映画『スマホを落としただけなのに2/囚われの殺人鬼』ネタバレ感想考察/真犯人の正体と動機は?前作のつながりは?
原作は志駕晃のミステリー小説。『スマホを落としただけなのに』続編。トラウマを隠す加賀谷刑事は新たな殺人事件について、前作で逮捕した連続殺人鬼・浦野から情報を得ます。一方、恋人にも…。浦野の師Mとは?加賀谷の闇の真相は?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 |
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日本公開日 | 2020/2/21 [予告] 上映時間:118分 |
監督・キャスト | 中田秀夫(キャスト) |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/ツインズジャパン |
日本興行収入 | 11.9億円(年間23位) |
平均評価 平均:100換算 | 66(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | ミステリ/サスペンス映画一覧 前作『スマホを落としただけなのに』19.6億 |
登場キャラクター(キャスト/出演者)
- 加賀谷学(千葉雄大)
- 松田美乃里(白石麻衣)
- 笹岡一(鈴木拡樹)
- 根岸剛志(音尾琢真)
- 荒木寛子(江口のりこ)
- 安西優香(奈緒)
- 三宅卓也(飯尾和樹)
- 神宮寺紗綾子(高橋ユウ)
- 丹羽亮子(今田美桜)
- 稲葉麻美(北川景子)
- 富田誠(田中圭)
- 毒島徹(原田泰造)
- 浦野善治(成田凌)
- 兵藤彰(井浦新)
ネタバレ感想『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作や監督と成田凌などキャストについて
原作は2018年11月に発売された、志駕晃の長編推理小説『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』です。『スマホを落としただけなのに』の続編2作目で、3作目も既に発売されています。
監督の中田秀夫は『リング』シリーズで注目されて、ホラー映画を中心に多数の作品を監督していますが、代表作『リング』を超える作品はまだないように思えます。題材や導入部はうまいけど、ラストを大切にしてない作品が多い印象です。
本作の主人公は、前作『スマホを落としただけなのに』で助演だった加賀谷刑事を演じる千葉雄大です。戦隊シリーズ出身で、数え切れないほどの映画・ドラマに出演しています。キャラ薄めなのが本作でどう評価されるか。
恋人役を演じる白石麻衣は乃木坂46のアイドルです。演技はともかく長いセリフもがんばっていました。同じく前作から続投の連続殺人鬼を演じる成田凌は、完全に主役を奪ってました。劇場でも「成田凌やばかった」しか聞こえてこないほど。
前作で主人公カップルを演じた北川景子、田中圭も登場しますが、ほぼカメオ的な友情出演のみです。いま思えば、演技が微妙と言われた北川景子の前作の方がましと思えるし、引き込まれたのは人間的魅力かと感じます。
前作とのつながりは?比較評価は?
冒頭で、麻美(北川景子)と富田(田中圭)が結婚式を開催し、加賀谷刑事(千葉雄大)とその恋人の松田美乃里/みのり(白石麻衣)に「次は2人ですね。スマホを落としてみたら?」とからみます。麻美の正体を知ってるので笑えませんが。
北川景子と田中圭の出演はこれっきりです。加賀谷の先輩刑事の毒島(原田泰造)も一瞬だけ登場します。それ以外は、前作の加賀谷刑事と、彼が逮捕した連続殺人鬼の浦野(成田凌)と、スマホのセキュリティだけが共通のつながりです。
前作はスマホのセキュリティをつく犯罪を描き、ミステリ的なフーダニット要素やどんでん返しもあり、エンタメ映画としてよくできてたと思います。説明や説教くさいセリフは多いけど、スマホ持ってない人も見るので仕方ないと感じます。
本作『スマホを落としただけなのに2』も説教くささは健在ですが、独り言で心情を語る「TVドラマ風セリフ」が多いのは残念すぎます。たぶん前作が難しすぎた高齢者への配慮でしょうけど、IT専門用語以外の説明セリフも多すぎます。
ミステリとしても、前作並みの予測不可能なフーダニット(犯人探し)をめざしてるけど空回りが目立ちます。何よりも犯人に意外性が全くないし、そもそも犯人は5人でした!という結末は、ミステリの爽快感を失くしすぎてます。
成田凌の和製『ハンニバル』に特化すべきでは?
