映画『雲のむこう、約束の場所』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?塔とさゆりの秘密とは?
新海誠監督初の長編アニメーション映画。劇場用2作目。戦後、南北に分断された日本の津軽半島に住む浩紀と拓也は、塔まで飛行機で佐由理を連れて行くと約束します。しかし佐由理は姿を消し…。3年後の3人は?戦争は始まるのか?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 雲のむこう、約束の場所 |
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日本公開日 | 2004/11/20 [予告] 上映時間:91分 |
監督・キャスト | 新海誠(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | コミックス・ウェーブ/新海クリエイティブ、コミックス・ウェーブ |
日本興行収入 | 0.5億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.18更新) 65(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 新海誠の映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 藤沢浩紀(吉岡秀隆)ひろき。津軽半島で暮らす中学生。ユニオンの塔へ行くために飛行機を製作中
- 白川拓也(萩原聖人)たくや。津軽半島で暮らす中学生。浩紀と飛行機を製作中
- 沢渡佐由理(南里侑香)浩紀と拓也の同級生でヒロイン。ヴァイオリンが上手。塔へ連れてってもらう約束をする
- 岡部(石塚運昇)蝦夷製作所の社長。バツイチ。浩紀と拓也がバイトしお世話になってる
- 富澤常夫(井上和彦)とみさわ。在日米軍のアーミーカレッジで拓也の上司教官。岡部と知りあい
- 笠原真希(水野理紗)富澤研究室の研究員。拓也に想いを寄せる
ネタバレ感想『雲のむこう、約束の場所』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
新海誠監督や声優や主題歌について
新海誠監督の映画[一覧]では、初の長編アニメーションで劇場用としては2作目です。大ヒット作となる『君の名は。』『天気の子』と共通する部分も多いです。
新海誠監督は、TVゲームのオープニング映像や個人レベルでのショートムービーを作り続けてきて、美しい映像、写実的な背景、親しみやすいキャラクター描写、魅力的な世界観、ボーイミーツガールな青春展開などが特徴です。
主要なキャラの声には声優を使わないことが多く、本作でも浩紀を吉岡秀隆、拓也を萩原聖人が演じています。声優ほど上手ではないので最初は違和感ありますが、終盤は聞き慣れてくるのでそれほど問題ではありません。
佐由理の南里侑香、岡部の石塚運昇、富澤常夫の井上和彦はさすがの上手さです。主題歌「きみのこえ」は新海誠が作詞し、天門が作曲し、♥(ハートマーク)こと川嶋あいが歌い上げてて、世界観にマッチしています。
日本が南北に分断?支配国はどこ?戦争は?
第二次世界大戦後、北海道は「エゾ」と呼ばれ、「ユニオン」という共産国家群に支配されています。ユニオンとは、中国やソ連(ロシア)や北朝鮮などユーラシア大陸の共産国を統合した国家群です。アメリカを中心とする南と対立中です。
日本の青森から南は独立してそうですが、アメリカの在日米軍が駐留して、エゾやユニオンや塔の動向を調査中です。アメリカは「兵器としての塔」をおそれて、近々ユニオンに対し宣戦布告しそうなほど軍事的緊張は高まっています。
ラストで、アメリカがユニオンに宣戦布告し戦争が始まるが、浩紀が塔を破壊して争う理由がなくなったからか、戦乱はすぐおさまったように思います。数年後、浩紀が約束の場所へ入れてるので、アメリカがエゾを解放した可能性も高いです。
ユニオンの塔とは何?役割や設計者は?
ユニオンが建造した塔の役割とは「宇宙のみる夢、すなわち平行宇宙を観測し、未来予測を行う」ことです。冷戦状態に近いので、未来予測できれば戦争が始まった時も有利になれると考えているのなら「塔=情報収集装置」です。
また、塔の周りは平行宇宙の暗闇に浸食されています。これがユニオンの意図どおりなら「塔=兵器」と考えられますが、世界が平行宇宙に飲みこまれればユニオンも消滅するので、米軍は「正常動作ではない」と考えているようです。
塔の設計者はエクスン・ツキノエという科学者です。その孫娘が沢渡佐由理です。ツキノエは元は本州側に住んでたが、北と南が分断された時にユニオン側にいたからか研究協力させられたようです。
佐由理が消えた理由は?塔との関係は?手紙は誰が?
