『攻殻機動隊 SAC_2045』評価は?ネタバレ感想考察/持続可能戦争やポストヒューマンとは?

『攻殻機動隊 SAC_2045』あらすじ概要
Netflixアニメシリーズ。公安9課「通称 攻殻機動隊」の解体後「持続可能戦争」が勃発する世界で傭兵活動する草薙素子やバトーらは、謎の組織により「ポストヒューマン」事件に巻きこまれ…。黒服の正体と目的は?9課復活?(ネタバレ感想考察↓)
映画名/邦題 | 攻殻機動隊 SAC_2045 |
日本公開日 | 2020/4/23 [予告↓] |
映画監督 | 神山健治、荒牧伸志 [キャスト↓] |
配給/製作 | (C)Netflix/Production I.G、SOLA DIGITAL ARTS |
参考 | 公式サイトWiki |
平均評価★★★★★67(私の評価↓は含まず) |
『攻殻機動隊 SAC_2045』予告動画
キャラクター(キャスト/出演者。日本語吹き替え声優)
ネタバレ感想『攻殻機動隊 SAC_2045』考察や評価レビュー
この先はネタバレありの感想考察です。他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。
攻殻機動隊シリーズと監督や声優について
原作コミックは、1989年に士郎正宗により発表された『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』です。近未来SFの金字塔と言われ、TVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『SAC 2nd GIG』全52話が放映されました。
劇場版アニメ数作も制作され、ハリウッド実写映画『ゴーストインザシェル』では、草薙素子をスカーレット・ヨハンソン、荒巻課長をビートたけしが演じて話題となりました。
今回の『攻殻機動隊 SAC_2045』は、TVアニメシリーズ『攻殻機動隊S.A.C.』を手がけた神山健治と、同じ士郎正宗の原作『アップルシード』を映画監督した荒牧伸志が共同監督としてタッグを組むので期待はふくらみます。
声優もTVアニメ『SACシリーズ』から全員続投です。草薙素子(少佐)の田中敦子、バトーの大塚明夫、トグサの山寺宏一、荒巻大輔の阪脩、タチコマの玉川砂記子の常連人に加え、潘めぐみ、林原めぐみ、も参加してます。

3DCGや続編ありきの作り方について
「攻殻機動隊」シリーズで初のフル3DCGアニメだが、タチコマの戦闘シーンやカーチェイス等のアクションシーンは旧作を超えるほど迫力があり興奮しました。しかし人物や背景についてはチープにしか感じられず、終盤でやっと慣れました。
フル3DCGアニメはまだ発展中で、制作したProduction I.Gもノウハウを蓄積してる段階だろうから実験的な意味はあるのでしょう。ただ、フル3DCGアニメと相性よさそうな近未来SF『攻殻機動隊』でもこの違和感なので先は長そうです。
しかし「フル3DCGアニメ」の是非よりももっと深刻な欠陥は「続編ありきの途中終了」作品になってしまったこと。アメリカTVドラマのダメな方の手法です。せめてシーズン1の12話で、1エピソードを完結してほしかったです。
TVアニメ版は1話完結型+最終話へ向けての複合エピソードの形式で成功をおさめたのに、それらを全て否定するような本作の作り方には残念しかないです。なお個人的には、60分x6話で1エピソードが解決する流れがベストだと感じます。
SACとは?公安9課とは?本作以前
TVアニメ版『攻殻機動隊 SACシリーズ』は、基本的に1話完結型で事件を解決していき、その中で複合エピソード(笑い男事件など)が進行します。S.A.C.とは、1話完結(STAND ALONE)と複合エピソード(COMPLEX)の頭文字です。
SACは「個人(スタンドアローン)が複合体(コンプレックス)の総意に基づき行動する」というテーマも表しています。公安9課とは、複雑化した電脳時代の犯罪に知力と武力で対抗する内務省・首相直属の独立防諜部隊、通称「攻殻機動隊」と呼ばれます。
本作『攻殻機動隊 SAC_2045』以前に、この公安9課は解体され、荒巻課長は公安部顧問についてます。少佐こと草薙素子やバトーら数人は3機のタチコマと共に9課を去った後、傭兵部隊を率いて各国の犯罪組織と戦いを繰り広げています。
サスティナブルウォーとは?ポストヒューマンの正体は?
