映画『コンフィデンスマンJPプリンセス編』ネタバレ感想考察/隠し子の正体は?結末の相続人は誰?
大富豪フウ家の当主が他界後、10兆円の遺産をめぐり3姉弟が火花を散らすが、相続人は隠し子ミシェルに。世界中の詐欺師がミシェルを名乗ってランカウイ島に集結。ダー子らも仕かけるが…。(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | コンフィデンスマンJP プリンセス編 |
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日本公開日 | 2020/7/23 [予告] 上映時間:124分 |
監督・キャスト | 田中亮[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/FILM |
日本興行収入 | 38.4億円 (年間5位) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 78(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | TVドラマ映画化一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- コックリ(関水渚)身よりのない内気な少女。ダー子の新たな子猫ちゃん
- ダー子(長澤まさみ)美しきコンフィデンスウーマン。天才的な頭脳と集中力の持ち主
- 五十嵐(小手伸也)腕利きのコンフィデンスマン。ダー子に心酔。ラストになんと…
- トニー・ティン(柴田恭兵)フウ家に仕える執事
- ブリジット・フウ(ビビアン・スー)フウ家のわがまま長女。ナイスバディ美女
- ボクちゃん(東出昌大)まじめで小心者の若きコンフィデンスマン(信用詐欺師)。ダー子の幼なじみ
- リチャード(小日向文世)百戦錬磨のコンフィデンスマン。変装の達人。ダー子の幼少期からの知り合い
- モナコ(織田梨沙)あるきっかけでダー子の弟子となった子猫ちゃん
- クリストファー・フウ(古川雄大)フウ家の冷酷無比な長男
- アンドリュー・フウ(白濱亜嵐)フウ家の自由奔放な次男
- レイモンド・フウ(北大路欣也)フウ家の当主で世界有数の大富豪
- スタア(竹内結子)ダー子が敬愛する美しき凄腕の詐欺師
- ジェシー(三浦春馬)天才的な恋愛詐欺師。ダー子と昔恋人だった?
- 赤星栄介(江口洋介)あかぼし財団会長。日本のゴッドファーザー。以前ダー子らに50億円をだまし取られた
- 韮山波子(広末涼子)女性詐欺師でハニートラッパー
- ユージーン(濱田岳)謎の画家
- 鈴木さん(前田敦子)ダー子の仲間(子猫ちゃん)の1人
- 元某国大統領夫人(デヴィ・スカルノ)パーティーの出席者の1人。キーパーソン?
- ホテルの支配人(滝藤賢一)フウ家の遺産争いに巻きこまれる?
- ヤマンバ(濱田マリ)悪徳詐欺師。コックリを育てた?
ネタバレ感想『コンフィデンスマンJP プリンセス編』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
TVドラマ続編・監督とキャスト
本作は、2018年にフジテレビ「月9」で放送されたテレビドラマと劇場版『コンフィデンスマンJPロマンス編』の続編です。TVから継続して監督を務めた田中亮は、ロマンス編が映画デビュー作で今回も続投です。
主演の長澤まさみは、TVと映画の両方で人気の女優です。同年『MOTHER マザー』も公開中です。前作ロマンス編では報知映画賞、ブルーリボン賞で主演女優賞を受賞しました。
ダー子と共に詐欺師を演じる東出昌大、小日向文世、前田敦子の他、前作から竹内結子、織田梨沙、三浦春馬、江口洋介が詐欺師として続投です。三浦春馬さんは公開前に亡くなったのがつらすぎます。
広末涼子、生瀬勝久などはTVドラマスペシャル『運勢編』からです。本作では新たに柴田恭兵、関水渚、ビビアン・スー、古川雄大、白濱亜嵐、北大路欣也、デヴィ・スカルノ、濱田マリ、濱田岳なども加わり豪華キャストで「だましだまされ」ます!
続編は『コンフィデンスマンJP 英雄編』。
ドラマや前作の視聴は必須か?前作との評価は?
