評価は?『ストーリーオブマイライフわたしの若草物語』ネタバレ感想考察/原作との違いは?どの女優俳優が好き?
長女メグは社交界で負傷し、次女ジョーが意気投合した隣家ローリーに家まで送られます。そこで四女エイミー、三女ベスとも知りあいます。やがてローリーはジョーに求婚するのだが…。夢か愛か?四姉妹が選ぶ道とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 |
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日本公開日 | 2020/6/12 [予告] 上映時間:135分 |
製作国 | アメリカ |
原題/英題 | Little Women |
監督・キャスト | グレタ・ガーウィグ(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:PG |
配給/製作 (画像出典) | コロンビア映画、ソニー・ピクチャーズ/ニュー・リージェンシー・ピクチャーズ、ディ・ノヴィ・ピクチャーズ、パスカル・ピクチャーズ |
日本興行収入 | 3.4億円(興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 2.1億USドル [出典] |
製作費 | 0.4億USドル |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 82(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- ジョー・マーチ(シアーシャ・ローナン)四姉妹の次女。個性豊かな情熱家で小説家を目指す。自分を曲げられない性格
- エイミー・マーチ(フローレンス・ピュー)四姉妹の四女。ジョーとはケンカばかり。金持ちになりたい
- メグ・マーチ(エマ・ワトソン)四姉妹の長女。女優の才能がありそうだが、幸せな結婚を望む
- エリザベス・マーチ/通称ベス(エリザ・スカンレン)四姉妹の三女。心優しい性格。病弱
- セオドア・ローレンス/通称ローリー(ティモシー・シャラメ)四姉妹の幼なじみ。ジョーのことを想ってる
- ミセス・マーチ(ローラ・ダーン)四姉妹の母親。夫は従軍牧師として不在
- マーチおばさん(メリル・ストリープ)四姉妹の大伯母。未亡人だが裕福。エイミーをパリへ同行させる
- ジョン・ブルック(ジェームズ・ノートン)ローリーの家庭教師。メグに一目ぼれ
- フレデリック・ベア(ルイ・ガレル)ジョーがニューヨークで下宿中に出会う。文学に興味あり
- ミスター・ローレンス(クリス・クーパー)ローリーの祖父。娘の死後ローリーを育てる。ベスを娘に投影する
ネタバレ感想『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
グレタ・ガーウィグ監督や豪華キャスト
グレタ・ガーウィグ監督は、女優としてスタートしたが脚本・監督などにも関わってきて、2017年『レディバード』ではアカデミー賞の作品賞/監督賞/脚本賞にノミネート、ゴールデングローブ賞では作品賞/主演女優賞を受賞し脚本賞でもノミネートされた注目の女性監督です。
主演女優のシアーシャ・ローナンは、2007年『つぐない』で13歳にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされ、2009年『ラブリーボーン』では主役に抜擢されました。その後も中規模映画を中心に活躍し、2017年『レディバード』でグレタ・ガーウィグ監督作の主役を務めました。
ローリー役のティモシー・シャラメは、イケメン俳優として人気上昇中です。2017年『君の名前で僕を呼んで』で演じた主演はアカデミー賞等で男優賞にノミネートし、同年『レディバード』ではシアーシャ・ローナンと共演してます。
メグ役のエマ・ワトソンは、ハリーポッターシリーズのハーマイオニーが有名で『美女と野獣(2017)』も大ヒットしました。エイミー役のフローレンス・ピューは2020年『ミッドサマー』『ブラックウィドゥ』に出演し人気急上昇中の若手女優です。
他にも、メリル・ストリープ、ローラ・ダーン、エリザ・スカンレン、ジェームズ・ノートン、 トレイシー・レッツ等の新旧スター達が脇を固めてて豪華キャストです。四姉妹の少女時代も同じ女優が演じてますが、全く違和感ないのはさすが。
原作との相違点は?ジョーの出版交渉は?
