映画『君の名は。』考察ネタバレ感想/ラスト結末は?伏線回収や矛盾点は?
新海誠 監督作品。片田舎の女子高生・宮水三葉と、東京の男子高生・立花瀧はお互い入れ替わる夢を見続けます。しかしある日夢を見なくなり、調べ始めた瀧は衝撃の事実を…。夢見ない理由は?2人は会える?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 君の名は。 |
---|---|
日本公開日 | 2016/8/26 [予告] 上映時間:107分 |
監督・キャスト | 新海誠 |
キャスト 出演者 | 神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌 |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/コミックス・ウェーブ・フィルム |
日本興行収入 | 251.7億円 (年間1位 / 歴代5位) |
世界興行収入 | 3.8億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.27更新) 84(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | 新海誠の映画一覧 |
ネタバレ感想『君の名は。』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
考察!歴代の彗星・糸守町・宮水家女系の能力の真相は?
糸森町は2400年前の彗星落下(これが最初とは限らないけど)で出来たクレーター中心に御神体を祭り、人類は洞窟に彗星の壁画を描きます。その時落ちた「何か」が誘導して1200年前にも彗星の隕石が落下し糸森湖を形成します。その「何か」を宮水神社に奉納して1200年が経ったのでしょう。
私は最初、隕石は御神体のあったクレーターに落下したと思ったのですが、もとの糸森湖は別にあり、それもクレーター湖だとわかります。クレーターが2つあるということは、大昔に2回も隕石が落下したということですが、そんな確率の偶然があるのでしょうか。しかも今回は宮水神社の真上に落ちたのです。
宮水家女系の「入れ替わり」能力は、そんな彗星災害を予知して住民を救うための能力に思えます。宮水神社に隕石を引きつけて、他の地域に被害を出さない役割もある気がします。彗星から落ちた細胞が宮水家に入ったような描写もあります。ただ、これらの情報は繭五郎の大火で焼失し、入れ替り能力も成長するにつれ忘れさられるので伝承されないのでしょう。
三葉は3年後の瀧と入れ替わっていたため、三葉には昨日のことでも、同じ時期の瀧はまだ三葉のことを知りません。瀧が三葉と入れ替わりはじめるのは3年後だからです。ただ、赤い組紐を三葉からもらい、それを3年間ずっと手首に巻きつけてたのが媒体になった可能性は高いです。三葉が髪を切ったのは、瀧に認識されず失恋したと思ったからでしょうか。
『君の名は。』伏線とツッコミどころ
『言の葉の庭』のユキちゃん先生はこの時期は東京で教えてるはずですが、なぜ糸森町にいるのかは視聴者の想像にまかせるようです。出張授業かもしれませんが、元気に教える姿を見れて安心です。黄昏時や片割れ時の授業内容は伏線です。
おばあちゃんの一葉の語る内容は、糸森町や宮水神社の歴史を知る上で重要です。そして物語の後半の伏線にもなっています。本当は宮水家にはもっと大切な役割があったのでしょうけど、残念ながら繭五郎の大火により焼失したようです。覚書すら残ってないのは、その当時の伝承者も焼死したのかもしれません。
個人的に気になったのは、瀧が飛騨やクレーターや三葉やテッシーなどの名前を覚えていることです。このうち場所や風景に関するものは、3年前に大々的に放送されてたTVニュースでの記憶が残っていたのだろうと本人も語っています。テッシーやサヤちんの名前は、三葉がノートか手に書いたりしたのでしょうか。携帯メモが消えていく演出はやりすぎです。それなら組紐も消さないと。
映画『君の名は。』ネタバレ感想と解説
入れ替りラブストーリーかと思ってると、その心理を逆手にとられてサスペンス・タイムトラベルSF風になり真相は衝撃的です。
現時点で新海誠監督の最高傑作だと思います。ジブリやディズニーアニメ映画のようなアクション描写は少ないけど、登場人物の行動や話す内容に無駄が少なく、後のシーンにからんでいき、伏線の回収もとてもわかりやすいので、見終わった後もすっきりします。
