『バスカヴィル家の犬 シャーロック 劇場版』感想ネタバレ解説考察/犯人の正体と動機は？結末は？
TVドラマの劇場版。瀬戸内海の離島で資産家が変死。その娘の誘拐未遂事件の捜査を依頼されてた若宮は、獅子雄と共に離島へ。犬の遠吠え聞こえる華麗な一族の洋館で、新たな連続殺人が発生するが…。隠された過去とは？犬の呪いとは？（ネタバレ感想あらすじ↓）
| 映画名/邦題 | バスカヴィル家の犬 シャーロック 劇場版 |
|---|---|
| 日本公開日 | 2022/6/17 [予告] 上映時間:119分 |
| 監督･キャスト | 西谷弘［キャスト］ |
| 映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
| 配給/製作 （画像出典） | 東宝／角川大映スタジオ |
| 日本興行収入 | 5.2億円 （興行収入ランキング） |
| 平均評価 平均:100換算 | （興収･評価: 2024.8.15更新） 70（私の評価は含まず） |
| シリーズ 関連作品 | TVドラマ映画化一覧 |
キャラ･ランキング（キャスト/出演者）
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名（キャスト/出演者/声優）
- 誉獅子雄/ほまれ ししお（ディーン・フジオカ）犯罪捜査コンサルタント。不可解な謎を解ける天才だが犯罪衝動もある
- 蓮壁紅/はすかべ べに（新木優子）資産家・蓮壁千鶴男と依羅の娘。美大生。誘拐されたが解放された
- 捨井遥人/すてい はると（小泉孝太郎）大学准教授。地震の研究者。千里の元家庭教師
- 馬場杜夫/もりお（椎名桔平）蓮壁家の執事
- 若宮潤一（岩田剛典）元精神科医。獅子雄の助手
- 冨楽朗子/ふらく ろうこ（広末涼子）夫とともにリフォーム店を営む業者。蓮壁家を担当
- 蓮壁千里/せんり（村上虹郎）蓮壁家の長男。東京の大学の薬学部生
- 冨楽雷太/ふらく らいた（渋川清彦）朗子の夫。リフォーム会社経営
- 蓮壁千鶴男/ちづお（西村まさ彦）蓮壁家の当主で依羅の夫。資産家
- 江藤礼二/えとう れいじ（佐々木蔵之介）警視庁捜査一課長。誉獅子雄を利用して出世をねらう
- 小暮クミコ（山田真歩）警視庁捜査一課の巡査部長。江藤の部下
- 蓮壁依羅/いら（稲森いずみ）千鶴男の妻。車椅子を利用
ネタバレ感想『バスカヴィル家の犬 シャーロック 劇場版』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を！
原作は？TVドラマ視聴は必須？監督とキャスト
映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック 劇場版』は、フジテレビ月9ドラマ『シャーロック』続編です。ベースとした原作はアーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズシリーズ』の長編小説『バスカヴィル家の犬』です。
テレビドラマ版の存在も知らなかったけど、前日に1話目だけ観ました。そんな「にわか」からの助言になりますが、今回の映画は「テレビドラマ版を未視聴でも問題ない」と思います。内輪ネタが少なそうな感じは好感持てました。
西谷弘（ひろし）監督は、映画では『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』『沈黙のパレード』（2022年公開予定）など、東野圭吾原作の映画を多く監督。
TVドラマから続投で主演のディーン・フジオカは、最近『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』『海を駆ける』等に出演。W主演の岩田剛典は、最近『AI崩壊』『新解釈三國志』等に出演。
離島捜査へ行く動機は？亡き資産家と若宮の関係は？
