映画『2分の1の魔法』ネタバレ感想考察/本当の贈り物は?父からの言葉は?
ピクサー映画22作目。かつて魔法が存在した世界の内気な少年イアンは、半分の父を完全復活させるため、兄バーリーと共に魔法を探しに旅立つのだが…。不死鳥の石はどこに?呪いを解く方法とは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 2分の1の魔法 |
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日本公開日 | 2020/8/21 [予告] 上映時間:103分 |
製作国 | アメリカ |
原題/英題 | Onward |
監督・キャスト | ダン・スキャンロン[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:PG |
配給/製作 (画像出典) | ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ/ピクサー・アニメーション・スタジオ、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ |
日本興行収入 | 8.7億円 興行収入ランキング |
世界興行収入 | 1.4億USドル [出典] |
製作費 | 2.0億USドル |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.16更新) 74(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ピクサー映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- イアン・ライトフット(トム・ホランド。志尊淳)バーリーの弟。父に会いたい。優しいが自分に自信がない
- バーリー・ライトフット(クリス・プラット。城田優)イアンの兄。陽気で好奇心旺盛。ファンタジーオタク
- ローレル・ライトフット(ジュリア・ルイス=ドレイファス。近藤春菜@ハリセンボン)イアンとバーリーの母親。彼らを追う
- コーリー(オクタヴィア・スペンサー。浦嶋りんこ)レストランを経営するマンティコア
- コルト・ブロンコ(メル・ロドリゲス。村治学)ケンタウロスの警察官。ローレルの新しい恋人
- グレックリン(トレイシー・ウルマン。新谷真弓)質屋の店主
ネタバレ感想『2分の1の魔法』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
ピクサー22作目!監督とキャストと吹替声優
大人も家族でも楽しめる、質の高い長編アニメーションを多数届けてきたピクサー製作映画の22作目の作品です。同年12月には『ソウルフル・ワールド』公開も予定されてるので、1年に2本のピクサー映画を観れそうです。
監督のダン・スキャンロンは『モンスターズ・ユニバーシティ』で長編アニメ初監督をつとめました。カーズ』『トイストーリー3』ではストーリーアーティストを担当。
本作『2分の1の魔法』は、ダン・スキャンロン監督の子ども時代の体験が元になっているそうです。父を亡くし、兄弟で過ごしてきた監督は、1日だけ父と会えたら何を話そうかと考えたり、兄への感謝の気持ちも伝えたかったのでしょう。
主人公イアンの声優トム・ホランド(通称トムホ)は『アベンジャーズ エンドゲーム』『スパイダーマン ファーフロムホーム』や声では『ドクタードリトル』等で大活躍の若手俳優です。
バーリー役の声優クリス・プラット(通称クリプラ)は『ガーディアンズオブギャラクシー リミックス』『ジュラシックワールド炎の王国』等でおなじみの、コメディもまじめも演じきれる中堅俳優です。
他にはマンティコア役を『ドリーム』のオクタヴィア・スペンサー、母ローレル役をジュリア・ルイス=ドレイファス等が演じます。
日本語吹き替え版では、イアン役を俳優の志尊淳、バーリー役を俳優の城田優、母ローリー役を芸人の近藤春菜(ハリセンボン)が演じます。タレント声優は不安要素ですが、ディズニーの基準は厳しいため問題はないでしょう。
2分の1の魔法とは?タイトルONWARDの意味は?
エルフのイアンは何もうまくできず、誕生日パーティーに友人を誘うのも失敗します。しかし魔法の才能はあり、16歳の誕生日に母からもらった「父の魔法の杖」で呪文をとなえると、父の復活に成功します。ただし下半身(2分の1)だけ。
タイトル(邦題)の『2分の1の魔法』とは、父の下半身だけ復活できたことに加え、半人前のイアンのことを表してます。また、イアンと兄バーリーが協力することで一人前になる、という意味もありそうです。
原題『ONWARD』の意味は「前進」「一歩ずつの成長」です。イアンの成長ぶりを表す言葉として最適です。橋のない崖(がけ)をこわごわ一歩ずつ魔法で前進したシーンは、まさにタイトルどおり。邦題『2分の1の魔法』もわるくないです。
世界から魔法が消えた理由とは?
