日本版『最後まで行く』ネタバレ感想解説/結末は?真犯人の正体と目的は?韓国版との違いは?
韓国映画のリメイク版。雨の夜、急ぎで車を運転する刑事の工藤は男をはねてしまい隠ぺいすることに。するとその事実を知る者からメッセージがあり取引に巻きこまれるのだが…。真相は?生き残るのは誰?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 最後まで行く |
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日本公開日 | 2023/5/19 [予告] 上映時間:118分 |
監督・キャスト | 藤井道人[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/日活、WOWOW、ROBOT |
日本興行収入 | 5.2億円 興行収入ランキング |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.14更新) 76(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 矢崎(綾野剛)なぜか工藤を追う県警本部の監察官
- 工藤祐司(岡田准一)所轄の刑事。ある事件で大きく運命が変わる
- 仙葉泰(柄本明)ヤクザ「仙葉組」の組長
- 工藤美沙子(広末涼子)別居中の工藤の妻
- 尾田創(磯村勇斗)工藤にはねられた男
- 淡島幹雄(杉本哲太)刑事課長。工藤の上司
- 久我山太地(駿河太郎)工藤の同僚
- 植松由紀子(山田真歩)矢崎の婚約者
ネタバレ感想『最後まで行く』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は韓国映画?監督やキャストについて
日本映画『最後まで行く』は、2014年公開の韓国映画(邦題は同じ)のリメイク版です。韓国版は『パラサイト 半地下の家族』のイ・ソンギュンが主演し韓国で5週連続1位の大ヒット。カンヌ国際映画祭の招待作品にも選出され、中国、フランス、フィリピンでリメイク版が公開。
日本版の監督 藤井道人の最近の監督作は『新聞記者』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族 The Family』など。
主演の岡田准一は『ザファブル 殺さない殺し屋』『ヘルドッグス』に、綾野剛は『ドクターデスの遺産 BLACK FILE』『ヤクザと家族 The Family』等に最近出演。
他に、広末涼子、磯村勇斗、山田真歩、清水くるみ、杉本哲太、柄本明なども出演。
最後まで行く韓国版との違い!ネタバレなし感想と評価
韓国版『最後まで行く』はかなり前に観たが日本版観ながら思い出せました、韓国らしいしつこいサスペンス(ほめてます)だったのだけ記憶に残ってます。そんな状態で日本版を観に行ったのですが、良い改変だらけでした。
大枠のストーリーはそのままで、かなり肉付けされてるので見ごたえも増してます。特にヤクザの組長の暗躍と、矢崎の視点(結婚や悪徳義父の存在も込みで)を加えた点がいい意味でのカサ増しになってます。工藤の嫁の追加もいい改変。
一方、一番の不満点は、笑いや説明を優先させてるため、サスペンス感が消えてる点です。特に説明セリフは邦画や日本ドラマ全体の欠点。また、ラストのオチも韓国版の方が圧倒的に好き。日本版はオチが下手すぎて残念。
主演の2人、岡田准一と綾野剛はさすがの名演ぶり。格闘シーン少ないはずなのに、なぜ岡田准一なんだろうと思ったが、ちゃんと見せ場のアクションも用意されました。ドラマ『アバランチ』で見せた綾野剛ともども選ばれた理由は納得。
日本版、韓国版とも長短ありますが、トータルでは少しだけ日本版が好みかも。濃密で情報量の多いストーリーなので、ラストを除けば日本版の脚本の方がかなり好き。次回は藤井道人監督のオリジナル作品も観てみたいです!
刑事が交通事故を隠ぺい?事件の経緯は?
年末の夜、刑事の工藤は離婚間近の妻から、実母が危篤との連絡をうけ大急ぎで車を運転。上司からの電話では、賄賂もらったことを監察官が調査にくると聞いて動揺。その時、飛び出してきた女性をかわすが、男性をはねてしまいます。
工藤(岡田准一)はパトカーから隠れ、遺体をトランクにつめて出発。年末の飲酒検問時、聞き覚えない携帯電話が鳴り、交通課の警官がトランクを開けようとします。そこへ県警監察官の矢崎(綾野剛)が来て、後で話を聞くからとトランクは開けずに病院へ行かせます。
亡き母の前でも葬儀場の担当者との話し中も、工藤は落ちつきなく、妻の美沙子(広末涼子)はあきれます。工藤は、警察署で矢崎が待ってると聞き、葬儀場なので行けないと連絡。すると課長達が来ると言うので、トランクの死体を隠します。
以上が序盤あらすじ。韓国版と同様によくできた導入部。多忙感、絶望感、スリル、ダメな主人公ぶりが最初の10分くらいで説明なしでも理解できます。特にパトカーが迫るとこや、トランクから携帯音が鳴るとこのスリルは満点。
そして最良の改変の1つである「別居中の妻」の登場が、工藤を人間的にも夫としても父としてもダメな存在として強調。ラストまで見ると確信できるが、この妻はダメンズに母性本能をくすぐられる性格のようで広末涼子が好演。
はねた男の正体は?矢崎がほしい物とは?
