映画『マスカレードホテル』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?真犯人の正体や動機は?
東野圭吾の小説が原作。4つ目の連続殺人事件の場所とされる「ホテルコルテシア東京」で新田刑事らは潜入捜査。ホテルマン山岸は厳しい教育係だが自分もミスしてしまい...。犯人の動機は?狙われてるのは誰?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | マスカレード・ホテル |
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日本公開日 | 2019/1/18 [予告] 上映時間:133分 |
監督・キャスト | 鈴木雅之[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/シネバザール |
日本興行収入 | 46.4億円 年間13位 |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.18更新) 74(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 東野圭吾の映画一覧 続編『マスカレード・ナイト』38.1億 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 新田浩介(木村拓哉)捜査一課刑事。破天荒だが人を見抜く天才
- 山岸尚美(長澤まさみ)ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク。優秀だがまじめすぎる
- 片桐瑶子: ホテルの宿泊客。目の不自由な老婦人
- 長倉麻貴(松たか子)名古屋の劇団員
- 栗原健治(生瀬勝久)ホテルの宿泊客。新田へのクレイマー?
- 能勢和彦(小日向文世)新田の元相棒の刑事。一見愚鈍だが有能
- 綾部貴彦(濱田岳)ホテルの宿泊客
- 稲垣竜男(渡部篤郎)捜査一課 係長
- 藤木泰志(石橋凌)ホテル・コルテシア東京の総支配人
- 古橋(髙嶋政宏)ホテルの宿泊客
- 安野絵里子(菜々緒)ホテルの宿泊客。館林がストーカー?
- 館林光弘(宇梶剛士)ホテルの宿泊客。ストーカー?
- 高山佳子(前田敦子)ホテルで結婚式を挙げる客
- 女装した男(勝地涼)ホテルで何かを計画?
- 本宮政治(梶原善)捜査一課刑事。新田の先輩
- 関根拓真(泉澤祐希)捜査一課刑事。新田の後輩
- 尾崎新次郎(篠井英介)捜査一課 管理官
- 久我昭弘(東根作寿英)ホテル・コルテシア東京の先輩フロントクラーク
- 川本美香(石川恋)ホテル・コルテシア東京の若手フロントクラーク
- 田倉哲郎(鶴見辰吾)ホテル・コルテシア東京の宿泊部・部長
ネタバレ感想『マスカレード・ホテル』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は?監督とキムタクら豪華キャスト
映画『マスカレード・ホテル』の原作は、東野圭吾[一覧]によるミステリー小説『マスカレード・ホテル』(2011)です。マスカレード・シリーズ1作目で、2021年時点では続編『マスカレード・イブ』(短編集)『マスカレード・ナイト』の3作が出版されてます。
監督の鈴木雅之はTVドラマや劇場版『HERO』や、映画『プリンセストヨトミ』『本能寺ホテル』でも監督を務めてます。キムタクとの相性はよさそうです。
主演のキムタクこと木村拓哉の最近の映画主演作は『無限の住人』『検察側の罪人』等。「何をやってもキムタク」とよく聞きますが、むしろほめ言葉だと思います。木村拓哉には今後も徹底的に「キムタクな役」を極めてほしいです。
長澤まさみは『キングダム』『MOTHER マザー』等、小日向文世は『アルキメデスの大戦』等に最近出演。2人は『コンフィデンスマンJP プリンセス編』等でも共演。
他の豪華な出演者はホテルの利用客や宿泊客に、濱田岳、笹野高史、髙嶋政宏、橋本マナミ、田口浩正、菜々緒、宇梶剛士、生瀬勝久、前田敦子、勝地涼、松たか子など。ホテル経営陣や警察に、石橋凌、鶴見辰吾、渡部篤郎などです。
マスカレードとは?意味や映画での使われ方は?
マスカレードとは、仮面舞踏会、変装、見せかけ、なりすましなどを意味します。ホテルマン山岸尚美(長澤まさみ
)が「お客様は仮面舞踏会のように、他の誰かを演じてホテルにやってくるけど、仮面を引きはがそうとせず受け入れる」と発言します。
映画ラストで仮面舞踏会のようなシーンがあったり、エンドロールでも仮面を被るキャラクターたちが見れたりと、おまけ映像としてもゴージャス感あって楽しめました。
全殺人事件の真相とトリックは?
