『ベイビー・ブローカー』感想ネタバレ解説考察/結末は?母の選択は?赤ちゃんの行方は?
赤ちゃんポストの赤ん坊を売る「ベイビーブローカー」サンヒョンとドンスは、捨てた若い母親ソヨンと養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを刑事2人が尾行するのだが…。父親の正体は?最後は逮捕される?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ベイビー・ブローカー |
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日本公開日 | 2022/6/24 [予告] 上映時間:130分 |
製作国 | 韓国 |
原題/英題 | Broker |
監督・キャスト | 是枝裕和[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | ギャガ/ZIP CINEMA、分福 |
日本興行収入 | 8.4億円(興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 0.1億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | 72(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 是枝裕和 監督映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- ハ・サンヒョン(ソン・ガンホ)古いクリーニング店主。借金あり。自称善意のベイビーブローカー
- ユン・ドンス(カン・ドンウォン)児童養護施設出身。サンヒョンのパートナーのベイビーブローカー
- ムン・ソヨン(イ・ジウン)ベイビーボックスに赤ちゃんを置いた母親。予期せぶ祖父母を探す旅へ
- ヘジン(イム・スンス)ある児童養護施設の男の子
- アン・スジン(ペ・ドゥナ)ベイビーブローカーを追う刑事
- イ刑事(イ・ジュヨン)スジン刑事の後輩
ネタバレ感想『ベイビー・ブローカー』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は?韓国映画?カンヌ受賞?監督とキャスト
映画『ベイビー・ブローカー』は、日本人の是枝裕和監督が、韓国人スターソン・ガンホとタッグを組んだオリジナル脚本の韓国語映画です。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されました。
監督の是枝裕和は『万引き家族』でカンヌ最高賞パルムドールやアカデミー外国語映画賞ノミネート。『誰も知らない』『海街diary』『三度目の殺人』『そして父になる』も国際的に評価されてます。
主演ソン・ガンホは、本作『ベイビー・ブローカー』でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。韓国人俳優では初です。アカデミー作品賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』でも主演を務めました。
女優ペ・ドゥナは、日本映画『リンダ リンダ リンダ』や、是枝裕和監督作『空気人形』等に、カン・ドンウォンは『新感染 ファイナルエクスプレス』等に出演。イ・ジウンは「国民の妹」と呼ばれる韓国の歌姫「IU」です。
ベイビーブローカーとは?裏稼業の理由は?
若い女性がベイビーボックス(赤ちゃんポスト)前に赤ちゃんを置き去ります。それを見張ってた刑事が、赤ちゃんをポストに入れてやります。施設当直のドンスは監視カメラから赤ん坊を消し、サンヒョンが赤ん坊を持ち去ります。
古いクリーニング店主のサンヒョン(ソン・ガンホ)は、離婚して娘ともたまにしか会えません。借金の返済のため、赤ちゃんを売るベイビーブローカーを繰り返してます。施設のドンス(カン・ドンウォン)も共犯者。
上層からの命令でベイビーブローカーの闇組織?を追うスジン(ペ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、サンヒョンの現行犯逮捕をねらい張込み。翌日、捨てた赤ちゃんをソヨン(イ・ジウン)が迎えに来ます。
サンヒョン、ドンスは、ソヨンが警察に連絡する前に事情を話し、3人で一緒に赤ちゃんを売ってお金をわけることに。しかし1人目の買い手が「眉が薄い・値引きしろ・父の職業は?」と聞くとソヨンが切れて交渉は不成立に。
以上が導入部と序盤のあらすじです。韓国の赤ちゃんポスト事情(その後のケア等)や、サンヒョンがベイビーブローカーをする理由などが説明セリフ少なめで理解できる見事な導入部です。
サンヒョン、ドンスは、ソヨンが警察に電話することを恐れてましたが、後の展開を知ると、この時点でソヨンが警察に連絡することはなかったのではないでしょうか。「自首」の可能性は考えられますが。
ドンスの過去は?5人目の疑似家族は誰?
ドンスは、とある児童施設では人気者。ドンスは「必ず迎えに行くから」の書き置きを残したソヨンを「書き置きがあると養子をこばみ新しい人生に踏み出せない」「本当に戻って来るのは40人に1人」と批判します。
サンヒョンによると、ドンスはこの施設で母親の「必ず戻る」を信じて裏切られた側の子どもだったようです。母親が戻ってくることを信じて、養子になるのを拒み続けたのでしょうか。
その児童養護施設から男の子ヘジンが3人の車にしのびこんでて、赤ちゃん売買の件も知られてしまい同行することに。サンヒョン、ドンス、ソヨン、ヘジン、赤ちゃんの疑似家族は『万引き家族』と似てますね。
ポスター等では登場してませんが、この男の子ヘジンは5人の疑似家族のいい意味でのムードメーカーになります。ソヨンが1人1人に「生まれてきてくれて、ありがとう」と言う涙シーンも、ヘジンがいないと実現しなかったでしょう。
5人の疑似家族は最初はぎこちなかったけど、ヘジンが洗車中に窓を開けて皆が水びたしになったのをきっかけに、本物の家族のように笑える関係性になります。
母親が赤ちゃん捨てた理由は?父親の正体は?
