『ヤクザと家族 The Family』評価は?ネタバレ感想考察/暴力団対策法後のヤクザは?
1999年、父を失った山本賢治は、柴咲組組長・柴崎博の危機を救いヤクザの世界へ。一本気な山本は男をあげ、やがて家族も持ちます。しかし暴対法の影響でヤクザ社会も変わりつつあり…。山本と家族とファミリーの結末は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ヤクザと家族 The Family |
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日本公開日 | 2021/1/29 [予告] 上映時間:136分 |
監督・キャスト | 藤井道人[キャスト] |
映倫区分 | 日本:PG12(小学生指導必要) |
配給/製作 (画像出典) | スターサンズ、KADOKAWA/スターサンズ、Lat-Lon |
日本興行収入 | 4.9億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 84(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 山本賢治(綾野剛)チンピラ時代に柴咲組組長に救われヤクザの世界へ。やがて家族を持つが…
- 木村翼(磯村勇斗)愛子の息子。山本にあこがれる
- 柴咲博(舘ひろし)柴咲組の組長。昔堅気の人情あふれるヤクザ。山本に目をかける
- 大迫和彦(岩松了)静岡県警 組織犯罪対策本部 刑事
- 加藤雅敏(豊原功補)侠葉会の会長
- 中村努(北村有起哉)柴咲組の若頭
- 工藤由香(尾野真千子)山本の恋人
- 細野竜太(市原隼人)山本の舎弟
- 木村愛子(寺島しのぶ)柴咲組 元若頭の妻
- 竹田誠(菅田俊)柴咲組の舎弟頭
- 豊島徹也(康すおん)柴咲組の舎弟
- 大原幸平(二ノ宮隆太郎)山本の舎弟
- 川山礼二(駿河太郎)侠葉会の若頭
ネタバレ感想『ヤクザと家族 The Family』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作はオリジナル?綾野剛ら主要キャスト
『MOTHER マザー』『新聞記者』等の映画会社スターサンズと、日本アカデミー賞作品賞で最優秀賞受賞の『新聞記者』監督・藤井道人が再タッグを組んだ、オリジナル作品です。
主人公を演じる綾野剛は意外にも映画では初のヤクザ役です。『ドクターデスの遺産』『亜人』等が印象的。親分役の舘ひろしは『アルキメデスの大戦』にも出演。
尾野真千子は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『そして父になる』等に、市原隼人は『空母いぶき』『無限の住人』等に出演。
その他、北村有起哉、寺島しのぶ、豊原功補、菅田俊、磯村勇斗など、こわもて顔の役者が多数出演しています。
ヤクザ映画とは?本作の位置づけは?
かつて日本映画の中でも一大ジャンルとして成立してた「ヤクザ映画」「ヤンキー映画」ですが、今では年に数本しか作られず話題になることも少ないマイナー作品となっています。暴走族も含め、現実世界ではもはや見かけませんし。
たまに旧作ヤクザ映画とか観ると、ドスをきかした?しゃべり方、顔のすごみ方、タバコの吸い方や喫煙回数の多さ、暗い場所でのサングラスや、ガム好き?などで笑ってしまいます。
おそらくその時代には「かっこいい」「おそろしい」と思った人が多かったのでしょうけど、現代ではコメディに見えます。今回の『ヤクザと家族 The Family』でも、そういうヤクザたちを見事に再現してくれてたけど時代を感じますね。
あと気になったのは、ヤクザが何で食ってるのか?という点。本作ではドラッグ販売と場所代の他はボカしてましたが、他映画ではパチンコ、借金取り、借金払えない人の人身売買(女性は水商売、男性は重労働)、出会い系やAVサイト等が挙げられてました。
組員を「家族やファミリー」と呼び結束を語ったり、社会のはみ出し者の最後の受け皿になったりと暴力団組織の良い面も語られます。しかし「家族」以外の不幸(ヤク中など)は意に介さないため「社会悪」として恨まれ、その怨念が現代の「反社たたき」につながったのかなと感じました。
本作のヤクザ映画としての位置づけはかなり微妙で、エンタメ路線の『アウトレイジ』『孤狼の血』と比べると面白みが足りないし、社会派としての深みもないし、人間ドラマやサスペンスやアクション要素も希薄で中途半端な印象。
テーマである「家族」に関しても、組合員どおしの絆も、夫婦と親子の関係性もそれほど描かれないので、監督・脚本を努めた藤井道人のメッセージが見えてきません。「1人の男のヤクザとしての半世紀」物語として見ればいいのでしょうか。
1999年、ヤクザの世界へ入る経緯は?
