『キングスマン ファーストエージェント』感想ネタバレ解説/敵の正体と目的は?誕生の秘密とは?
キングスマン・シリーズ3作目。1作目の前日譚。1914年、第一次世界大戦を裏であやつる闇の組織に対し、英国貴族の親子が立ち向かおうとするが…。初期メンバーは誰?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | キングスマン ファースト・エージェント |
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日本公開日 | 2021/12/24 [予告] 上映時間:131分 |
製作国 | アメリカ |
原題/英題 | The King's Man |
監督・キャスト | マシュー・ヴォーン[キャスト] |
映倫区分 | 日本:PG12(小学生指導必要) USA:R |
配給/製作 (画像出典) | ウォルト・ディズニー・ジャパン/Marv Films、Cloudy Productions、20世紀スタジオ |
日本興行収入 | 9.1億円 (興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 1.2億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 70(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | キングスマン関連映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- グリゴリー・ラスプーチン(リス・エヴァンス。山路和弘)謎の狂団の不死身の怪僧。ロシア皇帝をあやつる
- ポリー・ウィルキンス(ジェマ・アータートン。園崎未恵)オックスフォード家の使用人。射撃の腕はばつぐん
- オーランド・オックスフォード公爵(レイフ・ファインズ。小澤征悦)戦争をきらう平和主義者。謎の狂団と戦う
- ショーラ(ジャイモン・フンスー。乃村健次)オーックスフォード公の執事。戦闘にたけている
- コンラッド・オックスフォード(ハリス・ディキンソン/若い頃:アレクサンダー・ショウ。梶裕貴)オーランドの息子。正義感あふれる青年
- キャプテン・モートン/シェパード(マシュー・グッド)
ネタバレ感想『キングスマン ファースト・エージェント』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
キングスマンの起源?監督とキャストは?
本作『キングスマン ファースト・エージェント』は、キングスマン・シリーズ3作目ですが、時系列は『キングスマン1作目』の前日譚というか起源の物語です。
マシュー・ヴォーン監督は、ヒーロー映画『キック・アス』(2010)や『X-MEN ファーストジェネレーション』(2011)で脚光をあび、キングスマンシリーズは3作とも監督・脚本・制作等で関わっています。
主演はレイフ・ファインズ(ハリーポッターシリーズのヴォルデモート役や007シリーズのM役等) とハリス・ディキンソン(『マレフィセント2』フィリップ王子役等)。
第一次世界大戦の引き金サラエボ事件の真相?
1902年、アフリカでのボーア戦争時。オックスフォード公爵(レイフ・ファインズ)は、幼い息子コンラッドの目の前で、妻エミリーを銃殺され、さらに平和主義へと傾倒します。
12年後の1914年のヨーロッパ。いとこどおしの3人の王、イギリス王ジョージ5世、ドイツ皇帝(カイザー)ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝(ツァーリ)ニコライ2世は、それぞれの思惑で参戦。トム・ホランダーが1人3役。オックスフォード公は裏であやつる組織を疑います。
オーストリア皇位継承者フェルディナント大公と妻ゾフィーが、オックスフォード親子の目の前で射殺されるサラエボ事件が発生し第一次世界大戦の引き金に。捕まった実行犯セルビア人のプリンツィプは、謎の狂団の「クマ印の指輪」を所持。
一方、ロシア皇帝の息子の病を治した怪僧ラスプーチンは、国を動かせるほどの権力を得てました。オックスフォード公は、ラスプーチンの「カメ印の指輪」に気づき、息子コンラッド、執事ショーラ、女使用人ポリーと共に暗殺へ出向きます。
序盤のネタバレあらすじは以上。世界史で重要なサラエボ事件までの経緯が語られ、始めて知る細かい点もあり勉強になります。いとこどおしの戦争で何千、何万もの人々が亡くなったかと思うと、本当にバカバカしい事態です。
サラエボ事件の前に暗殺未遂事件があったのも史実のようです。本作『キングスマン ファーストエージェント』では、息子コンラッドが、投げられた爆弾をステッキでかわし後ろの車両が被弾。
戦争へ行きたい息子コンラッドを危険だからと引き止めておきながら、暗殺へは同行させるオックスフォード公の感覚はよくわかりません。
ラスプーチン殺害犯は誰?アメリカ参戦の決めては?
怪僧ラスプーチンとのバトルは、中盤のハイライトでした。その前に、男も好きなラスプーチンが選んだのが、コンラッドでははなく父のオックスフォード公だったのはそっちかよと笑えました。しかも治癒能力は本物だったんですね。
執事ショーラが善戦し、ロシアのコサックダンス調で戦うラスプーチンが、歴代のキングスマン映画らしくてユーモラスでした。ラスプーチンは窒息させてもゾンビのように生き返るが、射撃名人ポリーがしとめて「男は役立たず」と締めます。
ラスプーチンが毒を飲んでも死ななかったのも史実からです。毎日少量の毒を飲んできたえてたかは不明ですが。アーモンドケーキの中に混ぜた「青酸カリがアーモンド臭」なのは、敵狂団リーダーが自害薬を配った時の伏線回収ですね。
その後、アメリカがイギリスに加勢しようとするが、敵狂団の陰謀でメキシコに邪魔させようとしたり、米大統領をマタハリがハニートラップにかけたりして阻止。万能使用人ポリーが暗号解読した情報だけではアメリカは参戦しません。
最終的に米大統領を動かして大戦集結に大貢献したのは、息子コンラッドの手柄です。彼は父が止めても第一次世界大戦に出兵し、アーチー・リード下級伍長と名前を交換し従軍。塹壕戦で救出したスパイの情報が、アメリカを動かしたのです。
しかしアーチー本人を知る兵士が、身分を偽るコンラッドをドイツスパイと勘違いして射殺。コンラッドは英雄になった瞬間に亡くなってしまいます。息子を失い酒びたりのオックスフォード公を復活させたのは、使用人の関係を越えたポリーです。
息子コンラッドは、キングスマンの礎を築く人物だと予想してたのに意表をつかれました。『キングスマン』(1作目)は父のようなハリーを失ったエグジーの物語でしたが、今回は「子を失った父」が戦争のない世界を目指し「国に属さないキングスマン」という組織を作る物語です。
黒幕の正体と目的は?マナーは人を作るは誰の言葉?