娘の誘拐犯に身代金を渡しに行った資産家の蓮壁千鶴男（西村まさ彦）だが、金も娘も戻ってきました。千鶴男がリモートで誘拐犯の捜査を依頼してる相手は、若宮潤一（岩田剛典）。そばには誉獅子雄（ディーン・フジオカ）も。
しかし千鶴男は通話がつながった状態で倒れ、息子の千里（村上虹郎）が死亡を確認。若宮は東京で蓮壁千里を世話したことがある関係です。獅子雄が離島捜査へ行くほど興味持った理由は、死因が日本で根絶した狂犬病だったからです。
警視庁捜査一課長の江藤礼二（佐々木蔵之介）の父親がその離島の警察だった、という伏線ぽい事まで聞き、獅子雄と若宮は島へ。千鶴男の妻、息子の千里、娘の紅、執事、観察眼ある地質学者、リフォーム業者らが容疑者の蓮壁家へ…
序盤のネタバレあらすじは以上。いきなり叫んで銃をぶっ放したり、父の死に直面した息子や2人の男たちの冷静ぶり、蓮壁家で初対面時の容疑者たちなど、演技指導の甘さが心配なスタートです。
千鶴男の足の傷（野生動物用のわなで）を「犬に噛まれた痕」のように見せたのもフェアじゃないですね。しげみの中の赤い目の魔犬？も明らかに1匹なので、銃があれば対抗できるだろうし、そもそも視聴者に作り物とバレるのもどうかと。
容疑者のうち、地質学者の捨井遥人（小泉孝太郎）は獅子雄と似たタイプの洞察力の持ち主で一番興味深かったです。しかし結論を言うと、この魅力的なキャラ捨井をうまく描けなかったのが本作の最大の失点だと思います（後述）。
タイトルの意味は？第2の犠牲者は誰？
タイトルは、イギリスのミステリー小説『シャーロック・ホームズ』の『バスカヴィル家の犬』そのままで、内容も「魔犬の呪い」などの設定を流用しています。
本作は、誉獅子雄のイニシャルS.H.が「Sherlock Holmes」で、若宮準一のJ.W.が「John Watson」だったりと、原作の名前で遊ぶクセが感じられます。
今回の映画『バスカヴィル家の犬』も「蓮壁家と愛犬ヴィル」（ハスカベ家とヴィルの犬）と読み替えることができます。いや、そもそも『蓮壁家と愛犬ヴィル』というタイトルでよかったと思うのですが。
蓮壁家の第2の犠牲者・蓮壁千里は「父の財産と遺言書」を得るために旧鉱山跡へ向かい、凍死体で発見されます。魔犬の赤い目におびえて自ら罠にかかってしまい、抜けられず死亡。瀬戸内海の島で、あの装備で凍死するのかは疑問。
千里のキャラは最後まで一貫性なくて、よくわかりませんでした。『孤狼の血 LEVEL2』ではいい演技だった村上虹郎なのに、今回は魅力ない役でもったいないですね。
黒犬や魔犬の呪いとは？20年前の誘拐事件とは？
かすみ島では昔、死者をとむらう時に「生きた黒犬」を一緒に埋める風習がありました。そんな黒犬たちの怨念が「魔犬の呪い」となって島民を襲うとうわさされ恐れられました。千鶴男が金庫を守るために流したウソと予想したが深読みに終わり残念。
若宮が蓮壁紅に恋心を抱いていただけの頃、誉獅子雄は紅が務めてたキャバクラで「パパになるから引退しろ」と紅に説教するオヤジの件や、江藤の父が捜査した「20年前の女の赤ちゃん誘拐事件」について聞きこみ。
20年前の誘拐事件とは、ある夫婦の赤ちゃんが、父親の居眠り中に失踪し現在まで発見されてない事件です。その夫婦の正体は、蓮壁家にも出入りしてるリフォーム業者の冨楽朗子（広末涼子）と夫の雷太（渋川清彦）です。
その時の捜査を指揮した警察官が江藤の父でした。しかし島の有力者・蓮壁家が犯人として浮上すると上層部からの圧力で捜査は打ち切られました。江藤の父は警察をやめて独自に捜査したそうだけど、その伏線回収もないのも不満点。
映画やドラマでよくある展開ですが、本作が劣ってる点は「偶然、母親がトイレで会った紅の目を見て娘だと気づいた」ことです。もちろん背中の「犬のアザ」を見るまでやDNA鑑定結果までは確信できなかったけど、発見方法が雑。
