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映画『アス』ネタバレ感想考察/ラスト結末は?自分が2人の理由は?Usの意味とは?

アス 映画/ドラマ

『ゲットアウト』でアカデミー脚本賞を受賞のジョーダンピール監督の新作。自分そっくりの人間に遭遇した少女アデレードは、結婚して夫と2人の子どもと暮らしてますが、そこへ同じ外見の家族が現れ…。うさぎ・もぐらたたきや11:11の意味は?(ネタバレ感想あらすじ↓)

映画名/邦題アス
日本公開日2019/9/6 [予告] 上映時間:116分
製作国アメリカ合衆国
原題/英題Us
監督・キャストジョーダン・ピール(キャスト
映倫区分日本:R15+(15歳以上) USA:R
配給/製作
(画像出典)
ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和/モンキーパー・プロダクションズ、パーフェクト・ワールド・ピクチャーズ
日本興行収入1.0億円 (興行収入ランキング
世界興行収入2.5億USドル [出典]
製作費0.2億USドル
平均評価
平均:100換算
*批評家と一般は単純平均
(興収・評価: 2024.8.17更新)
71私の評価は含まず)
シリーズ
関連作品
ホラー/パニック/バイオレンス映画一覧

登場キャラクター(キャスト/出演者)

ネタバレ感想『アス』解説と評価

以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!

『ゲットアウト』監督と主要キャストについて

映画『アス』の監督ジョーダン・ピールは、コメディアン・俳優でしたが映画『ゲットアウト』で注目をあび、アカデミー賞の作品・脚本・監督賞でノミネートされ、アフリカ系アメリカ人では初めての脚本賞を受賞しました。

『アス』は脚本・監督作としては2作目です。ジョーダン・ピールは『トイストーリー4』のバニー役の声優としても出演しています。気になる人は字幕版を観てみましょう!

黒人女性の主人公アデレード(略称アディ)を演じるルピタ・ニョンゴは『それでも夜は明ける』で、アカデミー賞の助演女優賞を受賞した実力派です。

その夫ゲイブ役のウィンストン・デュークは初めて聞いた名だと思ったら、マーベルMCUの『ブラックパンサー』等でエムバクを演じて存在感を発揮してました。ちなみに同作でルピタ・ニョンゴは主人公恋人のナキアを演じてたので再共演になります。

他の俳優女優は、アメリカのTVや映画で活躍してても日本ではあまり見かけない人ばかりでした。その中でも異彩を放ってたのは、アディの子ども時代の子役マディソン・カリーです。あの闇をかかえた目つきが演技なら将来おそろしいです。

『ゲットアウト』との比較!ホラーとして怖いか?

同監督の前作とは比較されがちですが、個人的な評価は最後に書きます。『ゲットアウト』は、よりロジカルで伏線回収も見事で内面的サイコホラー要素が強かったです。全年齢対象なので暴力描写は少なめでした。

『アス』も得体の知れない精神的なこわさを感じさせるけど、それよりも終盤の直接的・肉体的・暴力的な攻撃描写が多いので、R15指定(15歳以上)になりホラー度は増しています。ただし前作以上にファンタジーだし、コメディ要素も上手いのでそれほどこわく感じなかったです。

テーマは差別?ハンズ・アクロス・アメリカとは?

『アス』は主人公家族が黒人なので「黒人差別」を描くストーリーも予測してたけど、実際は「格差差別」について描いています。富裕層タイラー家との比較発言もあるけど、そんなレベルではなく「地下でうさぎを食べてる住民との比較」です。

全く同じ姿かたち(脳も同じと思われる)で生まれても、地上と地下では暮らしぶりが異なり「生まれる環境で全て決まる」ことを暗に示します。軽く「先住民差別」も感じます。

冒頭で幼いアデレードがTVで見る「ハンズ・アクロス・アメリカ(Hands Across America)」とは、1986年5月25日にアメリカの大西洋側の東海岸ニューヨークから、太平洋側の西海岸カリフォルニアまで、人々が手をつないだ実話のチャリティイベントです。

当時増えてた貧困者・ホームレス・失業者・親のない子ども達などを救うための募金活動の一貫でしたが、予想してたほど募金は集まらず「富裕層の偽善」と語られることもあるようです。「しないよりまし」と思うけど他の方法もあったかも。

『アス US』では、今まで下層にいた人間たちが手をつないで実現します。これは「チャリティ精神や『魂』がなくても団結力があれば実現できる」という皮肉に感じます。

また「ハンズ・アクロス・アメリカ」は、富裕層と貧困層との壁を明確にしただけと指摘してるようにも思えます。そして「Us」が地上で手をつなぐことを指示したのがレッドだと判明すると、レッドの正体が明らかになります。後述します。

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うさぎ、もぐらたたきの意味とは?