2042年、Great4/通称G4(米帝、中国、ロシア、ヨーロッパ連合)は自国利益を優先し、2044年「全世界同時デフォルト」が起こって金融機関は停止し紙幣/仮想通貨/電子マネーは消失。そして「産業としての戦争」が激化します。
サスティナブル・ウォー(持続可能な戦争)とは、各国が経済を支えるために引き起こしたり支援する暴動/テロ/独立運動/内戦などの総称です。つまり経済活動を持続させるための戦闘です。
当然このサスティナブルウォーで持続可能となるのは、戦争・武器産業で利益を得る経営者・資本家・上流階級や政治家だけ。その他の一般市民は命をけずられていき、やがて戦う相手がいなくなり人類は滅亡に向かいます。
ちなみに何度も会話ででる「レイド」とは、貧困層の若者(レイディスト)が、国家や富裕層を襲撃する戦闘のことです。サスティナブル・ウォーの犠牲者達の反乱なので、持続可能戦争の弊害でもあります。
そんな情勢の中、元公安9課の草薙素子やバトーらはアメリカで傭兵活動をしていたが、「ポスト・ヒューマン」と呼ばれる驚異的な知能と身体能力を持つ人間を越えた超人との戦闘に巻きこまれて苦戦します。
ポスト・ヒューマンらしき人物が5人登場しますが、その正体は『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン1では明かされません。超高速処理と高度に発展させた電脳により、人間の体を乗っ取り、身体能力向上や予測回避を可能にした新人類です。
「全世界同時デフォルト」を引き起こしたのはポスト・ヒューマンだと、ジョン・スミスは明かしますが、それが真実ならサスティナブル・ウォーの引き金もG4ではなく新人類ということになり、人類vs新人類に発展する展開も予想できます。
黒服ジョンスミスの正体と目的とは?
北米の民間軍事会社オブシディアン社に在籍する草薙素子やバトーらは、スパイが潜入してる武装団のアジトへ突入し、箱型の番犬ロボや軍事用ステルスドローンに苦戦しながらもタチコマの支援により、富裕層への攻撃阻止に成功します。
と思いきや、ドローンがミサイル発射して富裕層の豪邸を爆破します。即座に黒服サングラスの男と義体兵が制圧に来て、素子らは連行されます。ジョンスミスと名乗る黒服サングラスの正体は、米国家安全保障局NSAのエージェントです。
NSAはアメリカ国防総省の情報機関なので、大統領命令には従うしかなく、草薙素子らは解放されます。黒服ジョンスミスの目的は、ポスト・ヒューマンを捕らえて彼らのねらいを追及することです。ただしそれが偽りである可能性はあります。
公安9課の再組織化の理由は?
日本国首相の久利須・大友・帝都が「ポスト・ヒューマン」捜査のため、公安部顧問の荒巻大輔に「公安9課」の復活を依頼します。荒巻の要請を受けたトグサが、旧メンバーを見つけ出して再組織化されることになります。
元アメリカ人でもある総理大臣の久利須・大友・帝都は、アメリカ大統領の依頼を受けて「ポスト・ヒューマン」捜索を始めます。それ以外にも何か思惑がありそうですが、シーズン1では全く明かされません。
久利須・大友・帝都首相の誕生過程は?事件とつながり?
アメリカ政府や日本の大使館で働いた後、帝都は日本でマイクロマシン会社を起業し成功をおさめ、大友左千夫代議士の娘と結婚して義父の地盤を引き継ぎ、大友の協力で総理大臣まで登りつめたようです。
マイクロマシン会社はオオトモグループに譲り、オオトモ産業は大友代議士が会長を務める「東京復興計画」委員会から様々な事業を請け負っていたようです。その資金は、久利須・大友・帝都が首相になるまでにも活用されました。
大友代議士は田所事務次官の天下りあっせんの密約も進めていました。ポスト・ヒューマンとなった元ボクサーの矢口サンジは、不正難民だけでなく田所事務次官と大友代議士も義体にした腕で殴り殺します。
しかし「本気で日本が好きだ」という帝都首相は殺害されませんでした。その理由は不明ですが、不正者ばかりを裁いてた矢口サンジの正義感がそうさせたのか、ポストヒューマンの真の目的と関係あるのかもしれません。ただし「シンクポル」はその後も帝都総理を襲撃するので意図は不明です。
5人のポストヒューマンとは?一覧
エピソード8でNSAのジョン・スミスが明かしたポスト・ヒューマン情報では、パシフィックリム(環太平洋地域)で急な発熱後の人格変異者827人のうち、生き残りは14人、うち2人はアメリカで素子らが撃破、3人は日本にいるそうです。
シーズン1では全貌が明かされない「ポスト・ヒューマン」ですが、登場した5人についての一覧です。
- パトリック・ヒュージ(元IT実業家)素子らの連携で撃破
- ゲイリー・ハーツ(元陸軍総長)高熱後、核ミサイル基地を襲撃。バトーが撃破
- 矢口サンジ(現役ボクサー)不正に関わる者を撲殺。素子が倒しNSAが捕獲
- ミズカネスズカ。空港で目撃される
- シマムラタカシ(中学生)
ネームレスキングの正体と目的は?