エルフのイアンが暮らす世界には、かつて魔法があふれていました。その魔法が消えた理由は、科学技術の進歩により魔法の必要性がなくなったためです。例えば下半身が馬のケンタウロスは、足が速かったのに車の方が楽だから走らなくなりました。
妖精が空を飛ばず飛行機を利用し、ペガサスもゴミをあさり、人魚もプールで水浴び、火や明かりも科学にたよります。魔法習得には才能や時間がかかるのに比べ、科学は老若男女だれでも区別なく使えるのが普及の要因ですね。
逆に便利なガジェットがなくなれば、魔法にたよろうとする流れを「イアンのスマホが破壊」されたことで表現してるのはうまいです。
冒頭は伏線だらけ?見のがせない!
16歳の誕生日を迎えるが、あいかわらず何もがんばらないイアンに対し、何事にも全力でやや中二病ぎみの兄バーリー。バーリーを投げ飛ばした母ローレルは「内なる戦士」と発言します。ペットのブレイジーは「火を吹くドラゴン」です。
イアンが着る亡き父のパーカーにも「ドラゴン」。パーティー用の食事には「剣」が刺さってます。ケンタウロス警察官ブロンコがバーリーを注意した理由は「古代の噴水」の取り壊しを妨害したから。「昔は走れたケンタウロス」も今は車で移動。
イアンが外食する店で会った父の知り合いは「君の父さんは紫の靴下をはいてて」大胆だったと教えてくれます。イアンが通う学校の壁には「ドラゴン」の絵が描かれてます。運転教習でイアンは「高速道路」に入れません。
魔法の杖を持った時にバーリーの手に「木の破片(トゲ?)」が刺さります。後にイアンも刺さって不快そうですが、この伏線もラストで回収します。
イアンは「やることリスト」マニア?リスト一覧
イアンはメモ帳に「やることリスト」を書くのが趣味です。しかし現実は理想どおりにいかず、達成されないリストには打ち消し線が引かれてばかり。劇中で出てきた「やることリスト」一覧は下のとおり。
- もっと話をする
- 運転免許を取得する
- 誕生日パーティーに友人を招待
- 父のようになる
- キャッチボール
- 散歩
- 本音で語り合う
- 一緒に笑う
- 運転を教わる
- 人生を共有する
父とやりたいことリストは結局ほぼかないませんが、ずっとそばで「人生を共有」してきた兄バーリーとなら達成できてたことに気づき、イアンはバーリーの存在を再認識します。
初めての魔法は「父への愛」で発動?
全力少年バーリーが身近にいるためか、何事にもがんばれない少年イアン。バーリーが失敗した「父の復活の呪文」を、イアンは2分の1だけ成功させ、裁縫だけでなく「魔法の才能」もあることが判明します。
24時間しか効果のない「復活の呪文」で上半身も復活させるため、イアンはバーリーの助言どおり「不死鳥の石」を探す旅に出発。まずは「不死鳥の石への地図」を得るために「マンティコアの酒場」へ。
しかし、かつて人々をおそれさせたマンティコア(顔はライオン、尾は毒サソリ、本作では翼も持ち火も吹ける)も、今は安定した生活のためにファミリーレストラン経営で大忙し。子共受けする、かわいい被り物のマンティコアも働いてます。
しかしイアンの言葉と、壁にかけられた「冒険のためには人生の危険を覚悟すべし」の標語で目を覚まし、マンティコアはクレイマー客らを追い出してレストランを火の海にします。下半身だけの父は、くずれ落ちる木の下敷きになりそうです。
その時、杖で呪文をとなえたイアンは落ちる木を浮かせて、バーリーが父を助けます。不死鳥の石の力を借りずに、イアンが初めて魔法を使えた理由は「父を救いたいという強い愛情」で念じたからです。兄弟2人の協力で父を助けたのも重要です。
兄が縮小したメリットとは?
