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映画『82年生まれ、キムジヨン』評価は?ネタバレ感想考察/いい夫いい父親も実は?男は全員敵?

82年生まれ、キム・ジヨン 映画/ドラマ

大学、就職を経て結婚・出産を機に仕事をやめたキム・ジヨンは、妻や母としての日々を過ごすうち、不思議な言動を繰り返すようになります。心配した夫が1人で精神科医に相談すると…。女性の敵は女性?ママ虫とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題82年生まれ、キム・ジヨン
日本公開日2020/10/9 [予告] 上映時間:118分
製作国韓国
原題/英題KIM JI-YOUNG: BORN 1982
監督・キャストキム・ドヨン[キャスト
映倫区分日本:G(年齢制限なし)
配給/製作
(画像出典)
クロックワークス/春風映画社
日本興行収入1.5億円(興行収入ランキング
世界興行収入0.2億USドル [出典]
平均評価
平均:100換算
77私の評価は含まず)
シリーズ
関連作品
ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ映画一覧

キャラ・ランキング(キャスト/出演者)

個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)

  1. キム・ジヨン(チョン・ユミ)デヒョンの妻。専業主婦の日々を過ごす。おかしな言動が…
  2. チョン・デヒョン(コン・ユ)ジヨンの夫。妻の言動を心配して精神科医に相談
  3. ミスク(キム・ミギョン)ジヨンの母
  4. キム・ウニョン(コン・ミンジョン)ジヨンの姉
  5. キム・ジソク(キム・ソンチョル)ジヨンの弟
  6. ヨンス(イ・オル)ジヨンの父。ジソクばかりかわいがる
  7. ヘス(イ・ボンリョン)ジヨンの同僚

ネタバレ感想『82年生まれ、キム・ジヨン』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

原作小説・監督とキャストは?

原作は、韓国の作家チョ・ナムジュの小説『82年生まれ、キム・ジヨン』です。韓国では130万部以上のベストセラーとなってます。約1年前に公開済みの韓国や中国では、高評価を得ています(このページ上の評価欄を参照)。

実体験も反映させた女性監督キム・ドヨンは、この作品が長編映画監督デビュー作です。本作の制作会社「春風映画社」の創設者です。本作は韓国で観客動員数367万人を記録。韓国のゴールデングローブ賞「百想芸術大賞」で新人監督賞を受賞。

主演女優チョン・ユミは、多数の作品で見かけてるけど個人的に最も印象的なのは『新感染 ファイナルエクスプレス』での好演です。マ・ドンソクの妻役でしたね。今回もポスターでの美女姿に期待値が上がってます!

その夫役のコン・ユも『新感染』で主役を演じてました。意志の強さを感じさせる役が多いと感じます。他の代表作には『トガニ 幼き瞳の告発』『密偵』などもあります。

「キム・ジヨン」の名前の意味は?原作者や監督の自伝?

「キム」は韓国で最も多い名字の1つであり、「ジヨン」はあの年代の女性で最も多い名前だそうです。つまり「キム・ジヨン」はありふれた女性の氏名であり、その年代の女性の代表の1人という位置づけです。

キム・ジヨンは、自分の母親や死んだ友人や祖母などが憑依(のりうつる)して、彼女らの言葉で自分自身をいたわります。それは「母や妻や娘」を演じてきた女性たちの「声」です。本作は夫がそれを精神科医に相談することから始まります。

原作者チョ・ナムジュは、育児のために専業主婦にならざるをえなかったため、その時の体験が多く描かれています。それに加えて、女性としての人生で経験した理不尽さも、盛り込まれてるように思います。

また、映画版の女性チーム長が、女性監督キム・ドヨンに重ねられてるようにも感じました。映画内でジヨンが尊敬したチーム長がラストで企業した会社名「春風」は、キム・ドヨン監督自身が創業した「本作の制作会社名」と同名です。