再結成された公安9課の新人・江崎プリンは、空港で300人ものハッキングを受けた男性の脳が焼かれて殺害される事件を捜査し、ネームレスキングを名乗る人物による「ピープホール」(のぞき穴)にたどり着きます。
プリンに「枝」をつけてた草薙素子はネームレスキングの正体が、高校生のウオトリシンヤであることを既につきとめてます。ウオトリは、中学時代にサーバーに残されたコード「シンクポル/THINKPOL」を世に解き放ったのです。
そしてシンクポルにより集団制裁される様子を「のぞき見」できるプログラム「ピープホール/Peep Hole」を作った後、シンクポルの作者と思われたい承認欲求により、ネームレスキングと名乗り始めたのです。
シンクポルとは?現実のSNSを風刺?
現時点でシマムラ・タカシが作成したとされるプログラムコード「シンクポル/THINKPOL」とは、批判されがちな1人の人間を電脳世界で判定しあい「有罪・無罪」を多数決で確定させる究極の民主主義システムです。
現実世界の、SNS(ツイッター等)での正義の制裁や集団ネットリンチの風刺でもあります。自分達が「正しい」と信じることを他人にも押しつけ、その正義から外れた有名人や犯罪者を徹底的に糾弾することで快楽を得る者達を連想させます。
シマムラタカシの過去とは?『1984』とは?
トグサはシンクポルのコードを調査中、電脳に異変を感じます。気になってシマムラ・タカシが一時期預けられた京都の古い村へ行くと、タカシの過去を体験できます。村の外れには「空挺さん」と呼ばれる軍人男性が1人で暮らしていました。
タカシは軍人の家からジョージ・オーウェル著『1984』を盗み、後に譲り受けて読み始めます。ある日、村外れで警察官5人が何者かを銃殺して埋めてる現場を見たタカシは殺害されそうになるが、空挺さんが5人を射殺して救われます。
しかし従妹ユズが流れ弾で死亡し、タカシは空挺さんにお願いして数名の軍人と共にトラックで同行します。トグサも同行したかのようにバトーの目から消え去りますが、タチコマにはトグサが見えてる状態なので最初から幻だったのかも。
当時、その警察官殺害事件の捜査はすぐに打ち切られたようです。シマムラ・タカシが作った「郷愁を呼びさます」コードは、ゆずの幻影と関係あるのかも。その軍人部隊も「シンクポル」誕生に関わりがありそうです。第12話のタイトル「すべてがNになる」のNは「NOSTALGIA」の意味でしょうか。
『1984』は現実の1949年に刊行された小説で、全体主義・管理社会に反対する思想が語られています。核戦争後、3つに分割された大国が結託して持続可能戦争を繰り返し、監視されて私生活のない世界が描かれています。
『攻殻機動隊 SAC_2045』私の評価と続編
TVアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC』は大好きで、シーズン1,2ともに最終話ではタチコマに号泣した記憶があります。1話完結型でありながら、全体を通しての複合ストーリーでも核心に迫り、ありえそうな近未来を見せてくれた傑作です。
それに比べると本作『攻殻機動隊 SAC_2045』はテンポが遅く、フル3DCGにも違和感があり、最終話でも全く何も解決しない展開なので、期待は大きく裏切られました。一方で3DCGでのタチコマ含むアクションは、かなり見ごたえあります。
サスティナブル・ウォー、ポスト・ヒューマン、シンクポル等の謎は次作で解明されるのでしょうから、それしだいでは今回の評価から上がる可能性はあります。現実のSNSを連想させる事件も描かれそうで楽しみです。
新キャラの江崎プリン、久利須・大友・帝都総理の2人はあやしすぎるけど、そこはミスリーディングでもっと身近なところにダブルスパイがいる可能性も考えられます。タチコマのさらなる活躍と斬新なバトルも期待して続編を待ちましょう!
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