実写映画『ムーラン』評価は?ネタバレ感想考察/魔女の狙いと倒し方は?アクション熱い?
中国の帝国領に北方民族が侵入したため、家族から1人ずつ男が徴兵。息子のないファ家からは「気」を操れ武術にたけたムーランが、男装して訓練場へ。やがて魔女シェンニャンと出会い…。魔女とムーランの関係は?ポリコレ感は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ムーラン |
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日本公開日 | 2020/9/4 [予告] 上映時間:115分 |
製作国 | アメリカ |
原題/英題 | Mulan |
監督・キャスト | ニキ・カーロ[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:PG-13 |
配給/製作 (画像出典) | ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ/ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、Jason T. Reed Productions、Good Fear Content、China Film Group |
日本興行収入 | |
世界興行収入 | 0.6億USドル [出典] |
製作費 | 2.0億USドル |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 61(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ディズニー実写映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- ムーラン(リウ・イーフェイ。明日海りお)ヒロイン。ファ家の長女。武術の達人で「気」も操れる
- シェンニャン(コン・リー。小池栄子)強い「気」を持つ魔女。ハヤブサ等に変身可能。ボーリー・カーンに手を貸す
- タン司令官(ドニー・イェン。井上和彦)帝国軍を育てる厳しい教官。ムーランの父とは戦友
- ボーリー・カーン(ジェイソン・スコット・リー。咲野俊介)北方の柔然族(ローラン軍)首領。父と領地を帝国に奪われた。皇帝殺害をもくろむ
- ホンフイ(ヨソン・アン。細谷佳正)ムーランと気の合う同部隊の新兵。武術にもたけている
- 皇帝(ジェット・リー。広瀬彰勇)人徳で国を治め、国民からしたわれている
ネタバレ感想『ムーラン』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
ディズニーアニメの実写化?監督とキャスト
ディズニーアニメ映画の『ムーラン』(1998年)の、実写リメイク版です。ストーリーやキャラは現代風にアレンジされ、オリジナル部分も多いです。ミュージカル要素もなくなりました。
監督のニキ・カーロは、ニュージーランド出身です。彼女の作品は観たことないのですが、監督作『スタンドアップ』(2005)はアカデミー賞の主演女優賞(シャーリーズ・セロン)と助演女優賞にノミネートされてます。
主演のリウ・イーフェイ(劉亦菲)は、中国を中心に活躍する米国籍の中国人女優です。中国のTVドラマで注目された後、ジャッキー・チェン主演『ドラゴン・キングダム』やハリウッド映画『ザ・レジェンド』等にも出演しました。
タン司令官役のドニー・イェンは、上映中の『イップマン 完結』等でもおなじみの香港アクションのカンフースターです。最近は『ローグワン スターウォーズストーリー』『トリプルX 再起動』等のハリウッド映画でも活躍中です。
他にも、エクスペンダブルズ・シリーズのジェット・リー、魔女役コン・リー、男兵役ヨソン・アン、敵ボス役ジェイソン・スコット・リー等の俳優女優陣が華麗なアクションシーンを見せてくれそうで楽しみです!
本作は2020年4月のGW(ゴールデンウィーク)映画として発表されましたが、新型コロナ禍の外出自粛規制等で、何度も公開日を延期し、最終的には9月4日(金)からDisney+ (ディズニープラス)での配信(要別料金)のみとなり劇場公開はなくなりました。
主役のリウ・イーフェイが「香港の民主化デモを鎮圧した警察に支持するコメントを発表」したことも物議を呼び、映画ボイコット運動や動画配信の不買運動も起こりました。
「気」と「性」を捨てた理由は?
