『イップマン4完結』評価は?ネタバレ感想考察/最後の敵は?ブルースリーも戦う?
ブルース・リーが師と認めた実在のイップ・マンを描いたシリーズ4作目(過去作観てなくても問題なし)。ある目的で渡米したイップマンは、中華総会や差別主義のアメリカ軍人と対立し…。イップマンの最期は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | イップ・マン 完結 |
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日本公開日 | 2020/7/3 [予告] 上映時間:107分 |
製作国 | 香港 |
原題/英題 | IP MAN 4 /葉問4 |
監督・キャスト | ウィルソン・イップ(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | GAGA+ |
日本興行収入 | |
世界興行収入 | 1.7億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | 75(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | アクション/スポーツ/冒険映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- イップ・マン/葉問(ドニー・イェン/甄子丹)実在した詠春拳の達人。争いは好まない。息子のために渡米するが…
- ワン・ゾンホア/萬宗華(ウー・ユエ/呉越)サンフランシスコの中華総会の会長。太極拳の達人。ブルースリーと対立
- ハートマン・ウー(ヴァネス・ウー/呉建豪)中国系アメリカ人。米海兵隊の二等軍曹。ブルース・リーの弟子
- ブルース・リー/李小龍(チャン・クォックワン/陳國坤)イップマンの弟子。アメリカで中国武術を広める。映画デビュー前
- バートン(スコット・アドキンス)アメリカ海兵隊の一等軍曹。空手等を駆使する接近戦の達人。白人至上主義者
ネタバレ感想『イップ・マン 完結』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
シリーズや監督と主演ドニーイェンについて
イップ・マンシリーズは、2008年に香港・中国・台湾などで公開され人気の出たカンフー映画です。日本では1作目『イップ・マン序章』は未公開だったが、2011年公開『イップ・マン葉問』の人気により数週間後に公開されました。
3作目『イップ・マン継承』も含めると、中国大陸だけで10億人民元(約150億円。1元=15円での概算値)もの大ヒットシリーズとなりました。1作目は香港電影金像奨の最優秀作品賞を受賞し、他にも数々の受賞歴があります。
監督のウィルソン・イップは、香港の映画監督・脚本・プロデューサーで、ドニー・イェン主演『SPL狼よ静かに死ね』で注目されました。イップマン全4作の監督を務めたので、ブレのない展開に安心できます。
ウィルソン・イップは、似た名前ですがイップマン家の血筋とはつながりはありません。そもそも姓と名が逆ですし。ちなみにイップマンの実の息子イップ・チュン/葉準、イップ・チン/葉正が詠春拳顧問としてシリーズに関わっています。
アクション監督には、前作『イップ・マン継承』からの続投でユエン・ウーピンが務めてます。ちなみに1,2作目まではサモ・ハン・キンポーがアクション監督で2作目では出演もしましたが、その後の体調不良等で交代したそうです。
主演のドニー・イェンは、今や世界的なカンフー俳優であり『ローグワン スターウォーズストーリー』『トリプルX再起動』や2020年の『ムーラン』等のハリウッド映画でも活躍中です。4作務めたイップマンは彼の代表作です。
イップマンの宿敵となるバートン軍曹は『ドクターストレンジ』の強敵ルシアン役を演じたスコット・アドキンス。ブルース・リー役のチャン・クォックマン、中秋節の空手家を演じたクリス・コリンズも含め格闘家俳優も見どころです。
音楽を担当したのは、川井憲次という日本人です。TVアニメ・映画など多くの作品を手がけてて『パトレイバー』『ひぐらしのなく頃に』『攻殻機動隊』等シリーズの音楽でも有名です。
イップマンシリーズは実話なのか?
イップ・マン(中国語で葉問)は、中国武術カンフー「詠春拳」の達人として実在した武術家です。ブルース・リーがカンフーの師と呼んだのも実話です。日本軍により家を追い出された後、香港に移り住んで弟子に詠春拳を教えました。
「争いは何も生まない」をモットーにしてたため、実話では映画のような他流試合などは行われなかったようです。シリーズ各作でハイライトとなる異種格闘技戦もフィクションです。葬式にブルース・リーが来たことは記録に残っています。
テーマは欧米での中国人差別とカンフーの普及?
