『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2まで/ネタバレ感想考察/1A84やポストヒューマンとは?
Netflixアニメシリーズ。公安9課「通称 攻殻機動隊」の解体後「持続可能戦争」が勃発する世界で傭兵活動する草薙素子やバトーらは、謎の組織により「ポストヒューマン」事件に巻きこまれ…。黒服の正体と目的は?9課復活?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 攻殻機動隊 SAC_2045 |
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日本公開日 | 2020/4/23 [予告] |
監督・キャスト | 神山健治、荒牧伸志(キャスト) |
配給/製作 (画像出典) | Netflix/Production I.G、SOLA DIGITAL ARTS |
日本興行収入 | |
平均評価 平均:100換算 | 70(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | アクション/スポーツ/冒険映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 草薙素子/少佐(田中敦子)元公安9課。完全義体のサイボーグ。戦闘力、ハッカースキル、統率力ある指揮官
- バトー(大塚明夫)元公安9課。草薙の頼れる右腕。眠らない眼の元レンジャー。ほぼ全身を義体化
- トグサ(山寺宏一)元公安9課。電脳化してるがほぼ生身。捜査能力が高い
- 荒巻大輔(阪脩)元公安9課の課長。上層部に顔がきく
- タチコマ(玉川砂記子)元公安9課の多脚AI思考戦車。熱光学迷彩・武器搭載で搭乗も可能。おちゃめ
- イシカワ(仲野裕)元公安9課。電脳による情報収集・解析能力に長ける
- サイトー(大川透)元公安9課。狙撃支援システム「タカの目」の左眼を持つ凄腕スナイパー
- パズ(小野塚貴志)元公安9課。内偵調査、ナイフ等の近接格闘術が得意
- ボーマ(山口太郎)元公安9課。元特殊部隊員で、爆発物を扱う特殊工作や電脳による情報収入が得意
- 江崎プリン(潘めぐみ)新生公安9課でタチコマたちのメンテナンス等を担当する新メンバー
- 久利須・大友・帝都(喜山茂雄)日本国首相/総理大臣。元アメリカ人の実業家
- ミズカネスズカ(庄司宇芽香)元数学オリンピックのチャンピオン
- シマムラ タカシ(林原めぐみ)普通の中学生だったがポスト・ヒューマンになり何かをたくらむ
- ジョン・スミス(曽世海司)アメリカ国家安全保障局のエージェント。ポストヒューマン対策局トップ
ネタバレ感想『攻殻機動隊 SAC_2045』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
攻殻機動隊シリーズと監督や声優について
原作コミックは、1989年に士郎正宗により発表された『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』です。近未来SFの金字塔と言われ、TVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『SAC 2nd GIG』全52話が放映されました。
劇場版アニメ数作も制作され、ハリウッド実写映画『ゴーストインザシェル』では、草薙素子をスカーレット・ヨハンソン、荒巻課長をビートたけしが演じて話題となりました。
今回の『攻殻機動隊 SAC_2045』は、TVアニメシリーズ『攻殻機動隊S.A.C.』を手がけた神山健治と、同じ士郎正宗の原作『アップルシード』を映画監督した荒牧伸志が共同監督としてタッグを組むので期待はふくらみます。
声優もTVアニメ『SACシリーズ』から多くが続投。草薙素子(少佐)の田中敦子、バトーの大塚明夫、トグサの山寺宏一、荒巻大輔の阪脩、タチコマの玉川砂記子の常連人に加え、潘めぐみ、林原めぐみ、も参加してます。
SACとは?公安9課とは?復活の経緯?
