映画『ノマドランド』ネタバレ感想考察/高齢漂流者の結末は?どんな人と出会う?
60代女性ファーンは、リーマンショックで崩壊した街を去り、キャンピングカー生活する「現代のノマド=遊牧民」に。出会うノマド達と交流しながら車上生活し、季節労働を求めて動き回るのだが…。ノマド集会とは?ノマド達は本人?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | ノマドランド |
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日本公開日 | 2021/3/26 [予告] 上映時間:108分 |
製作国 | アメリカ |
原題/英題 | Nomadland |
監督・キャスト | クロエ・ジャオ[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) USA:R |
配給/製作 (画像出典) | サーチライト・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・ジャパン/Highwayman Films、Hear/Say Productions、Cor Cordium Production |
日本興行収入 | 4.3億円 興行収入ランキング |
世界興行収入 | 0.3億USドル [出典] |
平均評価 平均:100換算 *批評家と一般は単純平均 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 79(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ヒューマンドラマ/恋愛/コメディ一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- ファーン(フランシス・マクドーマンド)街と夫を亡くし、季節労働しながら車上生活を始めた女性
- デヴィッド(デヴィッド・ストラザーン)ファーンがノマド集会で出会った男性。定住するか悩む
- スワンキー(シャーリーン・スワンキー)本人役。ガンを患っている。全米でカヤックこぐのが夢
- リンダ(リンダ・メイ)本人役。ファーンがノマド集会で出会った女性。自給自足拠点を作るのが夢
- ボブ(ボブ・ウェルズ)本人役。ノマド集会RTRの主催者。ノマドの情報共有を助ける
ネタバレ感想『ノマドランド』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は?監督やキャストや受賞歴・車上生活者が演技?
映画『ノマドランド』の原作は、ジェシカ・ブルーダー著のノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』(2017年発表)です。主演女優も演じるフランシス・マクドーマンドが、読んで衝撃を受けたため映画化権を購入しました。
そして彼女は、トロント国際映画祭で鑑賞した『ザ・ライダー』の監督クロエ・ジャオを『ノマドランド』監督・脚本に起用。クロエ・ジャオは、アメリカで活動する中国人(中国籍)の女性監督で、マーベル映画MCUの新作『エターナルズ』も監督予定です。
主役のフランシス・マクドーマンドは、映画賞でも常連のベテラン女優で、代表作は『ファーゴ』『スリービルボード』など。デヴィッド役のデヴィッド・ストラザーンはジェイソンボーンシリーズ、ゴジラシリーズ等に出演。
その他の俳優女優は本職の方ではなく、現実でノマド生活を送っている人達が起用されてるそうです。演技や台詞は不安ですが、実際の車上生活者による切迫感に期待したのでしょう。少しでも生活支援になるとの考えかもしれません。
映画『ノマドランド』は、はヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞。ゴールデングローブ賞では4ノミネートし作品賞と監督賞を受賞。アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞など6ノミネート。
日本のノマド状況はくわしく調べてませんが、映画『深呼吸の必要』では季節労働者たちの葛藤などがエンタメ性高く描かれてるので、興味ある人はぜひ観てください。若き香里奈、長澤まさみ、谷原章介などが出演してるのもお宝かも!
ノマドになった理由は?私の経験も混じえて
リーマンショック等の金融危機で企業倒産がつづき、石膏関連企業の労働者が集まってたネバダ州エンパイアは町ごと消滅。社宅で暮らしてたファーン(フランシス・マクドーマンド)は夫も亡くし、ノマド=放浪者としてキャンピングカーで車上生活を始めます。
クリスマスシーズンには、アマゾンが多数の短期バイトを雇うため、ファーンも働きます。雇われてる期間は駐車場も無料なので、食費さえ稼げれば最低限の生活はできます。アマゾン以外にも季節によって様々な短期労働をして回ります。
冒頭から衝撃的でした。大恐慌で仕事がなくなり、ローンや家賃を払えなくなって追い出されるのは理解できるけど、企業が撤退して町のインフラが機能しなくなり、郵便番号までなくなったとは想像以上です。貯金がなければ人生積みますね。
アマゾンが季節労働者の収入源になってたのも初耳です。確かに田舎の倉庫で期間限定で働いてくれる人達を探すのは困難なので、ノマドたちとはWinWinの関係なんですね。駐車場で車上生活できるのも、車社会のアメリカならではでしょうか。
私もバックパッカー旅行中、数日単位ですが車中やテントで生活した経験があります。寝るのに不自由は感じなかったけど、夜のトイレは面倒でした。特に冬は寝袋にくるまってるので出入りが大変。さすがにバケツ・トイレは最後の手段ですね。
本物ノマドのリンダ・メイらが、コインランドリーでジグソーパズルして時間をつぶしてた姿が印象的です。夜に食堂が閉まった後、車で寝るまで過ごす場所がない場合、24時間あいてるコインランドリー室に集まってたことを思い出します。
日本人も含めて、季節労働を渡り歩く人達とも出会って話を聞きましたが、みんな知識も経験も豊富で本当に楽しそうでした。でもそれは、旅行者の私達に向けての顔だったのでしょうね。すぐ別れる人に苦労話や素顔は見せないでしょうから。
ノマドの集会RTRとは?登場ノマドは本人達?