タイトルの「君の名は。」は、戦後の昭和時代に内容の全く違う同名映画があったようで、年配者にはそのリメイクだと思った人もいるようです。三葉も瀧も「あなたは誰?」と繰り返すけど「君の名は?」と聞くのは、ラスト直前まで引っ張ります。
細かい点を考察すると説明不足や矛盾もあります。疑問点も多くて、なぜ1200年ごとに3回も糸森町に隕石が落下したのか、糸森が消滅した未来と三葉たちが助かった未来は同じ世界線なのか、彗星と組紐が似てる理由は?、宮水家の能力の秘密と由来は?など尽きません。
物語として入れ替わり対象が3年後のイケメン瀧と美少女の三葉である理由は、同年齢の美男美女の方が「愛」が芽生えて、瀧は救おうとし、三葉は助かって再会を望むからでしょう。ちなみに年齢差は三葉が3歳年上です。
宮水家には彗星からこぼれ落ちた細胞?なのか特殊能力が備わったようですが、瀧は一般人です。瀧に入れ替りが発生した理由は、3年前に三葉からもらった組紐をずっと手に巻いてて媒介となったからです。しかし「卵が先か鶏か」状態で組紐のようにねじれてます。
彗星がねじれながら飛ぶ様子も組紐を連想させます。また、何度もドアやふすまや障子の開閉シーンが強調されますが、これはラストでの電車のすれ違いや、階段でのすれ違いを連想させたり、この世とあの世、田舎と都会、消滅した未来と生きる未来などを象徴してるように感じます。
「入れ替り」青春タイムトラベルと混ぜて、東日本大震災の記憶も思い起こすような自然大災害の脅威も描いています。彗星や黄昏時や夕日など幻想的な時を、美しい自然や素晴らしい音楽とともに見せてくれます。
映画を見終わった後に彗星の流れるポスターを見ると、その対比を楽しめます。人が成長するにつれ「何かを忘れていく」という感覚は『インサイドヘッド』でも重要なテーマでした。つっこみどろこはあるけど、エンタメに徹した新海誠監督が世間全般に認められた傑作ですので、多くの人におすすめです!
- 青春SFラブストーリーサスペンス
- 物語は重厚だけどわかりやすい
- 彗星や飛騨の自然が美しい
- 気持ちを伝えるような音楽
- 登場人物がほぼ全員やさしい
- キャラ言動に無駄がなく伏線多い
- 中盤で一気に物語が転換する
- 中盤・ラストの両方で感動できる
- 観た後の考察や振り返りが楽しい
- 家族や子供とも安心して見れる
- なぜお互いにすぐ電話しない?
- 瀧が彗星災害を知らないのは変
- 飛騨だけで糸森を覚えてない?
- 携帯メモが消えるのはやりすぎ
- 一瞬出る雑誌記事も読んでほしい
- 町長の決断理由と行動を見たい
- 糸森町の町民はなぜ住み続ける?
映画『君の名は。』ネタバレあらすじ
岐阜県飛騨の片田舎の糸守町に住む女子高生2年の宮水三葉(みやみず みつは。声:上白石萌音)は、東京の男子高校生2年の立花瀧(たちばな たき。声:神木隆之介)と「入れ替わり」が起こるが、お互い目覚めると夢のようにほとんど覚えていません。
片割れ時や組紐や口かみ酒とは?
三葉は目覚め、TVで1200年ぶりに地球に接近するティアマト彗星のニュースを見ます。高校への通学途中、町長選挙で演説中の父の俊樹(としき)に注意されムッとします。俊樹は母の二葉(ふたば)病死後に家を出たので、三葉は祖母の一葉(ひとは。声:市原悦子)に育てられてます。
学校で三葉はノートに「おまえ誰?」を見つけます。古典教師は『言の葉の庭』主人公の雪野百香里ことユキちゃん先生です。昼でも夜でもない夕方のある時間帯、人ならざる者に出会う時間「黄昏」「誰そ彼」「彼誰そ(かれたそ)」「彼は誰(かわたれ)」時を教えます。
ある生徒は糸守町の方言は「片割れ時」かと質問します。三葉は名取早耶香(なとり さやか。あだ名:サヤちん)と勅使河原克彦(てしがわら かつひこ。あだ名:テッシー)と帰宅中、早く東京に行きたいと言います。
夜、宮水家では祖母の一葉と、三葉と妹の四葉(よつは)は糸森1000年の歴史が刻まれてる組紐(くみひも)を編みます。200年前「(まゆ)繭五郎の大火」により古文書が全て焼失し、祭りの意味はわからなくなり形だけ残されています。それらを守るのが宮水神社の役割です。
三葉と四葉は、神社のたいまつの明かりで伝統舞踏を踊り、米をかみ吐き出して放置すると、自然発酵してアルコールになるという、世界最古の酒「口噛み酒」も披露します。人前で吐き出す事に否定的な生徒もいて、三葉は落ちこみ、来世は東京のイケメンになると叫びます。
入れ替りの日常?彗星の夜には?
