映画『孤狼の血 LEVEL2』評価は?ネタバレ感想考察/衝撃の事実とは?誰が味方?

伝説のマル暴刑事・大上が抗争に巻きこまれ殺害されてから3年後。跡をつぐように裏社会を治める日岡は、悪魔のような上林の出所により絶体絶命の窮地に追いこまれるが…。勝者は誰?上林と日岡の結末は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 孤狼の血 LEVEL2 |
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日本公開日 | 2021/8/20 [予告] 上映時間:139分 |
監督・キャスト | 白石和彌[キャスト] |
映倫区分 | 日本:R15+(15歳以上) |
配給/製作 (画像出典) | 東映/東映東京撮影所 |
日本興行収入 | 8.4億円 興行収入ランキング |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 74(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | アクション/スポーツ/冒険映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 上林成浩/うえばやし しげひろ(鈴木亮平)上林組の組長。故五十子正平の腹心
- 近田幸太/ちかだ こうた/通称チンタ(村上虹郎)真緒の弟。上林組の構成員。日岡が放ったスパイ
- 嵯峨大輔/さが(滝藤賢一)広島県警本部・捜査一課(管理官)
- 高坂隆文(中村獅童)安芸新聞の社会部記者。日岡を追い回す
- 日岡秀一(松坂桃李)呉原東署・刑事二課の暴力班捜査係(巡査)
- 近田真緒/ちかだ まお(西野七瀬)スタンド「華」のママ。チンタの姉
- 佐伯昌利/まさとし(毎熊克哉)上林の舎弟頭
- 綿船陽三(吉田鋼太郎)仁正会の会長
- 五十子環/いらこ たまき(かたせ梨乃)亡き初代五十子会会長の妻
- 天木幸男/あまぎ ゆきお(渋川清彦)尾谷組の組長代行
- 橘優馬/たちばな ゆうま(斎藤工)尾谷組の若頭
- 吉田滋/しげる(音尾琢真)元広島仁正会・加古村組の構成員。「パールエンタープライズ」社長
- 友竹啓二(矢島健一)呉原東署・刑事二課の暴力班捜査係係長(警部補)
- 神原憲一(青柳翔)徳島刑務所の刑務官。神原千晶の兄
- 神原千晶/ちあき(筧美和子)「神原ピアノ教室」講師
ネタバレ感想『孤狼の血 LEVEL2』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は?監督と松坂桃李らキャスト
前作の映画『孤狼の血』(ころうのち)の原作は、柚月裕子による長編警察小説でした。続編『孤狼の血 LEVEL2』は、その3年後の広島県の呉原市(架空都市)を舞台とした、オリジナル・ストーリー(原作はない)です。
前作から続投の白石和彌(かずや)監督は、『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』『凪待ち』等、バイオレンス寄りの作品を得意としています。
主演の松坂桃李は、前作から続投。最近は『居眠り磐音』『新聞記者』『蜜蜂と遠雷』等に出演。鈴木亮平は『俺物語!!』『ひとよ』等、滝藤賢一は『るろうに剣心 伝説の最期編』『さんかく窓の外側は夜』等、西野七瀬は『あさひなぐ』『あなたの番です 劇場版』等に出演。
大上とは何者?前作の映画『孤狼の血』ネタバレあらすじ
3年前、広島県の呉原市(架空の町)を拠点にする暴力団組織・尾谷組は、広島仁正会の五十子会(いらこ)と下部組織の加古村組と一触即発の状態でした。抗争に発展しないよう尽力したのが、呉原東署・刑事二課の大上(役所広司)です。
広島大学卒業の日岡(松坂桃李)は、監察官の嵯峨/さが(滝藤賢一)の指令で大上とコンビを組まされ、大上の現在の動向と過去の犯罪について裏調査し報告してました。大上は極道と癒着し荒っぽいながらも、庶民を優先していました。
しかし暴力団の抗争は歯止めがきかなくなり、大上も無残に殺害されます。警察内部も信用できなくなった日岡は、尾谷組の若頭・一ノ瀬(江口洋介)に五十子会長の首を取らせた後、一ノ瀬も逮捕。大上の「県警幹部の犯罪記録」を入手した日岡は嵯峨をもおそれさせます。
スパイの正体とは?大上をマネする日岡?