冒頭でアデレードが遊園地そばの砂浜の「自分探しの館」で「自分」を見つけた後、かごに入ったうさぎの不気味な目のアップからカメラが引いていきます。ほぼ白うさぎですが、黒うさぎも混じってて、アメリカの白人黒人を連想させます。

と見せかけて、実は人種差別よりも「小さなカゴに閉じこめられている」ことの方が重要です。あの映像はクローン実験の様子だとすると、地下うさぎもクローンだと考えられます。ただしクローンうさぎが地上へ出ても問題ないけど、クローン人間は殺し合いになるのは悲しいですね。「生うさぎ」は地下の住民の食料にもなるようです。

遊園地で父ガブリエルが、もぐらたたきに夢中になってる間に、アデレードは迷い子になってしまいます。この「もぐらたたき(Whack a mole)」は、地下トンネルに住む「Us」を連想させるし、浮上する貧困層をたたき落とす比喩も感じます。

ガブリエルやアデレードのウィルソン家は、富裕層ではないけど、広い家に引っ越したりと中間層の上くらいだと感じます。もっと豪華な暮らしをしてる友人のタイラー家には、マウンティングされた気がして対抗意識を持ってるようです。

タイトル『アス Us』の意味は?テザードとは?

原題『Us』は直訳で「わたしたち」ですが、本作ではアメリカ中に張りめぐらされて存在する地下トンネルで暮らす住民のことです。そして彼らは自分達を「US(United States of America)」つまりアメリカ人だと答えていました。

冒頭で「アメリカ中に張りめぐらされた地下トンネルの意味は知られてない」と語られます。トンネルの真相は「政府が実験したテザード(クローン人間/ドッペルゲンガー)が住む場所」です。テザードには魂がないため地下に閉じこめられたようです。

「テザード(tethered)」とは英語で「つながる」という意味があるので「自分とつながる存在。クローン人間」のことです。「ハンズ・クロス・アメリカ」も手をつなぐ活動なので、テザードの伏線になっています。ちなみにネット接続の「テザリング」も派生語です。

エレミヤ書第11章11節や11:11・ビーチで流血の人の考察

幼少時代のアデレードは遊園地からビーチに出る時「旧約聖書エレミヤ書 第11章11節」のプラカードを持った男性を見かけます。そこには「私は彼らが逃れられない災害を起こそう。彼らが泣き叫んでも、私は聞かない」と書かれています。

つまり地下のUsが地上を乗っ取るという伏線です。乗っ取り計画を立案するのは、後のレッドなのでこの時点ではまだ未計画なため偶然だと思います。ただし「第11章11節」「野球中継の11対11」や時計「11:11」は鏡像・左右対称を明示してます。

このカードを観た直後に、幼少アデレードは「自分探しの鏡の館」で鏡に写る自分を見ることになります。それ以外にもこの作品では、窓への映りこみや鏡などで対称性を頻繁に見せます。テザード達が持つハサミも左右対称の象徴です。

大人のアデレード達はサンタクルーズのビーチへ向かう途中、この「エレミヤ書 第11章11節」のプラカードを持った男性が流血してる姿を見かけます。また、ジェイソンだけはビーチで手から血が流れてるホームレスのような男性を見かけます。

この時からすでに地底人「Us(ドッペルゲンガー)」の攻撃が始まってたということなのでしょう。ビーチで流血してた男性は「第11章11節」を持つ男性のクローンで、傷つけられた地上人の方は救急車で運ばれていました。

Usの目的とは?アデレードの正体は?

完全にネタバレするので要注意です。終盤、Us(地下のテザード)は地上へ出て、分身を攻撃して乗っ取ろうと行動します。これを先導したのは、長年かけてリーダーとなってたレッド(アデレードの分身)です。

レッドは、テザード達に地上で「ハンズ・アクロス・アメリカ」を実行させます。この時点でレッドの正体は、幼少期に「自分探しの鏡館」で倒され立場をすり替えられた「本物のアデレード」であることが判明します。

冒頭でアデレードが「ハンズ・アクロス・アメリカ」を観ていたのが伏線です。レッドだけ片言だけど言葉を話せるし、そもそもクローン人間たちを先導するだけの知恵や知性を持ち合わせていることも「もと地上人だった」ことを示してます。