アメリカへ行ったイップマンは、中国人が劣等民族として差別されてる状況を知るが、同時に中華総会でも「中国人以外にカンフーは教えない」という閉塞的なポリシーを聞いて失望します。白人によるアジア人差別は学校でも起こります。
白人生徒らにいじめられる中国娘の「アメリカ先住民(ネイティブアメリカン)以外は全て移民」との発言は映画のテーマとは関係ないけど、中国人が抱くアメリカでの人種差別者に対してのカウンターとしては本音を感じました。
アメリカ海兵隊では武術として日本の空手を採用してるのに、中国武術カンフーを馬鹿にする理由は単に知識不足と感じます。この後でカンフーも採用されるのですが、史実ではブルース・リーの貢献が大きかったのでしょう。
アメリカ白人は皆レイシスト(差別主義者)な描かれ方をしてますが、米海兵隊の中にもバートン軍曹の言動にまゆをひそめる者、トップの思想に従ってるだけの者も多そうです。イップマン勝利後の拍手が物語ってます。中華総会も会長ワンが改心したので思想も変わりそうです。
本作『イップ・マン 完結』で少し残念だったのは、アメリカ白人と中国人が武術対決でしか優劣を示せなかった点と、勝負後の和解や明るい展望が描かれなかった点です。単に力で屈しただけでは、反発が大きくなるだけの場合もあります。
イップマンがアメリカへ行った理由は?
香港のイップマンの詠春拳道場に、アメリカからブルース・リーの弟子がやって来て「空手大会」への招待券と航空券も?置いていきます。当時の安くもない航空券代を使って来たにしては、あっさり帰ってしまい驚きですが。
イップマンは過去作で妻をガンで亡くし、今回の冒頭では自分も咽頭ガンで命が短いことを告げられてたため渡米する気にはなれません。しかし学校のケンカで退学となった1人息子の留学先を探すため、アメリカへ行くことを決めます。
ブルース・リーが戦った相手とは?戦う理由は?
サンフランシスコで開催された国際空手選手権に招待されたイップマンは、ブルース・リーによる中国武術カンフーの演舞を見学します。ひと押しで人をふっ飛ばしたりと、空手大会を挑発するような内容だとは感じましたが。
やはりその後、演舞に納得できなかった空手集団が異種格闘技戦を申し込みに来ます。ブルース・リーの弟子ハートマン達はいつの間にか視界から消えて、ブルースリーだけが戦い始め、雑魚3人はあっという間に片付けます。
すると電灯やドアに蹴りを入れてる柔道着マッチョが現れ「ドアは蹴り返さない」と挑発するブルース・リーと熱戦が繰り広げられます。終始ブルース・リーのペースですが、パワフルでヌンチャク戦も見ものの本作一番のバトルです!
ちなみにブルース・リーというと最近では『ワンス・アポンア・タイム・イン・ハリウッド』ではブラピことブラッド・ピットとの戦闘アクションも話題になりました。ブルース・リーファンには不評ですが。
イップマンが中華総会会長ワンと戦った理由は?
サンフランシスコのチャイナタウンの中華総会へ、息子の留学紹介状をもらいに行ったイップマンは「ブルース・リーが中国人以外にもカンフー指導してるのは師匠の責任」と言われ決別します。
中華料理屋によくある回転テーブルでの押し合いバトルは、さすがに子どものけんかのようです。その後、直接学校へ留学依頼しに行ったイップマンは多額寄付を求められ落胆します。
ちょうどその学校では、チアリーダーに選ばれた中国娘が白人生徒らに髪を切られるほどのいじめを受けていて、イップマンが助けます。この時、イップマンは片手を負傷します。高校生らに攻撃し返すのは大人げないのですが。
中国娘を家まで送り届けると、なんと中華総会の会長ワンの娘です。娘を利用したと思ったワンは「勝負に勝てば紹介状を書く」と戦い始めます。片手を負傷してるイップマンにあわせて、自分も片手で戦うワンには武人の誇りを感じました。
ほぼ互角のバトルは大地震で中断され「中秋節祭で決着を」と言うワンに対し、イップマンは「紹介状を求めに来たわけではない」と言って去ります。その前に見た「名は違っても人はみな兄弟」の訓示板がイップマンの心を表しています。
イップマンが中秋節に戦った人物とは?戦う理由は?
