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映画『人魚の眠る家』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?冒頭の少年は誰?第2の父親とは?

人魚の眠る家 映画/ドラマ

東野圭吾の小説の映画化。離婚を決めた夫婦が脳死状態の娘の臓器を提供するか悩みます。しかしある事がきっかけで自宅介護をはじめて、医療技術のおかげで体を動かせるようになるのだが...。目を覚ますのか?我が子なら?(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題人魚の眠る家
日本公開日2018/11/16 [予告] 上映時間:120分
監督・キャスト堤幸彦
キャスト
出演者
篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加
映倫区分日本:G(年齢制限なし)
配給/製作
(画像出典)
松竹/オフィスクレッシェンド
日本興行収入10.0億円(興行収入ランキング
平均評価
平均:100換算
(興収・評価: 2024.8.18更新)
75私の評価は含まず)
シリーズ
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東野圭吾の映画一覧

ネタバレ感想『人魚の眠る家』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

監督と俳優陣について

東野圭吾の原作小説『人魚の眠る家』を、篠原涼子と西島秀俊を夫婦役として映画化したヒューマンミステリーです。作品によって振れ幅が大きくて好みの分かれる堤幸彦が監督です。監督作では映画よりTVドラマ『TRICK』『ケイゾク』『SPEC』の方が好みです。

主演女優の篠原涼子はアイドル出身でTVドラマには多数出演してるけど、映画での主演は『アンフェア the movie』シリーズで好演したのが印象的です。娘の美央(みお)への接し方は微妙だったけど、実生活で母親になった経験も生かしてか本作では鬼気迫る「愛情」を超える演技がみどころです。

本作はほぼ篠原涼子の一人舞台に近いけど、娘役の稲垣来泉、夫役の西島秀俊、祖母役の松坂慶子、第2の父親役の坂口健太郎、その恋人役の川栄李奈なども上手く演じてたと思います。息子役はセリフが少し辛かったけど、祖父の田中泯の存在感はさすがです。

あえていうと、西島秀俊は理系で社長で浮気した後ろめたさもあり、感情を表に出さない性格なのはわかるけど、それにしても表情に乏しかった気がします。ただ、篠原涼子が感情に流され、西島秀俊が理性で判断するという対称性を見せる効果はありました。

坂口健太郎の役はもっと深掘りできる気もしたけど、テーマがぶれるからか途中離脱して少し残念です。その恋人の川栄李奈は『亜人』とは全く違いかわいくてピュアな役を演じ、私たち視聴者に近い立場で「人魚」を見たと感じます。

東野圭吾ファンだけど1年半で5本映画化は多すぎ?

初期作はリアルタイムではないけど『容疑者Xの献身』くらいまでは、ほぼ全て追っかけるように読んでた小説ファンです。だから『人魚の眠る家』を観た時も『変身』『分身』などの禁断の医療技術ミステリーを思い出せました。

加賀恭一郎シリーズやガリレオシリーズ以降はほとんどの作品が実写映画化されて、2017年9月『ナミヤ雑貨店の奇蹟』から『祈りの幕が下りる時』『ラプラスの魔女』『人魚の眠る家』と2019年1月『マスカレード・ホテル』まで5作が連続公開されます。

東野圭吾は多作化してから内容が薄くなったと聞くこともあるけど、常に一定水準は保ち、時事的な社会派要素も取り入れ、最後には泣ける作品が多くて映画には向いてます。上映された作品も年間ベストに挙げられることは少ないけど平均点はクリアしてます。

しかしさすがにこの1年半くらいは東野圭吾作品が続きすぎて、設定は違っても展開のさせ方が似てるので、飽きられないか心配です。興行収入が下がり気味なのも気になります。個人的には人魚までの4作品の中では『祈りの幕が下りる時』が一番好きです。

家族愛の物語も部外者から見るとホラー映画?

自分の愛する娘が突然、心臓は動いてて体も温かいのに脳死状態になった場合、臓器提供のためにお別れできるかと言われれば、ほとんどの人ができないと思います。しかし世界の多くの国では「脳死は死」なので日本より延命させる率は低いのでしょうか。

本作の篠原涼子演じる薫子も、一度は「優しい娘だった瑞穂」の立場で解釈して臓器提供を決断するが、指がピクッと動いたのを感じて、たとえそれがラザロ徴候と呼ばれる反射だとしても延命させて人間的に育てることにします。

瑞穂から目を離した責任を感じてる祖母の千鶴子(松坂慶子)や、別居して父親の責任を果たせてない後ろめたさもある和昌(西島秀俊)も最初は薫子と同じ気持ちで瑞穂を見守ります。この状況は多くの視聴者も共感できたのではないでしょうか。

しかし部外者の川嶋真緒(川栄李奈)が瑞穂を見た瞬間から、ホラーっぽい雰囲気がただよってきます。雨の日、夕焼け、青っぽいライト、不穏な音楽などもホラー演出を助長します。家族以外の人間には「フランケンシュタイン」に見えると気づかされます。

川栄李奈は出番は少ないけど、物語の重要な分岐点を上手く恐ろしげに演じていました。それ以降「生きる者より脳死の瑞穂を大切にする」薫子に家族ですら疑問を持ち始め言動に現れてきて、孤独な薫子はさらに「娘への献身」に執着して現実離れしていきます。

人魚の眠る家 映画/ドラマ

我が子が脳死になったら「死」を受け入れるべきなのか?

