映画『パラレルワールド・ラブストーリー』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?真相は?
東野圭吾原作の長編映画。崇史は親友の智彦に恋人の麻由子を紹介されるが、かつて片思いした女性です。朝目覚めると、その女性と暮らしてます。そんな2つの世界で混乱し…。パラレルワールドの真相は?役者が演じきれてるか?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | パラレルワールド・ラブストーリー |
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日本公開日 | 2019/5/31 [予告] 上映時間:108分 |
監督・キャスト | 森義隆(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 松竹/AOI Pro. |
日本興行収入 | 6.1億円(興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.17更新) 60(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 東野圭吾の映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 敦賀崇史(玉森裕太<Kis-My-Ft2>)頭脳明晰、スポーツ万能。バイテック社に入社。中学時代から智彦と親友。麻由子に思いを寄せていた
- 三輪智彦(染谷将太)足が不自由。崇史と中学から一緒で、バイテック社に入社。麻由子が恋人
- 津野麻由子(吉岡里帆)バイテック社の研究員。智彦の恋人だが…
- 須藤隆明(田口トモロヲ)バイテック社で、智彦の教官
- 桐山景子(美村里江)バイテック社で、崇史のカレッジの先輩
- 小山内(筒井道隆)バイテック社で、崇史の教官
ネタバレ感想『パラレルワールド・ラブストーリー』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
監督と玉森裕太や吉岡里帆や染谷将太など出演者
監督は若手の森義隆です。映画監督としては『宇宙兄弟』『聖の青春』などを手がけてて、まだ認知度は低いけど、作品は映画賞などで評価されたりしています。『聖の青春』では、本作の染谷将太、筒井道隆も出演しています。
主演の玉森裕太は、ジャニーズ事務所のアイドルグループ「Kis-My-Ft2」のメンバーです。最近の映画出演はあまりないため初めて見ました。今回は役的に表情豊かではないけど、顔は山崎賢人や神木隆之介と同系統だと感じました。
吉岡里帆は、人気女優ですがテレビが多いようなので、映画でははじめて見ました。と思ったら『幕が上がる』のメガネっ子の生徒役だったんですね。芳根京子も出てました。昨年は『音量を上げろタコ…』等で作品に恵まれなかったようです。
染谷将太は、子役から現在まで多数の映画に出演し、最近も男優では菅田将暉と本数を競うほどではないでしょうか。印象的なのは『ヒミズ』『寄生獣』『バクマン』『海賊とよばれた男』等。昨年の『空海』はもらい事故のようになってます。
本作『パラレルワールド・ラブストーリー』はほぼ3人の三角関係物語ですが、田口トモロヲ、美村里江(旧みむら)、清水尋也、 筒井道隆、石田ニコルなどが目立ちすぎないキャラとして脇を固めています。
東野圭吾のミステリ小説が原作!また泣かせる気?
東野圭吾の本格ミステリ小説は、デビュー作から『容疑者Xの献身』くらいまではしっかり読んでました。特に初期の作品は、構成はあらいけどミステリとして意外性にあふれ、ラストでは驚かされる小説が多かった印象です。
しかしある時期から、よりライト層に向けての作品を量産しはじめたので、旧ファンとしては1作ごとの濃密さを味わえなくなったため離脱しました。しかし読者層の拡大は成功を収め、TVドラマ化や映画化により知名度は上がっていきました。
その作風は、本格ミステリからライトなサスペンスや近未来SFなど多岐にわたり、社会問題をあつかう作品も多いのが特徴です。最近の映画化作品では「泣ける」を前面に打ち出すような、いわゆる感動テロが中心になってる気がします。
本作『パラレルワールド・ラブストーリー』は、東野圭吾原作の長編映画(一覧)では20作目(カウント法により増減あり)になります。これは一作家による映画原作数としては最多ではないかと思ってます。
本作はジャンル的には理系のSFミステリで、初期作『変身』『分身』とテーマも似通っています。1995年に発表された小説なので荒いながらも野心を感じられる良作ですが、泣ける内容ではないです。ここまで強くラブストーリーを主軸にしてるのは珍しいです。
ミステリやSFとして楽しめたか?人間は描けてる?
『パラレルワールド・ラブストーリー』は本格ミステリではないけど、2つの世界の謎解きがメインになり、その真相を知りたいと思いながら見る映画なので「ミステリ要素」はあるけど、生ガキの話とかお粗末すぎて良質ではないです。
また「謎にひねりがなく解くのが簡単」です。バイテック社で脳の研究をしてたり、記憶を改竄できることが序盤に明かされますが、もうこの時点で「パラレルワールドの真相は崇史の記憶の改ざん前後」だと推測できます。
ただ「謎解きが簡単だから駄作」ということではないです。決定的に本作で納得できないのは2点あり、まず「SF的な記憶操作技術がご都合主義」な点です。発見されたばかりの技術で「特定人物との関係性だけ消去」なんて不可能でしょう。
もう1点は「麻由子に人間味が感じられない」ことです。単純に崇史に乗り換えました、というならまだわかるけど、智彦を目覚めさせるためとか、須藤教官の命令とかで崇史と同棲するのは単純に人として気持ち悪いです。
本格ミステリ作家はヒット作を出すとほぼ「人間が描けていない」と評論されがちですが、東野圭吾もこの頃に気にするようになりラブストーリーを書きたくなったのかもしれません。原作はともかく映画では人間を描けてない気がします。
ストーリーは?パラレルワールドの真相とは?
