映画『沈黙のパレード』感想ネタバレ解説考察/結末は?真犯人と真相は?沈黙の理由?
東野圭吾 原作小説映画化。数年前から行方不明の女子高生が遺体で発見され、容疑者は黙秘で釈放。湯川も関わるが、夏祭りパレードで新たな殺人が発生し関係者全員が沈黙…。沈黙のパレードの意味とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 沈黙のパレード |
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日本公開日 | 2022/9/16 [予告] 上映時間:130分 |
監督・キャスト | 西谷弘[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/ギークサイト |
日本興行収入 | 30.0億円 年間14位 |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 69(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 東野圭吾の映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 草薙俊平(北村一輝)警視庁捜査一課の刑事。湯川と同じ大学出身で親友
- 蓮沼寛一(村上淳)昔の少女殺害事件で完全黙秘で無罪。今回の事件でも容疑者に
- 湯川学(福山雅治)帝都大学の天才物理教授。論理的思考と科学で難事件を解決する
- 宮沢麻耶(吉田羊)菊野商店街の老舗本屋「宮沢書店」店主
- 増村栄治(酒向芳)女子学生殺害事件の容疑者である蓮沼寛一の元同僚
- 新倉留美(檀れい)新倉直紀の妻。かつて歌手として活動
- 新倉直紀(椎名桔平)菊野市に住む音楽プロデューサー。佐織の才能に期待
- 高垣智也(岡山天音)菊野市の印刷会社デザイン部に勤めてる。佐織の恋人
- 並木佐織(川床明日香)並木夫妻の長女。歌手になることを夢見る女子高生
- 内海薫(柴咲コウ)警視庁捜査一課の刑事。行きづまる事件は湯川に相談
- 戸島修作(田口浩正)並木祐太郎の幼馴染で親友。冷凍食品会社「トジマ屋フーズ」を営む
- 並木祐太郎(飯尾和樹)殺害された女子学生の父。菊野商店街の定食屋「なみきや」店主
- 並木真智子(戸田菜穂)並木祐太郎の妻。定食屋「なみきや」を切り盛り
- 並木夏美(出口夏希)並木夫妻の次女。明るく人懐っこい性格で「なみきや」の看板娘
ネタバレ感想『沈黙のパレード』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
東野圭吾ガリレオ映画3作目?監督とキャスト
映画『沈黙のパレード』の原作は、東野圭吾の推理小説『ガリレオ・シリーズ』第9弾で長編では4作目。劇場版ガリレオ・シリーズとしては3作目です。
監督の西谷弘は、主にフジテレビのテレビドラマに多く関わってる演出家ですが、ガリレオ映画『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』も監督しました。最近では『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』も監督・脚本。
主演の福山雅治は最近は『三度目の殺人』『ラストレター』等に出演。14年ぶりに内海役で出演の柴咲コウは最近は『燃えよ剣』『ホリック xxxHOLiC』等に出演。
他に北村一輝、吉田羊、檀れい、椎名桔平、戸田菜穂、田口浩正、岡山天音、酒向芳、川床明日香、出口夏希などひとクセありそうな出演者が楽しみです。
数年前の女子高生の遺体が発見?その素性は?
冒頭、東京都菊野市の夏祭りの「のどじまん大会」で素晴らしい歌唱力を発揮した女子高生がいました。その並木佐織は、音楽家・新倉直紀(椎名桔平)に見出され彼の家でレッスンし、いずれは歌手を目指すはずでしたが行方不明に。
その3年後、静岡県の火事跡から住んでた高齢女性と並木佐織の白骨が発見され、その家の息子・蓮沼寛一が逮捕されました。蓮沼は、15年前に幼女殺人犯として警視庁の草薙(北村一輝)達が逮捕したが黙秘をつらぬき釈放されました。
蓮沼は、今回も証拠不十分で釈放され、佐織の実家の定食屋「なみきや」へ行くが、地元民たちに追い出されます。その場で食事してた湯川学(福山雅治)は、警視庁の内海(柴咲コウ)からの捜査協力依頼を受けることに。
以上が序盤のあらすじです。冒頭の歌唱シーンは本当に素晴らしかったです。それだけに、その少女が遺体で発見されたという事実は衝撃でしたが、定食屋に集まってた人達にとってはその何十倍もの衝撃だったことでしょう。
佐織が行方不明になった3年後に遺体が発見されますが、その家の息子の蓮沼が過去にも逮捕されて釈放されたという部分は、情報量が多すぎて頭を整理するのがやっと。逮捕は15年前ですが、幼女殺害はその4年前とのこと。
蓮沼の実家から発見された白骨の高齢女性は、育ての母親だったようですが、映画では深掘りしなかったので事件性はなく、蓮沼が実家を出た後に孤独死したということでいいのでしょうね。
容疑者の蓮沼が、被害者家族の定食屋へ押しかけたのは「ある人物へのイヤがらせ」のためですが後述。
夏祭りパレード殺人事件?被害者と容疑者は?
