映画『HELLO WORLD ハローワールド』評価は?ネタバレ感想考察/世界の真相と訪問者の目的は?

『HELLO WORLD ハローワールド』あらすじ概要
2027年、内気な本好き男子高校生1年の直美は、突然現れた謎の男性から「クラスメイトの瑠璃と恋人になって救ってほしい」と頼まれ混乱します。やがて順調に物事は進み、事故当日になるが…。恋愛のゆくえは?先生のねらいとは?(ネタバレ感想考察↓)
映画名/邦題 | HELLO WORLD ハローワールド |
日本公開日 | 2019/9/20 [予告↓]上映時間 98分 |
映倫区分 | 日本 G(年齢制限なし) |
映画監督 | 伊藤智彦 [キャスト↓] |
配給/製作/画像 | ©東宝/グラフィニカ |
日本興行収入 | 6.0億円(興行収入ランキング) |
平均評価★★★★★70(私の評価↓は含まず) |
『HELLO WORLD ハローワールド』予告動画
キャラクター(キャスト/出演者。日本語吹き替え声優)
ネタバレ感想『HELLO WORLD ハローワールド』解説や評価レビュー
この先はネタバレありの感想考察です。他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。
監督と原作や豪華なタレント声優陣について
監督の伊藤智彦は『まどか☆マギカ』等の多数作品で絵コンテ、細田守監督[作品一覧]の『サマーウォーズ』で助監督、『ソードアート・オンライン』TVシリーズと劇場版などで監督を務めてるので、SFファンタジーとは相性がよさそうです。
原作はないオリジナル劇場アニメです。発売されてる小説や漫画は、本作の脚本家の野崎まどによるもので、映画ストーリーを基に作られてますが多少内容が違う部分もあるようです。
主要人物の声は、専業声優ではなく芸能人・タレントが務めています。主人公のなおみを北村匠海、ヒロインるりを浜辺美波が演じてますが『君の膵臓をたべたい』コンビです。先生(ナオミ)は松坂桃李です。
タレント声優3人は違和感なく見事に演じてましたが、やはり専業声優は存在感が違います。専業声優の釘宮理恵、子安武人、寿美菜子などが脇を固めています。みずず役の福原遥は同年公開『映画 賭ケグルイ』でも浜辺美波と共演してます。

異世界セカイ系での位置づけは?映像や音楽は?
2019年は2匹目の『君の名は。』をねらってか、いつもより多くの異世界やセカイ系の邦画アニメが公開されてます。セカイ系とは、主人公の男女等の存在や関係性が世界の存続に影響を与える物語です。
ちなみに2019年公開の異世界アニメで私が観た作品は『あした世界が終わるとしても』『バースデーワンダーランド』『ドラゴンクエスト ユアストーリー』『二ノ国』です。ドラクエと二ノ国はリンクから感想読めますよ。
セカイ系の邦画アニメ『天気の子』は、異世界ではないので別枠ですが、実は『HELLO WORLD』と最も展開が近いのはこの作品だと思います。そして異世界(仮想空間)の設定が近いのは『ソードアートオンライン』です。
映像表現は文句なしですが、高レベルな2019年のアニメ映画(邦画も洋画も)の中では見劣りします。ただし個人的には映像美よりストーリー重視なのでこの水準なら充分だし、直美や瑠璃や三鈴のキャラは上作品の中では好きな方です。
ただし映像表現で1つだけ気になったのは、手袋を使った時や世界に影響を与えた時に出る原色カラーの大量の線の手抜き感です。アートっぽく誇りをもって表現したのでしょうけど、世界観と違う配色や形なのでかなり違和感を感じました。
音楽の使い方は『君の名は。』以降に多用されている「音楽で語る」表現が用いられています。他作品では合ってないのも観たけど『HELLO WORLD』の音楽は強く主張してこない分、ストーリーの邪魔にもなってないので可もなく不可もない感じです。
青春ラブストーリーとしては?一行瑠璃の魅力は?