『パラレルワールド・ラブストーリー』では「津野麻由子が三輪智彦の恋人」と「麻由子が敦賀崇史の恋人」の2つの世界を見せられます。これはパラレルワールド(異次元などの並行世界)なのか?というのがメインの謎です。
ただ、小説でも映画でもこの見せ方はフェアではないと感じます。シーンを切り替えるように2つの世界を見せますが、実際には「1つの世界の現在と過去」なので、時系列を都合のいいように切り取って見せてるだけです。
つまり「麻由子が崇史の恋人である世界が現在」で「麻由子が智彦の恋人である世界は過去」です。崇史が過去の記憶を少しづつ思い出し、それが2つ目のパラレルワールドのように見えていたというのが真相です。
もっと具体的に時系列でネタバレ!
崇史が智彦に恋人と紹介された麻由子は、崇史が昔電車で片思いした女性でした。崇史は麻由子への想いを捨てきれず「友情より恋愛を選んで」麻由子に告白したり強引にせまり、やがて麻由子も受け入れます。
智彦はそれを知り、自分が研究してた記憶改変の装置で「麻由子が智彦の恋人だった記憶」を消去しわざと昏睡(スリープ状態)します。智彦は崇史にスリープ解除情報の記録データを渡し、崇史から「智彦の記憶」を失わせます。
智彦の教官の須藤は、崇史から記録データを取り戻すため、麻由子を崇史の監視目的で同棲させます。それが現在の生活です。崇史は智彦のことを思い出し混乱するが、最後は智彦を昏睡から目覚めさせることにします。
そして崇史も麻由子も、お互いの記憶を消去して、最初からやり直すことにしたのです。
麻由子の行動はありか?崇史と智彦は?
個人的には麻由子の行動が一番理解不能です。智彦を傷つけたくないけど、崇史を選びたいという矛盾した考えで迷ってるのはわかるけど、智彦を昏睡から目覚めさせるために、崇史と夫婦のように同棲できる神経は気持ち悪いです。
山手線と京浜東北線のすれ違いで、お互いを見つめ合っただけで両思いになるというのも納得しがたいけど、運命的な出会いならありなのかも。ただもしそうなら、麻由子も智彦に崇史を紹介された時、心がゆれたということになりますよね。
崇史は欲求に忠実で「友情より恋愛を選んだ」だけなので、人間的にはクズだけど一番理解できます。ただなぜ「智彦や麻由子の記憶」を消そうと思ったのかは理解できません。心が弱いため、良心の呵責から解放されたかったのでしょうか。
智彦はもうひたすら被害者でかわいそうです。崇史と麻由子の関係を知った後も、復讐するのかと思いきや「恋愛より友情を重視」して身を引く決断をします。最後に目覚めた時も「麻由子と恋人だった記憶は失っている」のが悲劇的です。
『パラレルワールド・ラブストーリー』総括
原作小説も東野圭吾作品の中では薄味で印象に残ってなかったけど、映画化は困難だろうなと思ってました。実際観るととてもわかりやすかったけど、原作未読の人には説明不足な部分が多くて理解できない人もいるのではないでしょうか。
ミステリ的なオチはほぼ一発だけで、ラブストーリーと三角関係の変遷や、2つの世界の崇史の混乱の正体を解き明かしていくのが本筋ですが、残念ながらその本筋があまり面白くないです。脳や記憶が関係することも序盤でわかりますし。
そして真相がわかった後、麻由子の言動を思い出すと気持ち悪くなるのが致命的です。麻由子の吉岡里帆と、崇史の玉森裕太が心情変化をうまく演じきれてないだけのせいではなく、脚本や編集でカバーできてないのも残念です。
記憶を失った後、麻由子と崇史が交差点で見つめ合ったけど、麻由子と智彦がまたつきあったなら後味良かったのですが。と気になる点が多いのは、智彦の視点で見すぎたからかもしれません。
それでも今が旬の俳優女優が三角関係になり、不思議な秘密を解き明かしていく理系エンタメ映画としては平均以上の水準です。3人のうち誰の視点で観るかによって意見が変わりそうなので、他の人の意見も聞いてみたくなる作品ですね!
私の評価 60/100(60が平均)
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