突然、浩紀と拓也の前から姿を消した佐由理は、実は原因不明の奇病で眠りについたため東京の病院で入院してたのです。3年後、塔を調査中の拓也の上司の富澤教授が、塔の設計者の孫娘である佐由理をつきとめ東京から青森へ転院させます。
富澤は岡部とも知りあいで、佐由理が3年前に書いた岡部宛の手紙を渡します。岡部は手紙が浩紀宛だと知り送付します。その手紙を呼んだ浩紀も佐由理の事情を知り、東京の病院へ行くが転院後です。しかしその場の白昼夢で佐由理と再会します。
浩紀が佐由理と夢で接触したタイミングで、青森の佐由理の意識レベルは上昇し、塔を中心とする「平行宇宙」の浸食も拡大します。この現象で富澤は「平行宇宙の浸食は、佐由理の夢に流れこんで食い止められてる」と気づきます。
だからもし佐由理が目を覚ませば、平行宇宙の拡大は止まらなくなり宇宙全体が平行宇宙に飲みこまれるだろうと推測します。佐由理のこの能力や特性は、祖父ツキノエの仕組んだことである可能性が高そうですが仕組みはわかりません。
約束の場所の後、佐由理はどうなったか?
浩紀は拓也を説得して佐由理を連れ出してもらい、ユニオン塔まで飛行機ヴェラシーラで飛びます。約束の場所へ来ると佐由理は夢から覚め、夢に流れ込んでた平行宇宙の拡大を止めるため浩紀はPL外核爆弾で塔を破壊し世界を救います。
目覚めた佐由理が涙した理由は「浩紀を好きだという夢での想いを、目覚めると忘れてしまうから」です。その涙の意味すら忘却しています。塔を破壊した後、佐由理が死んでしまったのか、また眠り病についたのかは不明です。
映画の冒頭で、さらに成長した浩紀が「約束の場所」に一人で行きます。そのそばに佐由理の姿はありません。「セカイより彼女」を選んだはずなのに結果的に「世界を救った」浩紀と、浩紀への恋愛感情を忘却した佐由理は結局は別の道を歩み始めたのでしょう。
『雲のむこう、約束の場所』私の評価と新海誠ワールド
SFとしてはかなり興味深い内容です。人間の脳にも流れ込んでいく量子理論や「宇宙の見る夢」平行宇宙との関係など難解な科学ネタを、ボーイミーツガール的な少年少女の青春映画で表現し「セカイ系」ジャンルでも先駆的だと感じました。
ただ、在日米軍アーミーカレッジやウィルタ解放戦線などの真剣な議論と、浩紀と佐由理の行動の軽さとが同じ世界観だとは感じにくいです。ユニオンへの侵入が簡単すぎるし、塔を破壊して世界が救われるなら最初からそうすればいいし。
大風呂敷を広げたり難関だったり、ワクワクさせる設定だったりするけど、解決法がロジカルではなくラスト後の展開は視聴者にゆだねることが多いのが新海誠作品の特徴です。『雲のむこう、約束の場所』も多くの疑問を残したまま終わるのでかなり消化不良ぎみです。
佐由理を目覚めさせると世界が滅ぶ可能性が高いのに、連れ出した拓也や目覚めさせた浩紀の心境は「セカイより少女・恋・愛」なのでしょうか。似た選択は『天気の子』でもせまられ『雲の向こう、約束の場所』というタイトルとも類似してます。
佐由理の「忘却」設定は『君の名は。』とも共通部分を感じます。このように新海誠監督の世界観はどこかでつながっていて、本作の平行宇宙のようにどんどん拡大しています。今後も期待したいです!
私の評価 62/100(60が平均)
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