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『9人の翻訳家』評価は?ネタバレ感想考察/衝撃の真犯人の正体と動機や方法は?

(興収/評価は随時)
9人の翻訳家 囚われたベストセラー 映画/ドラマ

世界待望のミステリ小説『デダリュス』完結編の海外版のため、情報流出を恐れた出版社社長が9人の翻訳家を地下室に隔離して翻訳させます。しかし冒頭がネット公開され、犯人探しが始まるが…。死ぬのは誰?刑務所の囚人の正体は?(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題9人の翻訳家 囚われたベストセラー
日本公開日2020/1/24 [予告] 上映時間:105分
製作国フランス・ベルギー合作
原題/英題The Translators / Les traducteurs
監督・キャストレジス・ロワンサル(キャスト
映倫区分日本:G(年齢制限なし)
配給/製作
(画像出典)
ギャガ/フランス2
日本興行収入0.1億円(興行収入ランキング
世界興行収入0.031億USドル [出典]
製作費10,000,000EUR
平均評価
平均:100換算
73私の評価は含まず)
シリーズ
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ミステリ/サスペンス映画一覧

登場キャラクター(キャスト/出演者)

ネタバレ感想『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

アイデアと監督と日本人スタッフやキャスト

監督のレジス・ロワンサルは、フランス映画の監督ですが日本でも『タイピスト!』が規模のわりにはヒットして私も評価高めの作品です。ある女性が世界最速タイピストを目指すスポ根ぽい内容なので、観てない人にはぜひおすすめです!

この映画のアイデアは『ダヴィンチコード』原作者ダン・ブラウンの4作目『インフェルノ』を海外翻訳した時の実話がベースだそうです。情報流出をおそれた出版元が、翻訳家達を地下室に隔離したのは実話ですが、死人はでてません。

映画音楽は日本人の三宅純です。『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019年)にも関わってました。キャストはフランス人なので、日本人にはなじみの薄い俳優女優ばかりです。出版社社長を演じたランベール・ウィルソンは『マトリックス』シリーズに出演していました。

ヒロインのコスプレ女性を演じたオルガ・キュリレンコは『007 慰めの報酬』に、居眠りする最年少の若者を演じたアレックス・ロウザーは『イミテーションゲーム エニグマと天才数学者の秘密』に出演していました。

デンマーク語翻訳者役のシセ・バベット・クヌッセンは『インフェルノ』のWHO(世界保健機関)事務局長エリザベス・シンスキー役でもありました。イタリア語翻訳者役のリッカルド・スカマルチョは『ジョンウィック チャプター2』でキアヌリーブスの敵役サンティーノを演じた俳優です。

実話?9カ国の翻訳家が隔離された理由は?

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』は、上でも述べたように実話をもとにしたフィクション(作り話)です。翻訳家たちが地下室に隔離されて作業したとこまでが実話で、情報流出や傷害事件などは起こっていません。

世界的ミステリー作家オスカル・ブラックの、ベストセラー三部作『デダリュス』完結編「死にたくなかった男」の出版が決まります。出版社オーナーのアングストロームは多言語翻訳版のため、発行部数上位9カ国の翻訳者をフランス豪邸に集めます。

情報流出を防ぐため、ロシア富豪が核戦争に備えて作った地下室に隔離されます。スマホや携帯電話、電子機器などは一切持ち込ませず、インターネットもスタッフ用の特別ルーム以外では使えません。もちろん外部との接触も不可能です。

翻訳家たちには、毎朝20ページずつが渡され、夜には回収されて翌朝には次の20ページが配られ、約1ヶ月間で翻訳作業を終え、次の1ヶ月で推敲する予定です。この方法は現実的には、伏線/回収や韻を踏む単語、ミスリードの書き方などで難しそうですが。9人の翻訳家については上の[キャスト一覧↑]を参照してください。

フーダニット!あやしい容疑者は誰?

翻訳作業が始まり、クリスマスの夜、9人の翻訳家は地下室へ案内してくれたオーナー助手ローズマリーも誘ってパーティーを開きます。しかしその夜、出版社オーナーのアングストロームの携帯メールに、謎の人物から脅迫文が届きます。

脅迫内容は「冒頭10ページをネット流出させた。次の100ページを公開されたくなければ、24時間内に500ユーロ払え」。最後には、パーティーで合唱した歌のワンフレーズが書かれてたので、10人のうち誰かが真犯人だと思われます。

翻訳作業は一時停止され、犯人探しが始まります。最もあやしいのは、ロシア語のカテリーナ(オルガ・キュリレンコ)です。カテリーナは『デダリュス』にほれこみ、ヒロインのレベッカになりきるコスプレをして翻訳作業も一番速いです。

次に、英語のアレックス(アレックス・ロウザー)です。最年少のアレックスは初日から翻訳作業せずに昼寝して余裕を見せていて、かなり浮いた存在です。ポルトガル語のテルマは、私物検査に抵抗して取り押さえられます。