工藤は妻子に、霊安室で亡き母と一晩過ごすと伝えて、実際は通気口から「はねた遺体」を運び、母の遺体と同じ棺桶に入れます。ドライアイスも自分で入れます。そこへヤクザの仙葉組長が来て、尾田という男の逮捕を依頼。
工藤が翌日葬儀を行う寺は、マネロン(マネーロンダリング=資金洗浄)でためた莫大な資産を墓地そばの金庫に隠してます。尾田はその鍵を持ち逃げ中。尾田の写真を見た工藤は、自分がはねた男の正体が尾田だと気づき動揺。
警察署に持ちこまれた尾田の情報をもとに、同僚の久我山たちと捜査。監視カメラから工藤の車のナンバーがバレそうでバレません。尾田の携帯に出て相手をバカにすると突然、矢崎が来て工藤はボコられ、息子を誘拐され、遺体と交換だと言われます。
以上が中盤あらすじ。韓国版で名シーンだった「母の棺桶に自分がはねた遺体を入れる」場面は、韓国版は兵隊おもちゃにロープ先端を運ばせたが、日本版では自ら通気口をはって運びます。兵隊が射撃する音はスリル感じたが、日本版もよかった。
ヤクザ組長の登場からが大きな改変。話長いので大丈夫か?と思ったが、砂漠のトカゲの話はあとでじわじわと効いてきますね。矢崎の性格は、日本版の方が凶暴になってる気がします。その分、矢崎の止むに止まれぬ事情も明らかに(後述)
本当の死因と真犯人は?遺体求めた理由は?
そこから過去の矢崎の視点に。県警本部長は悪徳な寺と組んでマネーロンダリングで金儲け。その本部長の娘と婚約した矢崎も、悪行を手伝います。ある日、チンピラの尾田が寺の金庫の鍵を持ち逃げするが、矢崎の指紋が必要と知ります。
結婚式日、新郎の手形を求められた矢崎だが、それは尾田の一味が「矢崎の指紋」を入手するためのワナ。矢崎は仙葉組長に尾田を見つけてもらうが1億円要求されます。本部長から責められ離婚をせまられ殴られた矢崎は、逆ギレして本部長を殺害。
矢崎は逃げる尾田に発砲。何発か銃撃された尾田は、道路で工藤の車にはねられます。工藤のトランクの遺体が調べられないようにしたのも、矢崎の計算。矢崎は、金庫の鍵と新たに変更された尾田の指紋(指)がほしいため銃痕残る遺体を工藤に求めたのです。
以上が終盤あらすじ。工藤がはねて殺害したと思った尾田だが、その直前に矢崎の銃弾で即死した可能性もありそう。本当の死因は、銃弾か交通事故のどちらかだが、真相は検視解剖しないと判明しないのでしょうね。
本部長ではなく矢崎の指紋が登録されてるのは不自然では?と思ったが、用心深い本部長は金庫が発覚した時に罪をなすりつけるつもりで矢崎の指紋を登録したと考えると納得できます。
この本部長や結婚式は、韓国版になかった気がするけど、葬式の対比としての結婚式も描いたのは良い改変だと感じます。また、必要な指紋を得るために「新郎の手形」が使われたのもミステリ的に見事。あの場では誰でもだまされそう。
結末は?黒幕の正体は?砂漠のトカゲは誰?
工藤は火葬場の裏から尾田の遺体を引っ張り出し、銃痕と金庫の鍵を見つけます。工藤が遺体を矢崎に渡すと銃口を向けられるが、死ぬとマスコミにリークされると言い仲間になるのも断ります。直後、遺体が爆発し矢崎は車ごと湖に沈みます。
工藤はヤクザ組長から得た爆弾を遺体に仕掛けてたのです。大晦日の夜、工藤は遺体から奪った指と鍵で金庫を開けると、大量の札束を目にします。そこへ生還した矢崎が現れ、銃撃と肉弾戦で両者とも気絶。金は全て仙葉組が持ち出します。
起きた工藤は、倒れてる矢崎を置き去りに。妻に「今年はいい年になりそう」と電話。妻「それ毎年言ってるけどまず帰ってきて」。小さな幸せを感じた工藤だが、生きてた矢崎が車でぶつかってきて工藤も対抗。最後まで行くのはどちらか?
エンドロール後、ヤクザの組長が尾田に金庫の鍵を盗むよう仕向けるシーンが。全ての黒幕の正体は仙葉組長でした。警察に尾田を通報したのも組長。尾田のそばにいた女性も組長の関係者。「砂漠のトカゲ」は工藤と矢崎が車でひょこひょこしたラストですね。
以上がラストまでのネタバレあらすじ。爆弾をしかけて湖に転落させるのは韓国版と同じですが、それ以降の展開はほぼ日本版オリジナル。特にしつこい格闘アクションは、岡田准一、綾野剛を起用した一番の理由だと感じました。
金庫の金を全てヤクザが横取りしていき、そもそも尾田をあやつってた黒幕も組長だったという大胆な改変。この真相はミステリ的な肉付けという以上に、クズな主人公が簡単に幸せになれないという結末なので個人的には好み。
ただし、その後の矢崎復活からの決着つかずなオチはかなり残念。その前の妻とのやりとりがよかっただけに、もう少しましなラストは描けなかったのでしょうか。「最後まで行く」「砂漠のトカゲ」を表現したのは笑えましたが。
私の評価 65/100(60が平均)
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