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『ミッドサマー』評価は?ネタバレ感想考察/90年周期の理由?夏至祭の目的は?

映画ミッドサマー

『ミッドサマー』あらすじ概要

悲惨な事件で家族を亡くした女性ダニーは、恋人らがスウェーデンの90年に1度の夏至祭に行くのに同行します。白夜で明るい村で、白い清潔な服を着た人達に迎えられ、奇祭を目にするうちに…。奇祭の内容は?ダニーが真に求める事は?(ネタバレ感想考察↓)

映画名/邦題 ミッドサマー
平均評価★★★★★68私の評価↓は含まず)
原題/英題Midsommar
日本公開日 2020/2/21 [予告↓]上映時間 145分
映倫区分日本 R15+(15歳以上)USA R
製作国アメリカ、スウェーデン
映画監督アリ・アスター [キャスト↓]
配給/製作/画像©A24、ファントム・フィルム/スクエア・ペグ、Bリール・フィルムズ
日本興行収入7.3億円興行収入ランキング
世界興行収入0.4億USドル [出典]
製作費0.1億USドル

『ミッドサマー』予告動画

キャラクター(キャスト/出演者。日本語吹き替え声優)

ダニー・アルドール(フローレンス・ピュー)
家族をいまわしい事件で亡くし、トラウマを抱える女性
クリスチャン・ヒューズ(ジャック・レイナー)
ダニーの恋人だが破局寸前
ジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)
クリスチャンの友人
マーク(ウィル・ポールター)
クリスチャンの友人
ペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)
クリスチャンの友人。故郷のスウェーデンの夏至祭に帰郷予定
サイモン(アーチー・マデクウィ)
コニー(エローラ・トルキア)
ダン(ビョルン・アンドレセン)

ネタバレ感想『ミッドサマー』解説や評価レビュー

この先はネタバレありの感想考察です。他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。

私の評価 ★★★★★69/100(60が平均)[レビューサイト評価↑]

アリアスター監督作・若手キャスト

アリ・アスター監督は、前作のホラー映画『ヘレディタリー 継承』が長編監督デビュー作でしたが内外で高く評価されました。映画『ミッドサマー』は長編映画では2作目の監督・脚本作ですが、すでに作家性が濃厚すぎるほど出ています。

本作は、アリ・アスター監督の過去の失恋や恋愛経験がもとになっているそうです。アリ・アスター監督は、この映画を製作することにより「自分の失恋セラピー」になってるとも語っています。前作ヘレディタリーも、実際の家族喪失セラピーでした。

主人公ダニーを演じるフローレンス・ピューはイギリス女優で、昨年の『ファイティング・ファミリー』の主演で注目され、本作の後『ストーリーオブマイライフ わたしの若草物語』ではアカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。マーベル映画MCU最新作『ブラックウィドウ』では新ヒーローに挑戦するそうなので楽しみです!

フローレンス・ピューの恋人役を演じるジャック・レイナーは、『トランスフォーマー ロストエイジ』で主演を務めたアイルランド俳優で『シングストリート 未来へのうた』にも出演してました。

友人マーク役のウィル・ポールターは一度見ると忘れにくい超個性派俳優で、10年前の『ナルニア国物語 第3章アスラン王と魔法の島』や『レヴェナント蘇えりし者』で存在感を発揮しましたが、最近の『デトロイト』の狂気演技が脳裏に焼きついています。

他にもスウェーデン俳優など個性派ぞろいなので、登場キャラクターたちが何を考え、どこへ向かうのかストーリーを全く予測させません。

映画ミッドサマー

実話?フェスティバルホラー映画?こわいの?

映画『ミッドサマー』は、一般的な宗教ではなくケルト原始宗教を信仰するスウェーデンのコミューン(組織体)のホルガ村が舞台となります。過去の実話を脚色した「90年に1度の夏至祭」で起こる民間信仰を描く「フォークホラー」です。

日本では、夏至祭という祭りにあわせて「フェスティバル・ホラー」とも宣伝されてます。同じフォーク・ホラーでは、キリスト教以前のケルト信仰を描いた映画『ウィッカーマン』も似た設定なので、興味ある人は観てみてください。邦画では『WOOD JOB!神去なあなあ日常』を思い出します。

個人的には映画『ミッドサマー』は、気持ち悪い描写は多いけどこわくは感じませんでした。前作『ヘレディタリー 継承』の方が不気味で不穏な状況がつづくので、こわい映画好きにはオススメです。

冒頭タペストリーが結末を予言?ハーメルンの笛吹き男?