原作はアメリカの小説家ルイーザ・メイ・オルコットが、1868年に発表した小説『若草物語』『続 若草物語』です。さらに続編『第三若草物語』の一部も含まれています。また脚色して原作と違う解釈になってる部分も少しだけあります。
映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』は、ジョーがニューヨークで小説家として修行して処女小説を出版社に持ちこむシーンから始まります。ジョーは三女ベスの病状悪化の知らせを聞いて故郷コンコードへ電車で戻ります。
長女メグはジョンと結婚後に双子を産み、ぜいたくできない暮らしをしてます。四女エイミーは富豪マーチおばさんに連れられてヨーロッパへ行き、絵画を学ぶが才能なさに気づき、裕福な家庭のフレッドと結婚して家族を支えようと決めます。
このように四姉妹が大人になり結婚するまでの物語が主軸ですが、少女時代として『若草物語』のエピソードも多数登場します。原作を細かく覚えてはいませんが、全編をとおしてほぼ原作どおりどころか、うまくまとめてると思います。
原作と最も大きな違いは、ジョーの結婚と出版社に対する態度です。ローリーからの告白を断って後悔したジョーは、尋ねてきたフレデリックを駅まで追って求婚しますが、それは小説でのラストシーンとして見せ、現実はあいまいにしてます。
出版社の編集者は「女性は結婚で終わるハッピーエンドの方が売れる」と言うが、最初ジョーは反論します。原作にない部分です。結局は経済的な理由で受け入れるが、著作権放棄はせず、印税「5%」を「6.6%」に上げる交渉も成功させます。
時系列がわかりにくい?髪で判断?
主な視点は大人になった後の三女ジョーだけど、メグ、エイミーからの視点も加わります。おまけに少女時代の四姉妹の視点もはさまれるため、映画に慣れてるはずの私でも「今のは現在?過去?」と軽く混乱するシーンはありました。
四姉妹も母親も、同じ女優なので役者でも判断できません。最も新しい過去(つまり現在の直前)はほぼ大人なので、見た目でも判断しにくいです。もちろん少し観てるとわかりますが、ミステリではないのでもっとわかりやすいのがいいですね。
ジョーが資金を得るために自慢の長髪を売りますが、それ以降は「ショートヘアーのジョーは過去」という判断材料ができてよかったです。ちなみに髪代の25ドルは、その後ジョーがニューヨークで得た処女作の20ドルより高くて衝撃です。
ジョーの物語!自立を目指すが最も結婚を意識?
ジョーは長女メグに連れ添って社交界のダンスパーティーへ行くが、女性らしく踊るのが苦手で1人別室へ逃げこみます。そこでローリーと出会い、変わり者どおし意気投合して外で好きなように踊ります。
演じるシアーシャ・ローナンとティモシー・シャラメの美男美女ぶりや、男女を意識しない自由な踊り方から、このダンスは名シーンです。ダンス中に足をくじいたメグをローリー家の馬車が送りとどけ、隣人との交流が始まります。
ローリーは最初から同じ年齢のジョーに想いをよせ、ジョーも薄々気づいてたと感じます。しかしジョーは小説家として自立した女性を目指し、生涯独身でいいと思ってたため、ローリーとは男性の友人のような関係を維持したいと考えてます。
だからローリーが「恋人関係」に発展させようとするたびに、ジョーは話をそらします。しかしメグの結婚式後、しびれを切らしたローリーに求婚されはっきりことわったため、友人関係も終わってしまいます。
その後ジョーは「結婚だけが幸せじゃないのに、なぜかさみしい時がある」と母に泣いてつげ、ローリーとの共通ポストに復縁希望の手紙を入れます。しかし時すでにおそく、こっそり手紙を取り出して破って川に捨てるシーンはせつなすぎます。
結局ジョーは、小説を批判されて逆ギレした相手フレデリック・ベアと結ばれるのですが、小説や文学や演劇に興味があり忖度なく批評してくれるフレデリックはとてもお似合いだと思います。
ジョーは小説家としての自立を目指しながらも、どこかで現実的な妥協点をさぐってたようにも見えます。だから最も「結婚」を意識しながらも、小説家としての挑戦をあきらめることができず「結婚」は最後の手段にしたかったのでしょう。
それはある意味、編集者から言われた「女性は結婚のみがハッピーエンド」に結びついて現実ともつながっています。
エイミーの物語!片想いと嫉妬の少女時代?