映画『HELLO WORLD』の全体は三重構造になっていますが、メインは「堅書直美の世界」であり物語の半分以上はこの世界での、直美と一行瑠璃(いちぎょう るり)との出会いから恋愛が始まり初デートまでが描かれます。
最初、直美は図書委員会の集まりで、勘解由小路三鈴(かでのこうじ みすず)をかわいいと思ったようで、瑠璃とは偶然に連絡先(メールでなく住所)を交換しただけの関係です。しかし本好きの共通点やしおりを拾った縁で意識し始めます。
学校内での図書委員の最大イベント「中古市」直前には、一行瑠璃の家から運んだ大量の書籍が燃えてしまいます。ずっと落ち込む瑠璃をなぐさめようとした直美の想いが届き、瑠璃は直美の「好きだ」という告白に「2人じゃないとできないから、交際をはじめよう」と快諾します。
青春ラブストーリー描写としてはありきたりですが「一行瑠璃」のキャラクターが魅力的すぎて、その言動の変化を見てるだけでうれしくなります。と同時に、その後に起こる落雷の悲劇を、なんとしても止めてほしくなります。
上で挙げた2019年の邦画アニメにも様々なタイプの魅力的ヒロインが登場してますが、個人的には女性キャラだけで考えると『HELLO WORLD』の「一行瑠璃」を一番に挙げたいです!
直美は主人公男子ではよくある内気で優しいキャラですが、瑠璃のために影で奔走する姿が魅力です。ただ、ナオミの日記で先を知ってたり、カラスの神の手で状況を複雑にする設定は雑音に感じたので不要だったと思います。
主人公の直美と瑠璃の世界の真相とは?
直美の前に現れるフードをかぶった謎の青年(以下、直美と区別してナオミと呼ぶ)は、10年後の現実世界から来た直美だと語ります。直美にしか見えない存在であり、直美も含めてこの世界では触ることもできず通り抜けます。
ナオミは「直美の世界は、ドローン撮影した過去データを、仮想世界アルタラに再現したVR空間(ヴァーチャルリアリティ)」と説明します。直美の10年後のナオミがやって来たので勘違いしそうですが、タイムトラベルとは別物です。
この世界観設定はかなり複雑なので、この手の物語に慣れてない人は即座に理解しにくいと思います。簡単に書くと「過去の世界を再現し、主要キャラは自由に考え行動できるようにした」のです。だから未来を変えることも可能です。
「世界は偽物」と言われた直美がすぐ順応しすぎとは感じましたが、ナオミの話を半分くらい信用してなかったのかもしれません。私もミスリードの可能性を考えたけど、神の手袋での奇跡や大勢の狐面の登場によりVR世界だと理解しました。
ナオミの真の目的とは?未来人は真実?
未来から来た、と言う青年ナオミが高校生の直美の10年後の姿であることは真実です。ただしタイムリープなどではなく「仮想世界アルタラ内で再現した直美の世界」へ入ってきたのです。VRゲーム世界へ入ることと似ています。
そしてナオミは10年前の直美に、一行瑠璃とつきあい始めること、初デートの宇治川花火大会で落雷により瑠璃が死亡することを伝え、直美に救うようお願いして協力します。事故当日、宇治の喜撰橋で落雷にあうが直美は瑠璃を助けます。
無事に生きのびた瑠璃と直美がキスしようとした時、ナオミは瑠璃をさらい、直美の世界から瑠璃の存在した痕跡は消滅します。ナオミの真の目的は、現実世界で脳死状態で眠る瑠璃の脳へ「直美に恋した瑠璃の意識」を転送することでした。
ナオミの意図は納得できますが、現実の瑠璃の脳へ転送する意識が「あの時点」でなければいけない理由が説明不足だと感じます。ナオミのことを好きでいてほしいなら、告白を快諾した後ならいつでもよかった気がします。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように落雷を使わないと現実世界に転送できない、という設定にした方が、あの橋の上で瑠璃をさらったことの説明がついたとは思います。
ラストの月面基地で目覚めた男性の正体は?