バーリーのグィネヴィア(車の名前)は、ガス欠で止まります。ガソリンタンクを拡大する呪文に失敗したイアンは、兄を縮小化してしまいます。小人になったバーリーは、歩くのが遅いしスナックもつかめないしデメリットばかり。
バーリーは同サイズの不良ピクシーに「あなた達は先祖のせいで飛べなくなった」と挑発し追われるはめに。急いで車へ戻るがキーは車内。車窓のわずかなスキマから車内へ入れたのは、バーリー小人化のメリットです。
そしてイアンが運転せねばならず高速道路への合流を成功させ、兄依存からの脱却の第一歩となります。車線変更、IC(インターチェンジ)で高速道路を降りるのも成功しますが、無免許運転、無理な車線変更、脇見運転はマネしちゃダメですね。
暴走族の不良ピクシー達も、バイクから吹っ飛ばされた後、身を守るために「翼で飛べるように」なり、フェアリー種としての魔法を取りもどします。
魔法が明かす兄への不信感とは?家族の絆の強化
高速道路からICへの暴走で、警察官に職質されるイアン達。バーリーのアイデアでイアンは「変身の呪文」により、母の恋人ブロンコ巡査に変装します。変身の呪文の副作用で「ウソをつくと体の一部が元に戻る」ので耳や手がエルフになります。
ブロンコが新しい家族を持つので混乱してる、という言い訳でうまく切り抜けます。しかし最後の質問「兄はダメでしょ」に対し「そんなことない」と答えると片足が元にもどります。つまりイアンが「兄はダメ」と思ってることがバレました。
確かにイアンは、バーリーが他人と話すのを止めてたし信用してない部分もあったのでしょう。あんなにウザい風の兄なら避けたくなる気持ちもわかります。イアンが内気なのは、兄バーリーを反面教師にしての可能性も高いと感じます。
しかしそんな暗い雰囲気は、音楽の振動を感じた父の下半身が踊りだしたことにより明るくなります。父が家族の絆をつなげる役割を果たした瞬間です。声のクリス・プラットの踊りは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を思い出します。
ちなみに、嘘ついたイアンの片足がエルフに戻ったため、足跡でバレて本物のコルト・ブロンコに電話されます。この1つ目のサイクロプス婦人警官は「ガールフレンドの子も大変」と話してたので、レズビアンということなのでしょう。
原題ONWARDの象徴的シーン?
兄バーリーと和解したイアンは、兄のすすめどおり高速道路から外れて走行します。すると崖に着き、跳ね橋を下ろすのは向こう側からしかできません。イアンは「空中歩行の呪文」を唱えるが、怖くてバーリーの持つロープなしでは渡れません。
しかしバーリーのロープは2分の1を渡ったところで落ちてしまい、それ以降は「ロープがあるという安心感」のみでイアンは渡りきります。イアンは「自信」さえ持てばやり遂げられるという、原題ONWARD「前進」の象徴的なシーンです。
愛車の最後は涙の別れに?
警官コルト・ブロンコやパトカー群から逃げながら、イアン達はカラス像が向く方角をたどり、車で入れない場所に着きます。そこで最難関「稲妻の呪文」に失敗したので、兄バーリーは愛車グウィネヴィアを犠牲にして道をふさぎます。
このバン(車)の最後は、タイヤがパンクして馬のような走り方になり、車窓からまきちらす白い紙くずが羽のように見えて、まさに「ペガサス」グウィネヴィアとして有終の美をかざります。ONEPIECEのメリー号を思い出す涙シーンです。
バーリーがバンの形見として拾った「黄色いテールランプ?」は、ラストで少し役立って伏線回収されます。
兄が後悔しない生き方をする悲しい理由とは?