ファーンがAmazon配送センターで仲よくなった女性リンダ・メイは、本人役であり本物のノマドです。ノマドが自給自足できる拠点を作るのが夢だと語ります。リンダ・メイはファーンに「ボブ・ウェルズ主催のRTR集会」について教えます。
Amazonの短期雇用期間が終わると、RV車やバンが次々に去っていきます。さみしくなったのかファーンも、アリゾナ州クォーツサイトで開催されるノマドの集会RTR(Rubber Tramp Rendezvous/自動車ノマドのランデブー)へ参加します。
そこでは、様々な境遇のノマド達と出会えます。若者カップルは装飾品を売ってガソリン代を稼いでますが、後にノマドは男性のみになります。夜には歌ったり雑談を楽しみます。やがてコミュニティ主催者ボブ・ウェルズが登場します。
ボブ・ウェルズは本人であり、実在のRTR主催者です。実際にウェブサイトやYouTubeでノマドへの情報共有や情報発信もしています。数年前に息子を自殺で亡くしたが誰にも話せなかった(映画の設定かも)と語ります。
集会後、バンのタイヤパンクに気づいたファーンは、近くに停車してた女性スワンキーに助けを求めます。最初は「ノマド生活をあまく考えすぎ」と苦言ばかり言われますが、様々な心構えと知恵を教えられて親しくなります。
ガンを患ってるスワンキーの夢は、アメリカ全土でカヤックをこぐことだそうです。翌年のRTR集会にはスワンキーの姿はなく、遺影をキャンプファイヤーで焼いて皆で供養します。彼女は夢を達成したようです。ちなみにスワンキーも本人ですが、実際は映画公開後も健在でノマド生活を続けてるそうです。
経済的にも精神的にも自由になったノマドですが「最大の敵は孤独」なのでしょう。1年に1回でもRTR集会のように集まって交流する機会はとても貴重に思えました。また「肯定してくれる人がいる」ことに気づけるのも心強いのでしょうね。
彼女がノマドを続ける理由?さよならを言わない理由?
自由な生活を手に入れたファーンですが、トイレをバン内のバケツや屋外でしたり、缶詰を食べたりと不自由にも見える暮らしぶりで、ファーン自身も満足してるのかあやしい表情が映し出されてました。
ファーンがノマド生活に悩んでそうな時、RTRで知り合った男性デヴィッドと再会。デヴィッドは勝手に手伝いますが、ファーンが親の形見として大切にしてた皿を不注意で割ってしまいます。序盤でリンダ・メイに見せてた伏線回収ですね。
その後、ファーンはデヴィッドのつてでレストランで働きます。そこへ、デヴィッドの息子が孫が産まれると知らせに来たので、ファーンは家へ帰るようデヴィッドの背中を押してやります。デヴィッドに同行を誘われるが断ります。
ファーンはヴァンが故障し、修理より別車を買った方が安いとすすめられるが、改造して愛着あるヴァンなので拒否。資金を得るため妹夫婦の家を訪れたファーンは、同居を提案されるが断ります。資本主義的な会話への反発は印象的でした。
ファーンは、息子夫婦の家に定住するデヴィッドを訪ねて歓迎を受けます。デヴィッドにも一緒に暮らそうと提案されるが断って旅立ちます。ファーンがノマドを続ける理由は、夫の記憶を忘れたくないため、その地の近くで暮らしたいからです。
そのことをファーンに告白されたボブ・ウェルズは「さよならは言わない。またいつか」と再会を期待して別れます。それはボブの自殺した息子や、ファーンの亡き夫など大切な人へも向けられた言葉です。ファーンは昔の家や工場を訪れ、預けてた荷物も引き取ります。亡き夫に「またいつか」と言えたかのように。
皿を割られたファーンは怒ってましたが、接着剤で直せる程度のモノより、修復不能な人間関係の方が大切だと気づかされたのでしょうか。デヴィッドとの再会や定住の誘い、バンの故障、妹からの提案、ボブとの会話など、ノマド生活の終了をうながす流れが続くので、ファーンは近いうちにいずれかを選びそうな終わり方ですね。
映画『ノマドランド』私の評価と感想
アメリカの映画賞では大絶賛の映画『ノマドランド』ですが、前評判どおりフランシス・マクドーマンドは演技を超えて本物のノマドと区別がつかないほどでした。現代の格差で分断されたアメリカの一端を知る意味でも忖度ない良作です。
主人公による『「ホームレス」ではなく「ハウスレス」』というセリフがこの映画を象徴しています。ハウス(家)がなくとも、ホーム(車など)があれば人は暮らしていけるという強いテーマ性を感じました。
一方、エンタメ性はゼロに近いし、出演者も含めてほぼドキュメンタリーなので、社会問題を描くフィクション映画を期待してた人が面白く観れるかは心配です。『グリーンブック』『パラサイト』の絶妙なバランスにはほど遠いです。
ただ、作り話を排除して徹底的に現状のノマド生活を体感させてくれるので「こんな生活は無理だ」とか「ここまでなら自分にもできる」など考える機会にもなり没入できました。格差社会に新しい角度で切りこんだ映画なので多くの人に届いてほしいです!
私の評価 63/100(60が平均)
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