本作でも最善策は語られないし、人によっても考えた方は違うので正解はありません。しかし実際に娘が脳死になった場合、心臓を止める決断をする自信は私にはありません。特に突発的な事故ではすぐに死を受け入れられず、1週間は延命させたいと考えそうです。

しかし1週間が1ヶ月、2ヶ月になっても心の整理はつかない気もします。本作ではテーマがぶれないように主人公は富裕層の妻で経済的な心配は不要な設定だから満足いくまで看病できたけど、現実的には金銭的な問題で「別れ」の決断をせまられそうです。

物語の後半では「脳死で将来のない娘」にいつまでも関わっているよりも「生きて将来のある息子や薫子自身」に目を向けた方が建設的だと、真緒や和昌や生人の言葉で語られます。かなりデリケートな問題で冷たくも感じるけど納得感もあります。

瑞穂は体調も良いし、機械信号とはいえ体も動かせるし笑うこともできるけど、全て自分の脳での考えや意思ではないので実質は星野が嫌った「ロボット・機械」と同じです。その状態で生かし続け、無理やりぬいぐるみを抱かせることは確かにホラーです。

瑞穂が生きようとした目的や意味とは?

では少しホラー的・超常的に考えて、脳死状態の瑞穂が生きていた意味、心臓が止まらなかった理由を考えてみます。それはプール事故の日に薫子に見せてあしらわれた「お絵かき」が答えだと思います。つまりあの場所に行くまで、瑞穂は死ねなかったのです。

それを感じたからこそ薫子はその場所を探し回るが、1人で見つけても意味はないのです。瑞穂が最後に願ったのは、母の薫子と父の和昌と弟の生人と娘の瑞穂の4人が、家族愛を象徴するハートマークの場所に集まること、すなわち「家族再生」だったのです。

社会派ドラマにしては、あざとすぎる演出ですが、それが「東野圭吾は泣ける」と多くの人の心をとらえてるのは確かでしょう。そしてもう1つのあざとい泣かせる演出として、終盤に薫子の妹の娘の若葉に、自分の身代わりで瑞穂が死んだと告白させます。

瑞穂にとって大切な友人でもあった若葉が、この先も黙ってて責任を感じ続けるのはつらいだろうから、告白させて心を軽くしてあげたい、というのも瑞穂が生きてやりたかったことだと感じます。指飾りの花は四つ葉のクローバーのようにも見えます。

脳死状態の人間を殺すと殺人になるのか?

法律的な解釈や判例などは知りませんが、安楽死も殺人になる現状だと、たとえ脳死患者であっても臓器摘出の手術以外で心臓を止める行為は殺人だと思います。それに薫子は「まだ娘は生きている」と思っている状態で心臓を止めるのでなおさらです。

本作でこのアンチテーゼ(対立命題)を突きつけてくるのは、さすが東野圭吾です。警察を呼ぶのは映画的にしすぎだけど「最後は国に決めてもらう」というセリフを生かすためには必要です。西島秀俊が唯一父親に見えた名場面でもあります。

ちなみに、予告編やポスターでの「娘を殺したのは私でしょうか?」の使い方は、悪い意味でフジテレビ風のあざとさを感じます。娘を祖母にまかせっきりにした責任を感じた発言だと思ったのですが、まさかあの場面での言葉だったとはがっかりです。

マッドサイエンティストの第2の父親を生かしきれてない?

星野(坂口健太郎)が最初登場した時は、好青年というよりマッドサイエンティストの雰囲気がかもし出されていて期待したのですが、残念ながら本作では深掘りされませんでした。「第2の父親」という発言もあったので、サスペンスにもできたはずです。

しかし本作はあくまでも「家族再生」のヒューマンドラマなので、フランケンシュタインのような展開には踏み込みませんでした。というより東野圭吾の小説の特性で、そこまで闇落ちする人間はあまりいない気がします。

星野の異常性は、対照的な恋人の真緒(川栄李奈)が感じさせてくれます。仕事のことを熱弁する星野にひかれたけど「生きてる真緒より、脳死の瑞穂」を選ぶ星野に対しては、動物を生かす仕事の獣医に関わる真緒だからこそ冷静に気味悪さを感じたのでしょう。

ラストで再会した真緒が星野に「おかえりなさい」と言いますが、これは星野をゆるして、よりをもどすつもり、というよりは「『生』の世界へお帰りなさい」という意味だと解釈します。

瑞穂の心臓を移植された少年が見た空き地の意味は?

冒頭プロローグと最後のエピローグに登場する宗吾(そうご)という少年は、おそらく冒頭で野球ボールを取りに入った後に心臓病が発覚し、臓器提供された瑞穂の心臓を移植されて元気に回復したのでしょう。ラストで宗吾が気になって見た空き地は冒頭でボールを取りに入った「人魚の眠る家」つまり薫子と瑞穂の暮らしていた家です。

薫子には思い出が強すぎて引越した可能性もありますが、和昌と離婚して2人で暮らすには広いし経済的な理由で実家に戻ったのかもしれません。または和昌と復縁して3人で新天地で、瑞穂の思い出とともに仲良く暮らしてる可能性に期待したいです。

私の評価 67/100(60が平均)

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