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岩井俊二映画『ラストレター』ネタバレ感想/ラスト結末は?タイトルの意味は?添削と盗み見からの恋?

ラストレター 映画/ドラマ

岩井俊二監督作。姉の葬式後、同窓会へ出席した裕理は姉と間違えられ、初恋相手へ手紙を出すきっかけも生まれます。一方、姉の娘と裕理の娘が夏休みを過ごす実家にも手紙が届き…。手紙を使う理由は?阿藤の正体は?(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題ラストレター
日本公開日2020/1/17 [予告] 上映時間:121分
監督・キャスト岩井俊二(キャスト
映倫区分日本:G(年齢制限なし)
配給/製作
(画像出典)
東宝/ロックウェルアイズ
日本興行収入8.0億円(興行収入ランキング
平均評価
平均:100換算
(興収・評価: 2024.8.17更新)
78私の評価は含まず)
シリーズ
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ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧

登場キャラクター(キャスト/出演者)

ネタバレ感想『ラストレター』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

岩井俊二監督と美しいキャストたち

岩井俊二監督は、1995年の『Love Letter』で長編映画監督デビューし多くのファンも獲得しました。その後も『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』等、作家性の強い映画を製作しています。

最近も2016年の『リップヴァンウィンクルの花嫁』ではキネ旬ベストや日本アカデミー賞等でも評価されてるし『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の原作でも知られてます。

岩井俊二監督は過去作でも絵的に美しい風景や構図を重視するとともに、出演者たちも美しい顔や姿の俳優女優を起用しています。中山美穂、蒼井優、市原隼人、伊藤歩、黒木華、綾野剛など。しかし本作の美男美女度は過去作の比ではないです。

主演の松たか子は『四月物語』にも出演し、『告白』『来る』等で主演・助演としても活躍中です。2019年の『マスカレードホテル』ではHERO以来のキムタクとの再共演も果たし話題となりました。

若手女優の競演も楽しみです。広瀬すずちはやふる実写版シリーズのイメージが強いです。岩井俊二原作『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主演の声も担当しました。

森七菜は2019年の『天気の子』主演の少女の声を見事に演じ、同年『東京喰種トーキョーグール【S】』で美少女ぶりを発揮し『最初の晩餐』『地獄少女』等でステップアップ中です。本作『ラストレター』では主題歌「カエルノウタ」(作詞:岩井俊二、作曲編曲:小林武史)を歌うことでも話題になっています。

ハンサム俳優代表としては『そして父になる』『三度目の殺人』等の福山雅治や、『桐島、部活やめるってよ』『屍人荘の殺人』等の神木隆之介も登場します。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』等の監督で有名な庵野秀明も、松たか子の夫役で登場します。『風立ちぬ』での声は違和感ありましたが、今回は致命的にわるくはなかったです。

本作『ラストレター』は、森七菜にとっては最初の代表作になりそうで、蒼井優につづいてほしいですね。既に多くの映画で俳優経験を積んだ福山雅治にとっても、演技面での飛躍ポイントになる気がします。

手紙がつなぐ過去と現在のラブストーリー?

映画『ラストレター』は、同窓会から始まるありがちな不倫未遂や、手紙のやりとりで何かが明かされていく普通のラブストーリーと当初は思ってました。普段観ないジャンルですが、観てみるとナメてたことを反省しました。

スマホが使えなくなって「手紙」を送付し始めた時には、その方が面倒では?とツッコミたくなったけど、「一方通行」や「三角関係」でのやりとり、「文章のうまさの認識」「添削」「娘への遺産」など手紙だからこそできた表現に納得しました。

最近は『orange オレンジ』のように少しSF要素を入れて、過去と現実をつなぐラブストーリーもよくあります。しかし映画『ラストレター』はSFやファンタジー要素なしで、説明も多すぎず、過去の恋愛模様や現在の人間関係が美しく描かれています。

裕里が同窓会に出向いた理由は?