冒頭でのタペストリー、誰もが意味深で重要だと感じたと思います。私もなるべく記憶しようとつとめたけど、その後の衝撃展開の連続でかなり忘れてしまってます。一部Google画像検索で確認したので、気になる人は検索してみてください。

タペストリーは、左から右へ時系列になっています。映画『ミッドサマー』の鑑賞後に見ると、ダニーの将来を暗示してる予言のようにも見えます。

タペストリー左端は、雪降る冬の日にダニーの妹が両親を巻きこんだ悲惨な事件が描かれています。次に泣くダニーを恋人クリスチャンがなぐさめてて、木の枝の上からながめてる男性が絵を描いてるように見えます。

次にその笛吹き男が、ダニーとクリスチャンとジョシュとマークの4人を従えて、スウェーデンのホルガ村の90年に1度の夏至祭(ミッドサマー)へ連れて行きます。右端は白夜の太陽の下で、ダニーらに混ざってガイコツ(死者)も踊ってます。

この笛吹き男はホルガ村の出身のペレです。ハーメルンの笛吹き男とは、中世13世紀ドイツである村に裏切られた男が、復讐のために村の子供たち130人を引き連れ行方不明になった事件です。『ミッドサマー』ではペレが友人を引き連れます。

ただし、ダニーは後から行くことに決めたので、もしダニーが行かなければ他の女性を連れて行ったのか興味あるとこです。ペレはダニーと2人っきりで話す時に、軽く説得してましたが。

ホルガ村の武器はドラッグ?赤子のような文明人

結局ダニーも含めた4人がペレのスウェーデンの故郷へ向かいます。飛行機内の揺れや、ドライブ中の景色の180度回転などで軽い不安をあおるのはアリ・アスター監督らしいです。景色が反転した瞬間から「別世界」入りしたとも考えられます。

ホルガ村へ入る前に、白夜で明るい草原でドラッグを飲んで気分よくくつろぎます。ダニーだけはバッドトリップになり、走り出してトイレ小屋に入り電気をつけると、背後に不気味な顔が一瞬映ります。ドラッグの幻想かもしれませんが。

ホルガ村に入ってからも、食事の飲み物に少しドラッグが入ってた可能性が高いです。ラスト近くでダニーら女性が、メイポール(十字架の上に傘のある棒)の下でダンスコンテストしてメイクイーンを決める前にも、ドラッグを飲んでました。

ダニーはドラッグを飲むと、体から草木が生えてくる幻想を見ますが、自然と同化してる夢なのでしょうか。ドラッグできめながら踊り狂うトリップ感は『デビルマン』誕生時を思い出します。ケルト等の原始宗教では実際にあったそうです。

ダニーと引き離されたクリスチャンが飲んだドラッグは、かなり強いものだったようで精力剤の一種だと思われます。性欲を抑えられなくなったクリスチャンは、若い少女マヤの誘いを断る理性すら失われてラストの悲劇へと向かいます。

アッテストゥパンの儀式とは?

映画『ミッドサーマ』で最初に衝撃を受ける儀式です。アッテストゥパン(Ättestupa)の意味は、スウェーデン語で「崖」「絶壁」だそうです。本作のアッテストゥパンの儀式とは、72歳に達した老男女が高い崖から飛び降り自殺する光景です。

絶命できなかった場合は、みんなでその苦しみを共有して息づかいをマネします。「村全体が家族」で喜びも苦しみも共有することを示す最初のシーンでもあります。そして大きなハンマーで何度も顔をつぶして絶命させ苦しみを止めてやります。

日本の「おば捨て山」と似た風習です。先史時代の北欧では実際に、共同体内で負担の大きかった高齢者は自ら命を絶ったそうです。本作では飛び降り前に食事会の主役となり歌い、みこしで運ばれ、手を切って流れた血をルーン文字の刻まれた石碑にこすりつけて最後のお祈りをします。

さすがに初めて見た外部の人間は動揺し、先に来てたサイモンとコニーのカップルはもう帰ると騒ぎ出します。年配女性指導者が「これが我々の伝統文化。命は循環(サークル・オブ・ライフ)して彼らの名も引き継がれる」と説得します。

ダニーも帰りたいと主張するが、「ホルガ村を題材に論文を書きたい」と考えるクリスチャンには同意してもらえません。ちなみに「ディレクターズ・カット版」では、もう1つ水?池?にいけにえを捧げる儀式もあるそうです。

崖からの飛び降り自殺に衝撃を受けるというより、それをながめて祝福してる村人にショックを受けます。ただ「住む場所が違えば、常識もシキタリも違う」と考えると、外部のダニーらや私達こそ異人であることも理解したいですね。

多彩な処刑方法とは?生贄か冒涜の罰か?

