映画『ある男』感想ネタバレ解説考察/真相と結末は?亡き夫Xの正体と目的は?
平野啓一郎の人気小説の映画化。弁護士の城戸は、里枝から亡き夫の身元調査を依頼されます。夫の兄から遺影は別人だと聞いたからです。ある男の正体を追ううち、驚くべき真実が…。ある男Xが別人になった理由とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ある男 |
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日本公開日 | 2022/11/18 [予告] 上映時間:121分 |
監督・キャスト | 石川慶[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 松竹/松竹撮影所 |
日本興行収入 | 5.0億円(興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | 76(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 里枝(安藤サクラ)亡き夫の大祐が別人だと聞かされ、弁護士に調査を依頼
- 城戸章良(妻夫木聡)弁護士。里枝から身元調査を依頼される
- 小見浦憲男(柄本明)戸籍交換などの詐欺師。収監中
- 谷口大祐/ある男X(窪田正孝)里枝の夫だったが、大祐の兄から別人と聞かされる
- 谷口恭一(眞島秀和)本物の谷口大祐の兄。伊香保温泉の老舗旅館の後継ぎ
- 城戸香織(真木よう子)城戸弁護士の妻。資産家の娘
- 小菅(でんでん)Xのボクサー時代の師
- 後藤美涼(清野菜名)本物の谷口大祐の元恋人
- 茜(河合優実)Xのボクサー時代のバイト仲間
- 本物の谷口大祐(仲野太賀 )伊香保温泉の老舗旅館の次男。兄の写真で顔が判明
ネタバレ感想『ある男』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は小説?映画祭に出品?監督とキャスト
映画『ある男』の原作は、平野啓一郎による同名のベストセラー小説(2018年刊行)です。第70回読売文学賞を受賞。映画は第79回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門に正式出品。
石川慶 監督は、長編映画では『愚行録』『蜜蜂と遠雷』『Arc アーク』でも監督。
主演の妻夫木聡は、石川慶監督の『愚行録』や『怒り』『来る』『浅田家!』等の多数に出演。安藤サクラは『0.5ミリ』『百円の恋』『万引き家族』等に出演。
窪田正孝は最近『東京喰種トーキョーグール【S】』『初恋』等に、清野菜名は『今日から俺は!!劇場版』『キングダム2 遥かなる大地へ』『耳をすませば』等に出演。
他、眞島秀和、小籔千豊、真木よう子、柄本明、仲野太賀、でんでん、山口美也子、河合優実など豪華キャストが出演。
亡き夫を調査するきっかけとは?妻の過去は?
宮崎県の里枝(安藤サクラ)が営む文具店に、ある男が画材道具を買いに来るようになります。男は伊香保温泉の老舗旅館の次男で谷口大祐(窪田正孝)と名乗り、なぜかこの町で木を切り倒す林業に見習いとしてつとめ始めます。
ある日、男は里枝に自分が描いた絵を見せ、友達になりたいと申し出て、それがきっかけで結婚。里枝は前夫との間に2人の子がいましたが、1人は幼くして苦しい闘病の末に亡くなり、そこから離婚してます。
里枝と大祐には娘が生まれ、4人家族で仲良く暮らしてたが、大祐は仕事中に木の下敷きになり死亡。疎遠だった大祐の実家へ墓の件で連絡すると兄が訪れ、遺影を見て「大祐とは別人だ」と発言。里枝は弁護士に身元調査を依頼。
以上が序盤のあらすじです。愛する子の闘病後の死、離婚、父の死という強い喪失感を抱える里枝と、何かワケありな大祐との出会いから幸せな家庭を築くまでの様子が、スムーズに描かれてる序盤は脚本の巧妙さを感じました。
ただ、素性を隠したい大祐が「伊香保温泉の老舗旅館の次男」という情報を話した理由は理解できません。結婚相手にも作り話しか語らないと思います。似たような傑作小説「火車」(宮部みゆき著)はその辺が特にうまかったです。
本物の谷口大祐の兄が、最初から最後までデリカシーなくイヤな雰囲気を出していて、演じた眞島秀和がハマってました。
里枝と弁護士の関係は?本物が行方不明の経緯は?
里枝が依頼した弁護士は、かつて離婚調停時にお世話になった城戸章良(妻夫木聡)です。DNA鑑定の結果、やはり大祐は本人ではなく「Xさん」と名付けられます。名が不明で墓も立てられず、息子も4度目の改姓で「誰になればいい?」と。
本物の谷口大祐は、伊香保温泉の旅館の後継ぎ争いの後、家を出て行方不明に。元恋人(清野菜名)は心配し、Facebookで「谷口大祐」名義アカウントを偽装作成して様子見。弁護士の城戸は「戸籍交換」の詐欺師・小見浦と面会へ。
小見浦(柄本明)は、城戸が在日韓国人だと見抜きます。その後、小見浦から「谷口大祐」「曽根崎義彦」と書かれたハガキが届くが、2人の関係性は見つけることができず。そんな時、城戸はXの絵に似てる、ある死刑囚の絵を発見。
以上が中盤のあらすじです。ここから妻夫木聡が演じる弁護士の城戸が登場し、ほぼ主役となります。彼も「三世の在日韓国人」という捨てたい過去を抱えてる点が、この「ある男」という物語をより重厚にしています。
また、本編では明確に語られませんが、城戸と里枝はいい関係になりかけたような雰囲気を感じます。里枝が城戸の結婚に過度に反応したり、城戸が里枝の指輪をチェックしたり、わざわざ飛行機で来て対応したりと。
亡き夫が別人の戸籍を使ってた場合、すぐに墓を作れなかったり、かけた生命保険は有効だったり、子どもが改姓しなきゃいけなかったり、と滅多に遭遇しないが興味深いトリビアも聞けました。著者(平野啓一郎)が調査したのでしょうか。
城戸がある死刑囚の絵を見つけたのは、かなりご都合主義にも思える偶然ですが、リアルでもこのような偶然はあるので許容範囲でしょうか。Xが似た絵を描いたのはさすがに遺伝とかではなく、どこかで父の絵を見たのでしょうね。
ある男Xの正体とは?本物の大祐の生死は?
