映画『マスカレードナイト』ネタバレ感想考察/真犯人の正体や動機は?前作と関係は?
東野圭吾の小説が原作の『マスカレードホテル』続編。ある殺人事件犯が大みそか仮装パーティーに現れると判明。会場ホテルの山岸尚美は、再び新田刑事とコンビを組むことになるが…。容疑者は誰?密告者とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | マスカレード・ナイト |
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日本公開日 | 2021/9/17 [予告] 上映時間:129分 |
監督・キャスト | 鈴木雅之[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/シネバザール |
日本興行収入 | 38.1億円 年間8位 |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 72(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 東野圭吾の映画一覧 前作『マスカレード・ホテル』46.4億 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 新田浩介(木村拓哉)捜査一課刑事。破天荒だが人を見抜く天才。前作も同ホテルで潜入捜査した
- 山岸尚美(長澤まさみ)ホテル・コルテシア東京のコンシェルジュに昇進。優秀だがまじめすぎる
- 仲根緑(麻生久美子)宿泊客。大みそかと誕生日記念に夫と宿泊
- 日下部篤哉(沢村一樹)宿泊客。コンシェルジュの山岸に何度も相談
- 能勢和彦(小日向文世)捜査一課刑事。一見愚鈍だが有能
- 曽根万智子(木村佳乃)宿泊客。夫の曽根昌明、息子の3人家族で宿泊
- 貝塚由里(高岡早紀)宿泊客。曽根万智子の友人。その夫の曽根昌明とは不倫関係
- 浦辺幹夫(博多華丸)宿泊客。ゴルフバッグを持ち込んだりと不審な客
- 稲垣竜男(渡部篤郎)捜査一課 係長
- 氏原祐作(石黒賢)ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク
- 秋山久美子(田中みな実)宿泊客。肖像画などをきらう客
- 曽根昌明(勝村政信)宿泊客。曽根万智子の夫。貝塚と不倫中
- 狩野妙子(凰稀かなめ)宿泊客。日下部の知り合い
- 久我昭弘(東根作寿英)ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク
- 川本美香(石川恋)ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク
- 田倉哲郎(鶴見辰吾)ホテル・コルテシア東京の宿泊部・部長
- 藤木泰志(石橋凌)ホテル・コルテシア東京の総支配人
- 本宮政治(梶原善)捜査一課刑事。新田の先輩
- 関根拓真(泉澤祐希)捜査一課刑事。新田の後輩の若手刑事
- 尾崎新次郎(篠井英介)捜査一課 管理官
- 奥田真由美(中村アン)ダンスインストラクター
ネタバレ感想『マスカレード・ナイト』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
続編?原作は?監督やキムタク等キャスト
映画『マスカレード・ナイト』の原作は、東野圭吾[一覧]によるミステリー小説『マスカレード・ナイト』(2017)です。マスカレード・シリーズ3作目ですが、2作目は短編集なので長編では1作目『マスカレードホテル』の続編です。
監督の鈴木雅之は、TVドラマの演出を多く手がけ、映画ではキムタク主演『HERO』2作や前作『マスカレード・ホテル』等を監督しています。キムタクとの相性もよさそうです。
主演のキムタクこと木村拓哉は、上記以外にも多数のTVドラマや映画に出演。最近の映画では『無限の住人』『検察側の罪人』等で主演をつとめました。
長澤まさみは『キングダム』『MOTHER マザー』等、小日向文世は『アルキメデスの大戦』等に最近出演。2人は『コンフィデンスマンJP プリンセス編』等でも共演。
他にも、沢村一樹、田中みな実、木村佳乃、石黒賢、麻生久美子、鶴見辰吾、高岡早紀、渡部篤郎など、書ききれないほどの豪華キャストなので、その登場シーンを見るだけでも価値ありそうですね。
ホテルで潜入捜査する理由は?容疑者の性別は?
