映画『ワンスアポン・アタイム・インハリウッド』ネタバレ感想考察/ラスト結末は?真相は?実話?
クエンティン・タランティーノ監督作品9作目。TV俳優で活躍したリックは、自分のスタントマンの親友クリフと時代の流れに乗れてません。一方、隣家に売れっ子の映画監督と女優が引っ越してきて…。衝撃ラストは映画史変える?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド |
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日本公開日 | 2019/8/30 [予告] 上映時間:161分 |
製作国 | イギリス・アメリカ合衆国 |
原題/英題 | Once Upon a Time in Hollywood |
監督・キャスト | クエンティン・タランティーノ(キャスト) |
映倫区分 | 日本:PG12(小学生指導必要) USA:R |
配給/製作 (画像出典) | コロンビア、ソニー・ピクチャーズ、エンタテインメント/ヘイデイ・フィルムズ |
日本興行収入 | 11.8億円 興行収入ランキング |
世界興行収入 | 3.7億USドル [出典] |
製作費 | 1.0億USドル |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.17更新) 77(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | Qタランティーノ映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)再起をはかる元人気TV俳優。時代の流れにのれてないが映画スターとしての再起をはかる
- クリフ・ブース(ブラッド・ピット)リックのスタントマンだったが今は雑用係。クールにリックを支える
- シャロン・テート(マーゴット・ロビー)実在した、新進の健気な若き女優。ポランスキーの妻。リックの隣の豪邸に住む
- ロマン・ポランスキー(ラファル・ザビエルチャ)実在した、時代の寵児の映画監督。シャロンの夫
- マーヴィン・シュワルツ(アル・パチーノ)リックにイタリア映画をすすめるプロヂューサー
- ランディ(カート・ラッセル)映画の配役担当。クリフとは過去に因縁がありそう
- プッシーキャット(マーガレット・クアリー)カルト集団と住むヒッピー少女
- スクィキー・フロム(ダコタ・ファニング)ヒッピー少女たちのボス的存在
- スティーブ・マックイーン(ダミアン・ルイス)実在の若い映画スター
ネタバレ感想『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
クエンティンタランティーノ監督と豪華共演
クエンティン・タランティーノ監督[作品一覧]は、独特な演出、力強いセリフ回し、人間くさく暴力的なキャラなどが特徴の会話劇が多く、熱狂的なファンもいる映画監督です。
俳優として、クエンティン・タランティーノ自身が登場することも多いです。映画監督としては全10作で引退すると宣言しており『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は9作目なので、次作が引退作になる可能性があります。
主演は『レヴェナント 蘇えりし者』でアカデミー賞の主演男優賞を受賞したレオナルド・ディカプリオと、9月に『アド・アストラ』の公開もひかえるブラッド・ピットです。この夢の共演をみるだけでも価値あります。
女優では、実在した新進の女優シャロン・テートを人気沸騰中のマーゴット・ロビーが演じます。カルト集団のヒッピー女性のボス的な役割を、『アイ・アム・サム』等での天才子役として注目されたダコタ・ファニングが演じます。
他にも、カート・ラッセル、アル・パチーノ、ブルース・ダーン、ダミアン・ルイス、マーガレット・クアリー、マヤ・レイ・サーマン・ホーク(ユマ・サーマンとイーサン・ホークの長女)等、洋画好きにはたまらない豪華キャストぶりです。
シャロン・テート殺人事件とは?実話?
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、1969年に実際に起こった「シャロン・テート殺人事件」の実話をもとに作られています。映画での事件部分は全て創作ですが、実話の事件を知ってた方がラストのオチを理解しやすいです。
シャロン・テートはその美貌により、当時少しづつ役をもらえるようになってた女優です。夫のロマン・ポランスキー監督は『ローズマリーの赤ちゃん』等で人気上昇中の映画監督です。2人は映画『吸血鬼』で共演した縁で結婚します。
シャロン・テート殺人事件とは、1969年8月9日、狂信的カルト集団のスーザン・アトキンスと2人の信者が、シャロン・テートの邸宅に侵入し、妊娠8ヶ月のシャロンと友人3人を殺害した事件です。夫のポランスキーは不在でした。
殺害理由は不明な点だらけですが、カルト集団指導者チャールズ・マンソンは、シャロン・テートの邸宅に以前住んでた人物のせいで音楽メジャーデビューできなかったことを逆うらみしてて、人違いだった説や復讐先としてシャロンを選んだ説があります。
シャロン殺害実行犯スーザン・アトキンスと、指導者チャールズ・マンソンには死刑判決がくだるが、カリフォルニア州の死刑一時撤廃のせいで終身刑に減刑され、それぞれ2009年、2017年に獄中死しました。
当時のハリウッドや映画業界の光と闇?