中国語のチェン・ヤオは、パリ在住で複数言語を理解でき、翻訳作業中のパソコンにあやしげなUSBメモリを付けています。イタリア語のダリオは、SNSで有名らしく、しつこく著者オスカル・ブラックに会うことを要望します。

デンマーク語のエレーヌは、何か秘密を隠してそうです。スペイン語のハビエルは、左手を怪我してあやしいギブスをはめています。ギリシャ語のコンスタンティノスは、お金がほしそうです。ドイツ語のイングリットも反抗的です。

つまり、9人全員があやしい容疑者です。この序盤は本格ミステリーの「フーダニット(犯人を見つける物語)」の形式で進行しますが真犯人が自白するまで、視聴者には論理的な解明は難しいと思います。それが少し残念です。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー 映画/ドラマ

地下室で原稿を見た犯人は誰?

オスカル・ブラックのミステリー小説『デダリュス』に心酔してるロシア語のカテリーナはその美貌も利用し、出版社オーナーのアングストロームに取りいって彼の部屋へ入ります。そして机の上にアタッシュケースを見つけます。

カテリーナは続きを読みたい衝動にかられ、アタッシュケースの3桁の数字を「123」「456」「666」「069」「777」等の順に試していき開けることに成功します。原稿を手に取るが、アングストロームが戻ったのでバレないように閉めます。

この時点では、カテリーナが原稿をどこまで読んだのか、原稿をどうしたのかは不明なままです。この後に流出するページを持っている可能性もあり、最もあやしい容疑者です。ただしもし真犯人なら、あやしい行動をしすぎですね。

死人の正体と原因は?

アングストロームと屈強な警備員たちによる犯人探しにより、翻訳家どおしでも疑心暗鬼になります。犯人は予告どおり次の100ページをネット流出させます。アングストロームは9人を疑い、食事や電気すら与えないと決定して追いつめます。

そんな時、デンマーク語のエレーヌの首つり自殺死体が発見されます。エレーヌは、私物検査時に「彼女が執筆中だった小説原稿」をアングストロームに見つかり「他の仕事は禁止だ。才能はない」と原稿を焼かれていました。

エレーヌは若い時に小説家を目指したが、結婚した夫やわが子のためにあきらめて翻訳家になったのです。しかし今回の翻訳作業中にアイデアが止まらなくなり、もう一度小説家になる夢をかなえるため自由時間に執筆してたのです。

エレーヌの自殺の原因は、もう夢をかなえる機会がないと思い、将来に絶望したからと感じます。原稿を焼かれただけでは動機としては弱いので、ここに来る前もずっと悩み続けた結果「才能ない」の心ない一言で決断したのでしょう。

正直この自殺は不要だったと感じます。「死」によってダークな雰囲気にして、展開を盛り上げるためのご都合主義だと感じます。この後、銃撃事件も起こるので「死」や「殺人」による事件性はそれだけでよかったと思います。

囚人は誰?原稿を盗んだ方法と犯人の正体は?

地下室での騒動から2ヶ月後のある刑務所での面会シーンがはさまれます。出版社オーナーのアングストロームが面会室に入って、9人の翻訳家のうち誰かと事件について語ります。

この描写は映画ならではのミスリードで、見事にだまされました。実はアングストロームこそが囚人であり、面会に来たのは英語担当のアレックスです。アレックスは、地下室に集められる前に原稿を盗んだ方法を暴露します。

アレックスに、中国語のチェン、ドイツ語のイングリット、スペイン語のハビエル、ポルトガル語のテルマも早く読みたいので協力します。アレックスは、アングストロームの行動パターンを調べ、電車内で原稿の入ったケースを別のと入れ替えます。

すぐ電車を降り、カテリーナと似た方法でアタッシュケースの暗証番号を解いて、日本製の高速コピー機2台でコピーします。そして車とスケボーで元の電車に追いついて飛び込み乗車し、仲間がネズミ騒動を起こしたすきにケースを戻します。ハビエルはこの作戦中に腕を負傷しギブスをはめたのです。

この自白を、アングストロームに盗聴器をつけた警察たちも聞いています。これでフーダニット(犯人)と、ハウダニット(犯行方法)が判明します。しかし結論を言うと、この犯行には1つだけウソがあり、1人だけがそれを知っています。

刑務所での会話が何度かはさまれると、時系列や人間関係が少し混乱したのですが、あとで思い返すとこの順番で見せることが必須だったのだと気づき感心します。つまり、最後のどんでん返しを劇的に演出するための順番です。

地下室で撃たれたのは誰?自白したのは誰?