男性はみんな加害者?女性にとっては

本作『82年生まれ、キム・ジヨン』では多数のテーマが語られるため、最も主張したいことがわかりにくいです。ただしどの主張にも共通してるのが「女性の生きづらさ」であることは明白です。そして男性は例外なく全員が加害者です。

キム・ジヨンは、育児と家事の息抜きに公園でコーヒーを飲んでた時や、カフェで並んでる時などに、サラリーマン風の若者たちから「昼間からお気楽でいいな」「子連れは迷惑だな」と陰口を言われます。ジヨンの逆ギレは主婦代表の主張です。

ジヨンの会社では、女性チーム長に対してパワハラ・セクハラ発言で口撃する男性上司がいます。この上司の発言は、本作で一番不快でしたが、もっと不愉快なのはその場にいた男性社員が誰も止めなかった点です。日本でも同様だと思います。

その会社では3階女子トイレの盗撮が発覚後も、警察に届けないどころか男性社員の間で動画がシェアされてたという、信じがたい事実も判明。それを思い出したジヨンは、外出先でトイレ使う自由さえ奪われてしまったのです。

夫デヒョンの会社でも、セクハラ研修時に「朝鮮時代なら男性がもっと強かったのに」と女性を軽視する発言が飛び交います。休憩時間に男性社員が女性のセクシー画像をシェアして性的消費する光景は、SNSしてる男性には耳が痛いはず。

82年生まれ、キム・ジヨン 映画/ドラマ

優しい夫も父さえも加害者?妻や娘にとっては

キム・ジヨンの夫デヒョンは、男尊女卑でもなくDV夫やヒモでもなく、そこそこ高給取りで少しは家事も手伝える「当たり」の夫だと思います。それでも、配慮の足りない無自覚・無神経な言動はあるので「男性による女性軽視」は根が深いです。

母親から「孫」を要求され続けたデヒョンは、妻ジヨンに「子どもが生まれたら育児家事を手伝うから」と約束し子作りを始めます。その結末は、給料の安い妻ジヨンがキャリアをあきらめて専業主婦に。「手伝う」は当事者意識ゼロの要注意ワードです。

正月など毎年2回は夫の実家へ帰省することも、妻にとってはストレスなのに夫は気づいてやれません。夫が帰省をやめたり、帰省先で食器洗いなどをすると、妻ジヨンが義母(夫の母)に、にらまれることにも夫は無神経です。

働きたいと言うジヨンのために「意休をとる」と決断したデヒョンは「夫の鏡」と思ったけど、直後の発言「その間、勉強や読書もしたいし」にはがっかり。彼でさえ「育児・家事=休暇」としか考えてないことは絶望的です。

学生時代にバスでちかんされたジヨンに「スカート短いから。男に笑顔を見せるな」と言った父親も無自覚に女性軽視。悪いのはちかん男性のはず。その父は末っ子の息子ばかりかわいがり、娘ジヨンの好物のクリームパンさえも覚えてないほどです。

キム・ジヨンの夫や父は、世間一般的には「良い夫、良い父親」なので、キム・ジヨンはまだ恵まれてる方だと感じます。それでも「男女平等」という基準で女性から見た場合、この夫や父親でさえ満たせてないのだなと思い知りました。

女性の敵は女性?ママ虫とは?

キム・ジヨンは広告代理店で働いてる時、尊敬する女性チーム長に引っ張り上げられたいと思ってましたが、後輩男性が選ばれました。チーム長は「普通に結婚・出産した方が幸せになれる」と理由づけするが、やめられるリスクを心配してます。

ジヨンは夫デヒョンの実家に帰省すると、休む間もなく家事を手伝うはめになり気も使うので疲れます。この義母は息子の「育児休暇取得」を知ると、妻ジヨンに強いプレッシャーを与えました。本作最大の敵役はなんと「女性」なのです。