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、当時のハリウッドや俳優女優の光と闇をあらゆる角度から描いています。主人公のリック・ダルトンは、テレビドラマの西部劇『賞金稼ぎの掟』でブレイクしCM等にも出演しました。
ところが映画俳優になる道は険しくて、新人スター達に倒される役ばかりをこなしています。そんな時、名プロデューサーのマーヴィン・シュワーズ(アル・パチーノ)から、イタリアでマカロニ・ウェスタン西部劇の主人公をすすめられます。
しかしリックのプライドは許さず、親友で付き人のクリフ(ブラッド・ピット)の前だけでは大泣きします。そんな落ち目の俳優リックなのに、丘の上(ビバリーヒルズ?高級住宅地ベルエア)の豪邸や高級車を捨てきれず、過去の栄光にすがっています。
一方、リックの隣に引っ越してきたロマン・ポランスキーは、時代の寵児の売れっ子映画監督で、その妻シャロン・テート(マーゴット・ロビー)は新進の若い美人女優です。まさにハリウッドの闇と光、過去と未来が隣りあっています。
史実でシャロン・テートを殺害したカルト集団の指導者チャールズ・マンソンも、ミュージシャンを志してた時期があったが挫折して、その逆恨みで信者にシャロン・テート宅を襲撃させたのです。これこそハリウッドの深淵なる闇です。シャロンの健気な美しさがよけいに「闇」を際立たせます。
カルト集団のアジト「スパーン映画牧場」は、かつて西部劇などでよく使われたようですが、西部劇が落ちぶれると同時に、主人ジョージと共に時代から忘れ去られたようです。ヒッピー少女がゴミ箱をあさる姿もハリウッドの栄光の影です。
クリフは栄光とよべる日を体験してないしドライな性格でプライドはなく、愛犬ブランディとトレーラーハウスに住み、さえない食事をしています。根は正直で腕はいいのに社会に適応できないアウトローです。流行映画を上映するドライブインシアターの裏に住んでるのは皮肉です。
そのクールで動じない性格がリックを支えてるし、リックがマンソンのような殺人鬼にならなかった理由は「常に自分より下のクリフがそばにいたから」だと感じます。リックもクリフも仕事はできるのに「光」になれないのは「運」が足りないということなのでしょうか。
リックとクリフの違いは、自堕落な生活で満足してるようなクリフに対し、リックは常に台詞訓練し仕事を探すためプロヂューサーと会い、役をもらうと全力でセリフを覚えて、噛んで失敗すると猛烈に悔しがることです。映画後半ではその努力がイタリアでの成功に結びついていきます。
見どころは人間くさい演出やセリフ回し
一番のみどころは「映画史を変えるラスト13分」ですが、そこは最大のネタバレになるので後述します。他にもクエンティン・タランティーノ監督[一覧]特有の演出やセリフ回しがあふれています。
リックは過去の栄光やプライドや豪邸や高級車を捨てきれないが、隣人だけでなくスティーブ・マックィーンや12歳の少女にすら抜かれ、本音ではあせっています。その姿が大泣きや、酒飲みすぎてセリフ忘れた自分への怒りで表現されます。
クリフはヒッピー少女のプッシーキャットと3回目に会った時に車に乗せます。せつな的に暮らす少女と、用心深いクリフの会話が印象に残ります。その後クリフは、少女やカルト集団の住む「スパーン映画牧場」へ行きますが、まるで西部劇で敵のアジトに単身乗りこむ保安官のようでかっこいいです。
クリフはスタントマンなので格闘技の心得もあり、大口をたたいてたブルース・リーと戦い完敗させます。その時にブルース・リーをたたきつけた車が、配役担当ランディ(カート・ラッセル)の妻の車だったのでそれ以来仕事をもらえません。
シャロンは、いかにも苦労知らずで運もよく純粋な性格に描かれています。子どもっぽい男性が好みのようです。アップテンポな曲にあわせて踊るのが大好きで、自分の出演作を映画館に観に行くほど「自分好き」ですが、そこがかわいさです。