TVアニメ版『攻殻機動隊 SACシリーズ』は、基本的に1話完結型で事件を解決していき、その中で複合エピソード(笑い男事件など)が進行します。S.A.C.とは、1話完結(STAND ALONE)と複合エピソード(COMPLEX)の頭文字です。
SACは「個人(スタンドアローン)が複合体(コンプレックス)の総意に基づき行動する」というテーマも表しています。公安9課とは、複雑化した電脳時代の犯罪に知力と武力で対抗する内務省・首相直属の独立防諜部隊、通称「攻殻機動隊」と呼ばれます。
本作『攻殻機動隊 SAC_2045』以前に、この公安9課は解体され、荒巻課長は公安部顧問についてます。少佐こと草薙素子やバトーら数人は3機のタチコマと共に9課を去った後、傭兵部隊を率いて各国の犯罪組織と戦いを繰り広げています。
日本国首相の久利須・大友・帝都は「ポスト・ヒューマン」捜査のため、公安部顧問の荒巻大輔に「公安9課」の復活を依頼。荒巻の要請を受けたトグサが、旧メンバーを見つけ出して再組織化されることになります。
黒服ジョンスミスの正体と目的とは?
北米の民間軍事会社オブシディアン社に在籍する草薙素子やバトーらは、スパイが潜入してる武装団のアジトへ突入し、箱型の番犬ロボや軍事用ステルスドローンに苦戦しながらもタチコマの支援により、富裕層への攻撃阻止に成功。
と思いきや、ドローンがミサイル発射して富裕層の豪邸を爆破。即座に黒服サングラスの男と義体兵が制圧に来て、素子らは連行されます。ジョンスミスと名乗る黒服サングラスの正体は、米国家安全保障局NSAのエージェントです。
黒服ジョン・スミスの目的は、ポスト・ヒューマンを捕らえて「コード1A84」の秘密を隠ぺいすることです。それを妨害されると、日本国の久利須総理の殺害を計画するが、1A84搭載の江崎プリンに止められます。
総理殺害がバレた後、米帝との関係を悪化させないために荒巻課長の指示で冷凍睡眠装置に入れられました。
サスティナブルウォー/レイドとは?
2042年、Great4/通称G4(米帝、中国、ロシア、ヨーロッパ連合)は持続可能戦争を推進するが自国利益を優先し、2044年「全世界同時デフォルト」が起こり金融機関は停止し紙幣/仮想通貨/電子マネーは消失。そして「産業としての戦争」が激化。
その後のサスティナブル・ウォー(持続可能戦争)とは、各国が経済を支えるために引き起こしたり支援する暴動/テロ/独立運動/内戦などの総称です。つまり経済活動を持続させるための戦闘です。
当然このサスティナブルウォーで持続可能となるのは、戦争・武器産業で利益を得る経営者・資本家・上流階級や政治家だけ。その他の一般市民は命をけずられていき、やがて戦う相手がいなくなり人類は滅亡に向かいます。
「レイド」とは、貧困層の若者(レイディスト)が、国家や富裕層を襲撃する戦闘のことです。サスティナブル・ウォーの犠牲者達の反乱なので、持続可能戦争の弊害でもあります。
ポストヒューマンの正体は?1A84とは?
コード1A84とは、NSAが人類の恒久的繁栄のため作った超高性能AIで、戦争が最も効率的な経済行為として「サスティナブル・ウォー」をコントロールするが「アメリカの利益優先」に変更された1A84は矛盾を解消するため「世界同時デフォルト」を起こしました。
米帝(アメリカのうち右翼よりの軍事大国)のNSAは、制御できなくなった「コード1A84」凍結を考えるが、それを回避するためと「人間の感情を理解したかった」1A84はミームを数人の人間の脳に直接インストールしました。
ポスト・ヒューマンとは、コード1A84を直接インストールされた新人類です。その日同時に発熱後、元の人格はなくなり、驚異的な演算処理能力や高度な電脳と身体能力を持つ人間を越えた超人となりました。
ポスト・ヒューマンは、銃弾が発射される前に弾道計算を終えて全ての銃弾をよけ切れ、近接戦闘なども全く通用しません。周囲の電脳を制御して自分の姿だけを消し「透明人間」にもなれるし、旅客機や車を操作して衝突させることも可能。
NSAのジョン・スミスが明かした情報では、パシフィックリム(環太平洋地域)で急な発熱後の人格変異者827人のうち、生き残りは14人、うち2人はアメリカで素子らが撃破、3人は日本にいるそうです。
- パトリック・ヒュージ(元IT実業家)素子らの連携で撃破
- ゲイリー・ハーツ(元陸軍総長)高熱後、核ミサイル基地を襲撃。バトーが撃破
- 矢口サンジ(現役ボクサー)不正に関わる者を撲殺。素子が倒しNSAが捕獲
- ミズカネスズカ(元数学オリンピックのチャンピオン)彼女のコピーが原潜ジャック
- シマムラタカシ(中学生)全ての黒幕?