原作小説を未読なのでどこまでオリジナルか不明ですが、浦野を演じた成田凌は、映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』で登場する天才精神科医にして猟奇殺人犯であるハンニバル・レクター博士を意識してると思います。
過去のトラウマを抱える若手刑事が、獄中の連続殺人鬼の協力を得て捜査する過程もよく似ています。本作で足りなかったのは、加賀谷刑事と浦野との間の偏愛と、千葉雄大の(成田凌に匹敵するくらいの)演技力です。
フーダニット(犯人探し)のミステリとしては失敗してるので、むしろ猟奇殺人犯とトラウマ刑事との交流に焦点を当てた方が良い作品に仕上がったと思います。その場合は、闇演技ができる若手女優の起用がふさわしいとも感じます。
本作での最大の違和感は、加賀谷刑事の捜査方法が「浦野に頼りすぎ」な点です。「師Mが犯人」という浦野の発言を全面的に信じて、特別に高性能PCとネット環境を与える展開には納得しかねます。警察が見つけた証拠ほぼ何もないし。
真犯人の容疑者一覧は?
映画『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』はフーダニット(犯人探し)ミステリーなので容疑者をまとめます。「どの事件の犯人(容疑者)」かは、あえて書きません。映画内でのあやしい人の一覧です。
他にもサイバー犯罪対策室の室長の三宅卓也(ずん 飯尾和樹)等がいますが、完全にコメディ要員だし、スマホやITにうとい高齢者らが共感しやすい説明用キャラでもあるので、容疑者からははずします。そもそもこの人、映画に不要です。
- 加賀谷学(千葉雄大)トラウマ抱える刑事
- 浦野善治(成田凌)IT専門家。獄中
- 浦野の師M。山中殺人と仮想通貨犯は同一?
- 火傷の顔の謎の男性(井浦新)
- 笹岡一(鈴木拡樹)加賀谷、美乃里の共通友人
- JK16(高橋ユウ)仮想通貨犯に対抗するホワイトハッカー
- 根岸剛志(音尾琢真)いかつい顔
- 吉原宏樹(アルコ&ピース平子祐希)浦野を見張る刑事
- 安西優香(奈緒)美乃里の友人
いま何の犯人を探してるのか不明?犯人多すぎ問題
本作はミステリとしては「犯人に意外性がない」ので、わざと混乱させるために複数事件を並列に見せます。もちろん上手く見せてくれれば、ラストでたたみかけるような謎解きが快感になりますが、本作は混乱させるだけなので残念です。
まず前作で浦野が「母に似た黒髪ロングの女性を何人も埋めた山中」から、女性の遺体が発見されます。染めたショートヘアなので浦野が犯人の可能性は低いです。しかし加賀谷は獄中の浦野が語った「ダークウェブに潜む師Mのしわざ」を裏づけなしに信じて捜査権を与えます。
次に仮想通貨「レイラコイン」580億円分が「M」を名乗る犯人に盗まれます。その仮想通貨のマーキングに成功した、ホワイトハッカー「JK16」が現れ、犯人が引き出せなくなると、JK16こと神宮寺紗綾子(高橋ユウ)は犯人に殺害されます。
加賀谷の恋人の美乃里がカフェのフリーWiFiにつないで、SNSのパスワード等を盗まれ、スマホのカメラやGPSもハッキングされます。このストーカーのハッカーを捕まえるため、美乃里がおとりになることを了承します。
浦野の提案で、加賀谷は警視庁サイトでセキュリティブログを書き始めます。そこに頻繁にアクセスするIPアドレスを特定し、メールのファイルをクリックさせてカメラをハッキングして、焼けただれた顔の犯人を映します。
神奈川県警のサイトもハッキングされます。牢獄の監視人の吉原刑事は、浦野に虫入りや糖尿病の小便を食事とするいやがらせをしてたが、ギャンブルの借金を返してもらい、さらに上乗せ額を要求した時、浦野にトイレで窒息死させられます。
別件で捕まったトラック運転手が、JK16こと神宮寺紗綾子のクレジットカードを持ってて、殺人鬼の根岸剛志(音尾琢真)が捜査線上にあがります。カードは、JK16の遺体が見つかった後は止められて追跡されるので持ち歩く意味が不明ですが。
これだけ複数の事件が発生したのに映画では上手く処理しきれてなくて、もはや「犯人は誰?」よりも「いま何の犯人を探してる」のか混乱します。ミステリ作家初心者のような脚本なので、前作のまとまりはゴーストライターかと疑うほどです。
JK16の殺人犯の正体は?みのり誘拐犯も同じ?