さらにそれを打ち明けられた紅が、その日中に事態をのみこみ、蓮壁家への復讐まで計画するというのも時間の都合はあるにしろ急展開すぎます。さらにさらに、この長い回想シーンが立ち話で語られるのもTV的で映画としては物足りない。
真犯人の正体は？第3、第4の犠牲者は誰？
蓮壁千鶴男、蓮壁千里を殺害し、遺産相続をねらった真犯人の正体は、蓮壁紅こと「冨楽碧海/ふらく あおみ」です。千鶴男の足傷を治療するふりして「狂犬病菌」をぬり、罠にかかった千里を抜け出せなくして凍死させました。
その前の「紅が誘拐された事件」も千鶴男を負傷させるための偽装誘拐です。脅迫状は冨楽夫妻が用意。この後、育ての母である蓮壁依羅を殺害する予定だったのでしょうが、紅を愛する実親以外の3人の男性のうち2人が救います。
まず1人である若宮は、獅子雄の指示で紅に睡眠薬を飲ませて犯行を行えないようにします。もう1人、紅を我が子のように愛した執事の馬場杜夫は、紅の代わりに蓮壁依羅を絞殺（第3犠牲者）し、自らも首をつって自殺（第4犠牲者）。遺書には「3人の殺害は全て自分が実行した」と。
馬場杜夫は、依羅が目を放したすきに娘が浴槽で溺死したのを知ってました。依羅が娘の身代わりとして、公園で女の赤ちゃんを誘拐した時も共犯者。千里が生まれた後、それを知った千鶴男も依羅も紅を無視したが、執事の馬場だけは紅に親のように接して「父の日」に絵を描いてもらったほど。
実は紅の計画は「唯一の遺産相続人が一番あやしまれる」ことを全く考慮してないので破綻してると思ったのですが、執事の馬場が全員殺害したと認められれば紅への疑いは晴れそうです。ただし、紅が出頭しなければですが。
そして本作で一番納得できない点は「復讐のためとはいえ、我が娘が殺人を実行するのを許容する両親」です。長年つらい目にあわされた紅が決めた計画だし、冨楽夫婦の「不用心で誘拐され娘の人生を狂わせた後ろめたさ」があるにしても。
真犯人の衝撃の結末は？生き残れた者は？
獅子雄は謎さえ解ければ逮捕に興味はないので、紅が目覚めるまで実の両親と過ごせるよう警察への連絡を保留にします。そこへ地質学者の捨井が、紅への想いを伝えに来ます。実は、蓮壁家への最初の脅迫文は捨井からでした。
その地震への警告は地質学者として、本気で紅を守りたかったからだと獅子雄は解説。すると本当に大地震が発生し、捨井は覚悟を決めます。目覚めた紅は、実の両親に囲まれて洋館の下敷きに。獅子雄、若宮、YouTuberは車で高地へ。
全く予想できなかった衝撃のラストに驚きましたが、やや過剰にすぎるとは感じます。ただ、最低2人の命を奪った紅と両親の罪に対する罰を、若宮たちに選択させるよりは、大自然に裁かせた方が劇的だという判断なのでしょう。
結局、蓮壁家の関係者で生き残れた者は0人という結末に。紅を愛する3人目の捨井というキャラを登場させ、最後に告白に来たいいラストだと思ったのに、彼に紅を救わせなかったのは拍子抜けです。捨井の存在価値は最後まで不明。
映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』私の感想と評価
テレビドラマでファンだった人は楽しめそうです。未視聴でも問題なく理解できました。役者は好演で、過去の誘拐事件からの真相は少しジーンとさせられました。そして衝撃のラストは賛否はともかく、誰も予想できなかったと思います。
ストーリーや演出は日本のテレビドラマ・クオリティなので、テレビ視聴者は満足できても、普段から映画と配信作品しか観てない者からすると手抜きや雑さは気になります。感染症拡大の時期なら、映画館で観る必要はなさそう。
また、ミステリ映画のはずなのに、ミステリとしての魅力や面白さを追及してないため、ロジカルと感じないし名探偵の推理に納得感も感じられず物足りない。ドラマファン、役者ファン、衝撃ラスト観たい人にはオススメしたいです！
私の評価 60/100（60が平均）
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