこんだ高千穂の分析型としての無能さにもあきれました。むしろ高千穂が直感型では?家族の思い出場所を娘に聞いてたとしても、そこに賭けるのは危険すぎますよね。
でもその直感があたったおかげで、犬養も娘さやかも救われ、雛森めぐみも投獄できて一件落着。ですが、この映画は「人が死ぬ権利や安楽死・尊厳死の是非を問う社会派の問題作」と期待してたのに完全に裏切られました。
ドクターデスは、人の死の権利を尊重して安楽死させる高潔な医師だと予想してたのに「ただの殺人狂・猟奇殺人犯」で残念すぎます。原作小説は未読ですが、もしこのラストが原作どおりでないのなら、作者が容認したのか知りたいです。
『ドクター・デスの遺産 BLACK FILE』私の評価と感想
「安楽死・尊厳死を考えるきっかけ」になりそうなテーマには興味を持てたし、関わる刑事たちが善悪の区別がつかなくなる展開を期待して、先が気になるクライム・サスペンス映画でした。
しかし看護師が捕まるあたりから雲行きがあやしくなり「死ぬ権利」や「犯人は救世主か?猟奇犯か?」などを考えさせる映画ではありませんでした。ドクターデスがただの猟奇犯だったのはわかりやすい結末だけど、問題提起ゼロなのは大いに不満。
制作陣は「ドクターデスが医師だと思ってたら実は看護師でした!」という部分を意外性にしたかったのでしょうけど、それすら失敗に終わってるので、ストーリー的には全く面白い部分がありません。
ただ、シークレットキャラ?の木村佳乃、柄本明の風貌や演技の見せ場は見どころだったし、綾野剛と北川景子の大げさ演技には苦笑してしまいました。テレビの2時間ドラマ的に観るなら楽しめるかもしれません。
私の評価 58/100(60が平均)
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