翌朝起きると、三葉は立花瀧として東京を体験し、女子っぽくて疑われます。そのおかげでバイト先のあこがれの奥寺ミキ先輩(声:長澤まさみ)に近づけます。三葉は瀧の携帯に日記を、手のひらに「おまえ誰?」の返答「みつは」と書いて眠ります。
三葉と瀧は週に2〜3回不定期で、睡眠後に入れ替わるため、スマホに禁止事項や日記を書いて、お互いの生活に配慮します。ある日、三葉となった瀧は、祖母の一葉と妹の四葉と共に、宮水神社の御神体のあるクレーターの中心へ歩きます。
「結び」とは人や時間をつなげ、水や酒を飲み体中で魂と結びつくのも神様の力で、ご奉納は神様と人間をつなぐ大切なしきたりと一葉は語ります。クレーター内の小川から先は「隠り世(かくりよ)=あの世」とも教えます。
一葉「この世に戻るには、一番大切なもの=口噛み酒を御神体にお供えせねば。あんたらの半分やからな」。3人の帰り道、片割れ時(カタワレ時)に、一葉が三葉に「いま夢見とるの」と言うと、瀧は元の姿で目覚め、奥寺先輩とデートの日なので急いで家を出ます。
瀧は奥寺先輩と写真展でデートし、飛騨の糸森町のクレーターを見つめます。奥寺先輩に「今日は別人ね。好きな人いるでしょ?」と言われ解散します。三葉は「デート後、彗星が見えるね」と書いてるが瀧には見えません。
三葉は何かの予知か学校を休み、髪を切ります。夕方、テッシーとサヤちんとで祭りに出かけ、ティアマト彗星が流れるのを見上げてると、彗星が片割れたように見えます。東京の瀧は、メモの三葉の携帯番号に電話するが、現在使われていません。
瀧が三葉に会いに行くと?最初の出会いは?
それ以降、瀧と三葉の入れ替わりは起こりません。瀧は三葉を探しに行くが、手がかりは飛騨地方の風景やクレーターのみ。友人の藤井司(つかさ)が奥寺先輩も呼んで3人で旅行します。行き先に迷うが、偶然に食堂の亭主が糸森出身者で車で送ってくれます。
3年前、地球に最接近したティアマト彗星の破片が隕石で落下し、糸森町は一瞬で消滅し、500人以上の住民が死亡しました。今も立入禁止で、8の字か無限大∞型のクレーター湖が存在するのみです。瀧が三葉の書いた携帯メモを確認すると消えていきます。
図書館の「糸守町彗星災害 犠牲者名簿目録」には、テッシーとサヤちんや宮水三葉と一葉と四葉の名前も記載されていて、瀧はショックを受けます。奥寺は司に、最近の瀧が好きだったと話します。それは三葉に影響を受けた瀧です。
瀧は奥寺に、以前誰かに組紐(くみひも)をもらい、ずっと手首に巻きつけてると言います。瀧は「ひもは時間の流れを表し、ねじれたり、からまったり、もどったり、つながったり。それが結びでそれが時間だ」と聞いたことがあり、翌朝それをヒントに糸森湖へ1人で出かけます。
瀧は記憶をたよりに、御神体の場所を見つけます。御神体を見下ろす背後には、旧糸森湖があります。彗星の隕石が落下した中心には宮水神社があったが、今は消滅して隕石湖となり、旧糸森湖と合わせて8の字の湖になっています。
瀧はクレーター中心の御神体に奉納してある「三葉の半分である口噛み酒」を飲みます。すると「あの世」か時間の「結び」の力か、3年前の隕石が落下する前の三葉と入れ替ります。祖母の一葉は三葉が別人だと気づき、自分にも三葉の母の二葉にも、少女時代に「入れ替わり能力」があったと話します。