ホワイトハッカー「JK16」こと神宮寺紗綾子を殺害したのは根岸剛志です。JK16のクレカを持っていたトラック運転手の証言から明らかになります。終盤で美乃里も誘拐して殺害しようとし、加賀谷を刺し、火傷顔の男性に撃たれます。
しかし根岸は「M」を名乗る人物に(金で?)依頼されただけの、ただの実行犯だと判明します。
殺人依頼者「M」の正体と動機は?
仮想通貨を盗んだ「M」を名乗る犯人の正体は、加賀谷の元共同経営者の笹岡一(鈴木拡樹)です。この意外性のなさには逆に驚きました。笹岡は、加賀谷と作った会社を存続させるために仮想通貨を盗んだと自白します。
しかしJK16に仮想通貨をマーキングされて引き出せなくなったので、(マーキング解除させた後に?)殺害しました。そこまで切羽つまってたんですかね。美乃里の誘拐と殺害は、映画を盛り上げるため、かと思ったけど別の理由が。
なんと笹岡はゲイであり、加賀谷のことを愛してたのです。だからその恋人である美乃里に、加賀谷との現状を質問してたんですね。美乃里の誘拐殺害未遂は「嫉妬」によるものです。今思えば美乃里の友人女性が持ってた「BL本」はこの伏線です!
ストーカーのハッカーの正体と目的は?
美乃里のスマホをハッキングしたり、ストーカーしてた「やけど顔の男性」の正体は、警視庁公安部の兵藤彰(井浦新)です。ハワイアン音楽の暗い部屋で美乃里の写真を眺めたり、ラストで根岸を撃って加賀谷を救ったのも兵藤です。
兵藤は公安サーバーへの侵入者が、美乃里の自宅からだったと、つきとめたので美乃里を監視してたのです。しかしこのオチには無理があります。公安なら、美乃里の恋人が加賀谷であり、閲覧履歴が加賀谷の父親の情報だとすぐわかるはず。
それなのに美乃里のスマホをハッキングする違法捜査を繰り返して、もはや犯罪者の領域です。公安刑事としては無能過ぎます。また、自宅PCでハッキングしてたのは、明らかにプライベートだし越権行為で逮捕されるべきだと思います。
山中殺人の真犯人「M」の正体とは?
山中で発見された遺体の殺人犯は「M」とされますが、それは浦野からの証言だけが手がかりでした。そのダークウェブの伝説的存在「M」の正体は、発見された山小屋の住まいの冷蔵庫に入ってた遺体です。浦野が3年前に殺害したようです。
山中で見つかった遺体の殺人犯がMだったかどうかは記憶があいまいですが、その真犯人は浦野である可能性が高そうです。浦野は「黒い長髪女性」しか殺害してないと思われたけど、その裏をかいてか何か別の理由で2人を殺害し埋めたのでしょう。
浦野こそが真犯人?結末は?
