映画『流浪の月』感想ネタバレ解説考察/結末は?2人の真実とは?
雨の公園で家に帰りたがらない10歳の少女を、19歳の大学生が自宅へ連れ帰り2ヶ月過ごした後、逮捕されます。15年後、お互いに恋人がいる2人は再会するが…。少女が帰りたくない理由は?再会後どうなる?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 流浪の月 |
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日本公開日 | 2022/5/13 [予告] 上映時間:150分 |
監督・キャスト | 李相日(リ・サンイル)[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | ギャガ/UNO-FILMS、UNITED PRODUCTIONS |
日本興行収入 | 8.3億円(興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | 80(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 家内更紗/カナイ サラサ(広瀬すず/幼少期: 白鳥玉季)幼少期に両親を亡くし、おばの家へ。15年後はバイト店員
- 佐伯文/サエキ フミ(松坂桃李)19歳の大学生時に更紗の誘拐容疑で逮捕された。15年後はカフェ店長
- 中瀬亮/リョウ(横浜流星)上場企業サラリーマン。15年後の更紗の恋人で結婚も予定
- 安西佳菜子(趣里)更紗のバイト先の友人。娘がいるシングルマザー
- 谷あゆみ(多部未華子)15年後の文の恋人
- 安西梨花(増田光桜)佳菜子の娘
- 佐伯音葉(内田也哉子)文の母親
- 阿方(柄本明)文のカフェ1階の骨董屋の店長
ネタバレ感想『流浪の月』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は本屋大賞受賞作?監督とキャスト
映画『流浪の月』の原作は、凪良ゆう(なぎらゆう)の小説『流浪の月』(2019年8月出版)で、2020年の本屋大賞受賞作です。
李相日(リ・サンイル)監督は『フラガール』『悪人』『怒り』等を監督。日本アカデミー賞や、報知映画賞の他、多くの受賞歴ありです。撮影監督ホン・ギョンピョは『パラサイト半地下の家族』も手がけました。
主演の広瀬すずは、ちはやふるシリーズが有名で最近は『ラストレター』等に出演。W主演の松坂桃李は『蜜蜂と遠雷』『空白』『孤狼の血 LEVEL2』等に出演。
横浜流星は『あなたの番です 劇場版』『嘘喰い』、多部未華子は『あやしい彼女』『アイネクライネナハトムジーク』等に出演。
タイトル『流浪の月』の意味は?
15年前の事件以来、更紗も文も心はふらふらと「流浪」のようにさまよっていたのでしょう。また、毎日見た目が変わる「月」のように毎日成長するのが人間ですが、文は「体」の成長が止まり、更紗は「心」の成長が止まったのかも。
しかし「月」じたいは常に球のまま。つまり文も更紗も成長が止まってるとしても、同じ人間であることに変わりはありません。そして世間で語られる事実が様々であっても「真実は1つ」であるメタファーにもなってます。
更紗と文の出会いは?15年後の2人と恋人は?
10歳の家内更紗(広瀬すず。カナイサラサ)は雨降る公園で本を読んでた時、19歳の大学生・佐伯文(松坂桃李。サエキフミ)に傘をさされます。「家に帰りたくない」と言う更紗に、文は「うち来る?」と聞き「いく」で共同生活開始。
しかし2ヶ月後、更紗は警察に保護され、文は少年院へ。15年後、更紗はサラリーマン中瀬亮(横浜流星)と同棲し、バイト先ではシングルマザーの安西(趣里)にうらやましがられます。亮にもバイト先でも被害女児の過去は知られてます。
更紗は安西と立ち寄ったカフェのマスターが文だと気づき、何度も通い始めます。それを恋人の亮に追求され悩む更紗がカフェへ行くと、文と恋人らしき谷あゆみ(多部未華子)が出てきます。更紗は尾行してマンションをつきとめます。
以上が序盤のネタバレあらすじです。9歳の年の差恋愛は20代なかばを過ぎると問題ないと感じるけど、片方が10歳だと完全にロリコン犯罪と認定されます。養育者に連絡もしてないので、事情がどうあれ「誘拐」となります。
当時の文もその判断はできてたようですが、母親の件(後述)で自暴自棄になってたし、自分の将来に希望も見いだせてなかったため「深く考えずに更紗の自由にさせてた」というのが真相ではないでしょうか。
15年後、2人は自立して恋人もいますが「元誘拐犯」「元被害女児」というレッテルは貼られ続けてます。文は恋人に隠してますが、更紗は恋人には打ち明けた上でのつきあいだし、職場でもネット情報でバレてるが平然をよそおってます。
この違いは、文は「犯罪だと意識した上で更紗と暮らしてた」ことに対し、更紗は「ひどいことされてないので犯罪という意識がなかった」からだと感じます。だから15年後も更紗はカフェに通うが、文からは声をかけないのでしょう。
少女が帰宅を拒む理由?男が女性を愛さない理由?