最後のカラスの像(レイヴンポイント)は下を向いていて、イアンの機転で水の洞窟へ入ると、ユニコーンが飛び出しました。スナックのパフを拡大してボートにし奥へ進みながら、花火の呪文やパフでのキャッチボールもします。
イアンは父と再会した時に聞くことを考え、バーリーに父との記憶を尋ねます。バーリーは「病室の父に別れを告げることができなかった」悲しい過去をくやみ、二度と後悔しない生き方をするようになったと語ります。
このバーリーの記憶も、マーベル映画MCUのあの作品(ネタバレになるのでタイトル伏せる)を思い出しますね。
不死鳥の石のありかは?呪いの正体とは?
洞窟のラストは、飛んでくる槍や針地獄や迫り来る壁など、インディジョーンズ・シリーズのようなトラップだらけですが、盾や魔法で切り抜けます。最後は水中のボタンを押し続ける必要があり、下半身だけの父の最大の見せ場です。
それだけ苦労して冒険したのに、地上へ出ると元の街の学校前です。見えない幸せはいつも目の前にあったんだよ、という『青い鳥』を連想させるラストですが、よくある展開なので少し拍子抜けしました。
兄バーリーが冒頭で破壊をやめさせた「古代の噴水」こそ、残り2分の1の「不死鳥の石」が隠された場所だったのです。しかし石を取ると呪いが発動し、学校の壁画が顔となった「ドラゴン」が生成されて不死鳥の石を取り返そうと暴れます。
バーリーは「不死鳥の石」を投げてドラゴンの気をそらすが、それがグウィネヴィアの形見「黄色いテールランプ」とバレると、ドラゴンは怒り顔で火を吹きます。絶体絶命の時、飛ぶマンティコアに乗った母が魔法の剣で時間をかせぎます。
復活した父が伝えたかったのは?
マンティコアは落ち、母の魔法の剣もがれきに埋もれます。上半身を復活中の父の所にドラゴンが迫ります。イアンは「父としたいことリスト」の全てを兄とやりきったのを思い「僕には父はいなかったが兄がいた」と言い、父を兄にゆずります。
ドラゴンに立ち向かうイアンは、内気で何もがんばらない頃とは別人のように急成長してます。この旅で覚えた魔法「空中歩行」「花火」「(尾の)浮遊」を次々に駆使するが、魔法の杖を海へ飛ばされてしまいます。
考えたイアンは、手に刺さった「魔法の杖の木片」を拡大?して新しい魔法の杖を作り、「稲妻の呪文」を成功させてドラゴンの核をさらし、母が投げた伝説の剣を飛ばして核に刺して倒します。が、ドラゴンのがれきの山に埋もれてしまい、復活した父とは再会できません。
イアンがスキマから父と兄をのぞき、やがて父が時間切れで消滅していくのは悲しい光景で涙ものです。バーリーはイアンに父の言葉「誇りに思う」を伝え、父からのプレゼントとして「ハグ」します。イアンもバーリーをハグし母も感動。
本当の父からのプレゼントは、この「冒険」で「兄弟愛」「親子愛」を深めるという魔法だったのだと感じます。イアンは学校を修復し、2代目グウィネヴィアにペガサスに乗った2人をペイント。ピクシーは飛び、ケンタウロスも走ります。
『2分の1の魔法』私の評価と続編
予告編やビジュアル面ではあまり期待できなかったのですが、実際に観ると思ったよりはいいデキでさすがピクサー製作映画だと思い知らされました。テーマも「父と子」と思いきや「兄弟愛」であることに意表つかれました。
ただ「父を復活させるため不死鳥の石を探す」等の序盤が、ハガレンや他の作品からの既視感多めだったのは少し残念。マンティコア改心の理由が弱すぎるのも気になったけど、母と組んだのはいい展開なので、もっと見せ場がほしかったです。
魔法はなくなったとはいえ、エルフ、妖精、ペガサス、ケンタウロス等が一緒に暮らすファンタジーRPG風世界でドラゴンまで登場するピクサー・ディズニー作品は意外と少ない気がします。この世界を使った続編もあるのでは?とひそかに期待してます。
私の評価 67/100(60が平均)
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