映画『陰陽師0』評価ネタバレ感想/結末は?敵と陰謀の正体は?原作は?

ネタバレ感想『陰陽師0』解説や評価レビュー

この先はネタバレありの感想考察です。続編前作や関連映画は、ファンタジー/SF映画一覧もご参考に。

原作はオリジナル？監督やキャストは？

映画『陰陽師0』の原作は、夢枕獏によるSF小説『陰陽師』だが今回は若かりし頃の安倍晴明を描いているため、夢枕獏の全面協力による完全オリジナルストーリーです。

監督・脚本の佐藤嗣麻子/しまこ は、映画版アンフェアの監督や脚本なども努めてきました。ちなみに夫は山崎貴 監督（アカデミー賞も受賞した『ゴジラ-1.0』の監督）。

主演の山﨑賢人は『キングダム 運命の炎』『ゴールデンカムイ』等、染谷将太は『大怪獣のあとしまつ』『怪物の木こり』等、奈緒は『マイ・ブロークン・マリコ』『#マンホール』等に最近出演。

他、安藤政信、村上虹郎、國村隼、北村一輝、小林薫、板垣李光人なども出演。

陰陽寮とは？出世の最終目標は？キャラ紹介

平安時代、政治は占いで左右され、呪術士こと「陰陽師」も重要な役職でした。貴族でない者が出世するには官僚や陰陽師を目指します。特に帝直属の「蔵人所陰陽師」には学生（がくしょう）⇒得業生（とくごうしょう）⇒陰陽師⇒博士⇒陰陽頭（おんみょうのかみ）と上りつめます。

博士が学生を教える省庁が「陰陽寮」。現在の得業生、橘泰家（たちばなの やすいえ。村上虹郎）は、農家出身で45歳の平郡貞文（へぐりの さだふみ。安藤政信）をいじめます。陰陽頭の藤原義輔（小林薫）は暗示=催眠術を実践し教えます。

陰陽博士の賀茂忠行（國村隼）は、両親を殺害された安倍晴明（山﨑賢人）を育てて陰陽寮に入れました。晴明は「人の思いこみをあやつる『呪/しゅ』」を使いこなすほどの優等生だが、陰陽師になる気はなくフラフラしてます。

皇族家系で貴族の源博雅（みなもとの ひろまさ。染谷将太）は、想いを寄せる いとこの徽子女王（よしこ じょおう。奈緒）の琴の弦が切れる怪奇現象の解決を、安倍晴明に依頼するのだが…

以上が序盤あらすじ。陰陽師や呪術の説明などはスムーズですぐ物語に没頭できます。冒頭で教えてた「菅原道真公の呪い」や「帝の蔵人所陰陽師への出世コース」や「年齢による出世のあせり」は全て伏線として後に見事に回収されます。

「事実は1つだが、真実は人の数だけある」という晴明の言葉は、まさに先週から公開され独走中の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』のコナンの決めゼリフ「真実はいつもひとつ」への挑戦とも聞こえました（笑）

もう少し先の未来で会うはずの源博雅と安倍晴明との出会いは、どのように見せるのかと心配したが、何もひねらずに普通に学生時代に出会ってました。つまり今までの「陰陽師」作品とは別世界のリブート版というあつかいですね。

殺人事件の容疑者は晴明？

徽子女王が眠りにつくと、琴の音と別の音が聞こえてきて、徽子女王からあふれ出た「金の竜」を晴明がビンに封じ込めて解決。晴明に振り回されながらも友情を感じつつある源博雅は、帝から徽子女王への恋文を届ける役目をたまわることに…

一方、得業生の橘泰家が井戸で転落死してるのが見つかり騒動に。陰陽寮は管轄内で「呪」での殺人を認めるわけにはいかず自害と発表するが、事件を解決した者を得業生とすることに。晴明は、陰陽師になるのは興味ないが真相は追求。

晴明は図書室で調べ物をし、両親の死の真相にも思いをはせます。45歳で結婚もせず後がない平郡貞文は、全学生の筆跡を調べ、泰家の遺体そばにあった木簡の呪い文字が、安倍晴明の筆跡だとつきとめます。晴明は否定するが連行され…