少女時代のエイミーはまだ幼さが残ってますが、フローレンス・ピューが違和感なく演じててアカデミー助演女優賞ノミネートも納得です。低い鼻への劣等感エピソード等もうまく演出してます。
四女エイミーは四姉妹ではジョーの次に活発な性格なので、なにかとジョーとぶつかります。しかしそれは「当然」であることが少しずつ判明します。足を負傷したメグを送って来た時、エイミーがローリーを見る目は「初恋」に近いです。
しかしローリーが見てるのはジョーであることも認識してます。エイミーが「絵画」を学ぶきっかけの1つは、ジョーの「小説」への対抗意識からだと感じます。学校の先生に手をたたかれた時も、まっさきにローリーに甘えに行きます。
そしてエイミーの中の「女」が最も表出したのは、ジョーの大切な原稿を燃やした時です。一見、演劇へ連れてってくれなかったことの仕返しに思えるけど、明らかにジョーへの嫉妬心からです。
ローリーがジョーを誘いに来て、一緒に凍った湖でアイススケートに行った時に、けなげについて行こうとするエイミーの姿は、かわいくもありせつなくも感じました。氷に落ちて死にかけた時、助けてくれたローリーは王子様に見えたでしょう。
パリでローリーと再会した時、ジョーへの告白を断られたことを知りながらも「恋」する女性の顔を見せます。それを横で見てたマーチおばさんは、エイミーが金持ちと結婚する夢は実現しないことを予想したように思えます。
そもそもローリーが同じパリにいるのは、エイミーをねらってのことなので「ジョーに断られたから、2番めの私に決めるの?それはイヤ」とはねつけたエイミーの気持ちはわかりすぎます。しかしエイミーの結論はもう決まってたと思います。
思えば、エイミーもローリーも少年少女時代をジョーに振り回されてきたので、初めて2人で向き合うことになり、いい夫婦になれそうです。逆にさんざん振り回してきたジョーは、この2人が結婚することによりついに居場所をなくしたと感じたことでしょう。
天使ベスの物語!心優しさが命取りに?
『若草物語』の四姉妹では一番目立たない存在だけど、病弱な演技と息をひきとる名シーンがあるため名優が演じることが多い印象です。今回のエリザ・スカンレンは初めて見た女優ですが、売れっ子3人にひけをとらないほどの名演でした。
ベスはおとなしくて心優しい性格のため誰とも衝突せず、姉妹や両親だけでなく隣のローレンスおじさんからも慕われています。特に気性のあらいジョーとエイミーにとっては、母親の代理的な心の支えになってたようです。
貧しい家にクリスマスの食事を届けましょう!という母や、戦争で負傷した黒人を助けるため家を離れてる父の心優しい性格を一番引き継いでるのはベスです。他3人は自己でせいいっぱいだけど、ベスは他人への思いやりを持ち続けてる聖女です。
母から頼まれたとおり、貧しい家への届け物も1人でやり遂げます。しかしその家で猩紅熱(しょうこうねつ)に感染してしまい、その時は回復したけど、それで弱った心臓のせいでやがて亡くなります。
猩紅熱から回復した時と、亡くなった時のジョーの体験はデジャブのように同じシーンで語られて印象的です。結果的には「貧しい家を助けたことが死をまねいた」という違和感ある描き方になってるけど宗教的であり、まさに天使です。
隣のローレンスおじさんは「誰かピアノをひきに来てほしい」と頼みますが、最初から「おとなしい娘」に似てるベスが希望だったと思います。そして「良い行いのごほうび」としてピアノをプレゼントしますが、何度ひけたか考えると涙がこぼれます。
歓喜する姉妹を残して、礼儀正しくローレンスおじさんにお礼を言いに行くベスの姿は最高にいとおしい。しかしその挨拶時に発熱が発覚したのも悲しいですね。ある意味、ベスのことを一番見てたのはローレンスおじさんだったわけです。
ベスはみんなの精神的な支柱で慈悲の象徴であり、聖母マリアのような存在です。死ぬ直前にジョーに「書いて」と言い、結果的に『若草物語』の誕生につながります。また、支えを失ったジョーが結婚を決意するきっかけにもなりました。
メグの物語!母を継承し妹達を愛へと導いた?