冒頭で幼いムーランが屋根のニワトリを追い回すシーンは、アクション映画の始まりとして楽しくてワクワクさせてくれます。しかし近所の人達からは冷たい目で見られます。両親も「ムーランは魔女と呼ばれ、結婚できない」と心配します。
ムーランが「気」を封印した理由は、父から「戦士のための『気』は女には不要。女の役割は結婚して家に名誉をもたらすこと」と説得されたからです。古代中国が舞台なので、女性が「気」を使えると「魔女」として差別されたのです。
その後ムーランは「気」を隠して成長。そんなある日、皇帝軍が来て「各世帯から男を1人ずつ徴兵する」と命令。息子のいないファ・ズーは歩くのも困難なケガをしましたが、皇帝には逆らえないため命令を受けて剣を研ぎます。
ファ・ズーの長女ムーランは、父が従軍すると帰ってこないと思い、家族が寝てる間に家宝の「忠勇真の剣」を持って軍へと向かいます。ファ家の守護神である不死鳥(フェニックス)が導きます。ムーランは小柄な男子として採用されます。
ムーランが「女性を捨てた」理由は、その時代の戦士は男だけで、女だとバレると処刑されるからです。父が追わなかった理由も、ムーランが女性だとバレると死罪になるからです。「気」も「性」も差別対象だから捨てたのです。
ムーランが謎の行動?魔女も軍も変?
仲間のホンフイやタン司令官(ドニー・イェン)に「気」を操れることはバレたけど、ムーランが女性であることは隠し通せました。そもそも「気」は男なら隠す必要ないけど、あまり目立ちたくないから使わなかったんでしょう。
やがて訓練兵も実践にむかい、いきなりボーリー・カーンのローラン軍と戦場で戦うことになります。前の晩「仲間は私が守る」と宣言したムーランですが、戦場では自分だけよけて仲間は次々と倒されます。と思いきや別の部隊の人達?
1人残ったムーランは自軍に戻らず、戦場を離れるボーリー・カーン軍を追ううちに霧で見失います。現れた魔女に「嘘は力を弱くする」と手裏剣で倒されます。男装のファ・ジュンは死んだが、胸当てで助かったムーランは剣の「真実」を見て女性姿で自軍へ戻ります。
その後、魔女がカラスの大群となって襲うと、帝国軍は盾で囲い合う防御隊形となります。カラス相手にそこまでの防御は不要と感じるので軍の謎行動です。案の定、防御隊形に火球が撃ちこまれて総くずれ。
この時の魔女の行動はローラン軍のサポートですが、カラスや鳥の姿で軍に立ち向かうのはリスクが大きすぎて謎行動。そしてムーラン最大の謎行動は、火球を逆に飛ばして雪崩を起こし、敵軍だけでなく自軍も巻きこんだことです。
魔女はムーランの未来の姿?ポリコレ感は?
単独行動のムーランは魔女に襲われるが、命までは奪われませんでした。ムーランが女性と白状して帝国軍を追放された後も、山で魔女に襲われます。魔女は「ムーランの将来の姿」と自分を重ねて考え「共に帝国を滅ぼそう」と誘います。
魔女がムーランを殺さなかった理由は、自分と同じように仮面(男装)をかぶった女性に共通項を感じたからです。2度も同じように対面させるのはクドイ演出だけど、1度目で「ありのまま」に戻し、2度目で仲間にしようとしたのでしょう。
魔女も幼い頃から「気」の使い手で家族や村を救ったが「女性が戦うのは異端」な時代だったので、村や国から命をねらわれました。逃亡を続けるうちに復讐心が芽生え、帝国を滅ぼそうとするボーリー・カーンに従うことになったのです。
魔女は「高貴の道も考えた」と語るとおり、ある時点まではムーランと似た葛藤を繰り返したのでしょう。魔女とムーランの将来を決定づけた違いは「信頼できる家族や仲間への愛情」です。ディズニーの十八番「真実の愛」です。
ムーランは、魔女の誘いを断ります。しかし魔女のおかげで「真実のありのままの姿で、差別対象である『気』と『女性』もさらけだして」戦う道を選ぶことができます。現代風に言うと、魔女は女性解放運動の先駆者だったのです!
この部分は本作『ムーラン』のテーマでもあります。ややポリコレ(性・人種等の差別を防ぐ目的で公正・中立に表現すること)も感じますが、アジア人の女性戦士が主人公の時点で自明なので、強引なポリコレ描写とは思いません。
奇策に気づけた理由は?魔女の最期のわけは?
