映画『フォードvsフェラーリ』評価ネタバレ感想/ラスト結末は?実話は?ルマン優勝できるか?真の敵は誰

米フォード社は売上を伸ばすためレース進出を計画し、ルマン優勝経験者シェルビーを雇い、伊フェラーリに対抗します。シェルビーは凄腕レーサーのケンをスカウトするが…。CG使ってない?ラストレースの勝者は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | フォードvsフェラーリ |
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日本公開日 | 2020/1/10 [予告] 上映時間:153分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
原題/英題 | Ford v Ferrari |
監督・キャスト | ジェームズ・マンゴールド(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:PG13 |
配給/製作 (画像出典) | 20世紀フォックス、ウォルト・ディズニー・ジャパン/チャーニン・エンターテインメント |
日本興行収入 | 9.6億円 興行収入ランキング |
世界興行収入 | 2.2億USドル [出典] |
製作費 | 1.0億USドル |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.17更新) 84(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | アクション/スポーツ/冒険映画一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- キャロル・シェルビー(マット・デイモン)元レーサー。米フォードからレースカー開発を依頼される
- ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)型破りの凄腕レーサー。シェルビーに誘われフォードへ
- モリー・マイルズ(カトリーナ・バルフ)ケンの妻。夫の夢と家計をバランスよく支える
- ピーター・マイルズ(ノア・ジュプ)ケンとモリーの一人息子。レーサーの父を応援
- リー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)フォードのマーケティング責任者。シェルビーに依頼
- ヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)フォード会長。祖父は創業者ヘンリー・フォード
- レオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)フォード副社長。モータースポーツ責任者。ケンとは確執
- エンツォ・フェラーリ(レモ・ジローネ)フェラーリ会長。ル・マンのレースに深い思い入れ
ネタバレ感想『フォードvsフェラーリ』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
CG使わない監督のこだわり・出演者
監督のジェームズ・マンゴールドは、10作以上のベテラン監督で2010年以降の作品には『ナイト&デイ』『ウルヴァリン SAMURAI』『LOGAN ローガン』等のアクションが多いので、レースシーンなどは期待できます。
今回ジェームズ・マンゴールド監督は、背景や観客以外でほぼCGを使わず、本物の車でレースを再現し、圧倒的な臨場感を追求しています。事故シーンも本物レーシングカーで見せてるのは驚きですが、大事故なくてよかったです。
元レーサーのシェルビーを演じるマット・デイモンは、自ら脚本を書いた『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』で脚光をあび、ジェイソンボーンシリーズ、オーシャンズ11シリーズで存在感を示してる中堅俳優です。
破天荒な凄腕レーサーのケンを演じるクリスチャン・ベールは、体型などを役に寄せるこだわり俳優です。『マシニスト』『ザ・ファイター』の役では過剰に減量し、バットマン役ではマッチョ、『アメリカン・ハッスル』『バイス』では肥満体型へ役作りして演じています。
そのクリスチャン・ベールは、ゴールデングローブ賞の主演男優賞でノミネートされましたが、最優秀賞は『ジョーカー』のホアキン・フェニックスが受賞しました。
フォードvsフェラーリは実話?
アメリカの自動車会社フォード・モーターは売上アップのためにレース進出を考えました。イタリアのフェラーリ社の買収に失敗後、シェルビーを雇いレースカーを作って、ル・マン24時間耐久レースでフェラーリに勝ったのは実話です。
キャロル・シェルビー(マット・デイモン)が、イギリス人の型破りレーサーのケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)をスカウトしたこと等の大枠も実話です。それ以外の細かい部分は、劇的に見せるための脚色が多く混ざってるようです。
映画では、ケン・マイルズがフェラーリに負けるシーンは描かれてませんが、実話では敗退経験もあるようです。その反省をふまえてレースカーGT40のチューニングを進め、1966年のル・マン24時間耐久レースでフェラーリを破りました。
『フォードvsフェラーリ』のタイトルからも分かるとおり、本作は企業ドラマ・お仕事映画の要素も強いです。池井戸潤(『七つの会議』等)小説とも似た要素がありますが、実話ベースにしてはドラマチックで驚きます。
フォードのフェラーリ買収の理由や結末は?
米フォード・モーター社は、それまで富裕層のぜいたく品だった自動車を中流家庭に普及させるため、徹底的なコスト削減やシンプル化を進めました。ベルトコンベヤーによる大量生産はフォードシステムと呼ばれ、低価格化を実現しました。
しかし中流家庭が裕福になる時代が到来すると、自動車にデザインや性能を求める者が増えて、ヨーロッパ車の人気が上昇します。祖父の創業者ヘンリー・フォードから社長を引き継いだヘンリー・フォード2世は改革を進めます。
マーケティング責任者リー・アイアコッカは、スポーツカー(スポーティーカー)のマスタング開発やレース進出を計画します。レースカー技術を得るため、イタリアのフェラーリ社買収を進め、エンツォ・フェラーリにも会いに行きます。
当時フェラーリ社はルマンレースで常勝でしたが、手作業での組立て等で経営難に直面していました。しかしエンツォ・フェラーリは米フォード社を見下してたので、会社価値のつり上げ材料にしただけで実際はフィアットに買収されます。
激怒したヘンリー・フォード2世は、ル・マン24時間レースでフェラーリに勝つために多くの資金を投入します。リー・アイアコッカや副社長レオ・ビーブらは、シェルビーにオファーしてGT40開発とレースドライバー探しを開始します。
フォード社がレース進出を考えた理由が「商業主義」であり、本気でレース優勝を目指した理由が「怒りによる報復」というのはアメリカらしいです。フォードvsフェラーリは疑似戦争としても、当時のアメリカ人の注目をあびたそうです。

シェルビーとケンが選ばれた理由は?
