映画『アキラとあきら』感想ネタバレ解説考察/結末は?敵か味方か?誰が悪?
池井戸潤の小説の映画化。父の町工場が倒産した山崎瑛と、大企業の御曹司の階堂彬。同名の2人がメガバンクに同期入社しライバルとなるが、日本有数の大企業の倒産危機に関わることになり…。奇跡の策とは?伝説の新人研修とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | アキラとあきら |
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日本公開日 | 2022/8/26 [予告] 上映時間:128分 |
監督・キャスト | 三木孝浩[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/TOHOスタジオ |
日本興行収入 | 7.6億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 83(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
キャラ・ランキングは公開後すぐ更新します!
- 山崎瑛(竹内涼真)産業中央銀行の行員。階堂と同期
- 階堂彬(横浜流星)産業中央銀行の行員。山崎と同期
- 不動公二(江口洋介)産業中央銀行の上野支店副支店長
- 羽根田一雄(奥田瑛二)産業中央銀行の融資部長
- 階堂崇(児嶋一哉)階堂の叔父。「東海郵船」グループ会社「東海観光」社長
- 階堂晋(ユースケ・サンタマリア)階堂の叔父。グループ会社「東海商会」社長
- 水島カンナ(上白石萌歌)産業中央銀行の銀行員
- 階堂龍馬(髙橋海人@King&Prince)階堂彬の弟。若くして社長となる
- 階堂一磨(石丸幹二)階堂の父。「東海郵船」社長
- 階堂聡美(戸田菜穂)階堂彬の母
- 山崎孝造(杉本哲太)山崎瑛の父
- 保原茂久(塚地武雅)山崎の実家が経営していた「山崎プレス工場」従業員
- 工藤武史(満島真之介)山崎が幼い頃に出会った銀行員
- 井口雅信(宇野祥平)山崎の担当取引先「井口ファクトリー」社長
ネタバレ感想『アキラとあきら』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
池井戸潤原作?監督やキャストについて
映画『アキラとあきら』は、池井戸潤による日本の経済小説の劇場版です。池井戸潤はドラマ『半沢直樹』『下町ロケット』や、映画『七つの会議』『空飛ぶタイヤ』等、映像化が続いてる人気作家です。
『アキラとあきら』は、WOWOWでドラマ化もされて、向井理、斎藤工が主演をつとめました。今回の三木孝浩監督は、最近は『思い、思われ、ふり、ふられ』『夏への扉』『今夜、世界からこの恋が消えても』『TANG タング』等を監督。
映画版の主役の1人、竹内涼真は最近の映画では『太陽は動かない』や『名探偵ピカチュウ』(カメオ出演)等に出演。もう1人の主役の横浜流星は『流浪の月』『あなたの番です 劇場版』等に出演。
他も、上白石萌歌、宇野祥平、ユースケ・サンタマリア、奥田瑛二、江口洋介、戸田菜穂、髙橋海人など個性的な俳優女優が出演。
2人が銀行に入った理由は?伝説の新人研修とは?
山崎瑛/アキラ(竹内涼真)は、父が経営する町工場が倒産した原因は、銀行が融資を打ち切ったからだと知ります。その後、親族の会社で雇われた父は、別の銀行員と協力して会社の危機を救い、アキラも東大行きをあきらめずにすみました。
銀行員にいい印象を持ってなかったアキラだが、そんな親身になる銀行員の存在を知り、自分も「人を救う銀行員になりたい」と思うようになります。
一方、階堂彬/あきら(横浜流星)は、日本有数の大企業「東海郵船」の長男だが、一族の醜い争いを見て育ったため距離をとりたくて、自分がなりたい職業として銀行員を選びました。父(社長)は驚くが、自分で選んだ道を応援。
そんな2人、アキラとあきらは同じ東大卒で同じ産業中央銀行に入社し、新人研修ファイナルで戦うことに。会社班の階堂は決算内容を粉飾して7000万円の借り入れ申請をするが、銀行班の山﨑は在庫と現金の動きで粉飾を見破り融資を拒絶。融資部長の羽根田(奥田瑛二)は2人を絶賛。
以上が序盤あらすじです。かなりレベル高い新人研修に度肝を抜かれましたが、同映画内でもこの戦いは「伝説の新人研修」として語り継がれることになります。後に入社した水島カンナ(上白石萌歌)も張本人に会えて感激するほど。
2人は幼少期に会ってます。工場の機械等を押収する軽トラを追う山﨑は、階堂が乗る車にひかれそうになります。ドラマ版では早々に再会に気づくが、映画版は「運命」を強調してラストに発覚するので良い改変です。
山﨑が左遷された理由?本社へ戻れた理由?
町工場への融資が止まると知った山﨑は、工場長が娘の渡米手術代として貯金してた口座も差し押さえられるため、別口座への変更を助言。その銀行への裏切りがバレ、地方支店へ転勤となり、実質は左遷されました。
左遷先は島流し支店として、管理職も社員も意欲が低く、山﨑ものまれそうになります。しかし、助けた元工場長からの手紙で、娘の手術が無事成功した事や、それを手助けした牧師が山﨑の父の元工場員だった事を知り意欲を復活。
福山支店で数々の融資の稟議書をとおした実績を認められ、山﨑は本社へ戻れて第5営業部へ配属。専務から「ベンチャー発掘プロジェクト」精鋭の出世コースに呼ばれるが断り、水島と共に「階堂の東海郵船」の救済を選びます。
階堂から「山﨑は育ちがいいな」と何度か言われ、最初は皮肉に聞こえましたが終盤にはその言葉が響きます。「育ちがいい」とは一般的に「何不自由なく暮らしてきた貴族や金持ち」を指すことが多いが、本作では「人を救うために信念をつらぬく人」。
まさに聖人のような山﨑ですが、この人格形成は両親よりも元工場員の保原(塚地武雅)から影響を受けてます。元々信心深かった保原は、困難な時でも人に優しく接する姿を見せました。後に牧師となり、工場長の娘を救ったようです。
ドラマでは別れ際に保原から十字架を渡されて山﨑の心のよりどころになりますが、映画では工場のベアリングをペンダントとして父を誇りに思ってます。専務プロジェクトを断ったのはさすがに現実的ではないけど、信念をつらぬく姿がより強調されてるとは感じます。
階堂が銀行をやめた理由?弟が倒れた経緯?