菊野市の夏祭りで仮装パレードが開催され、宮沢麻耶(吉田羊)率いるチーム菊野は「宝島と海賊船」を演出し念願の優勝。同日、蓮沼の窒息死の遺体が発見され、蓮沼の元仕事仲間で部屋を貸してた増村(酒向芳)が容疑者に。
しかし証拠不十分で増村は釈放。湯川は、蓮沼の部屋が外から施錠でき、小窓を作れて気体を注入できることを発見。戸島(田口浩正)の冷凍食品会社から「液体窒素」が持ち出されたが、戸島には夏祭り設営でアリバイあり。
湯川は、仮装パレードの宝箱で輸送したと推理し、宮沢や亡き佐織の恋人だった高垣(岡山天音)が容疑者となるが、いずれもアリバイあり。並木家の2人は、客の急な腹痛で病院へ連れそったので、どの容疑者も証拠不十分に。
中盤は、佐織殺害の容疑者が殺される事件が発生し、彼にうらみを持つ菊野市の人々が容疑者とされるが、みんな証拠不十分となる展開。「みんな容疑者」はアガサ・クリスティの有名ミステリ小説を連想させるが、さすがにそんな古典トリックではなさそう。
元仕事仲間の増村という人物がいきなり出てきたけど、酒向芳が演じてるだけで真犯人に見えてしまいます。仮装パレードシーンは見ごたえありました。TVドラマ版では予算なくて無理でしょうから、劇場版ならではでしょうか。
仮装パレードは顔を隠せるので事件に利用されがちですが、今回は大道具を使って「凶器を運ぶ」のに利用されました。ちなみに原作者の東野圭吾は『マスカレードナイト』等でも仮面舞踏会を利用してます。
ガリレオ・シリーズは本格ミステリではないので、事前に真相や真犯人を推理できる材料は提示されない場合が多いけど、宮沢(吉田羊)があっさり宝箱を見せたことから、菊野市の仲間が蓮沼殺しでないことは推測できます。
液体窒素が有効だとつきとめた実験ですが、いつもよりあっさりで物足りない感じ。湯川のまわりで、しゃぼん玉、風船、ゆるキャラのキクノンの巨大バルーン等が繰り返し出てきたので伏線と予想したけど、殺し方の検討材料になっただけでミスリードでした。
名乗り出た犯人は誰?蓮沼の自白とは?
草薙は、過去に蓮沼を釈放したことで佐織が殺害され、菊野市の人達に復讐心を芽生えさせたことを後悔。誰かが殺人犯として名乗り出ることを恐れてました。増村(酒向芳)が、15年前の少女殺人事件関係者と発覚するが殺害は否定。
増村は、当時殺害された少女・本橋優奈ちゃんの母親(自殺)とは父違いの兄。義妹のかたきが蓮沼だと知ってて、自白計画には協力し蓮沼に睡眠薬を飲ませました。そんな時、音楽家の新倉(椎名桔平)が蓮沼殺人犯として自首。
新倉は佐織の歌手としての将来を奪った蓮沼を許せず、液体窒素を流しこんで蓮沼を苦しめ「佐織の殺害」を自白させ、そのまま殺してしまったと告白。元々は、並木が液体窒素で蓮沼を自白させるだけの、殺人なしの計画でした。
並木が腹痛女のせいで蓮沼の部屋へ行けなくなると、戸島が計画中止とするが、新倉は並木の役割を引き継ぎました。蓮沼は並木佐織の殺害を自白、新倉は佐織の復讐で蓮沼を殺害、と警察発表され事件は解決。
佐織、蓮沼、両方の殺人事件の真犯人と真相が明らかになり終盤かと思いきや、視聴者の私達も草薙と同様に「これで解決とは感じられ」ません。蓮沼のような黙秘男が、死の前とはいえ急に自白するとは考えにくいからです。
しかし草薙は、佐織の音楽指導者だった新倉が復讐のため殺害したなら罪が軽くなる可能性もあると考え、ここを「落とし所」にしました。しかし現実の事件でも、新倉の主張だけで「蓮沼の自白」を証明するのは難しいでしょうね。録音すらしてないのが、さらにあやしい。
結末は?真犯人と真相は?沈黙のパレードの意味?