ムーランは再度、帝国軍のタン司令官たちの所へ戻り「皇帝を奇襲するボーリー・カーンらを阻止するため、精鋭部隊で駆けつける作戦」を提言します。司令官はムーランを斬ろうとするが、ホンフイら仲間たちの信頼ぶりを見て聞き入れます。
ムーランが敵の奇策を知れたのは、魔女が「ボーリー・カーンは戦場を逃げたのではない。もうすぐ皇帝を殺害する」と語ったからです。魔女は「ボーリーの奴隷」に成り下がってる事に不満だったので、ムーランを試したくなったのでしょう。
ムーランは隊長として仲間を率いてタン司令官らと共に、皇帝の宮殿へ馬を飛ばします。敵を足止めした仲間を閉じこめて先を急いだムーランは、魔女に導かれてボーリー・カーンと皇帝のもとへたどり着けます。
魔女は側近に化けて皇帝を誘い出したのに、その場所をムーランに教えるという矛盾した行動をとり、最後はムーランを救うために犠牲となります。魔女は「受け入れられる居場所を見つけたムーラン」を過去の自分の理想像と考え、命を捧げたのでしょう。
王や皇帝をねらうため、精鋭軍隊を辺境へ向かわせて中央を手薄にする作戦は聞きあきました。漫画『キングダム』以上のダイナミックな解決方法(ここではネタバレしませんが)なら歓迎ですが、普通に馬を飛ばすだけでは物足りません。
男女平等テーマを描ききれているか?
ムーランとボーリー・カーンとの戦いは、ここまでのアクションに比べると平凡です。ムーランの父の「忠勇真」剣が溶けたのは、家父長制度の崩壊を暗示してるようですが、結局、将校を辞退して家父長に謝罪するため帰ったのは中途半端です。
ボーリー・カーンの放った矢を皇帝が片手でつかんだシーンの意味は不明ですが、カンフースターのジェット・リーの見せ場を作ったのでしょうか。皇帝が捕まる前の、赤い布を使った攻撃も印象的でした。
皇帝が矢を投げて、ムーランが回転蹴りでボーリー・カーンにとどめを刺したのは、皇帝が「女戦士を認めた」証拠なのでしょう。しかしそれまでに、皇帝が女性を軽視したり、または擁護する場面すらなかったので薄っぺらい主張と感じます。
さらに皇帝は謁見の場で「女性として初の将校」の地位をムーランに与えますが、何か物足りません。ハリウッドの女性差別に対抗する「MeToo運動」に、急に賛同しはじめた男性と同じような違和感を感じます。
気がありそうなホンフイと恋に発展しなかったのは、最近のディズニープリンセスが結婚を幸せのゴールにしない流れと同様です。ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)配慮は感じるけど、多様性をアピールするディズニーらしいです。
実写版映画『ムーラン』私の評価と続編
日本を含めて多くの国でDisney+ (ディズニープラス)の動画配信のみとなったのは、映画館・観客だけでなく広告宣伝してきたディズニーにとっても不幸でした。しかし1人では別途料金2,980円+税の価値はないと感じます。
ただし個人的には実写版の『アラジン』『美女と野獣(2017)』も普通評価なので、それらと比べると本作『ムーラン』はアクションと先進性の面で優れてると思うし好みな方です。そもそもディズニーアニメの実写版は挑戦も少ないためこの水準。
ドニー・イェン、ジェット・リーが出演するのでカンフーアクションも期待したけど、物足りなくて無駄使いと感じました。魔女の魔術や壁歩きアクションは、実写だとよけいに世界観から浮いてて微妙。
アニメ版よりよかった点は、ムーランがかわいいこと。コメディキャラがいなくなったのは子どもウケは悪いだろうけど、世界観にはあってると思います。ラストでタン司令官が「忠義・勇気・真実・孝行」剣を授けた後、ムーランは将校の申し出を受けたと信じてます。
アニメ版には続編があるし、内容的にも続けられそうですが、劇場公開できなくて収入も予想より大幅に減少するだろうから続編の可能性は低そうですね。不買運動があるとはいえレビューも低評価なので、望む人は少ないのかな。私は『キングダム』の方が好き!
私の評価 63/100(60が平均)
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