浦野がおかした犯罪は、まずギャンブルで借金地獄に落ちてた吉原刑事をトイレ窒息させて復讐し脱獄します。アキラ100%が演じる警官を裸にして警官服を奪います。気づいた加賀谷が、スプリンクラーに気をとられて逃げられる展開は雑です。
浦野は笹岡が仮想通貨犯だと気づき、脅迫して神奈川県警サイトをハッキングさせます。金も用意させます。美乃里の誘拐・殺害も浦野が要求したようですが、そもそも加賀谷を愛する笹岡は自分の意志で美乃里を排除したかったと思います。
浦野は3年前にダークウェブの師Mを殺害して冷蔵庫に保管しました。山中での遺体の殺人犯も浦野の可能性が高いです。浦野は海外逃亡に成功し、中国かアジアの諸外国に潜伏します。エンドロール後に、誰かがそれをスマホで撮影します。
警視庁公安サーバー侵入者の正体と目的は?
警視庁公安サーバーをクラッキングして侵入したのは、加賀谷刑事です。侵入先が美乃里の自宅とつきとめた公安刑事の兵藤は、その後美乃里をストーカーします。
加賀谷が公安サーバーに侵入した目的は、警官だった父親について調べるためです。そして兵藤刑事は、加賀谷の父の部下だったと判明します。加賀谷も兵藤も、一度逮捕された方がよさそうな立派な犯罪者です。
加賀谷がかかえるトラウマの闇とは?
前作『スマホを落としただけなのに』の回想シーンを見ただけで、ほぼトラウマの内容はわかりますが、実はまだ何かあるかもしれないと思ってました。しかし期待は裏切られ何もなかったです。
加賀谷は幼少期に、警官の父を亡くし、そのことで精神を病んだ母親に「おまえなんか産まなきゃよかった」と言われて虐待を受けていました。それが心の闇やトラウマとなり、浦野にも「自分と同じ人種」と見すかされてしまいます。
美乃里は、療養ケアセンターの女性を訪ね、ガンで弱ってる加賀谷の母親と会って話します。母親の言い分が自分勝手で驚いたけど、死を目前にして過去の行いを悔いたのでしょうね。でも傷つけた幼い心は癒やされないので罪は重いです。
結局、前作も本作も『スマホを落としただけなのに』というタイトルほどスマホは重要ではなく、むしろ「母親による育児放棄・児童虐待・ネグレクト」こそがテーマになっています。麻美も浦野も加賀谷もそれで苦しめられてきたのです。
スマホを落とした?タイトルの意味は?
浦野逃亡以外の事件が解決し、刺された加賀谷も回復後、別れそうだった美乃里と加賀谷は恋愛関係に戻ります。そして美乃里が「スマホを落としてよかった!」と言った後に回想シーンに入ります。
美乃里がバスに置き忘れたスマホを、加賀谷が走って渡しに行ったことが2人のなれ初めだったようです。冒頭で麻美(北川景子)が言った「スマホを落としちゃえば?」は軽く伏線だったんですね。
タイトル『スマホを落としただけなのに』のために、わざわざスマホを落とした設定にした感じですが。ちなみに『囚われの殺人鬼』は言うまでもなく、浦野のことです。
映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』私の評価と続編
スマホを落とした後の恐怖を描きながら、トリッキーなラストへ持ち込んだ前作と比べると今回は見劣りします。事件は多いし複雑で、それが分かりづらくて焦点が定まっていません。私は圧倒的に前作の方が好みです。
ただ、本作の最大の見どころである、獄中の浦野(成田凌)という猟奇殺人鬼の造形や演技には魅了されました。もし続編があれば、浦野が主人公になるのではないでしょうか。闇を抱える天才を演じる若手女優とタッグを組ませてほしいです。
前作はある程度、現実的なIT犯罪だったのに、今回はクラッキング技術がインフレを起こしつつあるのは残念です。また、成田凌の怪演を受け止めきれる俳優(柄本佑とか?)の選出も必須と感じます。
続編小説『スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス』(Amazon)の映画化も楽しみに待ちたいです!
私の評価 60/100(60が平均)
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