シャロンは、まだ映画での出演シーンは多くないけど、自分が演じたドジっ娘キャラが観客にウケるとうれしくなります。そんな無邪気な姿が人を疑うことを知らずに、ラストの事件に結びついていきそうな雰囲気をかもしだし逆に震えます。
衝撃ラストは映画史変えたか?事件の詳細
ここからはラストでの決定的なネタバレを書きます。シャロン・テート事件の当日、イタリアから戻ったリック(ディカプリオ)は時差ボケの妻を寝かして、クリフ(ブラピ)と飲みに出かけ、帰宅後にクリフは愛犬ブランディと散歩に出ます。
ジューサーを回してたリックは、3人のヒッピーが乗った車が自宅前で目ざわりだったので、ジュースを飲みながら追い返します。その3人のカルト集団のヒッピーこそ、史実ではシャロン・テート事件の実行犯です。
映画ではカルト集団の指導者チャールズ・マンソンから「あの家(シャロン・テートの家)の住民を殺害してこい」とほのめかされて、リックの家と勘違いした?ようです。因縁あるクリフをねらったわけでもなく偶然居合わせたようです。
シャロン・テート事件を知ってると、この先は目もつむりたくなる大惨事が行われるので席を立ちたくなります。途中ではさまれた、シャロン・テートの健気でキュートで嫌味のない天使のような姿と事件とのギャップが恐怖を加速させます。
しかし、そこはタランティーノ監督なので火炎放射器でナチスを焼くオマージュだけでなく『イングロリアス・バスターズ』のような展開を見せてくれます。史実を知る者ほど緊張が歓喜に変わり、涙さえ流れるラストを見せてくれます!
ヒッピー3人がリック宅に侵入すると、愛犬ブランディにエサ前の「待て」を指示したクリフと遭遇し、女ボスのスクィキー・フロム(ダコタ・ファニング)は因縁の再会を果たします。ブルース・リーを圧倒したクリフの伏線が、ここで回収されます。
カルト集団の2人は、クリフの格闘技術と愛犬ブランディの強さになすすべなく返り討ちにあい無残な死をむかえます。リックはヘッドホンしてのんきにプールでセリフを覚えていますが、そこへスクィキーが飛び出してきて銃を乱射します。
驚いたリックは倉庫から、映画『マクラスキー14の拳』撮影時に練習で使った火炎放射器を持ち出し、スクィキーの上半身を丸焼きにします。負傷したクリフは病院に運ばれ、警察に事情聴取されたリックも解放されます。
最後は、TV俳優時代のリックを知るシャロン・テートに飲みに誘われるという、シャロン・テート事件やハリウッドの映画史を知る者にとっては最高で涙もののラストがおとずれます。まさに「闇の映画史を光に改変」してくれ歓喜です!
『ワンスアポンアタイムイン・ハリウッド』私の評価と総括
数週間前に公開の『天気の子』では「愛にできることはまだあるかい?」というRADWIMPSの歌がテーマの1つでしたが『ワンスアポンアタイムイン・ハリウッド』では「映画愛にできることはまだあるかい?」が語られます。
輝かしい光景ばかりが映し出されるハリウッドや映画業界(最近は米TVドラマ業界も)ですが、その裏では時代の波に乗れなかった俳優女優や業界人が数えきれないほどいるのでしょう。シャロン・テートは命まで奪われた最大の犠牲者でした。
クエンティン・タランティーノ監督は、そんな映画業界の闇の連鎖を止めるため、最悪な事件を改変しただけでなく光さえ当てようとします。長く映画界に関わり光も闇も知りつくしたタランティーノだからこその「映画愛」が感じられます。
私は事前にシャロン・テート事件を調べた時、ネタバレを見て残念な気になり、同時にこんな憂鬱な事件の映画を観るのはきついなと思ったけど、だからこそ最高に愛のこめられたラストには涙しました。
今年の『アルキメデスの大戦』と並び、期待してなかったけど予想を遥かに上回る良作です。タランティーノを知らない人も「最高なやつら」に会いたいなら、ぜひすぐ劇場で観てほしいおすすめ映画です!
私の評価 78/100(60が平均)
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