あるマンションの一室でロリータファッションの女性が、時限装置による感電死で殺害されました。彼女は妊娠してました。ロリータは彼女の趣味ではなかったようです。警察は「密告者」による匿名通報ダイヤルで知らされました。
密告者から「ホテル・コルテシア東京の大みそかカウントダウンパーティーに犯人が現れる」というFAXも届き、警視庁捜査一課の刑事はまたホテルマンとして潜入捜査することになります。
能勢刑事(小日向文世)の捜査により、過去にもロリータファッションを着た女性が感電死させられた事件が見つかります。被害者女性の2人は、男性を苦手としてたようですが、妊娠させるほど親しかった「男性」が容疑者とされます。
以上が序盤のあらすじです。前作『マスカレード・ホテル』では、連続殺人事件の詳細が中盤まで語られなかったためミステリ映画としては不満でした。今回は冒頭から説明されるので改善されてます。
ただし、前作同様に刑事がホテルマンとして潜入捜査する必要はなかったように感じました。が、フィクションとしては、アリだとは思います。なによりも、キムタクと長澤まさみのバディ・ムービーとして楽しむ映画でもありますので。
容疑者は誰?お客様の情報を一覧化
秋吉(田中みなみ)は、人間関係や人の多さから解放されたくて「肖像画や人の顔のない部屋」をリクエストしてましたが、部屋の前の大きな「明石家さんまの顔の宣伝看板」にクレーム。山岸は大量の風船で看板を隠して要求を満たします。
日下部(沢村一樹)は、狩野妙子にプロポーズするため、コンシェルジュの山岸(長澤まさみ)にバラの花束と薔薇ロードをお願いします。しかし山岸は、告白される狩野から断ることを聞き、スイートピー(花言葉は別れ)ロードに変えました。
日下部は今度は宿泊客の仲根緑に近づきたいと山岸にお願いし、話す機会を得たが仲根に断られます。日下部は、年越しの仮面舞踏会の相手も求めるが、山岸はきっぱりと「無理です。仮面をつけて自分で探してください」と言い、少し成長を見せます。
浦辺(博多華丸)は、大きなゴルフバッグをかついで来てチェックイン。自分でかついで来る客は少ないので、あやしまれます。
曽野昌明(勝村政信)は妻の万智子(木村佳乃)と息子の3人家族でチェックイン。新田(木村拓哉)は、常連客の曽野に「いつもありがとう…」と言いかけるが、ホテルマン氏原(石黒賢)にさえぎられ、フロントに立てなくなります。
曽野昌明が毎週のようにデイユース(日帰り)利用してた理由は不倫なので、家族の前では新規の客としてあつかう必要があるからです。その不倫相手の貝塚由里(高岡早紀)も客として来ますが、万智子の友人らしくて親しくしてます。
曽野昌明は最近「高性能な望遠カメラ」を購入したようなので、殺人現場をのぞいた「密告者」と疑われます。
仲根緑(麻生久美子)は、夫より先にチェックインし、2人分のスペシャルディナーやバースデーケーキをルームサービスで注文。日下部による誕生日プレゼントも1人で見学し涙を流します。偽名なのであやしいが、仲根緑の告白で結婚と宿泊を約束した男性がガンで亡くなり、最後の思い出のために来たと判明。
前作の方が、多くの変わった宿泊客が登場して伏線になり真犯人の謎や犯行方法にせまったので、本作『マスカレードナイト』はやや情報量が少なめです。ただ、その方が各キャラを深掘りできて、犯人探し的なミステリ要素も濃くなってます。
密告者の正体と動機は?日下部の正体は?
曽野昌明が購入した望遠カメラはプレゼント包装されたと聞いた新田は、曽野の息子から殺人現場を望遠カメラで見つけたことを聞き出します。そして「密告者」の正体は、曽野万智子(木村佳乃)と貝塚由里(高岡早紀)だと判明。
貝塚は真犯人をおどして大金を巻き上げた後、警察に逮捕させようと計画。一方、曽野万智子は夫の不倫相手が貝塚だと気づき、真犯人に「貝塚の殺害」を要求。真犯人もある計画(後述)を思いつき了承。
一方、コンシェルジュの山岸に何度も無理難題を要求した日下部の正体は、氏原と山岸がホテル・コルテシア・ロサンゼルスに適した人物かを判定しに来た関係者でした。日下部の判定と氏原の推薦もあり、ロス支店には山岸が行くことに決定。
日下部は最初からあやしすぎて犯人や密告者の可能性は低いと思ってましたが、総支配人の部屋に入った時には「そっち側か!」と驚きました。ただ、潜入捜査は知らなかった?にしても、年末の忙しい時期に邪魔したのは迷惑なので時期は選ぶべきですよね。
密告者の正体に関しては「望遠カメラ購入者」というヒントから、ほぼひねりなく推測したとおりでした。曽野の息子がからんでたことや、曽野昌明ではなく妻とその友人(夫の不倫相手)が共謀してたことは軽い驚きでしたが。
木村佳乃は『ドクターデスの遺産 BLACK FILE』『ファーストラヴ』等、闇を抱えた役も多いので観る前は犯人候補でしたが、それを逆手にとられました。貝塚が死んでれば殺人の共犯者になったのですが。
真犯人の正体と動機は?腕時計が伏線?