殺人を否定した晴明は、鐘の音のような異変を感じるが、源博雅と共に馬で逃亡。博雅は、帝からの恋文を届けられ苦しみながら消えた徽子女王を探してほしいと頼みます。しかし不可思議な現象に襲われた晴明は「無意識」下にいると告げます。

以上が中盤あらすじ。徽子女王の怪奇現象はわりとあっさり解決（真相は終盤で明かされるので後述）するが、得業生の殺人事件が発生し、その真相を追うことに。ただしミステリ的なロジックではなく、陰陽師らしくファンタジーでの解明。

徽子女王と源博雅の恋愛物語は、いとこどうしや帝という点は平安時代らしいが、現代でも取引先の社長など断りにくい結婚話は題材になったりしますね。この2人の関係性は、本作で最も人間らしくてせつなく感じました。

そして「無意識」空間での戦いですが、昭和・平成とか古い作品にありそうな展開で、さすがに2024年の今見せられると残念。『呪術廻戦』の領域展開を知ってる世代では、このような雑な空間設定は興が冷めてしまいます。

結末は？敵の正体と目的は？続編は？

何者かの「呪術」による「火竜」に追われる晴明は、陰陽寮の地水庫から呪術で「水竜」を呼び出して火竜と術者の惟宗是邦（これむねの これくに。北村一輝）を倒します。現実に戻った晴明は、陰陽頭と対峙するが刺されてしまいます。

陰陽頭は授業中に全学生に「暗示」をかけてました。彼は年齢的に早く帝の「蔵人所陰陽師」になりたかったため、有能な陰陽師や学生は嫉妬で殺害してきました。有能な陰陽師だった晴明の父や、先日の得業生もその犠牲者。是邦は陰陽頭の役職ほしさに従ってました。

既に晴明の呪にかかってた陰陽頭は、晴明を刺してはおらず、逆に晴明による「菅原道真公が詠んだ桜」にちなんだ呪術で倒され絶命。「博雅への想いを金竜として具現化」させてた徽子女王は、博雅が「きっと好きになる」という帝のもとへ。

「嫉妬の火竜」を倒して事件を解決した晴明は得業生に。そして安倍晴明は、賀茂忠行の推薦で帝の「蔵人所陰陽師」に任命されます。

以上がラストまでのネタバレあらすじです。前半は「人の意識に暗示をかける呪」のみしか使わなかったが、終盤にはファンタジーバトルが展開されます。火竜も水竜もエピソードが薄いため、唐突にしか感じなかったのが残念ですが。

北村一輝が演じる是邦は序盤からあやしかったが、ただの使い走りで、ラスボスは陰陽頭でした。ただ、天文博士にまでなった是邦が学生たちを殺害した動機が「役職」だけというのは納得しづらいかも。もう少し深堀りほしかったです。

ラスボスの陰陽頭が冒頭での授業時、全学生に「暗示」をかけてた流れは見事。だが暗示を有効活用してたようには見えなかったが。本作のメインテーマ「年齢による出世のあせりが大きな嫉妬」は、平郡貞文のキャラも見事に回収。

もう1つのテーマである、博雅と徽子女王とのかなわぬ恋愛も最後までていねいに描かれました。金竜の正体についてはかなり無理あるように感じたけど。晴明が帝の陰陽師に任命されたので、続編があるかもしれませんね。

映画『陰陽師0』ネタバレ感想と私の評価

数々の映画化、ドラマ化、アニメ化までされた「安倍晴明」なので、彼の前日譚『陰陽師0』は今さら？とは感じました。しかし実際に観ると、今までにない現実寄りの陰陽師で、初見さんでも見やすく間口を広げてきたのかも。

一方、呪術による戦いや、人の闇のおそろしさについては過去作ほど深く描いてないため、かなりぬるい映画に仕上がってます。私のようにそういうのを求めてた人達にとっては、期待はずれに感じた人もいることでしょう。

敵の正体も含めて意外性は低く、好敵手も登場せず、物語の起伏感も乏しかったです。ラストで帝の陰陽師となった安倍晴明なので、もっと物語と演出にこだわった大規模な陰陽合戦が見られるなら続編も期待したいです！