息子喪失からめざめたオックスフォード公は、マタハリを倒した時に入手したカシミアから、特徴的なヤギの産地である謎の狂団アジトをつきとめます。パラシュート初期品での落下をショーラが断ると、公が自ら体をはるのは貴族なのに立派。
飛行機の羽にハマったり、崖に落ちたりとトラブルつづきですが、ヤギが絶壁を登る姿をマネして登りきります。靴の刃物は、後のキングスマンのガジェットとなり、1作目でエグジーがガゼルを倒す伏線にもなってます。パラシュート落下も後の採用試験の伏線。
角を切られて人間不信なヤギが、公を落とそうとするのも本作での後の伏線です。リフトから落下した敵デュポンは、2度の世界大戦で火薬や爆弾で富を築きアメリカ三大財閥に成長したデュポン家の先祖だと思いますが、悲惨な死に方でした。
敵のアジトで待ってた黒幕の正体は、モートンです。と言われても誰?と思った人は多いでしょう。それくらい存在感薄いキャラだったので。彼はキッチナー元帥の部下として何度か登場。キッチナーを潜水艦ごと沈めたのもモートンでした。
モートンはアイルランド(スコットランドかも)出身なので大英帝国を失墜させたかったようですが、仮にドイツが勝利してたら今度はドイツの領土になるだけでは?と思ってしまいます。モートンは紳士的にと言いつつ、仕込み銃でショーラを撃ったりと非紳士的な戦い方ばかり。
モートンの最後は、ヤギに角で刺されて負傷し、オックスフォード公に情を求めるがコンラッドの勲章でカシミヤを切られて転落死。ヤギ達は、仲間の首をはねたり、片方の角を切り落としたモートンをうらんでたので復讐したのでしょう。
一番驚いたのは、キングスマン・シリーズでおなじみの「マナー(礼節)が人をつくる」という決め台詞を最初に言ったのは、敵のモートンだったことです。
結成時のファーストエージェントは?
謎の狂団を倒した後、オックスフォード公はロンドンのスーツ街サヴィル・ロウ(Savile Row。背広の語源になった説あり)のテーラー「キングスマン=Kingsman」を買収し、国家に属さない組織「キングスマン」を設立し隠れ家にします。
オックスフォード公がリーダーの「アーサー」、女射撃名人ポリーがエージェント「ガラハッド」(後にハリーやエグジーが継承)、ショーラが「マーリン」となります。コンラッドが入れ替わったアーチー・リードは「ランスロット」に。
他の初期メンバーはよくわからなかったけど「グウィネヴィア」「パーシヴァル」を、アメリカ大使(スタンリー・トゥッチ)、ジョージ5世がやるのでしょうか。
また、「世界中のメイド・使用人・執事らのネットワークがスパイ活動に貢献」してるという設定はいいですね。弱者だと思われてた者たちが集まって巨大組織を作り、国を動かす人間さえ簡単に監視できるという発想はすばらしいです!貴族だけで作った組織ではなくて安心。
ラストの驚きの人物は?いとこ3人の王の末路は?
エンドロールの前にオマケ映像があり、ドイツの若きアドルフ・ヒトラーが謎の狂団にスカウトされてました。第二次大戦についての続編が期待できるのでしょうか。
いとこ3王の末路について。イギリス王ジョージ5世は、戦争相手ドイツを連想させる「ザクセン公」を「ウィンザー家」に改名させられます。第一次世界大戦のストレスで体調をくずしたまま20年生きて病死。ウィンザー朝は現在も続く王家です。
ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は、第一次世界大戦後のドイツ革命で退位させられ、一貴族として暮らしました。ロシア皇帝ニコライ2世は、大戦後のロシア革命で退位させられ市民となります。その後、レーニン(本作では敵狂団員)らによりロマノフ家ごと処刑されました。
『キングスマン ファーストエージェント』私の感想と評価と続編
キングスマン・シリーズの前日譚であり起源の物語なので、キングスマンが好きな人ほど待望の映画だと思います。そして結成の経緯だけでなく、設立者たちの思想もわかる展開に仕上がっています。
前2作のような不謹慎なユーモアがほぼないのは、観る人の範囲を広げられそうだけど、それらが好きだった人には物足りないかも。アクションのキレは健在でしたが、ラスプーチンとのダンスバトルがピークであとは月並みでした。
特に崖上でのラストバトルは、ほぼ内容を覚えてないくらい平凡でした。キングスマンの思想を後に伝えるのだろうなと思ってた息子コンラッドが途中退場したのは驚きです。ただしあまりいい意外性ではないですね。
仕込み傘の原型ぽい刀剣ステッキや、パラシュート降下、刃物つき靴など後のスパイ組織で使われるガジェットが登場したのはファンサービスとしてうれしかったです。近代の世界史にまつわる史実や人物が実は…という設定も歴史好きほど気にいるかも知れません。
本作は単独作品として観るとあまりおすすめできるシーンとかないのですが、キングスマン・シリーズのファンならクスッと笑えたり、なるほど〜と思えたりする楽しいファンムービーだと思います。
私の評価 63/100(60が平均)
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