その死刑囚は、ギャンブルの借金返済の金を盗むため、ある家族を惨殺し既に死刑が執行された後です。その顔は「X」そっくり。ある男「X」の正体は、母方に引き取られた死刑囚の息子「原誠(はら まこと)」だと判明。
原はボクシングジムに入り頭角を現したが、新人賞がかかった試合で「殺人者の息子である自分をなぐりたかっただけ」と告白し、自殺未遂もした後に行方不明に。詐欺師の小見浦を訪ねた城戸は「俺は小見浦っぽいか?」と言われ考えさせられます。
そんな時、「谷口大祐」の偽Facebookに「曽根崎」と名乗るアカウントから削除要請が。元恋人が会いに行くと「曽根崎義彦」は「本物の谷口大祐」(仲野太賀)でした。それを確認した城戸は、追求もせずその場を去ります。
以上が終盤のあらすじ。ついに、ある男Xの正体が判明。真相へのたどり着き方は偶然にたよりすぎて、フェアなミステリーとしては物足りなさを感じます。あと、ボクシングジムでのエピソードは長いわりに必要性を感じなかったです。
それより、戸籍交換の詐欺師でレクター博士のような小見浦との会話をもう少し描いてほしかったです。柄本明の演技はさすがに迫真。妻夫木聡の弁護士役を「柄本佑」が演じてたら、現実での妻「安藤サクラ」に恋し、実の父「柄本明」にあおられる変な展開で面白かったかも(笑)
Facebookの偽アカウントに、実名(戸籍交換後の)でメッセージを送るのはさすがに不用心すぎてツッコミどころ。あと清野菜名や仲野太賀の年齢では、Facebookを使わないのでは?。2人はまたヨリを戻しそうな雰囲気ですね。
城戸が、本物の谷口大祐を追及しなかったのは、城戸自身の「過去を捨てたい気持ち」が大きくなってきてて、戸籍交換した谷口の気持ちがわかったからだと思います。ラストでの城戸の決断への伏線のようになっています。
結末と真相は?衝撃のラストとは?
城戸は、調査報告書を里枝に渡します。「殺人者の息子という過去を捨てたい」原誠は「曽根崎義彦」と戸籍交換し、さらに元の素性から遠ざかるために「老舗旅館の次男という過去を捨てたい」谷口大祐と交換。
城戸は「原がこの地で里枝さん達の家族と幸せに暮らしたのは事実」と。里枝は、夫が犯罪者でなくホッとして息子の悠人にも話します。結果的に死刑囚の孫である、里枝と原の娘の花には、兄である悠人が「いつか僕が話す」と。
一方、調査を終えた城戸は妻(真木よう子)との関係を改善しようとするが、妻の浮気が判明。しばらく後、伊香保温泉旅館の次男を名乗る「ある男」が子持ち(里枝の息子と娘と同年齢)だと語ります。ある男の正体は城戸です。
以上がラストまでのあらすじです。Xは「曽根崎義彦」「谷口大祐」と2回も戸籍交換して過去から遠ざかろうとしてました。これが法的にどのくらいの罪なのかは不明ですが、戸籍交換に殺人などが発生してなくてよかったです。
「里枝さん家族と過ごした3年9ヶ月は事実」という言葉はまさにそのとおりで、原誠への供養にもなったと感じます。木が倒れてきた時、一見自殺にも思えるシーンでしたが、あれだけ幸せな生活を捨てるとは考えられませんね。
結果的に「死刑囚の孫」となる娘・花には、悠人がうまく説明してくれそう。事件になってないためマスコミに嗅ぎつけられずよかったです。調査した城戸自身が、戸籍交換した可能性もあるので公にはならないでしょう。
三世の在日韓国人や、玉の輿の居心地の悪さ、妻の浮気など、捨てたい過去が積み重なった城戸が、調査の過程で知った戸籍交換を自分にも適用したとしたら皮肉。ただ、里枝と結婚したとは考えにくいので妄想の可能性も高そう。
映画『ある男』私の感想と評価
愛した人が戸籍とは別人で…という物語はよくあるが、複数の親ガチャ(親を選べない事)をからめた社会問題を描き「名前とは?」というアイデンティティに迫る本作は独自性を出せてます。演技派役者達の競演にもひきこまれました。
一方、戸籍交換をあつかった作品としてはストーリーや結末に意外性が感じられず、観る前の予想を超えてこないのでやや物足りなかったです。だから、ラストの「妻夫木聡も戸籍交換?」の蛇足は、あってよかったと思います。
主要キャラを演じた妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝は言うまでもなく好演ですが、詐欺師役の柄本明、大祐の兄役の眞島秀和、城戸の妻役の真木よう子も不快に感じさせる役を見事に演じてて、里枝とXの清らかさを引き立ててます。
個人的にはもう少し深く濃い物語を期待してたのですが、平均評価は軽く超えてる良作なのでぜひ多くの人に観てほしい作品です。豪華キャストの共演と、親ガチャ社会派のテーマだけでも充分に見ごたえありますよ!
私の評価 66/100(60が平均)
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