裕理(松たか子)は姉の未咲の葬式後、姉の同窓会招待状を受け取ります。裕理の娘の颯香/そよか(森七菜)はそのまま夏休み中、未咲の娘の鮎美/あゆみ(広瀬すず)と一緒に実家で過ごすことになります。

裕理は姉の死による欠席を伝えるために同窓会へ出向きますが、クラス全員に未咲本人と勘違いされ、否定できずに未咲としてさえないスピーチまでします。その後、元教師が再生した姉・未咲の卒業式の洗練されたスピーチとは大違いです。

ところで、裕理は最初から未咲を演じるつもりはなかったと思います。ただし、電話で欠席を伝えればすむだろう同窓会へわざわざ着飾って参加した理由は、初恋相手の乙坂鏡史郎(福山雅治)をひと目みたかったからでしょう。

未咲だと勘違いされた後すぐ否定しなかったのも、乙坂と話せるかもしれないという期待を持ったからです。

あと、姉に劣等感を抱いてた裕理は、高校時代に乙坂から未咲への手紙を届けずに自分で読んでた程度のモラル感だったとも言えます。つまり、愛する人に近づくためのウソならバレなければOKという考え方は、大人になってもそのままです。

ちなみに、本名で「未咲」という小説を書いてデビューした乙坂鏡史郎が、誰にもからかわれないのは違和感です。

ラストレター 映画/ドラマ

SNSやメールでなく手紙を使う理由は?

裕理は乙坂からのメッセージを夫(庵野秀明)に見られ同窓会での浮気を疑われて、風呂でスマホを水没させられます。しかし手紙は送付し続けます。手紙を使う理由は、相手からの返信がない一方通行の手紙なら夫にも知られないからでしょう。

スマホがすぐ戻らないという理由もあるだろうけど、戻るまで待てないのでしょう。そこでも裕理の道徳観を明確に感じられます。不倫願望まではないけど、初恋相手の乙坂と一方通行でもつながっていたい思いが残ってそうです。

あと「三角関係」でのやりとりをバレずにできたことも「手紙」による効果です。また、未咲が大切に残した手紙を娘の鮎美も読んで感動できたのも、スマホやSNSでは難しそうなので「手紙」ならではです。

裕理は乙坂をまだ愛しているのか?

高校時代の裕理は、姉宛のラブレターを届けず盗み見するほど乙坂を愛していました。その後告白したけど、乙坂は未咲にいちずで断られたのでしょう。それで裕理の乙坂への片思いは、いったん終わりました。

しかしあわよくばと思って行った同窓会で乙坂と再開し、メッセージ交換後に告白(未咲宛だが)までされたので、JK時代の実らぬ恋を思い出します。裕理は家庭をこわす気はないけど、初恋相手の乙坂鏡史郎のことは今でも大好きなのでしょう。

そう判断できる理由は、乙坂が告白した相手(姉の未咲)のふりを続けたことや、姉の死をすぐ伝えなかったからです。ただ、裕理には、乙坂を未咲の死の原因の1つとして責めたい気持ちもあったように感じます。

乙坂が手紙をつづけた理由は?裕理に恋?

乙坂鏡史郎は、一方的に送付されてくる手紙を読んでるだけでは飽き足らず、実家宛に送付し始めます。それを読んだ鮎美(広瀬すず/未咲の娘)と颯香(森七菜/裕理の娘)は、未咲のふりして返事の手紙を出します。

乙坂は、同窓会に来た未咲の正体が裕理であると一目で気づいてたようです。それでも裕理と手紙のやりとり(実際は鮎美と颯香との文通)を続けた理由は、本物の未咲と再会するきっかけがほしかったからだと感じます。

高校時代、実家へ連れていきスイカまで出して、近くで恋愛信号を発してた裕理の気持ちに乙坂は全く気づきません。そんな乙坂には、現在も裕理への恋愛感情は感じられません。あくまでも「かわいい妹」として見てるだけです。

三角関係が将来の職業にまで影響?添削の意味?

映画『ラストレター』では高校時代の恋愛相関図として、裕理(森七菜)⇒乙坂(神木隆之介)⇒未咲(広瀬すず)の三角関係が展開されます。実際に未咲がからんでくるのは、裕理の手紙の盗み見が発覚した後です。

現在の三角関係は恋愛感情は弱いけど、裕理(松たか子)⇒乙坂鏡史郎(福山雅治)⇔未咲につながりそうな裕理(実際は鮎美(広瀬すず)と颯香(森七菜))の相関図で展開されます。乙坂は、裕理とのやりとりだと思っていますが。

高校時代の三角関係で興味深いのは、自分が好きな相手の言動が、将来の職業を決めてしまったことです。乙坂は、未咲の「小説家になれるよ」の一言で小説家を目指します。裕理は、本好きの乙坂の影響で図書館勤務に興味を持ったのでしょう。

