『映画ドラえもん のび太の新恐竜』評価は?ネタバレ感想考察/謎の島の秘密は?キャラランキング
ドラえもん映画40作目。のび太は恐竜博の化石発掘体験で恐竜の卵を発見。ドラえもんの道具でふ化した双子の恐竜を育てるのび太は、元の時代に返そうと決めるが…。恐竜は滅びてない?「他者と違う」のは悪いのか?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 映画ドラえもん のび太の新恐竜 |
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日本公開日 | 2020/8/7 [予告] 上映時間:110分 |
監督・キャスト | 今井一暁[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/シンエイ動画、ADKエモーションズ、ShoPro、藤子プロ |
日本興行収入 | 33.5億円 (年間6位) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 74(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ドラえもん映画一覧 前作『映画ドラえもん のび太の月面探査記』50.2億 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- キュー(遠藤綾)緑色の赤ちゃんオス恐竜。まぬけで弱気。ミューとは双子
- 野比のび太(大原めぐみ)どじでなまけものだが、必要な時にはがんばれる少年
- ジル(木村拓哉)白亜紀に存在しない猿姿のあやしい男。謎の島に関する秘密を握ってて、のび太たちを監視
- しずかちゃん/源静香(かかずゆみ)みんなのヒロイン。心やさしい少女
- ミュー(釘宮理恵)ピンクの赤ちゃんメス恐竜。活発で人懐こい。キューとは双子
- ドラえもん(水田わさび)未来から来たネコ型ロボット
- ナタリー(渡辺直美)ジルと通信。のび太たちの行動を監視する謎の女
- ジャイアン/剛田武(木村昴)力強く豪快な、のび太の同級生
- 骨川スネ夫(関智一)金持ちな、のび太の同級生。ジャイアンと一緒にいることが多い
- のび太のママ/野比玉子(三石琴乃)ダメなのび太をしかることも多いが、時には見守る母親
- ゴル(間宮康弘)ひみつ道具「ともチョコ」でともだちになったタルボサウルス(ティラノサウルス類)
- トップ(下和田ヒロキ)ひみつ道具「ともチョコ」でともだちになったシノケラトプス(トリケラトプス類)
- 恐竜博士(小野大輔)のび太に恐竜についてのアドバイスをしてくれる
ネタバレ感想『映画ドラえもん のび太の新恐竜』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
恐竜映画は何作目?監督やキムタク等の声優陣
2020年は「ドラえもん連載開始50周年」です。「映画40作目」となる本作は、藤子・F・不二雄も好んだ「恐竜」をあつかった4作目の劇場版(竜の騎士含む)です。原作がないオリジナル作品は5年ぶりで、川村元気が脚本家をつとめました。
監督は、2018年公開『映画ドラえもん のび太の宝島』で興行収入53億円に達した今井一暁です。脚本の川村元気とは再タッグです。2019年公開『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の原画・おまけ映像もつとめました。
主要な声優陣はそのままで、水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一らです。ゲストのタレント声優のキムタクこと木村拓哉、渡辺直美に加え、恐竜の声を遠藤綾、釘宮理恵、間宮康弘、下和田ヒロキらが演じます。
私は成人後は劇場版ドラえもんどころかテレビ版も観てなかったので、新声優陣の作品は初めてです。でも声はすぐなれたし、ゲストの声優も特にキムタクは全く違和感なかったです。ちなみに神木隆之介も特別出演してますよ!
ドラえもん映画の最新作『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』は2022年3月4日から公開です。
タイトル「新恐竜」の意味は?テーマは「成長」「多様性からの進化」?