上ではあえてナオミの世界を「現実世界」と書いてますが、実はナオミの世界もVR空間だったのです。それが判明するのは、新世界で直美と瑠璃がファーストキスした直後、つまりラスト数秒前です。
月面基地らしき場所で男性が昏睡から目覚め、メガネかけた女性などが待ちわびたように大喜びします。セリフも説明もないので推測ですが「真の現実世界」で眠ってた男性は「青年直美(と記述します)」で、彼を昏睡か脳死から救おうとしてたメガネっ娘は瑠璃なのでしょう。
そのために千古教授がいるVR世界を創造し、その世界のナオミを仮想世界アルタラに再現した過去へ送りこんで、直美と瑠璃に恋をさせ、2人を上位のナオミ世界経由で「新しい世界」へと導いたのです。
「新しい世界」に住人がいるのかは不明ですが、直美と瑠璃は「アダムとイブ」のような存在になったのです。そこでの、三度目の正直のファーストキスと、タイトルコール「HELLO WORLD(ハローワールド)」は見事な結末です!
と思いきや、舞台が月面基地に移って全ての真相が明らかになりますが、もはや三重構造とか、どんでん返し等はどうでもいい状態です。ちなみにハローワールドが最後に出た時は「逆回しの物語」も想像したけどうまく解釈できません。
「HELLO WORLD」はプログラミング言語を最初に学ぶ時にほぼ必ず表示する言葉だと考えると、目覚めた青年直美は、AI搭載のアンドロイドである可能性もあります。直美と瑠璃がたどり着いた新世界は「HELLO WORLD」で初期化されたAI脳の中という解釈もできそうですが真相は作者のみ知るです。
このように考察はしてみたものの、月面基地の青年直美を目覚めさせるためだけに行った内容(映画全編)が必然だったとは思えないし、もしそうでも説明不足です。SF物語なので、あとの解釈は視聴者におまかせということでしょうけど。
カラスとツール手袋の正体は?燃えた本の真相?
ナオミがつれてきたカラス(3本足の八咫烏)の正体は、直美がはめた万能手袋ツールです。仮想世界内ではどんな物質も生み出せる『鋼の錬金術師』のような能力を発揮できます。無限にいる監視プログラム狐面に対抗するためには必須のアイテムでした。
ラストでは、カラスがナオミの物ではなく、本当の持ち主は「月面基地の瑠璃とその仲間」であることが判明します。だからナオミ世界にさえ、影響を与えることができたのです。
カラス・ツールの本当の役割は、直美と瑠璃を新世界へ導くことだったのです。後で考えると、古本市前に燃えた本を神の手袋で修復時、直美が読んでない本の内容まで元どおりになったのは、月面の瑠璃が介入したからではないでしょうか。
『HELLO WORLD』私の評価と総括
今年2019年は異世界やセカイ系の邦画アニメが豊作ですが大量生産してる感じもして、そろそろ飽きぎみでした。しかし『HELLO WORLD』は一行瑠璃のかわいさとキャラ性、予測できないストーリー構造などで見事に裏切ってくれました。
ツッコミどころは多いし「真の現実世界」から見た「二重の仮想世界で起こったことの必然性」は納得できない部分だらけです。しかし「神の手」ならぬ「制作者の手」によって『何でもありですよ』と言われてるような気さえします。
ただ、この多重構造の仕掛けや、ラスト数秒でのひっくり返し、シンプルストーリーをわざわざ複雑に見せすぎてる展開等は、多くの人には受け入れがたいと思います。新海誠風にわかりやすければ、映画史に残った可能性もあると思うので少し残念です。
他の映画はおすすめ映画ジャンル別も参考にしてください。
『HELLO WORLD ハローワールド』含む映画ランキングや映画賞

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