1999年、ヤクザから覚せい剤を買ってた父が死に、身寄りのなくなった山本賢治(綾野剛)は、細野(市原隼人)と大原とつるんでました。ある日、柴咲組長・柴崎博(舘ひろし)を救った山本らは、今度は組に救われてヤクザの世界へ入ります。
飲んでたその食堂の愛子(寺島しのぶ)も、亡き夫は柴咲組の若頭でした。山本ら3人は、侠葉会(きょうようかい)の売人から覚せい剤と売上を横取りしたため臓器売買されそうなところを柴咲会に救われたのです。父子の契りを結びます。
ヤンキー時代の山本賢治から描かれます。ヤクザに入る理由や組長との出会いはありきたりで、かっこいい演出もなくて残念。今作るのなら、もっと劇的だったり、社会からはみ出して仕方なく、というような描写がほしかったかも。
組長やその取り巻きが弱すぎるし、ボディガードとして失格なので、この時点で柴咲組の将来は暗そう。「ヤクザから覚せい剤を奪う」危機感ない行動はありえないなと思ったけど、自暴自棄で浅慮なヤンキーならやりそうですかね。
2005年、山本の決断とは?恋模様は?
2005年、山本賢治は柴咲組で信頼される存在になってます。ある日、組の島であるキャバクラで侠葉会に手を出してしまい抗争が激化。侠葉会の報復で、山本は古い仲間の大原を亡くします。この件で静岡県警の刑事・大迫は手を出すなと警告。
しかし抑えられない山本は、侠葉会の若頭・川山を殺害しようとします。その前に柴咲組の若頭・中村が川山を刺すが、山本が身代わりになります。血まみれの山本は、想い人の由香(尾野真千子)と一夜を共にした後、服役します。
いきなり6年の歳月が流れ、山本賢治も頭角をあらわしています。柴咲組組長が山本だけ特にかわいがる理由は不明です。あと侠葉会に対してあれだけ圧力をかけられるのに、全く戦おうとしない理由も教えてほしかったです。
山本賢治と工藤由香との不器用な恋模様は、本作『ヤクザと家族 The Family』の中で唯一、他のヤクザ映画との違いを感じた部分なので好み。ただ、由香が勉強しながら感じるさみしさをもう少し見せてほしかったです。
キャバクラで一目惚れした描写も、親分との出会い同様に唐突でダイジェスト感ありました。あと個人的には、この年のうちに結婚まで描いてほしかったかも。その方が「ヤクザの家族」というテーマにも近づけたように思うのですが。
2019年、ヤクザはSNSに負けた?山本の結末は?
2019年、14年ぶりに出所した山本賢治が見たのは、暴対法(暴力団対策法)と侠葉会との抗争の敗北で弱体化した柴咲組。組長の柴崎博はガンで衰弱し、若頭の中村はポリシー捨ててドラッグを売り、なさけないシノギで組は生きのびてます。
山本の盟友・細野は組を抜け、反社の5年ルールを耐えぬいて家庭を持ち、山本からのおごりは拒否します。由香は役所で働きながら、山本との中学生の娘を育ててます。山本は組を抜けて、細野の職を紹介してもらい、由香達と暮らし始めます。
しかし「元ヤクザ」とSNSで拡散され、由香は職を失い娘と引っ越し、細野も妻子に逃げられます。絶望の山本は、愛子の息子の翼が父の仇をうつ前に、その相手を殺害?し逃走。山本は絶望の細野に刺され、父と同様に海に転落死。しばらく後その場所で、山本の娘と翼が出会って山本の話をします。
映画を観てる大多数の人からは「ヤクザは敵」なので、だいたいラストは弱体化して悲しい終わり方です。暴対法の中身は知りませんが、携帯電話も銀行口座も保険もローンもダメなんて、劇中のセリフどおり「ヤクザに人権はない」のですかね。
ただ、警察と組んだ侠葉会は柴咲組の島へも勢力拡大してたので、暴対法後に飛躍した暴力団の視点でも見たかったです。加藤はチンピラの翼たちにコケにされても反論できない小者ですが、その弱さや臆病ゆえに生きのびてる感じはします。
翼たちの武器が「銃」ではなく「スマホ」なのは痛烈ですね。写真や動画やネットがある時代、ヤクザや警察の闇はあばかれ、SNSで拡散されると「社会全体が新時代のヤクザ」としてかみついてくるという皮肉が描かれていて興味深いです。
『ヤクザと家族 The Family』私の評価と感想
1人のチンピラがヤクザに拾われ、組員として成長しながら恋もするが、暴対法などで生きることさえ許されない存在になるまでが描かれます。主演の綾野剛は古い時代のヤクザから現代まで演じ分けてて、その熱演ぶりはハマリ役と感じます。
正直それ以外の役者からは、ヤクザらしさを感じませんでした。ストーリーにも新鮮さはなく、ヤクザ映画でおきまりの「短気で刺しに行ったり、身代わり逮捕から出所すると組が衰退したり娘がいたり…」のパターンどおりで意外性ゼロ。
「ヤクザと家族」というタイトルのわりに、家族での葛藤は薄っぺらくしか描かれないのも期待はずれ。由香が離職し引っ越したり、細野が妻子に逃げられたのも、ヤクザ山本と接触した時点で予想できたので、考えが甘すぎて同情できません。
それでも、もし1本だけで「ヤクザ映画のダイジェストを観たい!」という人にはおすすめできます。あと終盤に登場する成長した翼(磯村勇斗)は魅力的で、彼が主人公の物語を観たいほど。侠葉会の加藤、県警の大迫の視点でも30分ドラマなら観てみたいです。
私の評価 63/100(60が平均)
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