ペレが連れてきた4人のアメリカ人のうち、最初の犠牲者というか生贄(いけにえ)はマーク(ウィル・ポールター)です。マークは、ホルガ村の先祖の命がやどる神聖なる神木に小便してしまい、その保護者ウルフを激怒させます。

マークはそれ以前にも女性をネタにしたり、モラル感が薄い言動をしてたので、知らなかったとはいえもはや同情の余地は感じません。夕食時に若い女性に声をかけられると期待してついて行き、そのまま帰らぬ人となります。

黒人ジョシュは、マークよりはしっかりしてますが、クリスチャンが同じテーマの論文を書くと聞いてからは対抗意識で頭がいっぱいになってます。そしてついに、ルーンの聖書ルビラダー(Rubi Radr)を盗撮して、その現場を見つかり悲惨な最後をむかえます。

ジョシュが最後に見たマークは「マークの顔の皮をかぶったホルガ人」です。わかりにくかったけど、下半身もマークの皮で、アイスランドの魔術伝承「ナブロック」という死者の皮のパンツだそうです。

先に来てて、アッテストゥパンの儀式後に恋人コニーを置き去りにして帰ったと言われてたイギリス人のサイモンは、最も残酷な拷問の末に処刑されます。サイモンの罪は、アッテストゥパンを否定したことでしょうか。

先史時代の北欧ヴァイキングに伝わる処刑方法「血のワシ」(Blood Eagle)とは、人体を空中につるして背中を切り開き、左右の肺を生きたまま外へ引きづり出してワシの翼のように広げます。しばらく呼吸し続けるので、苦しみは長そう。

クリスチャンはマヤとの子作り後、9人のいけにえ候補とされ、家族を得たダニーに見捨てられて、聖殿の中で焼かれます。檻にいたクマの内臓を出し、クリスチャンにかぶせて着ぐるみのようにしたのはシュールです。

焼かれるいけにえは、ホルガからの志願者4人、外部者4人で、後1人はホルガと外部から候補者を出してメイクーン、つまりダニーに選ばせました。ペレの両親も焼死したと言ってましたが、この儀式のいけにえに名乗り出たのかもしれません。

夏至祭ミッドサマーの真の目的とは?ダニーのその後?

映画『ミッドサマー』のテーマの1つにもなってますが、夏至祭ミッドサマーの真の目的とは「近親相姦をさけるため、外部者と子作りして新しい血を取りこむ事」です。目的が「結婚」ではなく「子孫繁栄」のみなので、先進国より合理的ですが人間性は無視しています。

村のイングマールか誰かの発言「人はみな役割を果たす」の意味もこれで理解できます。ホルガ村で子作り許可年齢に達したマヤは、事前にペレから何人かの友人の写真を見せてもらい、気にいった男性クリスチャンを選んだようです。

マヤは序盤で気合い入れたり、ダンス中にわざとクリスチャンを蹴ったり、枕やベッド下にルーン文字「愛」をひそませたり、タペストリー「ラヴストーリー」のとおりに陰毛をミートパイに、生理の血を飲み物に混ぜてクリスチャンに飲食させます。

ラストでは、精力剤入りの強いドラッグでもうろうとしたクリスチャンが、マヤの母も含む裸の女性数人の前で、マヤとつながります。マヤの声にあわせて女性たちも叫ぶ光景が異常すぎるけど「受精」の喜びも家族で分かちあうのでしょう。

その行為後、クリスチャンはあっさり焼き殺されるので虫のようですが「同じ血を他の女性と共有しない」という意味では合理的だと感じます。ほしいのは「外部からの夫」ではなく、あくまでも「子種/精子」なのです。

ダニーがダンスコンテストで最後まで踊り続けて「メイクイーン」に選ばれたのは偶然か必然かわかりません。しかし外部の女性は「クイーン=女王アリ/女王蜂」として子孫を産み続ける役割を与えられるのかもしれません。

ちなみに、ルーンの聖書ルビ・ラダーを記せるのは、あえて近親交配(近親相姦)で生んだ純粋な神官(日本でいう巫女)のみだとも語られます。少し顔がただれた人や、身障者のような人がいましたが、彼らのことだと思います。

ダニーが求めたものとは?恐れた事は?