階堂の父は長男なので「東海郵船」、弟2人はグループ会社「東海商会」「東海観光」を継承。しかし優秀な兄にコンプレックスを抱く弟2人は一発逆転をねらい「伊豆に高級リゾートホテルと施設」建設を宣言し、メインバンクも変更。
5年で兄を超える!と息巻いた2人だが初年度から大赤字。嘆く兄は倒れて亡くなります。遺言書では、資産を妻、弟2人、階堂の弟に分けた後、東海郵船の全株式は階堂に。納得できない弟勢力も、妻の「遺言書を尊重して」で黙ります。
東海郵船の社長に就任した階堂の弟・龍馬は、おじ2人に持ち上げられて連帯保証契約。しかし伊豆リゾートの大失敗が報道されると郵船も危うくなり、悩んだ龍馬は倒れて兄に懇願。階堂彬は銀行を退職して東海郵船の社長に就任。
階堂家は父の代も階堂の代も「無能な弟が有能な兄を見返すため」だけに、大量の従業員を無視する姿が本当に醜悪で「同族経営の闇」を感じます。経営手腕がなく損切りも下手なのに、社長を変更できないのも闇の一部。
おじ2人は粉飾決算や背任行為に近い行いをしたにもかかわらずずっとエラそうで、最後は階堂に救われますが、逮捕された方がすっきりしたのですが。弟の龍馬も、しれっと会社に戻ってきますが何も責任をとらないのでモヤモヤ。
ラスト近くで、階堂の父の「弟たちに何もしてやれなかった」と後悔が語られますが、遺言書では弟たちを一切信用せずに全株式を階堂に譲渡してるので、言うこととやることがチグハグ。会社存続のためには最良の選択でしたが。
結末は?奇跡の策とは?アキラとあきらの始まりは?
アキラとあきらと担当行員の水島カンナは、東海郵船の多くの関係者を救うため結束し、大赤字の「伊豆の高級リゾート施設」売却に奔走。しかし0円売却でも負債が大きすぎて苦戦。山﨑は、確実性重視の副支店長から承認をもらえません。
万策つきた頃、水島のヒントで解決策を見つけた山﨑は「辞職」をかけて副支店長(江口洋介)に役員会提出を直訴。階堂は、おじ2人に土下座して「今こそ同族の絆を取り戻す時」と説得。これを受け、頭取が山﨑案を承認。
その山﨑案とは、親会社の東海郵船がおじ2人のグループ会社に融資し別銀行に全額返済後、吸収合併。その後、東海商会は伊豆リゾート込みでビール会社にセット売却。親会社と商会との取引は残すので、郵船から銀行への返済も現実的に。
この大型プロジェクトを成功させ、階堂社長の東海郵船グループは倒産せず、無茶な返済計画もなくなり存続。辞表を書いてた山﨑もやめずにすみます。アキラとあきらは再会し、少年時代に山﨑父のベアリングが結んだ絆に気づきます。
最初「アキラとあきら」というタイトルを見た時、2人のアキラが銀行内で対決するのかと予想しました。実際は、銀行に小さな町工場と関係者の将来をつぶされたアキラが、日本有数の大企業のあきらと協力し銀行員として大勢を救う物語。
山﨑が左遷される原因ともなった因縁の上司・不動は「確実性」のない企業には一切融資しない事なかれ主義です。そんな彼が役員会に提出した山﨑の稟議書には決済印を押してたのが、本当に胸熱。山﨑の情熱が心動かしたのでしょう。
新人研修ファイナルを高評価した当時の融資部長が頭取になり、山﨑案を後押ししたのはさすがに話ができすぎてるとは感じましたが。「山﨑の父の町工場の失敗は、決して無駄にはならなかった」という一言は両親に聞かせてほしいですね。
映画版『アキラとあきら』私の感想と評価
スローテンポだったドラマ版を凝縮したため、スピーディで退屈しない展開が続き、恋愛がカットされたのも好み。『七つの会議』も同様だったが、池井戸潤 原作の映像化は長尺なドラマより映画の方が向いてるのかも。
キャストは、竹内涼真をのぞくとドラマ版の方が良かったが、横浜流星、江口洋介、上白石萌歌、ユースケ・サンタマリアも別人物として見ると好演です。竹内涼真は映画館で初めて観たが、存在感も雰囲気も出せてていい俳優ですね。
『アキラとあきら』は、私の中での池井戸潤ランキングではキャラが薄すぎて残念ながら下位ですが、ドラマ版よりは映画版の方が圧倒的に好き。悪役が弱くて、報いが甘いのも減点要素。おじ2人は逮捕されてほしいし、階堂の弟の無能な龍馬もしれっと会社に戻るのは興ざめ。
巨大なプロジェクトを成功に導くストーリーは王道だが、対極的な境遇の2人のアキラが共闘する展開は劇的で胸熱。弟勢力へのモヤモヤは残るが、それ以上の爽快感・達成感が味わえるので映画館・家を問わずおすすめできる映画です!
私の評価 67/100(60が平均)
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