メグを演じたエマ・ワトソンは、美しくて不器用で少し影も見せる長女を見事に演じてます。存在感ある女優ですが、一歩引いた位置から妹達を盛り上げる役割に徹してて、助演ハーマイオニーの経験も生かされてると思います。
メグは母親不在時には母の代わりを演じる必要があったし、マーチ家の家計を支えねばという強い使命感も感じてたでしょう。その責任を果たすために社交界デビューしますが、純粋すぎて駆け引きなどには向かず失敗におわります。
やがて隣家ローリーの家庭教師ジョン・ブルックと恋に落ち、裕福になれないことを知りつつも「愛」をつらぬいて結婚します。そして双子も生まれ、マーチ家を支えるどころか50ドルのドレスも買えないほど生活には困窮します。
メグがとった行動は一見矛盾してますが「重責」を感じ続けてきたことへの反動とも思えます。しかし「裕福でなくても愛の家族を築いた」母親を最も強く引き継いでるし、結果的には「夢」や「お金」を目指した妹2人もメグに追随します。
そういう意味では、迷った妹たちに「愛」という指針を示した存在であり、妹たちの運命を導いたという意味で「長女の役割を果たした」とも感じます。ベスは「精神」の支えでしたが、メグは四姉妹に「生き方」を示したのです。
マーチおばさんの物語!女が自力で生きるのは無理?
四姉妹の大伯母であるマーチおばさんは、名優メリル・ストリープが演じてて、深みや奥行きを感じるキャラに仕上がっています。昔はもう少し裕福だったが落ちぶれぎみのマーチ家の中では、数少ない富裕層です。
「女性の意志は無視される」男性中心の社会を生き抜いてきたため、小説家を夢みて「生涯独身でいい」と語るジョーに対しては「女性が自分の力で生きるのは無理」と断言します。押しつけ老害発言だけど、当時の価値観としては正論です。
マーチ伯母さんは、四姉妹の両親が生活に苦労してる様子も見てきてるので、子ども達にはお金に不自由しない生活を目指してほしいのです。しかしメグは愛に、ジョーは夢に走り、ベスに嫁入りは難しそうなのでエイミーに白羽の矢を立てます。
エイミーはメグの貧困を見て、ローリーにも失恋(片想いからの)したためヨーロッパへ行き、マーチおばさんの洗脳どおり富裕家庭の男性との結婚を目標として求婚までこじつけます。ところがローリーと再会して「愛」を選びます。
エイミーが求婚を断った時のマーチおばさんの心境は「自分の人生が完全に否定された」ように感じたことでしょう。しかしローリーが現れた時からある程度の覚悟はしてたように思います。
この時代から「女性の自由な結婚」の流れは一般的になっていくのでしょう。ただし「女性の自立」まではまだ時間が必要だったため、結果的にジョーもマーチ伯母の言ったとおり「結婚」することになります。
マーチおばさんは堅物だったけど、実は性格はジョーに最も似てて、昔は「大きな夢」を持ってたように感じます。だから最初にジョーを手元におこうとしたのでしょう。遺産の屋敷は「自分のような時代の犠牲者を増やさないため」最も有効活用できそうなジョーにたくしたのだと思います。
『ストーリーオブマイライフ わたしの若草物語』私の評価と総評
『若草物語』の映像化作品は、アニメ版も含めて何本か見ましたが『ストーリーオブマイライフ わたしの若草物語』をベスト若草物語に認定したいです!現代風な見え方にアップデートしてるので、また上書きされるでしょうけど。
一方、文芸作品なのでストーリーは予想どおりだし意外性もほぼないため、そういうのを期待してる人には物足りないと思います。私も新作の多い普段なら見に行かなかったかもしれませんが、結果的には観に行ってよかったです。
ストーリーは知ってるけど、グレタ・ガーウィグ監督が追求した構成やセリフ回しが絶妙だったため、何度も感動をさそわれて涙しました。今を代表する俳優女優の豪華キャストをここまで効果的に使ってる映画には、そうめぐりあえないので、ぜひ多くの人におすすめしたいです!
私の評価 70/100(60が平均)
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