地下室で犯人が判明しないまま、さらなる脅迫メールを受け取ったアングストロームは我を失い、9人の翻訳家に銃口を向けます。多言語を話せるカテリーナは、アングストロームが理解できない言語で取り押さえるタイミングを皆に指示します。

アレックスが「犯人は自分だ。メールは自宅から遠隔送信してる」と自白します。アングストロームの助手ローズマリーは、アレックスの住所がニセだと突き止め真の住居に入るが、初心を思い出す写真を見つけ、横暴なアングストロームを裏切ります。

そんなやりとりと前後して、怒りを止められなくなったアングストロームは、ロシア語のカテリーナを銃で撃ってしまいます。その罪により、アングストロームは逮捕されて刑務所行きになったのです。カテリーナの生死は不明です。

アングストロームがカテリーナを撃ったのは、劇的な演出のためにしか思えなかったのですが「最後の真相」を知った後なら、アングストロームが「本当に隠したかった真実」を知ってそうな人物を撃ったのだと気づきます。

つまり、仕事としてではなく心からオスカル・ブラックや彼のミステリ小説を愛していたカテリーナには「アングストロームの罪」を見透かされてる気がしたのだと思います。一度原稿ケースを開けられたからという解釈もできそうです。

真犯人の正体と盗んだ方法は?

オスカル・ブラック著の傑作ミステリ三部作『デダリュス』完結編の原稿を流出させた真犯人は、英語担当のアレックスです。上で書いたとおりです。しかしアレックスは、小説原稿をアングストロームから盗んではいなかったのです。

しかし一緒に盗んだ4人の仲間は「計画は完璧に成功した」と思ってて、オスカル・ブラックの未出版の小説を先に読めました。衝撃の事実は、アレックスこそが、原作者オスカル・ブラック(フーダニット)でした。最初から原稿は手元にあった(ハウダニット)のです。

オスカル・ブラックは、少年時代に通った書店のジョルジュ・フォンテーヌに才能を認められ、顔出ししない謎のミステリ作家としてデビューしました。その恩でフォンテーヌだけが、オスカルの小説を預かれて出版社も選別できました。

オスカル・ブラックは、少年時代に万引きしてバレます。書店主フォンテーヌはアガサ・クリスティの名作ミステリ『オリエント急行殺人事件(2017)』の犯人を尋ねます。古典とはいえ、ネタバレ公開したのは驚きました。

しかしフォンテーヌは、オスカルの回答を「間違い?」と判定して書店で働かせながら、その才能を開花させたようです。映画『9人の翻訳家』の真犯人を、オリエント急行殺人事件の犯人とミスリードさせるねらいもあったのでしょう。

真犯人の動機は?最終目的は?

フォンテーヌはアングストロームの師でもあり、その出版社で『デダリュス』ニ巻までは出版させました。しかしフォンテーヌは、アングストロームに「小説愛がなくなり金儲け主義になったので失望した。完結編は別出版を選ぶ」と宣言します。

自暴自棄のアングストロームは、フォンテーヌを階段から突き落とすと殺してしまいます。本屋が燃えてた冒頭シーンは、この直後だと思われます。アレックスがアングストロームをはめた動機(ホワイダニット)は、その復讐のためです。まず「(自分の)小説の冒頭を見事に言い当て」採用されます。

さらにアレックスは、アングストロームの罪を重くします。出版社が情報流出犯に振り込んだ8,000万ユーロ(約96億円)もの大金を、アングストロームの銀行口座に転送します。これで資金の流れはアングストロームによる自作自演を示します。

序盤からオスカル・ブラックの正体が焦点だと思ってたけど、9人以外にフォンテーヌ、アングストローム、ローズマリーもあやしくて絞りきれませんでした。謎を解く情報を視聴者には与えてくれなかったので、その点はアンフェアです。原稿コピー犯行の翻訳家たちをだます必然性も思いつきません。

それでも真犯人と真相が判明した時は衝撃でした。先に明かされた「電車で原稿を盗んでコピーしたシーン」がいいミスリードになっていてだまされました。それにしても、株売却までして8000万ユーロは払いすぎではないですか?

『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』私の評価と総括

シナリオには粗が目立つし、中盤でややだれるし、無関係な容疑者たちが背景のようになってるし、そもそもアレックスとカテリーナ以外の翻訳家のキャラが薄い等、多くの登場人物をいかしきれていないのは残念です。

また、アレックスの本当の住まいにローズマリーが来ることを予想して写真を用意していたり、胸に入れた『失われた時を求めて』の本で偶然助かったとはいえ、アングストロームに撃たれる状況はリスクが高すぎだと感じました。

ただ、制作陣がやりたかったことや見せたかった物語は、本格ミステリとして一級品に仕上がっていると感じます。フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットの合わせ技ですが、それぞれの謎の解明には納得できるので好みです。

多言語でアングストロームを追いつめようとするシーンは最も印象的でしたが、観る前に予想してた「翻訳家ならではのトリック」は見つけられなくて少し物足りなかったです。それでも良質のミステリ映画として多くの人に観てほしい作品です!

私の評価 69/100(60が平均)

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