結論からいうと本作『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(2020年)は、テレビドラマ版も前作ロマンス編の視聴も必須ではありません。ダー子らが信用詐欺師(コンフィデンスマン)であることだけ知ってれば充分です。
ただし時間あるなら前作『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年)だけ観とくと、人物の相関関係がわかりやすくなります。またプリンセス編は、ロマンス編最大の面白さをネタバレするので先に視聴がオススメです!
本作と前作は両方ともアジアの大富豪を「おサカナちゃん(獲物)」にするし展開も似た所はありますが、ラストの結末は180度違います。好みによって「プリンセス編派」「ロマンス編派」に分かれそう。
個人的には、詐欺に詐欺を重ねる多重構造、大仕掛けの信用詐欺、だまされてた者(おサカナちゃん)が最後まで予測できなかった点などで、前作『コンフィデンスマンJP ロマンス編』の方を一流のコンゲーム(騙し合い)として評価したいです。しかしプリンセス編もじわじわ良さを感じてます。
シンガポールの大富豪フウ家とは?
今回のおサカナちゃんの大富豪フウ家とは、シンガポール建国にも貢献した世界有数のクレイジーリッチです。やり手だった当主レイモンド・フウが亡くなる時、執事トニー(柴田恭兵)が看取って相続人が書かれた遺書を預かります。
レイモンドには、長女ブリジット(ビビアン・スー)、長男クリストファー(古川雄大)、次男アンドリュー(白濱亜嵐)の3姉弟がいます。しかしトニーが読み上げた遺書には「新当主及び相続人は隠し子のミシェル・フウ」と記されてました。
前作の香港の女帝ラン・リウもかなりの大富豪でしたが、今回のフウ家の方が資産総額は大きそうです。クレイジーリッチとは「大富豪の中の大富豪」のことで、同名映画の富豪描写のぶっ飛びぐあいも話題になりました。続編も製作中です。
ちなみに冒頭で、ダー子とスタアが「花粉症を治す薬」での詐欺で失敗し、責任をなすりつけあって仲間割れします。その時に入ったバーかパブかカフェが「クレイジーリッチ(Crazy Rich)」という店名だったのは、1つのトリビアです。
偽のミシェル・フウを信用させる計画とは?
レイモンド・フウが遺産相続人を「隠し子のミシェル・フウ」と発表後、世界中から多くの詐欺師たちが名乗り出ました。しかしレイモンドのDNAは冷凍保存されてて、DNA鑑定を通過する者はなく、やがてリスクをおかしてまで名乗る者はいなくなります。
ダー子(長澤まさみ)は、自分がセーラー服を着て17歳の女子高生として名乗り出るのはあきらめ、コックリ(関水渚)という内気な少女をミシェルに仕立てることにします。コックリは、詐欺師の娘だったが独り身になってました。
その後、ヤマンバ(濱田マリ)という悪徳詐欺師のもとで学校にも行かせてもらえずに詐欺師として働かされてます。しかしドジで手際が悪く、叱られてばかりの所を、ダー子が引き取りました。同時期公開『MOTHER マザー』と真逆の展開です。
ダー子はかつてレイモンド・フウと愛しあい、2人の娘ミシェルを産んだ母親ミサコを演じます。ダー子らはコックリをミシェルに見せるため、下のような仕掛けを施します。
- ミサコとレイモンド・フウの写真
- レイモンドが腰痛持ちだった情報
- ミサコらが住んでた家(前田敦子)
- ミサコが働いてたマッサージ屋
- ブリジットを眠らせてDNA採取(東出昌大)
ダー子が失敗?当初の計画と新たな目的とは?