湯川は、蓮沼の自白「菊野西公園で…」がひっかかり、新倉は犯人しか知らない犯行場所を知ってた可能性があると考えます。湯川は、妻の新倉留美(檀れい)に「蓮沼は、佐織殺害の真犯人でないから余裕もって黙秘できた」と推理。
すると留美は真相を話します。留美は、佐織が高垣との子を妊娠したため「歌手の夢はあきらめる」と聞いて引き止めます。佐織に「嫉妬してる」「夫の夢を実現したいだけ」と批判された留美は、佐織を押し倒した拍子に工事現場の杭が刺さり、死んだと思った佐織を放置して去りました。
留美が戻ると佐織は消えてました。湯川の推理では、倒れてた佐織を蓮沼が運びました。生きてた佐織は、蓮沼に鈍器で頭を殴られ殺害された後、静岡の実家に埋められました。死体遺棄の時効3年が過ぎた後、佐織の遺体を発見させます。
そして蓮沼は、自分が殺害したと思いこんでる新倉留美に接触して金を請求。蓮沼が、定食屋に顔を出したのはおどすためです。佐織が生きてた証拠はないが、蓮沼が自分の犯行と思わせるために作業服に付けた血が固まってなかったことから推測。
新倉直紀は妻を守るための犯行だったと自供。定食屋の腹痛女は金で雇い、並木が来れなくしたのも計画どおり。留美は時効で逮捕されず?。増村は菊野市を去り、他の容疑者たちも罪を問われませんでした。草薙は湯川に感謝。
ラストでは、複雑にからみあった誤解と事実による事件の真相がすけて見えました。草薙が「絶対解明する」と約束してたけど、蓮沼は死に、事件から時間も経ってるため、これ以上の解明は難しそう。
湯川の推理は素晴らしいが、物理学教授の領域ではないので「ガリレオ味」は薄いですね。3年間も黙ってきた留美が、夫の罪が重くなる時点で自白した理由はよくわかりませんでした。直紀は、妻が自白した時点で肩の荷が降りたのでしょう。
タイトル「沈黙のパレード」の意味は、菊野市の人達が一丸となって蓮沼容疑者を追いこもうとし、仲間を守るために沈黙をつらぬいた様子が、夏祭りのパレードのようだからでしょう。実際パレードも利用したし。
皮肉なのは沈黙作戦が、憎むべき蓮沼からヒントを得た可能性がある点。その蓮沼は、警察官だった父から「自白至上主義の時代に多く自白させた自慢」を聞かされ「黙秘が有効」だと学んだ可能性があり「警察が産んだモンスター」と表現されたのも皮肉。
映画『沈黙のパレード』私の感想と評価
ガリレオ・シリーズは、東野圭吾原作の映画の中ではミステリ度が濃く、ヒューマンドラマの質も高めです。今回も単純に見えて実は複雑にからみあった誤解や事実を、湯川が解明していく展開が見事で見ごたえありました。
一方、ミステリとしては「どこかで見覚えある流れ」が多くて斬新さはなく『容疑者Xの献身』ほどのキレもありません。最初は変人ぶりが楽しかった湯川も、本作では普通人間にしか見えず、物理学教授だからこその推理も少なくて残念。
初期作では批判もされた福山雅治ですが、今ではガリレオは彼しか考えられないくらいに演技も上手くなってますね。久々の柴咲コウ含め、北村一輝、吉田羊、檀れい、椎名桔平、酒向芳、岡山天音と犯人役の村上淳は言うまでなく上手。
軽く平均点は超えるシリーズではありますが、当初の湯川のキャラや物理学者の特質を生かしたミステリは、ネタつきた感あるので、そろそろ潮時は感じます。最後の事件として湯川の完全犯罪を見たいが、福山雅治ファンが許さないかな。
私の評価 66/100(60が平均)
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