米海兵隊のハートマンはブルース・リーの弟子としてカンフーを学び、海兵隊内でも空手と同様に取り入れたいと考えています。しかし中国人嫌いの上官バートンは空手教官コリンとハートマンを戦わせ、空手の優位性を海兵隊員に見せます。
それでもあきらめないハートマンは、さらなる上官に進言してカンフーに興味を持たせることに成功します。そしてチャイナタウンの中秋節の祭りで開催されるカンフーイベントをビデオ撮影する許可をえます。
それを知った上官バートンが送りこんだ空手達人コリン教官は、カンフーマスター達を次々と倒します。それを見かねたイップマンは演舞台でコリンと激しいバトルを繰り広げ、最後は喉元をとらえて倒します。
中国人のヒーローとなったイップ・マンはかっこいいけど、よそ者に助けてもらったカンフーマスター達がまた怒るかと思いきや歓迎したのは意外です。武術の勝利のみでストーリーが良い方向へ進むのは、このシリーズ全般の特徴ですが。
イップマンが人生最後に戦った相手は?
ワン会長の娘にチアリーダーの座を奪われ復讐してきた女生徒は移民局職員の娘でした。移民局はそもそも中国人移民を排除したかったため、ワン会長を連行して取り調べます。一方、空手教官を倒された海兵隊バートン軍曹もワン会長の責任を追求して勝負します。
この空手vsカンフー勝負は見ものですが、終始バートンが圧倒してる感じです。最後はワンが病院へ運ばれ、イップマンがかたき討ちに向かいます。仲間の仇討ちの連鎖は、シリーズ共通の展開でさすがに飽きぎみですがバトルは楽しいです。
イップマンは海兵隊員ハートマンに連れられて、バートン軍曹と人生最後のカンフーvs空手バトルを開始します。前半は力強くて投げ技や蹴り技も駆使するバートンが優勢でしたが、最後は顔・金的・のど元への突きでイップマンが勝利します。
海兵隊員たちのイップマン勝利に対する拍手は「名は違っても人はみな兄弟」の訓示を思い出させますが、アメリカ全体が中国に屈したような描写にも見えてしまいます。人種差別ではなく単純に敗北に悔しがる者も描いてほしかったかも。
イップマンの最期は?ブルースリーの最期は?
中華総会のワン会長は紹介状を書いてくれるが、アメリカの闇を見てしまったイップマンはもはや海外留学には乗り気でない感じです。香港へ帰ったイップマンは、息子に詠春拳を教え始め、木人樁での練習をビデオ撮影させます。
1972年12月2日、イップマンは79歳でがんで亡くなりました。本作では全く老けメイクなしです。葬式にはブルース・リーも出席しました。彼は既に截拳道(ジークンドー)を創始し、映画『ドラゴン危機一発』で初主演も果たしてます。
本作『イップ・マン完結』では語られませんが、ブルースリーはその後数作の映画の製作・出演に関わった後、1973年7月20日に32歳でこの世を去りました。正式な死因は不明ですが、古傷や頭痛用の薬の副作用による脳浮腫とも考えられてます。
その後米軍はカンフーを取り入れ、2001年には海兵隊の必修課程に格上げされたそうです。エンドクレジット前のイップ・マンと妻との過去シーンは涙ものです。
『イップマン4 完結』私の評価とシリーズ総括
今回も戦闘シーンは多いし、イップ・マン以外にブルース・リー、ワン会長などのバトルも見れたので、格闘アクション映画としては素晴らしい出来栄えです。アメリカでの中国人の生きづらさなど現代にも通じる社会問題も取り入れてます。
ただ、戦闘ではほぼカンフーvs空手のみなので、もう少しバリエーションはほしかったです。バートン軍曹の柔術や足技の達人ぶりをもっとアピールしてもよかったかも。個人的にはブルース・リーのヌンチャク戦が見れた戦いが一番好きです。
ストーリーはいつもと同じ展開ですが、今回はイップ・マンが部外者でもあったので参戦する理由づけはもう少しほしかった気がします。また、妻の代わりに息子との家族関係が描かれますが、過去作に比べると葛藤や人間関係が薄すぎます。
それでもシリーズ四部作をとおしてのイップ・マン像は貫かれてたし、実在したブルース・リーもからめてのカンフーアクション映画としては歴史に刻まれる作品となるでしょう。まだの人はぜひ前3作も観てくださいね!
私の評価 65/100(60が平均)
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