ダニーは冒頭で妹と両親を失い、深い悲しみにつつまれます。それを癒やしてくれるのは、まだ結婚はしてないが唯一家族のように甘えられるクリスチャンだけです。ダニーが求めたものは、頼れて依存できる家族の代替です。

しかしクリスチャンは、まだ他の女性に興味もあるしダニーの愛も重すぎるので破局寸前です。つきあってる期間を月まではっきり言えるダニーに比べ、つきあい期間どころか誕生日すら覚えてないクリスチャンの落差は恋愛あるあるです。

ダニーが最も恐れてることは、クリスチャンと別れて独りきりになることです。だからコニーが恋人サイモンに置き去りにされたと聞くと、自分のことのように「1人にされることを恐れ」ました。

ダニーが求めたものが「クリスチャン」ではなく、あくまでも「家族の代替」だったことは、「ホルガ村の住人が家族になってくれた」瞬間、クリスチャンをいけにえに選んだことから明らかです。

メイクイーンに選ばれたダニーは、ミッドソンマルクランス(美しい花の冠)をかぶり、村人達にたたえられ「必要とされる喜び」を得ます。クリスチャンがマヤと結ばれる姿を見て泣き叫ぶと、村人達も本当の家族のように悲しんでくれて一体感も感じます。結果的に失恋セラピーにもなってます。

家族の定義は現在の個人主義主流の文明国では「血縁関係」だけですが、原始宗教をもとに生きるホルガ村では「運命共同体が家族」です。だから共同体の繁栄のためには、外部の血も入れるし、殺人や高齢者排除も「罪」とは感じません。

北欧は福祉国家と呼ばれ、他の欧米や先進国と比べるとそもそもその傾向は強いです。福祉国家とは逆光するし超個人主義なのに、トランプ大統領の「強いアメリカ」も、ホルガと同様に自国の繁栄重視を掲げる点は面白いですね。

90年周期の理由は?9は聖なる数字?

ホルガ村では「9」が特別な数字として多用されてます。ミッドサマー(夏至祭)は90年周期で、9日間続けられ、最後は9人が聖殿で焼かれていけにえとして捧げられます。飛び降り前に血をぬる石碑も9つのルーン文字が描かれてます。

そもそも北欧神話には『マイティ・ソー』でも示されたように、神々の世界アスガルドを含む「9つの世界」が存在します。地球はそのうちの1つ「ミッドガルド」に所属します。9つの世界は、世界樹ユグドラシルがつないでいます。

ホルガ村では、9の倍数の「18年周期」で過ごします。少年(18歳まで)、青年(36歳まで/学生)、中年(54歳まで/労働者)、老人(72歳まで)です。そして72歳になるとアッテストゥパンの儀式で飛び降り自殺して次の世代に名を譲ります。

映画『ミッドサマー』で夏至祭が90年に1度の理由は、その周期くらいで積極的に外部の血を入れる必要があるからだと思います。72年より長いので、一度も夏至祭を体験せずに死んでいく人には気の毒です。

また、90年周期という設定は濃い血を薄める目的としては長すぎるので、実際には夏至祭以外の日にも外部からの人間を引き入れてると考えたいです。

映画『ミッドサマー』私の評価と総括

ひとことで言うと「とんでもなく衝撃的な映画」です。ただし良い意味ではなく、わるい意味で記憶に残るため、この手の映画を見慣れてない人や好きではない人には全くオススメできないです。怖いもの見たさならどうぞ。

昔ながらの共同体生活、三大宗教以外の原始宗教などの非常識・非日常を描いた「フォークホラー」というジャンルでは、映画『ミッドサマー』は間違いなく歴史に残る印象的な作品だと思います。

ホラー映画としての「こわさ」はそれほどないけど「気持ち悪さ・狂気」はずば抜けて高いです。ストーリーの大枠は「家族を失ったダニーが、新たな家族を得るまでの物語」と考えると、意外とシンプルです。

冒頭で亡くなった妹たちの死因が伏線になるかと深読みしたけど回収されることはなく、逆に中盤での「近親相姦」という言葉でラストを予測できたりして驚きは少なかったです。その点では、ラストのひとひねりがきいた『ヘレディタリー継承』の方が好みですが、次回作以降も楽しみな監督になってきました!

他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。

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サイト管理人ゆめぴょん(映画・旅行好き)
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