1つ目の事件では、東京の品川で男性が殺害され、後に会社の横領がバレます。横領の共犯「手嶋」が容疑者だが、元恋人からの自宅への電話に出てたのでアリバイが成立。その電話は元恋人の友人「井上浩代」が証言し裏付けがとれてます。
後に明かされた真相は、井上浩代と手嶋が交際関係であり、井上が「手嶋の元恋人」の携帯電話の「手嶋への連絡先」を自宅から現場近くに書き換え、話した後に戻したのです。元恋人は手嶋自宅にかけたつもりです。すぐ後、手嶋自宅にかけて着信履歴も残したのでしょう。
2つ目の事件では、東京の主婦が殺害され、後に明かされた真相は保険金目当ての夫が犯人でした。3つ目の事件では、東京の教師が殺害され、後に明かされた真犯人は生徒でした。
3つの事件現場では「2つの数字の暗号」が共通して発見され、当初は同一犯による連続殺人事件と推定されます。数字から殺害日(月と日)を引くと次の犯行現場のGPS緯度経度が表れ、4つ目の犯行場所は「ホテルコルテシア東京」と判明。捜査本部の刑事たちがホテルのスタッフや客となり潜入捜査を開始。
全体の真相は、連続殺人ではなくそれぞれが独立した犯人と事件で、闇サイトでつながった犯人達が連続殺人と見せかけるため共通の暗号を残したのです。全てを計画した4人目の真犯人X4は、2人殺す必要があり、1つを連続殺人に組みこみ偽装したのです。
真犯人の正体とは?
真犯人X4の正体は、長倉麻貴(松たか子)という名古屋の劇団で老け役をよく演じてた女性です。長倉は劇団内の恋人「松岡」を注射針による毒で殺害してました。長倉は1年前に松岡を追ってホテルコルテシアに来た時、ホテルマン山岸に追い返されました。
長倉は、外で雨にうたれながら松岡を待ち、明朝に松岡との子を流産。そのうらみから松岡を殺害し、ホテルマンの山岸(長澤まさみ)も殺そうと計画。しかし動機と注射器での犯行方法からすぐバレると思い、山岸殺害は3つの独立殺人とセットにした連続殺人に見せかけました。
長倉は、下見をかねて霊感の強い盲目の老婦人に変装して宿泊し、手袋のせいで、実は目が見えると新田(キムタク)にバレ、事実を告げて謝罪し「良いホテルだわ」と言い去りました。手袋してる真の理由は、指紋を残さないため。
犯行当日、前田敦子の結婚式に女装ストーカー勝地涼が現れ、警官に取り押さえられ、第1事件現場の場所メモが見つかるが、それは長倉による偽装です。その頃、別の部屋で長倉が正体を現し、山岸を殺害しようとしてました。
長倉は5部屋を予約してたため、新田は1部屋づつ調べていくが、バスルームに隠れた長倉を見逃します。と見せかけて、新田はペーパーウェイト(文鎮)の乱れを見逃さず、山岸を救って長倉を拘束し事件は終息。
全宿泊客のエピソードと役割や伏線は?
最初の濱田岳は、クレームを言って部屋をアップグレードする客の存在を示します。後にキムタクが対応する生瀬勝久への伏線です。また、お客様と無駄な駆け引きはしないことを教えてくれます。笹野高史は、キムタクに常連客の無茶ぶりを示します。
髙嶋政宏は、バスローブを盗んだと思わせ、疑ったホテルに対しクレームをつけて損害賠償させようとする詐欺師です。ただ誠実に対応しようとした長澤まさみは、最初から疑って真相を暴いたキムタクの洞察力を見なおします。
田口浩正は有名な政治評論家で、橋本マナミと密会しています。長澤まさみは、グループの中の1人が別の誰かと密会する偽装もあると教えます。4つの連続殺人の1つが別の殺人事件とセットである伏線/ヒントになります。
菜々緒はフロントで宇梶剛士の写真を見せて、ストーカーされてるから絶対に近づけないよう言います。しかし長澤まさみは宇梶剛士を泊めてしまい、菜々緒に注意をうながすため部屋番号を教えてしまいます。菜々緒は女性と密会中の宇梶の部屋へ入ります。
ところが菜々緒は宇梶剛士の妻で、ホテルで浮気を繰り返してた夫に離婚届を渡しに来たのです。長澤まさみは、1年前に対応した女性が、ある男性客についてしつこく尋ねたことを思い出し、それは後の伏線になります。
生瀬勝久は最初からキムタクにいいがかりをつけ、部屋をアップグレードさせようとしたり、PCから消えたデータを入力させたりします。その正体はキムタクが高校の時の新人英語教師で、帰国子女のキムタクと比較され教室で馬鹿にされて教師をやめました。
偶然、ホテルコルテシア東京で元教え子キムタクを見つけた生瀬勝久は、挑発し殴らせてやめさせようとしたのですが、最後は謝罪して去ります。彼が外から客室に電話しなかったことをヒントに、キムタクは第1容疑者のアリバイを崩します。
前田敦子はホテルで結婚式を行うため、何度か打ち合わせにきます。誰かにストーカーされてて、届けられたワインのコルクに注射針のあとが見つかります。結婚式当日、女装した勝地涼が近づくが警察が取り押さえます。前田敦子と勝地涼は、現実では当時夫婦でしたが後に離婚したので貴重な共演シーンです。
勝地涼は真犯人からバイトを請け負っただけでした。真犯人は以前の宿泊客で、盲目を偽ったがキムタクに見破られてチェックアウト時に謝罪した女性です。変装を解くと1年前に長澤まさみが追い返した客、松たか子です。
松たか子は追い返された後、外で雨にうたれて流産しました。そのうらみから恋人だった男性を薬品で殺害し、3つの独立殺人を1つの連続殺人に偽装し、自分を追い返したホテルコルテシア東京の長澤まさみを殺害する計画を立てたのです。
ラストで新田が久々にホテルへやって来ると、出演者に「明石家さんま(友情出演)」と表示。その時フロントで「オオタケ様」(大竹しのぶを連想)と声をかけられるハット(帽子)をかぶった紳士が明石家さんまです。数秒間でピントもズレて顔も不明だけど「2時間6分あたり」です。
ミステリーではない?ダメミスな点は?