イタリアのル・マン24時間レースでフェラーリを破るために、フォードは人材も集めました。その中の1人キャロル・シェルビーが選ばれた理由は、1959年のル・マン24時間耐久レースのアメリカ人の優勝経験者だったからです。
シェルビーはF1経験もあり、ルマン時はアストンマーティンでの参戦でした。しかし数レース後、心臓病のせいでレースを引退し、シェルビー・アメリカンを設立してレーシング・カーデザイナーとして活躍していました。
フォードからのオファーを受けたシェルビーは、友人の元レーサーのケン・マイルズをテストドライバーとして指名します。ケンは車を運転しただけで特徴や問題点を判断できる能力だけでなく、レーサー資質も持ち合わせています。
シェルビーは、ケンの素質を見抜いてたのでレーサーにも起用します。シェルビーはレーシングカーデザイナーとしても、フォード社のシェルビー・コブラやシェルビーGT350やGT500、クライスラー社ダッジ・バイパー等の製作に関わりました。
シェルビーとケンの真の敵とは?
映画『フォードvsフェラーリ』はタイトルどおり、ルマンレースでフォードがフェラーリに勝つことを目指すストーリーです。ただし、主人公ケン・マイルズとシェルビーの視点から眺めると、真の敵というか障害は「フォード幹部」です。
実話での細かい話は知りませんが、映画ではシェルビーはフォード幹部たちに振り回されて、充分に裁量を発揮できていません。副社長レオ・ビーブは「フォードにふさわしくない」と判断し、最初はケン・マイルズをルマンに出場させません。
しかし他のドライバーが成績を残せなかったことや、シェルビーの説得等により、1966年のル・マン24時間レースにはケン・マイルズも出場します。そしてケンは、途中まで独走1位の快挙を成し遂げます。
ラスト勝者はケンマイルズではない?
1966年のル・マン24時間レースでは、フォードからGT40Mk2で8台が出場し、フェラーリ陣営と勝敗を競います。ケンのレースカーは途中でブレーキが故障し、ピットインして取り替えました。
フェラーリからは違反だとクレームをつけられますが、ルールブックに記載がなくグレーな状態のまま続行されたようです。ちなみにル・マン24時間レースは、ドライバーが休息をとれるように、基本は2人か3人1組での出場だそうです。
結局フェラーリは次々と事故やトラブルに巻きこまれて、ライバルっぽいレーサーも周回遅れだったケンが追い抜いた後、リタイヤとなります。ケンは優勝を確信し余裕を感じたからか、フォード幹部の提案を聞き入れてスピードを落とします。
ケンが1番という約束で、フォード車3台で並んで歴史的な123フィニッシュでゴールインします。しかし映画では、後方からスタートしたフォード車のブルース・マクラーレン、クリス・エイモンの優勝となります。
ケン・マイルズには、デイトナ、セブリングと合わせて耐久レース三冠がかかってたのに未達成となります。映画では副社長レオ・ビーブとの確執の弊害として描かれてますが、実話では同時ゴールを主張したがくつがえらなかったようです。
ちなみに、ブルース・マクラーレンは、レーシングチーム「マクラーレン」を結成してF1で好成績を残しました。しかし1970年、テスト走行中に事故死しました。偶然にもケン・マイルズと同じ死因です。
迫力のレースシーン!家族と友情の物語?
映画『フォードvsフェラーリ』は、池井戸潤小説のように企業どおしのぶつかりあいがメインと思ってました。が、なぐりあって友情を深めるシェルビーとケンの夢を追う者どおしの関係や、ケンの息子と妻との関係性も細かく描かれてます。
ピーターは、父ケンの影響で車やカーレースにくわしくて大好きです。ケンのためにコース模型を作ったりもしました。レースカーに乗せてもらった時は最高にうれしそうですが、一方でレース中の事故も心配していました。
妻モリーは経済的な裕福さよりもケンの身を心配してました。それでも夢を追い求める夫ケンを支えて、時には叱咤・鼓舞し、時には自分も高速ドライビングテクニックを披露したりと、妻というよりパートナーの1人として応援しました。
しかし1966年のルマン敗退後に妻モリーの心配は現実となり、ケンはテスト運転中の事故で亡くなってしまいます。その後シェルビーが「ケンは友達だ」と断定したのは、息子ピーターには救いになったと感じます。
カーレース・シーンでは、圧倒的な迫力を感じられるので劇場観賞に向いてます。上でも書いたように、CGは極力使用せず、実際のレーシングカーで撮影してるため、臨場感は他の映画では味わえないレベルの高さです。
『フォードvsフェラーリ』私の評価
車やカーレースには興味なく「ル・マン」「フェラーリ」「回転数」等の聞き慣れない単語だらけで最初はとまどったけど、フォードとフェラーリのトップの因縁や、シェルビーとケンの男どおしの友情が軸と気づくと理解しやすいです。
私は初めて観る映画はインパクト重視なので、予告や事前知識をなるべく入れません。しかし『ワンスアポンアタイムイン・ハリウッド』の例もあるので、少し歴史背景を調べてから観たら大正解でした。
それでも「なぜ回転数を上げてはいけないのか?上限は?」「ブレーキ交換はルール違反?」「なぜマクラーレンの勝利?会長や副社長はわざとケンを負けさせた?」とか疑問点がすぐ説明されず、多少の雑念になったのはマイナス点です。
ただし事前知識がなくても、ケンとシェルビーの男の熱い友情やクルマ愛、マイルズ家の家族愛、副社長レオ・ビーブとの確執、幹部内での駆け引き、会社トップどおしの意地の張り合い、レース中の駆け引き等、実話よりも記号的に見せてくれるのでエンタメ映画としても楽しめました!
私の評価 67/100(60が平均)
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