10歳の更紗が家へ帰りたくなかった理由は「おばの家の中学生の息子が、夜中に更紗の体をさわりに来るから」。15年後の更紗が男性との行為をこばみたいのも先天的かもしれないが、幼少期の体験が理由である可能性が高そうです。
一方、文が大人の女性を愛せない理由は「体の第二次性徴が止まる病気のため」なので先天的です。女性への恋愛感情があるかどうかは映画を観ただけではわかりませんが「自分と似た者どうしの更紗に対する父性」は感じます。
佐伯文の正確な病名は不明(原作未読)ですが、たまたま別の映画で観た内容を思い出しました。生物学的な理由で典型的な男女とは違う人々は「インターセックス」と呼ばれることもあるそうです。
日本でも知られてきた「LGBTQ」に、この頭文字「I」を加える「LGBTQIA」という呼び方が海外では広まってるそうです。ちなみに「A」は「他者に性的欲求を感じないアセクシュアル」「他者に恋愛感情を抱かないアロマンティック」の略。
映画『孤狼の月』では明確にされませんが、更紗がどちらかである可能性も否定できません。ただし世間はマイノリティの思考は無視して「大人の男性が幼い女子と一緒にいるのは性的指向のせい」と考えるので辛いですよね。
15年前の真実は?2人の決断/結末は?
更紗は彼氏・亮の実家へ行き、過去の事件を知られても表向きは歓迎されたが、妹?姪?から「亮は逃げ場のない女性を好む」と聞き動揺します。亮は嫉妬心で文を「女児誘拐犯」とネットでさらし、ついには更紗をぼこぼこに殴ります。
絶望した更紗は文の隣の部屋へ引越し。文は恋人あゆみに過去の事件を知られたが自分の病気は言えず「大人の女性を愛せない」とつきはなします。そしてまた更紗と文は一緒に過ごすようになるが、週刊誌の記事で2人とも仕事に支障が。
そんな時、更紗は職場のシングルマザー安西の娘リカを数日間だけ預かることになります。しかし金持ち男性と出かけた安西は戻らず。更紗は自殺未遂の亮の件で事情聴取。文は女児誘拐を疑われて、面倒見てたリカは警察に保護されます。
その後、更紗は絶望した文に会いに行き、文の病気を初めて知ります。そのことから、15年前の共同生活2ヶ月間に、文と更紗の間に男女関係がなかったことは明白です。しかし世間は理解しないので、2人は「過去がバレたら移動する」と割りきって一緒に生きていくことを決断。
『孤狼の月』の大テーマからは少しはずれるけど、更紗の恋人・亮が病的に嫉妬深くて「逃げ道のない女性を束縛」するのは、失恋を恐れた過剰な自己防衛の結果だと感じます。会社に行かない時点で、深刻な精神疾患の可能性も。
文があゆみに過去や病気のことを打ち明けなかったのは「一緒に暮らしたい気持ちは本当だった」からだと思います。男女の恋愛感情や愛してたかは不明ですが、大切に思ってたのは確かです。童顔の多部未華子の配役は絶妙。
あゆみだけが文の過去を知れなかった理由は「南文」という離婚した母方の姓になってたからですね。離婚の理由が文の病気かは不明ですが、文のトラウマのきっかけは「母からの愛情の欠如」です。更紗も親の愛情が希薄でした。
映画『流浪の月』私の感想と評価
本屋大賞受賞作ですが、今回は重めのストーリーが期待以上だっただけでなく、広瀬すずと松坂桃李と横浜流星の演技が迫真で圧倒されました。明かされていく話の順番や構成もよく考えられていて、文と更紗の苦悩が伝わってきました。
一方、事件概要がほぼ予想どおりだったので、ミステリーやサスペンス的な面白さは感じませんでした。ただし、原作著者の凪良ゆうはBL作家なので、原作じたいが恋愛ヒューマンドラマでしょうから、映画の方向性は間違っていません。
個人的には同じく本屋大賞の『そして、バトンは渡された』の方がエンタメ寄りで好きですが、本作『流浪の月』の純文学・私小説っぽい語りも斬新で楽しめました。出演者も豪華だし演技も見どころなので多くの人に観てほしいです!
私の評価 62/100(60が平均)
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