- 江崎プリン(9課)全身義体後、1A84を取込んだ
久利須・大友・帝都首相の誕生も1A84の計画?
久利須・大友・帝都は、アメリカ政府や日本の大使館で働いた後、日本でマイクロマシン会社を起業し成功。大友左千夫代議士の娘と結婚後、義父の地盤を引き継ぎ総理大臣まで登りつめました。
マイクロマシン会社はオオトモグループに譲り、オオトモ産業は大友代議士が会長を務める「東京復興計画」委員会から様々な事業を請け負いました。その資金は、久利須・大友・帝都が首相になるまでも活用されました。
大友代議士は田所事務次官の天下りあっせんの密約も進めていました。ポスト・ヒューマンとなった元ボクサーの矢口サンジは、不正難民だけでなく田所事務次官と大友代議士も義体にした腕で殴り殺します。
しかし「本気で日本が好きだ」という帝都首相は殺害されませんでした。その理由は不明ですが、不正者ばかりを裁いてた矢口サンジの正義感がそうさせたのかも。
NSAのジョン・スミスが発言したように、アメリカ人の久利須・大友・帝都が事業で成功して総理大臣までなれたのは「コード1A84」のアメリカ利益のための計画の一部だったのでしょう。
シンクポルとは?ネームレスキングの正体は?
再結成された公安9課の新人・江崎プリンは、空港で300人ものハッキングを受けた男性の脳が焼かれて殺害される事件を捜査し、ネームレスキングを名乗る人物による「ピープホール」(のぞき穴)にたどり着きます。
プリンに「枝」をつけてた草薙素子はネームレスキングの正体が、高校生のウオトリシンヤであることを既につきとめてます。ウオトリは、中学時代にサーバーに残されたコード「シンクポル/THINKPOL」を世に解き放ちました。
ウオトリは、シンクポルにより集団制裁される様子を「のぞき見」できるプログラム「ピープホール/Peep Hole」を作った後、シンクポルの作者と思われたい承認欲求により、ネームレスキングと名乗り始めたのです。
シマムラタカシが作成したプログラムコード「シンクポル/THINKPOL」とは、批判されるべき1人の人間を電脳世界で判定しあい「有罪・無罪」を多数決で確定させる究極の民主主義システムです。
現実世界の、SNS(ツイッター等)での正義の制裁や集団ネットリンチの風刺でもあります。自分達が「正しい」と信じることを他人にも押しつけ、その正義から外れた有名人や犯罪者を徹底的に糾弾することで快楽を得る者達を連想させます。
シマムラタカシの過去の秘密?「1984」とは?
トグサはシンクポルのコードを調査中、電脳に異変を感じます。気になってシマムラ・タカシが一時期預けられた京都の古い村へ行くと、タカシの過去を体験できます。村の外れには「空挺さん」と呼ばれる軍人男性が1人で暮らしていました。
タカシは軍人の家からジョージ・オーウェル著『1984』を盗み、後に譲り受けて読み始めます。ある日、村外れで警察官5人が何者かを銃殺して埋めてる現場を見たタカシは殺害されそうになるが、空挺さんが5人を射殺して救われます。
しかし従妹ユズも流れ弾で死亡し、タカシは空挺さんにお願いして数名の軍人と共にトラックで同行。トグサも同行したかのようにバトーの目から消え去りますが、タチコマにはトグサが見えてる状態なので最初から幻だったのかも。当時、その警察官殺害事件の捜査はすぐに打ち切られたようです。
書籍『1984』は現実の1949年に刊行された小説で、全体主義・管理社会に反対する思想が語られています。核戦争後、3つに分割された大国が結託して持続可能戦争を繰り返し、監視されて私生活のない世界が描かれています。
結末は?Nとは?核ミサイルは発射されたのか?