そして先は描かれないけど、乙坂鏡史郎から未咲へのラブレターや小説「未咲」で感動した鮎美と颯香も、文章を書く仕事や本に関わる職業につく可能性が感じられます。ちなみに過去作『Love Letter』も図書委員になる2人の淡い恋が描かれてます。

あと「文章の添削」が恋の引き金になっているのも味わい深いです。高校時代の最後に未咲は、卒業式のスピーチ文を乙坂に添削してもらい恋愛感情が生まれたのでしょう。その後、大学時代にはつきあっています。

同じ構造で発展する恋愛関係が、少年に老いらくの恋と言われた裕理の義理母でも語られます。義理母は、同窓会で再会した英語教師に英文を添削してもらいながら恋愛感情を育み、口紅を置くほどの仲になっています。

裕理(松たか子)も「添削」されて「これ楽しいかも」と言います。「添削」とは自分が書いた文章を全てさらけ出し、相手の文章を融合される初めての共同作業なので、2人だけの関係の一種のイニシエーション(通過儀礼)とも考えられます。

ラストレターのタイトルの意味は?サインは?

映画『ラストレター』のタイトルの意味は人によって解釈が違いそうですが、私は「ラストレター」とは、未咲が書いた文章を乙坂が添削した卒業式のスピーチ文だと思います。

素晴らしい内容のスピーチは、未咲と乙坂の初めての共同作業であると同時に、2人が全卒業生にあてた「ラストレター」です。同時に、岩井俊二監督が映画の全視聴者に宛てた「ラストレター」でもあると感じます。

この映画が1月中旬に公開された理由は「卒業式」「成人式」が近いこと、社会人にも環境変化が起きやすい時期であることから必然だったと感じます。

あと劇中で何度も繰り返された、乙坂に求められる「サイン」も「ラブレターの一部」だと感じます。求めたのは女性ばかりで、中山美穂、広瀬すず、松たか子です。そしてサインを求められるかぎり、乙坂は小説家をあきらめないと思います。

阿藤の正体とは?

岩井俊二監督の長編映画デビュー作『Love Letter』にも出演してた中山美穂と豊川悦司がラスト近くで登場します。未咲と鮎美に家庭内暴力(DV)をふるった阿藤(豊川悦司)とその恋人のサカエ(中山美穂)です。

乙坂は安い居酒屋で阿藤と話して何かを感じとります。阿藤は夢やぶれた者の象徴であり、乙坂がたどる可能性のあった道であり、将来も行きつく可能性のある人物として描かれています。岩井俊二が描き続けてるIF物語です。

一方で、乙坂が阿藤にならなかった理由は、未咲の社会人へ向けてのスピーチを聞いたり、サインを求められたりしたからだと思います。また、書いたラブレターを盗み見され(高校の裕理、現在の鮎美と颯香)たのも、乙坂に好影響を与えたと感じます。

颯香が登校したくない理由とは?

颯香は、自分から夏休み中は実家で過ごしたいと提案しました。その理由の1つは、年の近い鮎美と一緒に過ごし、夜更かしとかしたいからですが、自分の恋バナを聞いてほしい気持ちもあったのでしょう。

そして夏休み後は実家近くに転校したいと言うと、鮎美には「正直重いよ」と軽く言われます。その後、颯香が学校へ行きたくない理由は、クラスで好きな男子を見ると顔が赤くなるので、それを見られるのが恥ずかしいからだとわかります。

それだけ聞くとブリッコ的(死後?)なセリフですが、岩井俊二監督が見せる構図や表現力と、森七菜の演技力との相乗効果でとてもかわいいシーンに仕上がっています。森七菜のベストショットではないでしょうか。

『ラストレター』私の評価と総括

通常は劇場に行ってまでは観ないタイプの映画ですが、後半は号泣して止まらなくなりナメてたことを反省しました。岩井俊二監督作はまだ5作目の初心者ですが、映画『ラストレター』は岩井俊二監督の集大成であり代表作になると思います。

宮城県の美しい風景、顔採用の美しい俳優女優たち、美しい文章でつづられる手紙・卒業スピーチ・セリフなど、終始「美しい」づくしです。昨年も流行ったASMR(心地よい快感音楽)のようにも感じられるので、岩井俊二監督作品に触れたことない人でも、癒やされたい人にもおすすめです!

私の評価 73/100(60が平均)

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