地下でいつから「レッド」と呼ばれてるか不明ですが「tethered/テザード」の末尾3文字から「Red/レッド」は作れます。地上に出たテザード達の赤い服も、先導したレッドにちなんでるのかもしれません。終盤、アデレードの服も血で赤くなるのは、元テザードであることを表してるように感じます。

疑問なのは「元テザードのアデレード」が地上でバレエダンスを踊る時、「元地上人アデレード」も地下で踊った点です。太陽の下で暮らす方が実物、地下の方がクローンというように主従関係が逆転したのでしょう。

あと、テザード(クローン)達がなぜあのタイミングで地上攻撃を始めたかですが、元テザードのアデレードがサンタクルーズのビーチに戻ってきたからです。分身どおしは動きや考えがよめるようなので、戻ればすぐにわかります。

ジェイソンと分身の正体は?アデレードが叫んだ理由?

ところで息子ジェイソンの奇妙な言動はタイラーの双子にも指摘されますが、多くは謎のまま終わります。深読みして、ジェイソンも元テザードである可能性を考えました。

ジェイソンはビーチで「幼少アデレードが鏡館に向かったように」トイレへ向かい、流血した男を見ても無反応だったどころか後に絵に描いてます。よく仮面をかぶるし、暗く狭い場所を好むし、砂浜でトンネルも作ります。

ジェイソンは仮面をかぶった時だけ、クローンを対称で動かせることに気づき、それを利用して分身を操って焼身自殺させます。その時、アデレードが叫んだ理由は「焼けた方が、自分が産んだ息子だったから」とも考えられます。ただしこの時点ではまだ無意識です。

または、焼けたジェイソンが普通にテザードだった場合は、元テザードだったアデレードが無意識のうちに「同胞」の死を悲しんだようにも思えます。

仮にジェイソンがテザードと入れ替わったとすると、前年に同じ家へ来た時です。その時の「手品」で顔の下半分をやけどした後、家族に見られる前にビーチ等で入れ替わったのかも。もともと口数は少ない変わり者だし「仮面」かぶるクセでバレなかったのでしょう。

そしてラストで地上アデレードが「本当のアデレード」を殺害後、自分がテザードだと思いだして微笑んだ時、目が合ったジェイソンは仮面をかぶります。車のジェイソンが本物の場合は「母が偽物だと気づいて」怖くなって顔を隠したのでしょう。

もし車のジェイソンが偽物なら「母も同胞のテザードであることを黙ってよう」という意味でマスクをかぶったのだと思います。いずれにしろ、これだけの情報では「ジェイソンがテザードが地上人か」は明言できそうにないです。

クローン設定の最大の疑問点とツッコミどころ

上でいろいろ解説考察しましたが、本作のクローン設定には重大な欠陥というかツッコミどころがあります。それは「クローン夫婦の子ども」です。アデレード夫妻に子どもが産まれた時、地下でもクローン子どもが産まれたと発言してます。

さすがに地下でクローン妻が同日に出産することは不可能だし、そうだとしても男女や顔の違いは必ずでるはずなので、やはり子どももクローンで作ったと考えられます。ジェイソンが産まれた時にはまだクローン実験をしていたのでしょうか。

クローン人間が出産できることは、元テザードのアデレードが証明しています。そして仮にジェイソンも地上人とテザードが入れ替わってたのなら、焼身したジェイソンこそアデレードが実際産んだ息子だったのでしょう。

『アス Us』私の評価と総括

『アス』をタイトルにしたのは良かったのか悪かったのかわかりませんが、夏休み映画も多く残る期間なので上映館数が少ないのは残念です。『ゲットアウト』も日本では興行収入1.4億円程度なので仕方ないのでしょうね。

黒人監督らしく黒人を多く起用して「マイノリティ」や「差別」をテーマにするのは、現在のアメリカらしいとも言えそうです。実際の政治ではトランプ大統領がその流れと逆光する言動を繰り返してるので反動かもしれません。

『アス』はアメリカの負の遺産である地下トンネルや格差社会をテーマに描いてて、貧困層の革命にも見える思い切った内容に驚きます。ホラー映画としては、自分と同じ顔のドッペルゲンガーが殺しに来るという「侵略系」に近い印象です。

ただし直接的な攻撃表現が増えた分、心理的な面では前作『ゲットアウト』の方がこわかったし、ロジックや伏線回収の見事さでも前作の方が個人的には好みです。クローン技術や主人公もあっち側でした、というオチはよくあるので何かもう1つ驚きがほしかったです。それでも2019年のホラー映画の中では、上位に評価したいオススメ作品です!

私の評価 66/100(60が平均)

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