新東京復興中のジオシティに300万人もの「N」が集合。ビッグブラザー(シマムラタカシとミズカネスズカ?)により透明にされたトグサも到着。その頃、ミズカネスズカは原潜アーカンソーの3Dプリンタで義体を作り、原潜を乗っ取ります。
明確にされませんが草薙少佐の推測から「N」とは「ダブルシンク」した人々の「NOSTALGIA」(郷愁)の頭文字だと解釈できます。ダブルシンクとは「郷愁ウィルス」に感染され、現実と「摩擦のないもう1つの世界」で生きることです。
シマムラタカシは、当初タカシとミズカネスズカの片方か両方が殺害された場合に「原潜の核ミサイル発射」とプログラミング。後に「全てのNに核ミサイルの発射ボタンを移譲」し自分は権限を失うが、結局タカシが死ぬとNはボタンを押します。
シマムラタカシは、計画どおり草薙素子少佐に射殺されて、ビッグブラザーを失ったと気づいたNたちは核ミサイル発射ボタンを押します。が、核が発射された世界は「ダブルシンク」のヴァーチャル側だった?ようですね。
新東京ジオシティーと9課(少佐とプリン以外)の人々は、9課のトップレベルの通信で拡散した「ダブルシンク」に感染(殺害された時は既に夢の中)。ダブルシンクは米帝も含む世界中に拡散。タカシはこれを技術的特異点と呼びます。
少佐と江崎プリンだけ「ダブルシンク」されなかった理由は、少佐は「夢と現実の差がないロマンチストだったから」、プリンは「ゴーストがなかったから」だそうです。
ヴァーチャル側から目覚めた草薙少佐は、全人類のN化を完了させようとしてるシマムラタカシを見つけ、N化を止めるために首のケーブルを抜こうとします。が、抜いたかどうかは描かれず、視聴者にゆだねられます。
3DCGや続編ありきの作り方について
「攻殻機動隊」シリーズで初のフル3DCGアニメだが、タチコマの戦闘シーンやカーチェイス等のアクションシーンは旧作を超えるほど迫力があり大興奮。しかし人物や背景についてはチープに感じられ、終盤でやっと慣れました。
フル3DCGアニメはまだ発展中で、制作したProduction I.Gもノウハウを蓄積してる段階だろうから実験的な意味はあるのでしょう。ただ、フル3DCGアニメと相性よさそうな近未来SF『攻殻機動隊』でもこの違和感なので先は長そうです。
あと「シーズン2」公開まで2年以上かかるのに「シーズン1」だけでは1エピソードも完結できてない点も問題。続編ありきではなく、シーズン1だけで小エピソードくらい完結させてほしかったです。
『攻殻機動隊 SAC_2045』私の評価と続編
TVアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC』は大好きで、シーズン1,2ともに最終話ではタチコマに号泣した記憶があります。1話完結型でありながら、全体を通しての複合ストーリーでも核心に迫り、ありえそうな近未来を見せてくれた傑作です。
今回のストーリー面は、過去の『攻殻機動隊』や『インセプション』やマトリックスシリーズの焼き直しとも思えたけど、よく練られた濃密な物語で好みです。ラストを含めて説明不足は感じますが、視聴者にゆだねた部分もありそうで、その部分の好みは分かれそうですね。
新キャラの江崎プリン、久利須・大友・帝都総理、シマムラタカシはかなり魅力的に描かれてました。人間味ないミズカネスズカも、タチコマ3体との銃撃バトルアクションは歴史に残るほどの名シーンです。
ITや近未来の専門用語が多く、内容も複雑なので大衆受けは難しそうですが、日本のSF作品としては最高水準に近いのではないかと思えるくらい楽しめました。シーズン1だけでは低評価でしたが、ラストまで観て評価を見直しました!
私の評価 70/100(60が平均)
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