東野圭吾といえば人気ミステリー作家で、初期作品は謎と論理的解決による本格ミステリーが多くて、私も学生時代からほとんど読んでました。しかし最近はライトノベルが好まれる傾向を取り入れてか多作化したからかネタ切れかで軽いミステリー中心です。
本作『マスカレードホテル』もミステリー性は希薄で「犯人探しや動機の解明」に到達するための証拠は、ほぼセリフで語られます。それでもいいのですが、犯人や動機がわかっても驚けないし意外性も感じられないのはミステリーとしては致命的です。
ミステリーとして、キムタクつながりでいうと『HERO』1作目の方がワクワクできます。東野圭吾が得意とする人間ドラマ要素は強調されてますが『祈りの幕が下りる時』『人魚の眠る家』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』ほどエモさは感じません。
原作未読なので映画でのツッコミどころだけ書くと、まず説明セリフが多すぎます。また、刑事のキムタクが捜査状況を、関係者とはいえ一般人の長澤まさみにペラペラ話しすぎ。最初は捜査本部にいなかった小日向文世にも重要な情報を話しすぎ。長澤まさみが菜々緒に客室番号伝えたのも驚きです。
事件概要が終盤までわかりにくいのも欠点です。ミステリーなら前提となる事件については序盤で一通り理解させてくれないと、視聴者が推理する土台が整いません。しかも終盤での説明聞いても、刑事が驚くほどの意外性がないのも残念でした。
第一容疑者の元恋人からの電話については、スマホの電話帳の登録先を変更したという単純トリックでしたが、そもそも殺人事件がらみなら電話会社に請求すれば発着信情報を得られるのでは?。すると現場近くに電話した履歴が見つかるはずです。
真犯人は完全犯罪を目指してる、と言うわりには犯行場所を知らせて警察官を張り込ませたり、下見の時に目立ちすぎたり、元恋人と長澤まさみを同じ方法(注射器)で殺そうとしたり、など自分で難易度を上げすぎてる点が気になります。
前田敦子へのワインの異変は刑事のキムタクでなければ見抜けなかっただろうから、コルクに注射器あとを残した偽装もあまり意味ないと感じます。しつこく出たペーパーウェイトで、ホテルマンとして成長したキムタクが犯人に気づくのは良かったです。
両者成長のバディムービー?
本作はバディムービー(価値観の違う2人が組んで認めあっていくジャンル)としてなら楽しめます。「人を信じる」ホテルマン女性と、「人を疑う」刑事男性という立場の違いから最初はいがみあうけど、しだいに互いを理解して成長します。
新田浩介(木村拓哉)はボサボサ髪や無精ひげやネクタイを改め、目つきの鋭さも軽減させ、「客」から「お客様」へと意識も変えていくにつれ、がさつで人を疑うばかりの刑事から、人を信じておもてなしのできるホテルマンに成長していきます。
山岸尚美(長澤まさみ)はあこがれのホテルマンとしてバリバリ働くことが生きがいで、常にお客様を信じて決して仮面をはがそうとせず真実にも目をつむっていたが、それでは悪意を見抜けず他のお客様に迷惑をかけることもあると気づいていきます。
この2人がバディとなって様々なクセのある宿泊客と接することにより、お互いに足りない部分を補い合い、各自のとんがりすぎた点を改めて2人とも成長します。口げんかやののしりあいから、互いを尊重しあうようになる過程は王道バディムービーです。
映画『マスカレード・ホテル』私の感想と評価と続編
ミステリー映画としてはツッコミどころが多すぎるしあまり驚きがなく、キムタクと長澤まさみのかけあいや成長をながめるバディムービーとして見た方が楽しめそうです。個性的なクセある宿泊客の群像劇として、豪華キャストを観るのも面白いでしょう。
キムタクはHEROのキムタクに近いし、長澤まさみもよく見るまさみを超えてはないけど、2人の相乗効果は予想してた以上に良くて、ぜひ続編も見たいと思いました。ホテルへの潜入捜査に2回目があるのは変なので、今度はまさみが新米刑事になるとか?
原作小説では前日譚『マスカレード・イブ』や続編『マスカレード・ナイト』(小説版)も出版されてます。2021年に続編映画『マスカレード・ナイト』も公開されました。
私の評価 66/100(60が平均)
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