この義母に全く共感できないのは、ジヨンの母に電話して愚痴を言い病気のことまで知らせたことです。もう縁を切ってもいいレベルだと思います。強く反撃できない夫デヒョンにもがっかり。この件に関しては、良い夫とはいいづらいです。

ただし義母も「時代の犠牲者」なので同情はします。その時代、ジヨンの実母も男兄弟の進学費用を稼ぐためにミシン工場で働き、なりたかった教師をあきらめた過去があります。だからこそ、娘2人には好きな職業についてもらいたいのです。

また、息抜きしてたジヨンに対して「ママ虫」(夫の稼ぎで気楽に暮らす専業主婦)と見下して笑うサラリーマンの中には女性もいました。独身女性の会社員には「早く結婚退職して永久就職したい」と皮肉を言う者までいます。

仕事をやめたい女性は「結婚・子持ち・専業主婦」などに嫉妬。チーム長は「若さ・美しさ・幸せな結婚生活」等に嫉妬してそう。義母は「女性が自立できる時代・育児家事を手抜きする嫁・息子を奪った嫁」に嫉妬してるように感じます。

つまり「既婚独身・子持ちか否か・世代間」などの違いにより、女性が女性に嫉妬して足を引っ張ることで「女性が生きづらい世界」になってるのは、やりきれないですね。ただ、主要因は「働き方」にあるようにも感じました。

子育ては実母がすべきなのか?真の働き方改革とは?

女性が社会進出し仕事で出世する者も増えてくると、今までなかったような「嫉妬・ねたみ」「自分への失望」「退職願望」等のマイナス感情も男性なみに強くなります。その感情は必然的に競争相手である「同性の女性」に向けられます。

既に出世した女性上司は「女性の評価を下げたくない」ため、結婚や出産でやめる女性を登用しづらいです。男側も「幸せな結婚生活をおくり育児休暇まで取得する」男性社員に対して嫉妬感情が芽生え、上司等から出世をはばまれたりします。その弊害で、義母が嫁の復職に大反対したのです。

このように現在の雇用形態では、男女ともに結婚・育児を第一とは考えづらくなってます。一方で「育児・家事」よりも会社員仕事の方が向いてる女性も多いので、その場合は専業主婦よりも働く機会を与えたほうが健全だと思います。

そもそも全女性に「育児・家事」が向いてるわけでもないのに、子育ては実母がすべきという常識が古いと感じます。「育児・家事」は向いてる人にまかせられる社会が健全です。終日保育やベビーシッターの充実もその一環で重要ですね。

本作ラストは、キム・ジヨンの実母が近くに引っ越して来て育児・家事を手伝うので、ジヨンも復職できました。頼れる祖母(孫から見て)がいるなら最善の方法だけど、ごく一部の恵まれた家庭だけの特権なので映画としては逃げの結末で残念

いずれにしろ「女性の生きづらさ」の根本的な原因は「現代社会の働き方」にあると思うので、働く時間や場所をもっと柔軟にできたり、向いてない人は育児・家事をしなくていい仕組み作りが望ましいと考えます。次の10年の課題ですね!

『82年生まれ、キム・ジヨン』私の評価と感想

82年生まれのキム・ジヨンという女性の個人的な人生をたどりながら「女性の生きづらさ」を追体験できる映画です。描かれた問題点は他の映画などでも観たことある内容ばかりですが、まとめて見せられると本当につらい気持ちになります。

一方、複数の問題点が小刻みで提示され、メインテーマがぼやけていく構成は失敗だと感じます。男女平等を叫びたいのに、最も嫌悪したい敵が「義母」になってるのもブレすぎ。男性は敵というより「愚か」者にしか見えません。

それでも本作のテーマ「女性の生きづらさ」は充分に伝わるので、全世界の政治家・経営者・管理職以上の特に男性全員には視聴必須にしてもいい映画です。私も今後の言動・SNSでのシェア等には注意したいと思います。

私の評価 66/100(60が平均)

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