前作から3年後、会長の首をとられた五十子/いらこ組の広島仁正会と、首をとったが若頭が網走刑務所送りとなった尾谷組は、手打ち=和解してます。その影の功労者は、呉原東署・刑事二課の日岡(松坂桃李)でした。
しかし納得できない武闘派もいて、尾谷組は襲撃されます。その情報をスパイから入手した呉原東署は待ち伏せして、五十子会の組員を逮捕。その時、日岡は刺されて軽傷を負うが、刺した犯人・チンタ(村上虹郎)こそがスパイの正体です。
チンタ=近田幸太の姉・真緒(西野七瀬)は、尾谷組の島(なわばり)のスタンド「華」のママで、日岡とも男女の仲です。そんな時、五十子会の上林組の組長・上林(鈴木亮平)が出所して、日岡が保ってた暴力団のバランスが崩壊していきます。
冒頭のあらすじは以上。大上が亡き後、3年の月日が流れてますが、五十子会と尾谷組を和解させ、スパイを使って抗争を未然に防ぐ日岡の手腕は坂本龍馬のようで見事。暴力団のふところに入って庶民を守る作戦は、大上のマネごとですがうまくいってます。
冒頭でいきなり日岡が刺されてヒヤッとしますが、実は打ち合わせどおり(防弾チョッキへの銃弾ではないが)だったことにも驚かされます。そしてそのスパイの姉と日岡との関係性も、前作の大上と真木よう子をマネてるように感じました。

上林の最終目的は?鈴木亮平の演技が見どころ
出所した上林は、刑務所でお世話になった刑務官の妹・ピアノ講師の目玉をえぐり惨殺。上林は、幹部から紹介された暴力団企業も乗っ取り、それに不服な仁正会理事長・溝口もアスピックで刺殺し、二代目五十子会長の夫婦も惨殺し焼きます。
上林は、幼少期にアル中毒の父親の酒代を稼ぐために義務教育も受けられなくて人格形成にも問題があったようです。やがて父親を惨殺し、見て見ぬふりしてた母親の目玉をえぐって殺害し、少年院を出た後は残飯で食いつなぎ生きのびました。
その後「絶対的な悪」に成長した上林ですが、さすがに同組織内の幹部を次々と殺害しても報復されないのは、平和ボケした仁正会とはいえありえない展開です。これを放置すれば幹部はナメられて下剋上が連発すると思うのですが。
上林の最終目的は「前作で殺害された五十子会長の復讐(尾谷組と警察に対して)」ですが、それすらどうでもよくて「社会全体に対しての復讐」にも思えます。上林の無敵感、鈴木亮平のすごみある狂犬演技は圧倒的で迫力ありました。
ちなみに上林が乗っ取った「国の公共事業もまかされてる会社パールエンタープライズ」社長・吉田滋(音尾琢真)は、前作の加古村組員です。極部に埋めた真珠を自慢したが、大上が尋問中に強引に摘出。社名のパールも真珠好きからでしょう。今回も上林に指をつめられ「いじめられキャラ健在」だが生きのびました。
スパイ暴露の真犯人は?日岡と大上の比較
日岡の2大ミスは「スパイのチンタに頼りすぎた」「相棒の瀬島を信用しすぎた」点です。スパイ使うと楽で便利だが、危険も大きいので愛する人の弟を送りこむのはありえません。外での会い方も危機感ないし、上林の力量をナメすぎ。
大上はヤクザなら使い捨てしたが、カタギの人間を危険にはさらしませんでした。そういう意味では、日岡の判断は大上の足元にもおよびません。また「相棒がスパイだと知りながら泳がせた大上」に対し「相棒を信じて裏切られた日岡」は甘すぎ。
広島県警の管理官・嵯峨がつけた瀬島がスパイなのはすぐ気づきそうですが「平で定年退職間近、優しく料理上手で庶民的な妻、障害で早くに亡くなった子」などの情報を警察内部が偽装したので、日岡が見抜けなかったのは仕方ないですね。
瀬島が「極道は悪人と宣言して悪事を働くので、正義ずらして悪事を働く奴らより共感できる」みたいな発言しますが、まさに公安や瀬島自身のことを言ってて、後から考えると伏線ですね。「ロートル」を連発してた瀬島がこわい。
それにしても、日岡を失脚させたいがために「ピアノ講師殺人事件」の犯人を隠蔽した管理官の嵯峨や広島県警の幹部たちが、誰も処分されないのは納得できません。上林を野放しにして何人の犠牲者が出たことか。内部抗争だからいいのか。
前作では監察官からの情報を流して大上を窮地に追いやった安芸新聞の記者(中村獅童)ですが、今回もスパイ・チンタの情報を上林にもらしたように見えました。しかしスパイ暴露の真犯人は、日岡の相棒刑事の瀬島でした。
警察上層部からの命令を忠実に実行した瀬島ですが、チンタが殺害されるのは予測できたのでサイコパスぽい。上林が姉の真緒を殺害しなかったのは本作最大の疑問点。その真緒がラストで弟の復讐として瀬島を殺害したのはスッキリしたけど、一般人なので無理を感じます。
孤狼vs孤狼の結末は?バトルが退屈?