三葉はテッシーとサヤちんに隕石落下の事を話し、糸森町の全住民を彗星災害から救う計画を立てます。テッシーは実家が土木業なので爆弾を用意し、サヤちんは無線ジャックで避難放送し、三葉は町長である父を説得に行きます。
父である町長は「妄言は宮水の血筋か」と言うが、瀧である三葉がキレると「おまえは誰だ?」と驚きます。三葉は四葉にも避難をすすめるが「お姉ちゃん、昨日も東京行ったしなんか変」と言われます。瀧である三葉は、ある思いで御神体のクレーターへ急ぎます。
祭りの前日、三葉は予感のせいか東京の瀧に会いに行くが、満員電車の中学生の瀧は、三葉のことを認識しません。三葉は押されて電車から降りる時「君の名は?」と聞かれ「みつは」とこたえて、髪をとめてた赤い組紐を瀧に渡して別れました。
2人は出会えるのか?君の名は?
瀧である三葉はクレーターの上を回って三葉を呼びます。一方、3年後の御神体の洞窟で倒れてる瀧には、隕石落下日の三葉の魂がやどり、同じくクレーターの上を回り、瀧の声を聞きます。やがて2人は声で位置を確認しあい、カタワレ時に時間を超えて、お互いの姿も見えるようになります。
瀧は3年間持ってた赤い組紐を三葉に返し、三葉は髪留めにします。片割れ時が終わっても忘れないよう、お互いの手に名前を書こうとするが、三葉が瀧の手に書く前にお互いの世界にもどります。瀧は「みつは」と書く前に忘れてしまいます。
三葉は彗星の隕石落下前にもどり、変電所にテッシーと爆弾を仕掛けます。町中が停電すると、彗星はより美しく見えます。サヤちんは「さらなる爆発や山火事の危険性があるので糸森高校へ避難してください」と放送します。
しかしサヤちんは捕まり、テッシーも爆弾持出しがバレて、三葉も坂を転げ落ちて万事休すとなります。三葉は「君の名は?」と心で叫びます。手のひらには「すきだ」と書かれてるけど、名前を思い出せません。
ティアマト彗星の破片(カタワレ)が日本中で観測され報道される中、瀧も三葉のことは忘れ、美しさに魅了されます。三葉は再び父である町長の所へ行き、一葉と四葉の前で本気でうったえます。約1時間後、彗星の片割れは隕石となり、宮水神社をめざして落下し大災害を引き起こします。
5年後。瀧は就職活動中です。奥寺と久しぶりに会い、糸森へ旅行したことを話します。5年前、糸森町を消滅させた彗星災害で、町民のほとんどは偶然してた避難訓練で奇跡的に助かったのです。瀧は糸森を調べた理由を忘れてます。奥寺の左手薬指には指輪が見えます。
奥寺は「君もいつか幸せになりなさい」言って去ります。別の日、瀧はカフェでテッシーとサヤちんが結婚すると話すのを見かけます。2人を知ってる気はするが思い出せません。夜、赤い組紐した女性とすれ違い、なんとなく振り返ります。
テッシーとサヤちんは賃貸を探し、勉強する高校生の四葉、ゴミ出しする奥寺などが登場します。瀧も三葉も「ずっと誰かを探してた」ので、すれ違う電車ごしに目があった時には驚きます。瀧は電車を降りて探し、四谷の須賀神社の階段ですれ違います。
お互い気にしながらすれ違い、瀧「俺、君をどこかで」、三葉「わたしも…」と言って涙しながら笑いかけてきます。そして「君の名は?」とお互いに言って、RADWIMPSの音楽が流れて映画は終了します。
私の評価 88/100(60が平均)
シリーズやジャンル⇒新海誠の映画一覧