フウ家の資産は、不動産や有価証券(株式など)が主なため、ダー子らでさえも換金するのは難しいです。だからダー子の当初の計画は「隠し子への手切れ金」がねらいでした。三姉弟が「汚れた血の娘」に相続を許すはずないからです。
しかし遺産相続の管理について全権委任されてる執事トニーは、三姉弟の思惑とは逆に「ミシェル様を当主にする」方向で動きます。三姉弟の意見が重視されると考えてたダー子は、この時点から「執事トニーの攻略」に切り替えます。
しかしその前に、日本大使館員に変装したリチャード(小日向文世)が滞在ビザの不手際という名目で連れ出して脱出を手伝います。しかし、コックリがマンゴー売りに衝突するドジをし、しかも拾ってあげてる間に屈強なSPに追いつかれます。
ダー子とコックリは、新当主とその母としての教育やテニスレッスンを受けます。逃げることもできなくなり、三姉弟に命もねらわれだしたダー子らは、ボクちゃん(東出昌大)をSPにして毒せんべいや人形爆弾などから命を守ります。
やがて執事トニーが厳重に保管してる「フウ家の玉璽(ぎょくじ)」を見つけ、それを就任パーティーですり替える計画をたてます。玉璽はブラックマーケットで高額の値がつくのです。
パーティー妨害者たちの正体は?
マレーシアの伝説の島「ランカウイ島」で、ミシェル(正体はコックリ)の新当主お披露目パーティーが開催されます。その場での就任あいさつを見事に果たしたコックリは、玉璽を落としてすり替えに失敗するが、ダー子が成功させます。
そして潜入してた五十嵐が銃で騒ぎを起こしてる間に、ダー子とコックリは玉璽ごと消える計画でしたが、その前に自爆テロ犯のようなおじさんが、ダイナマイトを自分に縛りつけて起爆装置を持って乱入。
おじさんの正体は、冒頭の台湾シーンでフウ家に土地を奪われた男性です。その後、家業の人形作りをあきらめ、妻も亡くしたようです。冷酷に事業をすすめたフウ家による犠牲者です。
そのおじさんは、コックリが町でぶつかったマンゴー売りで、その時に最後の人形を落としたことが犯行の引き金になったようです。しかし弱者に共感できるコックリが抱きしめてやり、拾った人形を返すとおじさんは犯行をやめて逮捕されます。
パーティーには前作『ロマンス編』で大損させられた赤星(江口洋介)も出席し、ナイフ投げの暗殺者を潜入させてます。赤星に弱みを握られて渋々協力した次男アンドリューは、ミシェルを気に入り暗殺中止を頼みます。
ミシェルは自爆テロおじさんをしずめた後、3姉弟とともに執事トニーと別室に入ります。その間に、ダー子、ボクちゃん、リチャードは赤星の暗殺者のナイフのえじきとなります。好敵手を亡くした赤星は、悲しみながらその場を去ります。
ダー子らがだました相手は誰?暗殺者の正体は?
ナイフでつらぬかれたと思ったダー子らの死体はありません。実はダー子らを襲ったナイフ使いの暗殺者の正体は、一番弟子のモナコ(織田梨沙)と、ラーメン屋の波子(広末涼子)です。本物はジェシー(三浦春馬)が捕縛しました。
ダー子らは防護スーツと血のりを下に着て、見事に赤星をだましました。もちろん赤星に奪われた玉璽(ぎょくじ)もニセモノで、前作同様に「(C)ダー子」の刻印があります。またしてもだまされた赤星は笑うしかありません。
執事トニーがクアラルンプールで会った女性シティも偽者でした。その正体は、スタア(竹内結子)です。ダー子は「手切れ金」をあきらめた後「玉璽」ともう1つのラストの可能性のためにスタアに協力を依頼したのです。
執事トニーが偽シティの発言と手紙によって得た情報「ミシェルはこの世に存在しないこと」「レイモンドは父として3姉弟を愛してたこと」こそが、本作で1番重要な詐欺です。フウ家に長居して姉弟と執事を観察したダー子ならではの大嘘です。
本作一番の詐欺師は誰なのか?