警察は容疑者は「男性」として捜査してるので、ゴルフバッグの浦辺をマーク。しかも浦辺は、殺害された女性が勤めてたペットショップに通ってました。しかし、浦辺は殺害された女性とつきあいはあった?が犯人ではありませんでした。
山岸の発言「殺害された女性は二股してたのでは?」から新田と能勢は、妊娠させた男性以外にもつきあってた「男性」がいたと推測。しかし真犯人の正体は、なんと仲根緑(麻生久美子)こと本名・森沢光留/もりさわひかる、でした。
森沢は、宿泊時は仲根緑という女性でしたが、普段は男性として生活するトランスジェンダーです。双子の妹がいたが、暴行された後、警察の事情聴取でくわしく聞かれて耐えられなくなり自殺。その後、森沢は男性として生きてきました。
森沢は、男性を嫌う女性に近づいて妹をなつかしんでいました。殺害の動機は、彼女らが他の男性とつきあうと裏切られた気がしたからです。ロリータファッションの理由は妹を演じさせるため、感電死の理由は体に傷を残したくなかったからです。
ホテルでの大みそかの仮面舞踏会を殺害現場にした理由は、双子の妹が自殺する原因となった「警察」の目の前で殺人事件を起こして権威を失墜させるためでした。
クレジットカードの名前「MAKIMURA」や仲根緑が偽名だし、1人なのに2人分用意させた理由は「最初に徹底的に疑われ、その後に容疑者からはずれた人物はノーマークになる」効果をねらったからです。
しかし仮面舞踏会がアダとなり、仮面から出た目が強調されてしまって、新田刑事に見つかってしまいます。新田刑事は冒頭の伏線でもあった、アルゼンチン・タンゴを一緒に踊ったあと逮捕。踊った理由は、キムタクの見せ場ですから(笑)。
優雅に踊ってる間に、貝塚と山岸の時限装置の停止に間に合わなくなったのは、新田刑事の最大のミスですね。2人が死んでたら降格や減給ではすまないのでは?
しかし「山岸の腕時計が5分おくれてる」のが伏線となり、その腕時計の時間でセットされた時限装置も5分遅れてて2人は助かります。ホテル総支配人の「ホテルマンは時間厳守だが、時計を気にしないよう教育」も伏線でしたね。
仲根緑が真犯人だったことよりも、トランスジェンダーだったのが予想外で驚きました。どこかで男性らしいしぐさや伏線とかあったのでしょうか。
どちらが好み?前作と似た犯人や展開では?
映画『マスカレード・ナイト』は、前作『マスカレード・ホテル』とかなり似た部分が多いです。一番わかりやすいのは、山岸(長澤まさみ)が犯人に命をねらわれ、新田刑事が救うという王子様的な展開が同じ。
真犯人についても、前作は「目の不自由な老婦人→盲目ではないと告白(容疑はれた)→夫は来ない→若い女性が変装」でしたが、本作は「夫婦で予約した女性→夫は来ない→結婚相手が亡くなったと告白(容疑はれた)→男性が変装」という風にかなり類似しています。
また、真犯人が明らかになる前の有力容疑者の行動も、前作の勝地涼、本作の博多華丸や木村佳乃、が同じではないけど似たような疑われ方をしました。謎を解くきっかけとなる事件を小日向文世が見つけてくる展開まで同じです。
原作は未読なので小説版の描かれ方は知りませんが、おそらく東野圭吾も意識してないクセが似たようなストーリーを生んだのだと推測できます。
お客様の「仮面をはがす刑事」と「仮面を守るホテルマン」の相いれない関係性で、木村拓哉と長澤まさみがバディとして成長する展開についてはお約束なので同じでもいいと思います。
ただし今回は「刑事が人を信用しないのは犯人逮捕のためだけでなく人を守るため」という台詞が追加されます。「刑事もホテルマンも人を守る点では同じ」という共通の目的に向かって行ったのは見事な描き方ですね。
個人的にどちらが好きかと考えると、少しだけ今回の映画『マスカレード・ナイト』の方が好みです。ただし、真犯人の動機については前作の方が説得力あったと思うので、その日によって好きな方は変わるかもしれません。
映画『マスカレード・ナイト』私の感想と評価
前作はホテルの仕事や新田と山岸の関係性の構築に時間を使いましたが、それらが不要な本作『マスカレード・ナイト』は本筋を中心に描かれてるので、お客様の騒動は少なめだがミステリ度は増し、真犯人にも二重の意味で驚かされました。
仮面を「はがす刑事」と「守るホテルマン」のバディムービーぶりも健在で、ラストでは「山岸がロス支店から戻った日のディナー予約」を新田がしたりと、確実に2人の距離が縮まってる感じもいいですね。続編が楽しみ?
一方「真犯人」と「密告者」の使い分けがいまいち理解しづらかったり、ヒントもなしに唐突にトランスジェンダー設定が出てきたり、大枠のプロットが前作とかなり似てたり(犯人の変装、山岸ピンチ等)したのは気になりました。
また、ホテルマンや宿泊者に変装した刑事たちの行動(スマホ撮影等)があやしすぎたり、客のそばでペラペラと緊張感なく事件について話したり、説明セリフも多かったのは前作同様で2時間TVドラマのようでした。
そんな風に良し悪しのある映画ですが、ホテルという閉鎖空間でのヒューマン・ミステリとして、多くの人が楽しめる映画シリーズになってきました。続編の小説はまだないけど、続編映画だけ制作される可能性も期待したいですね!
私の評価 67/100(60が平均)
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