本作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』は、恐竜博の化石発掘体験でのび太が恐竜の卵を発見したことから始まります。石にしか見えない物を「恐竜の卵だと強く信じる気持ち」は、のび太の単純だが純粋な長所を表していますね。
タイムふろしきで卵の化石から孵化(ふか)させたのは、ジャイアンとスネ夫との約束を考えると「チート=インチキ」に思えますが「恐竜の卵を見つけた」のはのび太の手がらです。産まれた双子の羽毛恐竜には、キューとミューと名付けます。
ミューはよく食べて活発ですぐ滑空できるようになりますが、キューはのんびり屋で食べてもはき出したり、羽をバタバタするだけでいつまでたっても飛べません。同種内で劣等のキューを、のび太は自分のことのようにかわいがります。
そんな一見ダメなのび太とキューですが、予想どおり終盤では大きな「成長」を見せてくれます。そして「他者と違う」ことが「多様性=ダイバーシティ」として「進化」に組みこまれていく瞬間を描いてるのは斬新です。
劇中の恐竜博の恐竜博士が言ってた「ミッシングリンク=歴史からぬけ落ちてる謎の部分」が、まさか同種では落ちこぼれのキューによって明らかになるとは予想できませんでした。「新恐竜」とは過去作「のび太の恐竜」に対しての「新」だけでなく「新種恐竜」キューのことを表現してますね。
数々のひみつ道具が伏線に?
「恐竜の卵の化石」から双子のキューとミューが産まれたのは、ドラえもんのひみつ道具「タイムふろしき」のおかげです。化石を卵にするための「時間もどし」と、卵からふ化させる「時間すすめ」を使い分けたのは高性能AIなのでしょうか?
赤ちゃんとはいえ恐竜を家で育てるのび太は、ひみつ道具「飼育用ジオラマセット」「インスタントミニチュア製造カメラ」を使います。すべり台でキューの飛行訓練をしたり、ジャングルジムには「のびのび犬」と名前を書き間違えます。
飼育用ジオラマセットは、サイズ調整や天候変更もでき、ラストや結末にも大きく影響を与える伏線となる道具です。のび太ママから恐竜を隠した「空間移動クレヨン」は赤で囲ったものを白で囲った場所に移動できますが、これも伏線です。
病気になったキューを手当したのは「お医者さんカバン」です。恐竜博士に聞きに行く必要はなかったですね。キューとミューは、ドラえもん時代の「宇宙完全大百科」にも書かれてない新種恐竜です。
「タイムマシン」で白亜紀へ行ったのび太達は「探検隊セット」で環境に適応して「ここどこバンダナ」でお互いの位置を共有します。「ともチョコ」で、ジャイアンはティラノサウルス類のゴル、スネ夫はトリケラトプス類のトップと友達に。
「足あとスタンプ」「たまご探検隊」で、キューとミューのなかまを探します。ミューが何度もたまご探検隊を食べそうになるギャグがかわいい。「逆時計」で時間を戻して隕石衝突から恐竜を救おうとするのび太に、ドラえもん「歴史干渉はダメ」。逆時計の存在意義とは…
謎のサル男や通信する女性の正体と目的とは?
タイムマシンで白亜紀に着いたドラえもん達は、謎の猿男(声優はキムタク)に監視されてて、猿男は何者かと電話します。サルはコウモリ?にも変身できるようですが、その時代に存在する動物に変身した方があやしまれないと思うのですが。
猿男の正体は、タイムパトロール隊員で、電話の相手はナタリー長官(声優は渡辺直美)です。彼らの一番の目的は「歴史に干渉させないこと」ですが「謎の島」の秘密も探っています。
恐竜絶滅の理由とは?
現在の定説では、メキシコのユカタン半島に落ちた巨大いん石が、恐竜絶滅の直接的な原因と考えられています。落下後、熱風が地球上に押し寄せ、衝突によって舞い上がったちりが太陽光をさえぎり、多くの動植物が絶滅しました。
この巨大隕石の衝突は「ディープインパクト」と呼ばれています。隕石が近づく様子はきれいで『君の名は。』の彗星を思い出しました。両作とも川村元気が関わっているのでオマージュかもしれません。
謎の島の秘密とは?
猿男が気にしている「謎の島」には、他の場所から追われたり逃げてきた「負け組」の弱い恐竜たちが集まっています。同種の中ではマイノリティ(少数派)で弱者だった恐竜達は独自の進化をとげて「学説にはない新恐竜」が生まれています。
タイムパトロールさえ知らないこの謎の島の正体は、約1万年前のジュラ紀でのび太が川に落とした「飼育用ジオラマセット」です。サイズ調節機能により少しづつ大きくなったようです。ジャングルジムの「のびのび犬」が目印です。
過去も未来も行き来できるはずのタイムパトロールが、謎の島の誕生の秘密を知らないという設定には無理がありますね。島が少しづつ巨大化したのなら、最も小さい時代にさかのぼれば、のび太が落としたことにも気づきそうですが。
キューの正体は?恐竜は滅んでない?