結局ダー子は直前で計画を変更し、玉璽を盗むのはやめました。ダー子が仕掛けた詐欺は「偽ミシェル(コックリ)を本物にすること」です。つまり偽者を本物にするために、ウソを繰り返したのです。まさに「嘘から出た真(まこと)」。
コンフィデンスマンによる信用詐欺としては前代未聞であり一度限りの大技であり、大きな詐欺をこなし続けたダー子らが行き着いた1つの到達点です。もはや詐欺として成立してません。
本作一番の詐欺師は、執事トニーです。ミシェルはこの世に存在しないと知りながらも、フウ家の将来のために、偽ミシェル(コックリ)を本物のプリンセスと認めたのですから。ちなみにミシェルが存在しない事は、ダー子による嘘です。
そして執事トニーに大嘘をつかせた張本人は、ミシェルを演じきったコックリです。コックリは詐欺師には全く向いてなかったけど、天性の高貴をまとうプリンセスでした。だからミシェル演技も演技ではなく「素の自分」です。
もう1人、執事トニーを詐欺師にした影の立役者がいます。もしミシェルが存在しないのなら、亡き当主レイモンド・フウ(北大路欣也)こそ本作一番の詐欺師です。3姉弟への愛の手紙はダー子の仕込みなので、レイの真意は不明ですが「フウ家の繁栄」でしょうか。
ちなみにミシェルの存在も本作だけでは不明で終わりますが、私は「存在しない」派です。その理由は、レイモンドが香港でダー子の台詞「いい跡継ぎがほしければ、高学歴者より優秀な詐欺師を集めればいい」を聞いてたラストシーンからです。
まとめると、執事トニーによる本作1番の詐欺は、レイモンドによる「存在しない後継者への相続」、ダー子とスタアによる「ミシェルは存在しない」と「父から3姉弟への愛」、コックリの「天性のプリンセス性」により成立した奇跡です。
エンドロール後の寸劇で涙?デヴィ夫人についても
ダー子の仲間のコンフィデンスマン五十嵐(小手伸也)は、前作ロマンス編では恋愛詐欺師になれなかったりと活躍の場が少なめでしたが、今回は「お笑い要因」として劇場の爆笑を独り占めにしていました。
五十嵐はパーティー会場での接客係でしたが、元某国大統領夫人(デヴィ・スカルノ)のブローチ探しを手伝わされ、赤星から隠れた時に夫人を押し倒してしまいます。ちなみにデヴィ夫人は、本物のインドネシア元大統領の第3夫人です。
五十嵐は、波子(広末涼子)が変装したナイフ使いに刺されるが、ダー子らのような防具はつけてなかったため死にそうになります。と思いきや、腰に入れてたデヴィ夫人のブローチに命を救われ、ラストは夫人といい関係になり笑いをとります。
エンドロール後、モナコが仕込んだ?海外公演をホウ・ナムシェン(生瀬勝久)に見せます。『蒲田行進曲』の銀ちゃん(長澤まさみ)がヤス(東出昌大)に「死ぬんじゃないよ!」というシーンが、不倫騒動の東出や、数日前に亡くなった三浦春馬に向けたようにも聞こえて涙なしには見れなかったです。
『コンフィデンスマンJPプリンセス編』私の評価と続編
前作『ロマンス編』は、複数の小さな詐欺を大仕掛け詐欺で包みこんだ多重構造で驚かせてくれ、コンゲーム(だましあい)映画として正当な名作になりえる作品でした。
それに対し本作『コンフィデンスマンJPプリンセス編』は、「嘘を本物にする」という変則の大技を見せてくれ、ある意味、詐欺師としては1つの到達点です。ロマンス編で上げたハードルや、だましあいインフレも見事にかわしています。
しかも詐欺を仕掛けられたフウ家の関係者は誰も損してないばかりか、皆「自分を取りもどせて幸福」になってる点でも脚本の素晴らしさを実感できます。「自分だけ幸せになってもいいのか」と悩むコックリに泣かされますが、その人間性こそが世界を幸せにするのだと気づいた執事トニーにも脱帽。
切れのよさと騙され感の強いロマンス編の方が好みですが、プリンセス編はコックリのプリンセス性を思い出すたびに、私の中でじわじわ評価を上げています。3作目『コンフィデンスマンJP 英雄編』も発表されたけどウソってことないですよね?
私の評価 72/100(60が平均)
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