広島県警に見捨てられた日岡は孤立した「孤狼」となりますが、これはヤクザと警察の間で孤軍奮闘した大上の「孤狼」とは別物です。ちなみに大上(おおがみ)が前作で得たライターには、一匹狼が遠吠えする姿が彫られてて、日岡が形見のように持ち歩いてます。
仁正会の幹部を次々と殺害した上林も「孤狼」化して、最終決戦は「日岡vs上林」の「孤狼vs孤狼」となります。その前の「上林組vs尾谷組」の突っ立ったままの銃撃戦は、最近観たアクション映画の中でもダントツでひどかったです。
その後の、日岡と上林のなぐりあいも長いし迫力はないしで退屈。白石和彌監督は、バトルやアクションを撮るのが下手?と思えるほど低レベルな格闘でした。連行される無防備な上林を銃殺した日岡の罪は隠蔽され、派出所勤務にとばされただけのオチも続編のためのご都合主義に思えて残念。
上林も日岡も、所属する組織内では異端児で目の上のたんこぶ状態だった点が共通してます。そしてヤクザも警察も、上層部が私利私欲しか考えなくなると、似たような組織にいきつくことが描かれてたのは興味深いです。
結局、日岡は「ヤクザを銃殺した」という点でのみしか大上を超えられませんでした。広島北の地方都市に転勤させられた日岡は、野生のニホンオオカミを見かけて追いかけますが、これは「大上を追いかけ続けても追いつけない」というメタファーになってるのでしょう。続編では、その山中で誰かの遺体を発見するとか?
映画『孤狼の血2 LEVEL2』私の感想と評価と続編
前作『孤狼の血』は、役所広司が演じる大上の強烈なキャラで引っ張ってたので続編は不安でした。が、上林という狂犬キャラを鈴木亮平が圧倒的な残虐性で演じたため、見劣りすることはなかったです。むしろバイオレンス度は上がってます。
その分、警察サイドの日岡のダメっぷりが目立ってますが、ほぼ新人の3年間にしては成長した方かもしれません。イキってる時とヒヨってる時の松坂桃李の演じわけは見事。チンタ役の村上虹郎も、ホラーのヒロイン的な役割がハマッてました。滝藤賢一も安定の小物感。
一方、女性陣は真木よう子、阿部純子の存在感を埋められるキャラはいませんでした。西野七瀬もがんばってたけど、声は弱いし顔がきれいすぎて、それまでの人生の苦労が全く感じられなかったです。真木よう子と比べるのは酷ですが。
ストーリーの大枠は前作をなぞるような部分も多く、序盤はひきこまれたのに、終盤になるにつれて雑で退屈になっていく展開も前作同様でした。バトルやアクションの動きも小さく、特に銃撃戦は昔の白黒映画のようで銃弾が当たった感じがしませんでした。
ラストで日岡が地方派出所にとばされたのは、原作小説『凶犬の眼』(孤狼の血 2作目)の冒頭と同じなので、続編は原作の流れに戻るかもしれません。戦闘は微妙だけど狂人描写は一流なので、続編も大上や上林を超える狂人を期待したいです!
私の評価 66/100(60が平均)
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