プテラノドンのように華麗に滑空できるミューと比べると、いつまでたっても飛べないキューは、勉強も運動もダメで逆上がりもできないのび太と同様に「落ちこぼれ」です。しかしそんなキューも、のび太を救うために、ついに飛び立ちます。
キューは飛行訓練中「羽をバタバタしないで、ミューのように羽を広げて滑空しなさい」と注意されますが、羽ばたくクセはなおりません。そしてのび太を救う時も、羽ばたきながら空中を飛び、地球上で初めて羽ばたき飛ぶ動物となります。
その前に猿男ジルは「キューはディープインパクトで生きのびても歴史は変わらない」ことを知ります。その後「滑空ではなく羽ばたくことで空を飛ぶ『鳥』の祖先だから歴史改変にならない」と語ります。
キューの正体は、滑空から羽ばたきに進化した鳥の祖先です。数世代にわたる進化を凝縮して見せたのでしょう。一般的には、爬虫類と鳥類の中間である「始祖鳥」が有名ですが、キューは始祖鳥の先祖ということになるのでしょう。
最近の学説でも「恐竜はほろんだのではなく、鳥類として生きのびてる種もいる」ことが判明しつつあります。本作では「落ちこぼれ」だったキューが新しい飛び方で「鳥類」の始祖となり、ミッシングリンク(歴史の穴)を埋めます。
「他者と違うこと」により生きのびたキューは、まさに「多様性による進化」です。学校では劣等生ののび太も、現代の人間社会ではダメですが、しずかちゃんに「好き」と言われた「他者への思いやり」で何か成し遂げるかもしれませんね。
ちなみに「恐竜が鳥の祖先」であるというテーマは、ジュラシックパークの原作小説(映画版ではなく)と同じです。ジュラシックパークでは、鳥の祖先となる恐竜(ヴェロキラプトル?)が「渡り」のような行動を見せたのが印象的でした。
ピー助が登場?エンドロールで神木隆之介?
最後のエンドロールで「ピー助 神木隆之介(特別出演)」という文字を見つけました。あとで調べると、過去作『ドラえもん のび太の恐竜2006』でピー助の声優を神木隆之介が演じたようです。
私はその作品を観てないのですが、その前の古い『のび太の恐竜』は観たことあるので、ピー助が水棲の首長恐竜なのは思い出せます。本作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』で首長竜が鳴いたシーンは1箇所だけ思い当たります。
飛べないキューと、それを追ってのび太が一緒に海へ落ちました。海中には肉食のモササウルス(『ジュラシックワールド』でもインパクト大)もいますが、ピー助らしき首長竜がのび太とキューを救ってくれました。
『映画ドラえもん のび太の新恐竜』私の評価と続編
成人後初めて映画館で観たドラえもんが本作だったのは、恐竜大好きな私にとっては大正解です。もし1回だけタイムマシンを使えるなら、迷わず恐竜を見に行く!と子どもの頃から言い続けてるくらいです(笑)
本作を観るまでは、のび太と恐竜の友情を深める映画だろうと予想してました。しかしそれだけではなく「多様性」「進化」「(最近の学説でもある)鳥類の祖先」についてもふみこんだ内容は、大人が観ても充分満足できるできばえです。
一方、タイムパトロールの存在意義は薄くて不要とも感じたけど、恐竜を助けようとするのび太を止める役割としては必要だったんでしょうね。作画は2019年映画の高レベル水準と比べると見劣りするけど、キャラ映画なので問題ありません。
「恐竜絶滅の理由」と「鳥類誕生の瞬間」をあつかった本作は、ドラえもん映画としても恐竜映画としても印象的です。エンドロール後にスターウォーズのようなシーンが見れましたが、2021年公開の続編は宇宙が舞台なのかもしれませんね。
私の評価 67/100(60が平均)
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