突然、誰かの葬式?でスマホを遺体の指紋認証で開ける描写に変わります。どうやら暴力団(ヤクザ)の組長が何者かに殺害されたようです。序盤でクリーニング店へ血まみれのシャツを持ってきたテホが属する組のようです。
スジン刑事は電話で、ソヨンが組長殺害の容疑者だと聞きます。ソヨンの父親の正体は、暴力団組長だったようです。そして赤ちゃんを産んだことを責められたソヨンは捨てる決断をしたのです。
しかしソヨンは、捨てた赤ちゃんを心配して迎えに戻りました。ソヨンが組長を殺害したのは、赤ちゃんをボックス前に置いた「後」と思いますが「前」の可能性もあるのでしょうか。映画内の描写だけでは判断できなかったです。
ただいずれにしても、ソヨンは初めて?殺人を犯したにしては、ポストに置く前後とも冷静すぎ。そして赤ん坊を捨てたことを後悔したのに、お金のため?に養父母を探そうとする心理もうまく描けてなかったと思います。
刑事がベイビーブローカー?
組長殺人事件が判明する前、スジン刑事は「ニセの養父母希望者」を仕込み、サンヒョン、ドンスが赤ちゃんを売る現場をおさえて現行犯逮捕しようと計画。しかしドンスが「不妊治療のウソ」に気づき、取引は不成立に。
次に刑事は、殺人容疑者ソヨンをおどして盗聴器やGPSを仕込み、ベイビーブローカーとの会話も盗聴。そしてかなり条件のいい3件目の赤ちゃん購入希望者との取引現場をおさえようと計画。あくまで事前に止めようとはしません。
この時、すでにソヨンは赤ちゃんを売る気はなくなってるのですが、ベイビーブローカーの現行犯逮捕にこだわる刑事たちに従います。
イ刑事も「スジン刑事は、赤ちゃんを売りたいの?」と指摘したように、立場が逆転して誰がベイビーブローカーなのか矛盾した構造に。まさに「ミイラ取りがミイラになった」状態です。
このような構造の反転は、是枝裕和監督の映画ではよくあり、複数の視点や立場から悪事をながめると「犯罪者だけが悪いわけではない」ということに効果的に気づかされます。
しかし今回は立場の違いによる問題意識の違いを描いたわけではなく、刑事が「ベイビーブローカーを現行犯逮捕したいだけ」なので社会性は薄く、あまりうまくないと感じました。
最後は逮捕?母の選択は?赤ちゃんポストの目指す道?
スジン刑事はやっと目がさめ、赤ちゃんの母ソヨンに「自首」をすすめます。殺人を犯したのに3年で出所できるのは、被害者が「反社」だから?正当防衛やおどされてた等、何か情状酌量の余地があるのでしょうか?
3年後、ソヨンは模範囚として刑期を早めて出所。赤ちゃんはソヨンのお願いで、スジン刑事の夫婦が育ててます。この夫婦の「家族」性はもっと見たかったかも。将来は、逮捕された夫婦の養子になる可能性もあるとのこと。ヘジンはドンスと暮らしてる?
サンヒョンは、ソヨンを守るために組員テホを殺害した可能性が高く、逃亡したまま行方不明です。
結局、産んだ人、捨てた人、売る人、買う人、見守った人、育てた人、のみんなが「お金」のやりとりなしでも同じ結論に達しそうな点には驚き。この流れこそ「本当の赤ちゃんポストの目指すべき道」なのかも。
映画『ベイビー・ブローカー』私の感想と評価
赤ちゃんポストでつながっていく「韓国版 疑似家族」も「日本版 万引家族」と同様に、血縁家族よりも楽しそう。ソン・ガンホは言うまでもなく子役も含めて俳優女優の演技が素晴らしいのも『万引き家族』と同じ。
ただし、スター性充分な役者を集めたのに見せ場が少ないのはやや物足りないです。また、メッセージ性も『万引家族』の方が上に感じるし、ベイビーブローカーを追う刑事2人やヤクザの下っ端の役割も不足で残念。
ラストの結末へいたる過程も、大きな伏線回収や因果などは感じられなかったが、赤ちゃんでつながった疑似家族の将来としては救いを感じたので好みです。是枝監督作としては平均的だけど、キャストの魅力だけでも観る価値ありです!
私の評価 64/100(60が平均)
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